異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

戦闘

剣を構えたまま動こうとしないクオ。

『どうした?さっきまでの威勢は』

そんなクオに龍の嘲るような言葉がかかる。

しかし、クオは答えない。

『ふん。つまらんな』

そう言って、龍はクオから興味を失い、軽く腕を一振りする。

軽くといえども、龍のステータスの高さに任せた攻撃は、もはや人間に視認できるものではない。

あたりに風による衝撃波を撒き散らしながら襲いかかる爪。

爪の先からも、ソニックブームのようなものがでており、それらの副産物は、周囲の木々や岩などの障害を容易く吹き飛ばす。

そんな理不尽の塊、おおよそ人間に対処できるはずもなく。

ただ、振るわれた者を肉塊へと変えるであろうそれを。

クオは、むしろ余裕を持って避けた。

それを見て目を見開く龍。

当然だろう。

いくら軽く振ったとしても、自らのステータスの5分の1の力は少なくとも込めたのだ。

「おい、龍とかなんとかかっこつけててその程度か?……ただのトカゲだな」

STRでも、AGIでも、1万は超える攻撃。

人間が防げるはずのないものを、事実、クオは避け、あまつさえ挑発までしてみせた。

『調子に乗るなよ!』

今度こそ全力。

もはや龍の攻撃の途中で通った場所は、草木一本生えていなかった。

しかし、何度腕を振るおうと、尾で薙ぎ払おうとも、紙一重でかわすクオ。

木々が倒れ、大地は抉れている。

そんな、台風の後のような悲惨な場所で、クオは、傷をつけながらも立っていた。

『何故、何故なのだ!何故妾の攻撃をお主が避けることができる!』

目のまえのあり得ない光景に対し、絶叫する龍。

「……そうだな。人間、怒ると強いんだぜ?」

その言葉に、どういう意味なのかと、言葉の真意を探る龍。

しかし、龍にはやはりそこに含まれた意味など分からなかった。

当然だ。

クオは本当に、言葉どおりの意味でしか言っていないのだから。

この時のクオは、フィリアという家族を不当に奪われた怒りにその身を焦がしていた。

そして、その怒りこそが、クオのあるスキルを発動させた。

これが、今のクオのステータスだ。

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名前 クオ   種族 人族

年齢15

Lv76

HP1920000

MP 200P

STR34600

DEX480000

AGI43000

INT46000

DEF38000

スキル

魔術師Lv1  錬成師Lv10  料理人Lv10  

裁縫師Lv10  執事Lv10

固有スキル

鑑定Lv10   凶戦士化  上限開放

称号 管理神の使徒 魔力保有者マナホルダー

装備
夜狼のブーツ 夜狼のコート 

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このステータスは、ひとえに凶戦士化のおかげであった。

これによって、200倍という脅威のステータス上昇がおこっていたのだ。

これにより、龍の攻撃をなんとか防ぐことが出来ていた。

しかし、それでもなんとか防ぐことしかできていないのだ。

少しの隙を見て攻撃をしたとしても、相手の防御の半分も筋力がないのだ、傷口から血を流させることさえできていない。

それに、龍の爪を、後ろに跳んで避け、その直後に襲いかかる尻尾を、しゃがみながら前進して躱すと、目の前にはもう一本の腕から繰り出される爪がーーと、クオが全身で動きまわりながら避けるのに対し、龍はただ体の一部を振るうだけなのだ。

龍は体力が減っておらず、クオは疲れたはしから回復魔法で回復している。

いつまで続くかも分からぬ長期戦だ。

もっとも、まともに攻撃を受けてしまえばクオは死んでしまうため、実力が拮抗しているというわけでもなかった。

永遠に続くかに見えた攻防。

それを崩したのは、龍であった。

『ちょこまかと逃げおってからに!我慢ならん!』

そう言うと、翼を広げバサバサと動かし、凄まじい暴風を発生させながら空へと登る。

ある程度の高さまで登ると、その口を開く。

その口から、真紅に輝く光が集まる。

ーーブレス。

人間が届くはずのない高高度からの破壊の光線。

さて相手はどんな顔を浮かべているかと見た視線の先。

そこで捉えたクオは、

まるで罠にかかった獲物を見るかのような目で龍を見つめ、笑っていた。

龍は急激に走った悪寒に、その場から離れようとする。

しかしもう遅く。

ドオォォォオン!

龍の背後が、凄まじい爆風とともに、爆ぜた。

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派手な爆発音を聞きながら、クオはため息を吐く。

先ほど龍を呑み込んだ爆発。

それはクオが新たに開発した、最高威力の混合魔術である。

水魔法で作り出した水を、雷魔法で電気分解し、それを重力魔術で圧縮。

ギリギリまで圧縮したそれを、転移魔術で龍の背後に送り、火魔法で加熱し、水素と酸素から一気に水蒸気まで昇華させたのだ。

究極に大規模な水蒸気爆発。

それこそが、龍を襲った爆発の正体であった。

「……これで死んでくれりゃ楽なんだが……」

そう呟くクオ。

限界まで熱しているのだ。

その温度すら相当なものであり、爆発と相まって死んでいてもおかしくはない。

『クハハ!今のは効いたぞ!流石の妾も死ぬかと思ったしの!』

クオの願いも虚しく、聞こえてくる愉快そうな笑い声。

「……ま、だよなあ」

爆発の煙の中から、ゆっくりと降りてくる龍。

その笑い声とは裏腹に、翼は使い物にならないほどにボロボロになり、かなりの箇所に火傷で爛れた皮膚が見える。

しかし、まだHPは半分も減っていなかった。

『どうした?もうおわりか?』

「さっき、お前が死んでくれりゃ、終わりだったんだがな」

それを聞いた龍は笑う。

『クハハハ!それは残念だったのう?怪我こそしたが、まだ妾は余裕じゃ!』

それを証明するかのように、龍は吼える。

戦いは、まだ終わらない。

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