異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

少女

クオは、森の中を駆け回っていた。

獣道も、それすらない場所も殆どスピードを落とさず通り抜ける。

途中で魔物の気配を察知すると、自ら突っ込み、火魔法をエンチャントした剣で一太刀。

振り抜いた剣から扇状に広がった炎が、集まっていた魔物10体、全てを包み込み、焼き尽くす。

素早く魔物の死体を、空間魔術の無限収納アイテムボックスに仕舞い、また駆け出す。

魔物種類や、剣にエンチャントする属性は変わるが、これがクオの昼間の行動だ。

妹が出来たことで予定をずらし、15歳で冒険者になることにしたクオは、10歳から遊びと称してこの作業を続けていた。

今年で13。

フィリアも10歳になり、まだ狩りなどはしていないためレベルは1だが、才能があるのか、ステータスは高かった。

これが二人のステータスである。

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名前 クオ   種族 人族

年齢13

Lv32

HP3200

MP P

STR80

DEX400

AGI90

INT67

DEF76

スキル

魔術師Lv1  錬成師Lv10  料理人Lv10  

裁縫師Lv10  執事Lv10

固有スキル

鑑定Lv10   凶戦士化  上限開放

称号 管理神の使徒 魔力保有者マナホルダー

装備
鉄の剣  皮のブーツ 皮のコート 

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名前 フィリア   種族 人族

年齢10

Lv1

HP1000

MP140

STR42

DEX50

AGI41

INT35

DEF50

スキル

巫女

固有スキル

称号 
龍神の巫女
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龍神の巫女
•ステータスの上昇率が向上

•体内に聖剣、魔剣が眠る

巫女
•回復魔法の効果に大幅補正

となっている。

どうやら、装備している防具、武器はステータスに反映されるようだ。

その判定がどこにあるのか、アスタに聞いたクオだったが、特に決まっていないと答えられ、呆れていたのは言うまでもないだろう。

ちなみに、一般的な成人男性のステータスは、HPが1000、MP が90、その他は全て50
前後だ。

それを考えるとクオは冒険者として普通に通用するだろうし、フィリアも10歳のステータスではない。

そんなクオはすでにここの森には手ごたえのある敵が居なくなっていた。

そろそろ帰るかと、方向を村に向かう方へと変えようとした時ーー

「うわああああああ!」

男の叫び声が木霊した。

すぐさまクオは向きをそちらへ変更する。

しかし、それは叫び声の主を心配してではないだろう。

その証拠に、そこへ向かうクオの表情は、口を少し吊り上げて、ニヤリと笑っていたからだ。

目的地に着くと、そこには逃げる馬車が遠くで見える。

さっきの叫び声の主は、それに乗って逃げたのだろう。

すぐに興味を無くしたクオは、目的の方へ視線を向けると、顔をしかめた。

それは、敵に何か原因があったわけではない。

クオは、敵を見ずにただ一点を見ていた。

目は虚ろで、両手両足を縛られ囮にされたーー

奴隷の少女を。

大方、さっきの叫び声の主は奴隷商人だったのだろう。

同情などで助ける気など別にないクオだったが、その光景には流石に顔をしかめた。

しかし、今は敵を倒さなければと、相手のステータスを確認する。

そのステータスは、

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オークキング

Lv50

HP10000

MP 0

STR350

DEX10

AGI170

INT20

DEF270

スキル

剣士Lv8 

固有スキル

豪腕Lv7

称号 

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あの光景さえ見ていなければ、クオが手放しで喜んだであろう、強敵だった。

