異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

告白

あれから1週間。

相変わらず家庭内はギクシャクしたままで、不安は強まっていくばかりだった。

しばらく経つうちに、この話が信憑性があるということが分かってきたのだ。

特に信じるきっかけとなったのは、3日ほど前だ。

朝、みんながまだ家にいた時にそれは起きた。

突如、家を覆うように影ができたのだ。

何が起きたのかと、外に出た4人が見たのはーー

神々しいほどの純白に身を染めた、龍であった。

体長は優に20メートルを超えるであろうそれは、クオたちの家の上を旋回しながら

「グァァァァァァァア!」

と、大きな咆哮を上げた。

まるで、待っている。とばかりに聞こえたそれは、一瞬で4人をすくませた。

クオは、覚悟さえしていれば、萎縮することはもうないと言ったが、不安はやはり拭えなかった。

まさに絶望的である。

救いがあるとすれば、脱出のルートが決まったことだろう。

クオは、この状況に対する苛立ちを晴らすかのように、無茶なレベル上げを続けていた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

名前 クオ   種族 人族

年齢15

Lv76

HP9600

MP P

STR173

DEX2400

AGI215

INT230

DEF190

スキル

魔術師Lv1  錬成師Lv10  料理人Lv10  

裁縫師Lv10  執事Lv10

固有スキル

鑑定Lv10   凶戦士化  上限開放

称号 管理神の使徒 魔力保有者マナホルダー

装備
鉄の剣  夜狼のブーツ 夜狼のコート 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

2年間のぶんも含めても、2倍近くレベルが上がっていた。

今ならオークキングすら一太刀で斬りふせることができる。

しかし、龍のステータスは最低でも1万はくだらない。

そう考えると、この成長ですら微々たるものだろう。

だが、それを分かっていても、少しの望みにかけて、レベルを上げざるを得なかった。

ここまでレベルが上昇しているのだ、私生活にも影響が出ていた。

具体的には、家に帰ったら夕飯を食べすぐにねているのだ。

酷い時は野宿することすらあった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ただいま帰りました」

クオが帰宅を知らせると、アーシャがとんできた。

「お帰りなさい。大丈夫だった?」

「はい、もうここらの魔物に遅れはとりません」

「……そう。でも無理はしないで」

「無理なんてしていませんよ」

「……。まあ、早くいらっしゃい。……ご飯、できてるから」

何をいっても無駄だと分かったのだろう。

アーシャはご飯の用意ができたとだけ伝え、リビングへ向かう。

その背中はいくらか悲しそうだった。

それに罪悪感を覚えながらも、そこは譲れないのだろう。

クオは先ほどの言葉に何か付け加えようともせず、アーシャに続いてリビングへ戻った。

「……あ、クオ。おかえり」

「お帰りなさい、お兄様」

「ただいま」

いつもならあった、フィリアの1日の報告などもなく、少しの挨拶を交わし席に着く。

「じ、じゃあ食べましょうか」

「「「はい(ん)」」」

食べている間も無言。

アーシャとルノはいつもどおりにと振る舞おうとしているが、問題は残りの2人である。

龍が現れた日から、フィリアは泣くことはなかったが、その代わり、表情をあまり見せなくなった。

心のなかがこんがらがっているのだろう。

クオは、いつも、目の下に大きな隈があった。

顔色もかなり悪くなっている。

この2人が喋らないことで、ルノとアーシャの努力も意味をなさないのだ。

ところが、

「ルノ。後で、僕の部屋に来てくれませんか?話があるので」

今日は珍しく、クオの方から喋りだした。

しかも、いつもなら寝るだけの夕食後にルノを部屋へ呼んだのだ。

「ん。分かった。必ずいく」

それが嬉しく、即答で答えたルノはしかし。

クオがいつもよりも無表情だったことに気づかなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夕飯を食べ終え、ルノへの用事のために必要なものを準備したクオは、ルノが来るのを待つ。

しばらくすると、扉がノックされる。

「開いてる」

そういうと、扉がゆっくり開かれ、ルノが入って来る。

「それで、何の用?」

椅子に腰掛けたルノは、少し嬉しそうに首を傾げた。

「ああ、ちょっと待ってくれ」

そう言って、立ち上がったクオは、先ほど準備していた袋を机の上へ置く。

「これ、何?」

「金貨だ。40枚入ってる」

その説明に、ますます首を傾げるルノ。

40枚と言えば、4人家族が一年は暮らせる金額だ、不思議に思うのも当然だろう。

「……これを、どうするの?」

ルノの質問の答えはーー

「これだけやる。だから来週までに出て行ってくれ」

考えうる限り、最悪のものだった。

「…………な、な、ん、で?」

しばらく呆然とした後、何とかそれだけ絞り出すルノ。

「……決まってるだろ?……信用できないからだ」

「な、なんで」

「だから、言ってるだろ?信用できないって。理由はな、それだよ」

そう言って、ルノの奴隷の腕輪を指さすクオ。

「その腕輪が外れていないからだ」

「ど、どういう、こと?」

「その腕輪は、俺、フィー、アーシャの誰にでもいいから、心を許せば外れるようになってるんだよ。外れてないってことはお前は誰にも心を許してないってことだ。そんなのが作戦の時にいても不安要素ができるだけだ」

そういうと、驚いたように目を見開き、俯くルノ。

「ギリギリまで待ったが、まあしょうがないか。お前も俺の同類だろうしな」

解放リベレイトと唱えれば、これが外れる。……そしたら、ここを出る準備をしろ」

解放リベレイト

そういって、ルノの付けた腕輪に触れながら、魔法を使う。

すると、腕輪が半分になって外れーー



なかった。


「……!?」

無言で驚くクオ。

それに対し、ルノはーー

「……ごめんなさい。それ、昔に外れてた」

俯いた顔を上げ、申し訳なさそうに、そういった。

「「……………………」」

気まずい沈黙が流れる。

「…………いつからだよ」

「……2年前、貴方が助けてくれた一カ月後」

その言葉に驚き、そういえば、それくらいの時にルノが1人で村へ行ったことがあったなと思い出した。

大方、その時にくっ付けて貰ったのだろう。

「……早くないか?お前は、俺と同じ部類の奴だと思ったんだがな……」

「……クオも、フィアも、アーシャも。私を、私として扱ってくれたから」

「……どういうことだ?」

「…………私は、忌子、だったから」

クオの疑問に、ルノはゆっくりと自分の過去を語りだした。

「異世界奮闘、チート兄」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く