異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

再開

「落ち着いたことだし、さっさとフィーのとこに案内してくれ」

クオは、龍を見ながら急かした。

『それもそうじゃの、ほれ、こっちじゃ』

それに頷いた龍は、ドシドシと歩いて行く。

「どこにいるんだ?」

『ん?ああ、贄になった者はみんなあっちの山にある洞窟に住まわせておる』

「杜撰じゃないか?」

わざわざ一山離れた場所に住まわせてるのに、その場所は洞窟ときた。

不思議がるのも当然だった。

『いや、それについては魔法で隠蔽しておるからな、見つかることなどありえんのじゃ』

「魔法?」

クオは首をかしげる。

ステータスを見た時は魔法のスキルなど持っていなかったのを覚えていた。

その様子を見たルノは、事情を察する。

「……この龍、魔法が使えない?」

「……ああ、さっき見た時はなかったんだかな……」

作戦を立てる時にクオは自らのスキルを全て伝えていたので、ルノはクオがなぜ不思議がったのかを理解していたのだ。

しかし、知らなかった1匹は目を見開いていた。

『なんと!お主鑑定持ちだったのかの?……いや、しかし……Lvが足りなければ儂の高いステータスは見られないはずなんじゃが……』

「いや、俺Lv10だし」

『……!その歳で、いや、そもそも鑑定のLv10じゃと!?聞いたことないのじゃ!…………はあ、その娘の操血師とやらと言い、儂はとんでもない者たちに挑んでおったのかのう……?』

それを聞いてさらに驚いたあと、ため息を吐く龍。

「なんだ?今更。勝つ気で来てるんだから、多少人外だったとしても当たり前だろ?……それに、結局の決め手はルノだからな。俺は別に普通だよ」

「……!」

チラリとルノに視線を向けると、胸を若干張りながらVサインをしているのが見え、苦笑する。

ルノは最初に比べると大分感情表現が豊かになっていた。

『もう何も言わんのじゃ……。それより、儂がどうやって魔法を使ったか……じゃったかの?』

「ああ」

『それはな…………』

勿体ぶった間を空けた龍。

そして次に、

『な、い、しょ。じゃ!』

龍で無ければきゅるん。というような効果音が付きそうな声音で、そう言った。

それに対し額に青筋を浮かべたクオは、ルノを呼ぶ。

「……ルノ」

「……ん」

呼ばれただけで何を言いたいか理解したルノは、操血師を発動させ、龍の足を縺れさせる。

それにより顔から地面に突っ込む龍。

更に追い討ちをかけるように、クオが土魔法を龍の額に叩き込む。

ーーこの間3秒。

見事としか言いようのない連携プレーだった。

『いたっ!いたいのじゃ!?じ、冗談!冗談なのじゃ!言うから許して欲しいのじゃー』

「最初からそうしとけよな」

このセリフだけ聞くと、クオは完璧に悪役だった。

『……場を和ませようと思っただけなのじゃ…………。……とにかく、儂が魔法を使えるのは、スキル収集コレクトのおかげなのじゃ!』

「ああ、なんかあったな。そんなのも」

自慢のスキルもそんなの扱いされて、龍は涙目である。

『…………収集の効果は、持ち主が許可した場合と、自分が所持している武器の保管が出来ると言うものなのじゃよ。その中に幻影魔法が使えるようになる剣があってのう、それで隠蔽したのじゃ』

「……へえ。移動型武器庫か」

ついには物扱いである。

龍を見るルノの目も、若干同情したものになっていた。

これ以上弄られたら何か取り返しの付かないことに目覚めてしまう。

そう涙目で考えていた龍に救いが来る。

それを見た龍は声を張り上げた。

『ほ、ほら!見るのじゃ!目的地じゃぞ!』

若干進むスピードが上がった龍の視界の先には、ただの崖があり、本当に何も無いように見える。

しかし、この魔法を見て、幻影魔法が使えるようになったクオにはぽっかりと口を開けた洞窟の入り口がしっかりと見えていた。

「……これか」

早速無詠唱で隠蔽を解除。

隣で龍が儂の魔法が…………。と今日何度目になるか分からない涙目を発動していたが、2人とも触れなかった。

「で、呼んでくれるか?」

『分かったのじゃ。……娘よ、出て来るのじゃ!』

龍が呼びかけるが出てこない。

自ら出て行ったのだ、それなりの覚悟があり、戻ってくる気は無いのであろうか。

そんな風に暗くなるルノとクオ。

しかし、ここにいるのは口数の少ない2人だけでは無い。

『娘よ!出て来るのじゃ!兄が迎えに来たぞ!…………いいのか?兄じゃぞ?……昨夜、自分の持って来た服やぬいぐるみを見ながらーー』

「わああああああ!」

龍の空気を読まない発言に、顔を真っ赤にしながら龍の口を塞ごうと少女が洞窟からかけて出て来る。

「な、なに言おうとしているんですか!や、やめてください!」

何をしていたのかは2人共すごく気になっていたが、今は別に聞かなくていいかと、視線を少女へ向ける。

『……やっと出て来たのじゃ。ほれ、主に客人じゃぞ?』

「…………あ」

龍に飛び掛かっていた少女、フィリアは、龍の言葉に自分が外に出てしまったことに気づき、

「……あ、えっと、……こんにちは、お兄様、ルノお姉様」

気まずそうに、目をそらしながら挨拶をした。

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