異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

野宿

川の音や鳥の鳴き声をBGMに、クオは釣りをしていた。

『暇なのじゃ』

「それが釣りだ」

そう言いながらクオはググッと背伸びをする。

その時、足で挟んでいた竿がしなる。

「おっ」

それを引っ張ると鮎のような魚が釣れた。

『今何匹目なのじゃ?』

「三匹」

『先は長いのじゃ……』

「んー。確かにもう飽きたな」

そう言ったクオは立ち上がると、

重力操作グラビティ

重力魔術を発動させ、川の一部を抜き取った。

それを草むらの位置まで持ってくると魔術を解除する。

それによってその中にいた魚たちが打ち上げられ、ビチビチと跳ね回る。

「……8匹、さっきまでのと合わせて11匹か、龍も食えるな」

『主人。最初からそうすればよかったんじゃないかの?』

龍が珍しくただただ呆れたような声音で話すが、

「ん?それじゃキャンプで釣りっていうお約束が出来ないだろ」

と、何故か逆に呆れられていた。

『そ、そんなお約束など聞いたことがないのじゃが……。……もういいのじゃ』

龍はまた反論をしようとしたが、クオの有無を言わさぬ視線によって黙らされていた。

「まあいいか。さっさと帰るーー」

「ふんっ!」

ドゴォッ!

帰るか。

そう言おうとしたクオのセリフを遮るように響いた声と衝撃音。

『主人!』

「ああ」

正体を確かめるため、声のする方へ駆け出す。

森を少し突っ切ると、ひらけた場所に出た。

そしてそこには、倒れたレッドボアとーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……フィア、そっち持って」

「はい!……こっちですか?」

「……ん。そこ。……一緒に引っ張って」

「わかりました!……せーの!」

そう言ってテントの両端を引っ張り、少し隙間が空いていた所を直した2人。

「……ん。できた」

「とりあえずはテントが完成ですね!」

水色を基調としたテントが出来ていた。

ちなみに、このテントは龍の住処に少しだけ保存してあった天竜スカイドラゴンの素材からクオが作った物であり、空調調整機能、防汚、防音、緊急時のアラーム、空間拡張が付いており、なんなら中はそこらの貴族の部屋よりも広く快適だった。

「……流石はクオ。自重しない」

「テントの機能じゃないですよこれ……」

中に入ると、板張りの床にソファー、本棚まであり、テントを張っていない間はどこにいっているのかと聞きたくなるほどめちゃくちゃなテントである。

「……テントの中はクオが来てから」

「あ、そうですね!まずは焚き火を準備しなきゃ……」

焚き火などしなくてもいいような造りにも出来そうだが、このテントにはキッチンはない。

クオがキッチン、冷蔵庫などを作る時にルノとフィリアが待ったをかけたのだ。

曰く、

「「それはもう野宿じゃない(です)」」

ということらしい、

それにクオも、確かに野宿とかなら火起こしとか食材の現地調達はしてみたいよなと思ったことから付けなかった。

それでもトイレもウォシュレット付きの物を完備しており、クオたちが野宿の醍醐味を充分に堪能し飽きたら付けてしまうだろうことは目に見えていた。

紐錐式で木を擦る2人。

「……疲れた」

「……ですね」

しばらく続け、火がついたのを確認した2人はその場に座り込む。

疲れたと口ではいっているが、初めての体験が楽しかったのだろう。

2人の口元は緩んでいた。

「……!……クオが来た」

「本当ですか!?」

だらしない姿で出迎えるのはなるべく避けたいと、2人は腰をあげる。

「……それにしても、ルノお姉様のこれは本当に便利ですね」

「……ん。この血霧ブラッドミストに引っかからずに私たちに近寄るのはほぼ不可能」

「それでいて、スキルを使っているのには気づかれないんですよね」

血霧ブラッドミスト

それは、ルノの血液に触れたものの情報をルノに知らせるという性質と、ルノの半径100メートルの範囲内に常にとどまるという2つの性質を付与した血を空気中、地中へと拡散させた探知の能力だ。

操血師の扱いがうまくなり、最近2つまで性質が付与出来るようになったからこそ使える能力。

地、空。

どちらからの接近も正確に捉え、そこでなっている木の実なども、自分が知っていれば何処にあるかが瞬時にわかる、探知としては非常に優秀な能力だ。

だからこそ、一瞬で目の前に現れる、それこそクオの転移魔術でも使えない限り、破られることはない。

「……?」

「どうしたんですか?」

訝しげに首を傾げたルノにフィリアが尋ねる。

「……クオの他に1人いる」

ルノの探知は、クオの後ろにもう1人、人物を捉えていた。

もう目前まで来ており、その証拠に茂みがガサガサとなる。

「お兄様!おかえりなさーー」

「……クオ。おかえーー」

クオを出迎えた2人はそのまま硬直する。

2人の視線の先には、項垂れるクオと、

「あらぁん?クオちゃん、この娘たちがあなたのお仲間かしらぁん?」

パツパツのピンクのフリルドレスに身を包んで体をクネクネとよじる。

ムキムキの漢女おとめが居た。

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