異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

『おお、もう来たのか。ゆっくりしていても良かったのじゃよ?』

戻って来た3人に気付いた龍が声をかける。

そして、3人の様子を見て目を細めた。

『……そうか、何があったかは知らぬが、ひとまず和解はできたようじゃの。……家族は仲が良いのが一番じゃからな!良かったのじゃ!』

「……まあな、取り敢えずこっちは区切りがついた。で、次はお前の目的だな」

そう言ったクオを見て、笑う龍。

『まあまあ、焦ってもいいことは無いのじゃ』

「いや、今日はさっさと帰りたい」

そう言って軽く2人の頭を撫でるクオ。

撫でられた2人は、顔を赤くしながらも、気持ち良さそうに目を細めた。

『……ははは!本当に仲良くなったのじゃな!儂が恥ずかしいくらいなのじゃ。……確かに、その様子なら早く帰りたいというのも頷けるのじゃ。では、話すとするのじゃ』

そう言って目を閉じた龍は、

『で。……何から話せばいいのじゃ?』

そう首を傾げた。

「……まず、フィーを生贄にしようとした目的からじゃ無いか?」

『うむ。儂が娘、フィリアといったかの?を生贄として選んだ理由は簡単じゃよ』

『その娘を助けるためじゃ』

「……助ける?どういう事だ?」

『まあ、助けるというのはちょっと違うかもしれないのじゃ。正確に言うならば、……そうじゃのう。選択肢を与えようとした。が一番近いかの?』

「選択肢……。自然に龍にならないという可能性に賭けるか、この場で龍となるかのか?」

『やはり知っておったか……。じゃが、違うぞ?儂は人として生きるか、龍になるかの二択を選ばせたのじゃ』

その言葉に驚くクオ。

確率で龍化してしまう事はアスタが言っていたことから間違いはないはずだった。

それを、目の前の龍は可能性をゼロにできるかのような口調で話しているのだ、驚くのも当然だった。

「……どうやって?」

『ん?知ってはいるが龍化について詳しいという訳ではないのか?』

「……ああ。龍化するって事しか知らないな」

『なるほどのう。では、説明するのじゃ。……巫女の龍化はの、体内にある剣が原因で起こるのじゃ。……体内の剣が発する魔力が、持ち主の体を作り変えてしまったのが、龍化と言う現象じゃ』

「へえ、じゃあ、龍化しない奴がいるのは何故だ?」

『それは魔力が足りないからじゃよ。剣と言っても千差万別じゃからな。単純に弱い剣だったり、封印していても、自らで魔力を消費したりする剣もあるからの。そう言う場合は龍化はせんのじゃ』

「で、フィーは?」

『うむ。娘の剣は、今まで見た中でもトップクラスじゃな。……これならまず間違いなく龍化するじゃろ』

それを聞いて顔を青ざめさせるフィリア。

「てことは、お前には龍化をどうにかすることが出来るのか」

『うむ。でなければ選択肢など与えようとはせぬよ』

「どうやるんだ?」

『忘れたかの?儂のスキルは収集コレクトじゃ。どんなに強力な剣であろうと、武器である以上、儂に収集出来ぬものなどないのじゃ!』

「なるほど。根源を元から断つって訳か」

『まあ、簡単に言えばそうじゃの』

「やってくれるか?」

『もちろんじゃ!その為に贄として呼んだのじゃからのう。……じゃが、これだけは聞かねばならんのじゃ』

そう言った龍は、フィリアの方を向く。

『我が同胞となりうる、神秘をその身に秘めた人の子よ!汝には、権利を与えよう。……我が一族の末席に加わるか、自らの種族として生き続けるか。その選択の権利を!……どちらを選ぼうとも、儂は同胞の門出と捉え、祝福すると誓おう!さあ、選ぶがいい!』

大きく翼を広げてそう言う龍。

言っていることは中二くさいが、言ったものが龍なので、実に様になっていた。

「私は、お兄様の、ルノお姉様の、お母様の家族でいたいです!……だから、私は、人として生きます!」

フィリアは、龍を正面からしっかりと見据え、答えた。

『うむ!汝の意思、しかと耳にした!ならば、儂の力でもって、汝の呪縛となりし因子を解き放とうぞ!……さあ!こちらへ来るがいい!…………娘よ、怖いのなら2人に手でも握ってもらうといいのじゃ』

一通り言って満足したのか、素に戻る龍。

なんとも締まらない感じにはなったが、フィリアは2人の手を握りながら龍の側へと寄る。

すると、フィリアの体が輝き、それがおさまると、目の前に一本の剣が置かれていた。

全体がどす黒く、殆ど飾りなども付いていない無骨な片手剣。

しかし、なぜか目が吸い寄せられてしまう不思議な魅力を持った剣だった。

すかさずクオは鑑定する。

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魔剣デナイアル

・1日に5回の能力使用制限

・所有者が自らの意思で切ったものの否定

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この鑑定結果にクオは目を見開いた。

能力を説明し、理解した龍も驚いている。

簡潔ゆえに最強に近いと感じざるを得ない能力。

この能力はもはや世界に喧嘩を売っているようなものだ。

なぜならーー

『この剣があれば、死がなくなるのじゃ……』

そう、この能力なら、死んだ者を切れば、1日に5回も、死者の蘇生が出来るのだ。

他にも色々な応用も出来るだろう。

もはや神の武器と言っても過言ではなかった。

だが、結局フィリアの武器になりそうだったので、クオはそれ以上は特に気にしなかった。

「じゃ、用も終わったし帰るか」

そう言って歩き出すクオ。

「……ん」

「はい!」

2人がクオの手を取る。

『うむ!』

最後の一言に足を止めた。

「……なんでお前が来る?」

そう半目で尋ねるクオ。

『ち、ちょうどいいし、儂も一緒に行きたいのじゃ……』

「いや、連れてーー」

いかない。

そうクオは言おうとしたが。

「……ペット?」

「お兄様?連れて行ってあげないんですか?」

2人にウルウルとした目で見つめられ、口ごもる。

「まず、でかいし、小さくても龍連れてたら大騒ぎだろ。面倒臭さい」

そう反論するクオに、龍が言う。

『儂がもう1つの姿になれば解決するのじゃ!』

「もう1つの姿?」

『そうじゃ!……というか、あっちの方がむしろ真の姿なのじゃ』

「まあ、まず見せてくれ」

『わかったのじゃ!』

そう言った龍が白く輝きーー

光が収まったときには、龍がいた場所に一本。

白く輝く刀が刺さっていた。

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