異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

天敵

時は少し遡る。

クオの耳に入った衝撃音。

それを確かめるために駆け出した先には、もう死んでいるだろう、地面に横たわったレッドボアと、

「んーー?そこにいるのはだれかしらぁ?」

無駄に甘ったるい声を出そうとしながら、クオのいる方に視線を向ける筋肉だった。

筋肉は、クオに気がつくと、頬を染め、手で隠す。

「あら、可愛い坊や。もしかして、さっきの見ちゃったのぉ?」

それからクオへと近づくと、クオに指をさし、左右に振る。

「いやぁん!乙女の秘密を見るなんて、オ・シ・オ・キよ?」

それに寒気を覚えたクオは、火球を並列詠唱でおよそ80個ほど作り出し、筋肉へけしかける。

コントロールしたおかげで、周りに被害は殆ど出なかったが、筋肉は凄まじい爆炎に包まれた。

それを眺めることはせず、その場から離脱しようと爆炎の中心地から駆け出そうとする。

「もう!痛いじゃなぁい!坊や?相手が美しくて見惚れても、意地悪なんかしちゃ駄目よぉ?そんなことしたら嫌われるわよ?」

炎の中から顔を出し、腰に両手を当てて怒る筋肉。

意地悪?あれはそんなレベルで片付けられる攻撃じゃないだろう!?

ピンピンとしている筋肉に、底知れない恐怖と動揺を覚えたクオは、筋肉のステータスを確認する。

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名前 キャサリン  種族 人族

年齢 秘密♡

Lv176

HP26431

MP 3500

STR4800

DEX5700

AGI4000

INT3700

DEF3600

スキル

裁縫師 Lv10  拳闘師 Lv10

固有スキル

狩人 Lv10

称号 漢女

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狩人

・雄特攻

鑑定10なのにも関わらず、年齢は秘密としか表示されなかった。

だが、筋肉の年齢など知ったところで悲惨な結末しか見えないので、良かったといえる。

そしてなにより、

「狩人……?」

自分が知っている狩人と明らかに違う、しかも説明からして嫌な予感しかしないスキルを見てクオは口を滑らせる。

「……坊や、乙女の秘密を覗いたのねん?」

「……これは、ちゃぁんと教えてあげなきゃならないかしらぁん?」

そう言いながら、ギラギラとした目つきで迫る筋肉。

それに抵抗しようとした時、

「ブモォォオオ!」

先ほどの魔法に反応したのだろう。

雄叫びを上げながら、1匹のレッドボアが現れた。

このレベルの魔物は筋肉にとって相手にならないだろうが、少しでも隙ができれば逃げ切れる。

そう活路を見出したクオの希望は、

「ふんっ!」

飛びかかったレッドボアを沈める裏拳によって粉々に砕かれた。

「あなたも雄でしょぉ?それが、2人の愛の邂逅の邪魔をするなんて……。ついつい手が出ちゃったわぁ!」

裏拳を喰らったレッドボアは、顔と、何故か全く攻撃を受けていない男の部分が爆散していた。

「で、坊や。始めましょぉ?」

それを聞いたクオにもはや抵抗するほどの気力は残されていなかった。

……結果、クオはある程度体を弄られる程度ですんだ。

なんでも、

「まだ、坊やには早いわ。もう少し熟れてからがいいわねぇ?それに、初めてはちゃんとした場所で、ね?」

何が早いのか、熟れるとはいつなのか、「ね?」じゃねぇよ。

などなど、思うことは多々あったが、何はともあれ、クオは、いつかレベルを上げて倒してみせると、さながら勇者のように覚悟を決めたのだった。

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