異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

閑話 デート (フィリア)

しばらく露店を見て回った(あまり食べ物は買わなかった)2人は服屋に来ていた。

「ここですか?」

「ああ」

場所はもちろん、昨日と同じクレアである。

「いらっしゃ、いませ……」

またまた昨日と同じく、挨拶をしてきた店員は、やって来たクオとその隣の少女が変わっているのを見て無意識に一歩下がっていた。

「それじゃあ、選んで来ますね?」

「ああ。ゆっくり見て来い」

「お兄様!これ……どうですか?」

そういってフィリアが着てきたのは、白のワンピースを基調に、若草色の装飾がちりばめられた服だった。

若草色と言う瑞々しい緑の色は、フィリアの底抜けの明るさを良く引き立てていた。

「……似合ってるな」

「本当ですか?買ってきます!」

クオの似合っていると言う言葉ににぱーっと笑顔になったフィリアは、一も二もなく買いに行った。

「お待たせしました!」

「……お。終わったか」

「は、はい。こ、これにしました……」

「…………はああ」

クオは、フィリアの選んだ先ほどの服を見、もう一枚を見てため息をつく。

「……お前もか」

「…………はぃ」

クオが見つけたのは案の定ネグリジェである。

しかし、クオの質問に対し消え入りそうなほど小さな声で返事をしたことからも、なんだかんだで大胆になれない純粋なフィリアの様子が伺えた。

「……恥ずかしいならやめといた方がいいんじゃないか?」

その言葉にフィリアは、顔を真っ赤にしながら、

「お、お兄様になら見られても……」

と言いながら、耐えられなくなったのか顔を手で覆った。

その様子は、ルノの計算されたものとは種類の違う可愛さであった。

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「どうですか?お兄様」

「……ん、うまい。流石だなフィー」

「嬉しいです」

若干甘い雰囲気。

2人は今、公園のベンチで昼食を摂っていた。

昼食の内容は、フィリア特製サンドイッチ。

これがあるから、2人は露店であまり食べ物を買わなかったのだ。

「……あったかいですね」

「丁度いい気温だよな」

陽気な日差しを浴び、寛ぎながらサンドイッチを一口。

「フィーって確か料理のスキルなかったよな」

「そうですね。……まだまだ技術が足りないのでしょうか?」

「……それで技術が足りないとか、スキル取ったら大変なことになるんじゃないか?」

「……どうなるんです?」

「……フィリアの料理をめぐって戦争がおきる」

「ええ!?……ふふっ。ありがとうございます」

最初は驚いたものの、お世辞だとでも思ったのか、少し照れ笑いしたフィリア。

しかし、クオはいたって真面目である。

フィリアのサンドイッチは相変わらず、朝から詰めているはずなのに、野菜はとれたてのように瑞々しく、肉は冷めたことによる臭さなどない、むしろ肉の芳ばしい香りだけが主張していた。

無限収納に入れたわけでもないのになぜこんなにも出来立てに近いのか。

しかももちろん味は一級品ときた。

クオ自身料理人のスキルLv10であるが、正直これと同レベルの料理を作れる気がしなかった。

そんなフィリアの料理のうまさに舌を巻きつつ、二個三個と口にした。

それを嬉しそうに微笑みながら見つめているフィリア。

「……どうした?」

「……いえ。なんだかこんな時間が嬉しくて」

笑顔のままクオに抱きつくフィリア。

少し食べにくくはあったが、そんな些細な理由で今の幸せそうなフィリアを引き剥がすのは気が引けたクオは、手に持っていたサンドイッチをさっさと完食すると、フィリアの頭をとりあえず撫でた。

それにふぅと吐息をもらしたフィリアは、次にえへへと幸せそうに笑い声を上げた。

しかし、抱きつかれているクオは気づいていた。

フィリアが泣いていることに。

それが嬉しさからくる涙なのか悲しさからくる涙なのかそれとも別の感情なのか。

クオには分からなかったが、とりあえず撫でる手に少し力を込める。

それに気づいたフィリアは、クオの胸にグリグリと頭を擦り付ける。

そして、

ふぉふぃぃふあふあお兄様ふぁいふひへふ大好きです!」

くぐもっていて聞き取れないし、なんとも締まらない感じではあるが、

「……まあ、俺もだよ」

内容など聞き返すまでもなく理解していたクオは、優しく笑った。

その後、しばらくの間ずっとフィリアの頭を撫で続けるのだった。

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