異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

閑話 賭け

夜、クオが寛いでいると、ルノとフィリアの2人が寄ってきた。

「……どうした?」

「お兄様!私たちと勝負しましょう!」

「……なんで?」

「いえ、なんとなくです。ただ、普通の勝負じゃつまらないですよね?……そこで!」

「……勝った方が、負けた方のお願いを聞く」

「と言う事です!」

そう言われて、クオは考える仕草をする。

お願いとやらを何にするかは決めていないが、まあ、賭け事は少なからず楽しいものである。

「……それは、分かったんだか……何で勝負するんだ?」

何はともあれ、まず勝負の内容を聞いてみることにしたクオ。

「ふふふ。それはですね……。これです!」

何故か胸を若干張って答えるフィリアは、軽く拳を握った。

「……喧嘩か?」

「もう!腕っ節で解決しようなんてする訳ないじゃないですか!普通の女の子はそんな考え方しません!」

顔をクオに近づけて怒るフィリア。

ちなみに、普通の女の子はのところで、ルノが若干目を逸らしていた。

「……そ、そうか。……じゃあ、何で?」

「そんなの、じゃんけんに決まってますよ!」

拳を握ったらじゃんけんの合図なのか?

などと変な方向で驚いたクオ。

しかし、じゃんけんなら運である。

それなら公平だし、何より多少は白熱するだろう。

「……じゃあ、やるか」

そう思って答えた。

「……言いましたね?逃げられませんよ?」

そう言ってにやりと笑うフィリア。

「……?ああ」

不思議に思いながらじゃんけんをしようとクオが手を出した瞬間。

「いきます!……『デナイアル』!」

フィリアがそう言い、手には一本の黒い剣が現れる。

それを2振り。

それを機に、何かが変わったのをクオは感じた。

「……何をしたんだ?」

そう聞かれたフィリアは得意げに、

「……お兄様が、チョキとパーを出す可能性を切りました!」

とんでもないことを口にした。

「は?」

「どうですか?これでお兄様はグーしか出せませんよ?」

まさか、最強とも言える魔剣を、じゃんけんの必勝法のために使うとは思わず、呆然とするクオ。

「いや、それだと勝負にならないんだが」

「……さっき、逃げられないって、言った。だから、勝負続行」

反論など許さないとばかりにルノが言う。

「いきますよ!」

「最初は!」

「……グー」

「じゃんけんーー」

「……」

「ぽんっ!」

クオは抵抗をやめてじゃんけんに参加する。

自分の出す手が変えられないのなら、2人の出す手を変えればいい。

そこまで考えたクオは気付く。

自分の出せる手はグーなのだ。

つまり、自分が勝つには2人にチョキを出させなければならない。

パーやグーなら、心を鬼にして、弱い魔法を軽くぶつければ咄嗟に手の形がそうなるかもしれない。

しかしチョキなのだ。

あんな滅多に取らない手の形など、誘導する事などできない。

考えられている見事な作戦に内心舌を巻きつつ、決められた手を出す。

結果は、

クオがグー。

ルノ、フィリアがパー。

当然の如く負けた。

「やった!やりました!」

「……ん」

ぴょんぴょんと飛び跳ね、ハイタッチを求めるフィリアに。

落ち着いているように見えるものの、嬉しそうに少し微笑みながらそれに答えるルノ。

2人の間には、不思議な結束力と達成感が満ちていた。

「……では、お兄様。私たちのお願い聞いてくださいね?」

「……勝者の、権利」

悪戯っぽく笑うフィリアと、何処か得意げなルノ。

「……で、何をすればいいんだ?」

魔剣を使うという、クオの意表をつく行動をし、自分たちはまず出させられる事がほぼないであろうチョキを負け手に設定する。

2人が考えたにしては異様に知略を張り巡らせた作戦を使って何をさせるのか。

平静を装ってはいたが、クオは内心かなり心配になっていた。

「それはですね?」

「……明日は私と」

「明後日は私と」

「2人でお出かけ(しましょう!)」

2人の要求にクオは気が抜ける。

そんなこと、頼まれればいつでもするし、一切苦などではないからだ。

目の前の2人は、賭けの景品として、しかも出かけると言う些細な願いを口にしたと言うのに、不安げに瞳を揺らしている。

「……ああ。いいぞ」

それにクオは苦笑しつつ、2人の頭に手を置きながら、承諾する。

「やりました!」

「……上手くいった」

それに目を輝かせた2人は、手をにぎり合う。

「……たが、3人じゃ駄目なのか?」

そこへクオの余計な一言が発せられた。

それにより、今まで嬉しそうにしていた2人はピタリと止まり、ギギギ。と擬音がなりそうなほどにぎこちなくクオの方を向くと、半目でクオを睨み、ため息を吐く。

「……前途多難ですね」

「……ん。手強い。……というか、デリカシーがない」

「「鈍感」」

2人は口を揃えて言う。

「……?」

しかし、クオは不思議そうに首を傾げるばかりだ。

それを見て、更に深いため息を1つ。

そしてクオを見つめ、

「お兄様!明後日は覚悟してください!」

「……ん。明日には、少しでも変える」

「……あ、ああ」

クオは、2人が何を言っているか全く理解出来ていなかったが、そのあまりの気迫に頷くことしか出来なかった。

何はともあれ、こうしてクオの予定は2日、ルノとフィリアのために使うことが決まったのだった。

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