オークキングは、身長が3m近くあり、見た目通りにSTRが高い。

AGIが高いのは意外であったが。

オークキングは、餌だとしか認識していないのだろう。

クオに目もくれず、奴隷の方へと近づく。

「チッ。俺は無視かよ」

業火ヘルファイア

それに苛立ったクオは、オークキングの顔めがけて火の上級魔法を打ち込む。

「グギャグギュ!ガァァアアア!」

オークキングは顔を抑えて喚くが、HPは4分の1ほどしか減っていない。

クオは畳み掛けるように接近して、エンチャントによって青白く輝く剣を振り上げる。

クオの攻撃が当たるかに見えたその時、その気配に気付いたオークキングの顔を覆っていた手から腕全体にかけて、赤黒い血管のような模様が浮き上がる。

おそらく、豪腕を発動したのだろう。

ドクドクと波打つそれを、気配のする方へ向けて闇雲に振り回す。

ゴオッ。

振り抜かれる腕は、大きな音を立てながらながら、クオに襲いかかった。

いきなりの攻撃に驚いたクオは、剣で防ごうとするも、その剣をへし折られ、その勢いで周りの木に向かって一直線に飛ばされ、背中から激突した。

内臓がやられたのだろう。

クオは血を吐き出した。

それに自身の勝利を確信したのだろう。

クシャッ。と、火魔法によって焼け爛れた醜悪な顔を、さらに歪めて笑うオークキングは、つぎにーー

ゴプッ。と、口から血を流した。

何が起きたのか分からず、キョトンとした顔のままうつ伏せに倒れるオークキングの胸には、大きな、氷の柱が刺さっていた。

しかしそれはクオが発動したものではない。

その証拠に、クオは何が起きたのかと呆然としていた。

それでも、これが好機であることを理解したのだろう。

傷もそのままに、よろけながらも近づいて、瀕死のオークキングの首を刎ねた。

回復ヒール

回復魔法によって自分を治した後、オークキングの死体を無限収納アイテムボックスに手早く仕舞うと、

そのまま少女を縛っていた鎖を風魔法で外す

「さっきの魔法お前だろ?……これで貸し借り無しだな。……じゃ」

一方的に話しかけると、少女へ背を向けて歩き出す。

「まっ……て」

しかし、すぐに呼び止められる。

「……なんだ?」

振り返ると、案の定、呼び止めたのは奴隷の少女だった。

それに面倒臭さそうに尋ねるクオ。

ちなみに、戦闘中の口調を聞かれていたため、素のモードであった。

「わ、わたしも……つ、れて……いって」

「嫌だ」

先ほどとは違い、瞳に僅かに光を宿した少女の願いは一蹴され、絶望の表情を浮かべる。

しかし、諦めてなるものかと、さらに食いついた。

「な、なん……で」

「信用ならない」

「……な、ら。しんよう、できれ、ば……いいの?」

「それなら考えてみてもいいかもな」

「な、なら。……奴隷に、すれ、ば……いい。あなたの……奴隷。それ、なら……うらぎれ、ない」

その言葉に何か考え始めるクオ。

「……まあ、それならフィーの友達にでもすればいいか……」

「…………?」

ボソッと呟いたクオの言葉が聞き取れず、小首を傾げる少女。

「それならいい」

そして、クオの言葉に瞳に宿った光を、一層強くした。

「で、どうすればいいんだ」

「この、首輪……あるじがきまって、ない。
……だから、これに、さわり、ながら……従属スレイブ……って言えば、いい」

自分の首輪を触りながら答える少女。

「わかった。……でもその前に」

そういって、少女の首輪を外すクオ。

少女は何をするのかと、不思議そうな顔をしている。

そしてクオは、首輪を。

「錬成」

錬成して、腕輪にした。

「流石にこの歳で奴隷拾ってきたはまずいからな……まあ、これなら大丈夫だろ」

無骨な首輪はクオの錬成によって柊の葉があしらわれた腕輪になっていた。

これなら確かに奴隷だとばれる事はないだろう。

「んじゃ、つけるぞ」

「……ん」

従属スレイブ

実はこの時、クオは一部、契約を変えていた。

だがまあ、今はとくに関系のない内容ではあるが。

「これでよし……いくぞ」

「……まって」

「……今度はなんだ」

「……名前」

「……あ?」

「名前……つけて、欲しい」

ビクビクしながらも、要件を伝える少女。

「なんでだ?」

クオには鑑定があるため、少女の名前がわかっていた。

故に、首を傾げる。

「もう、わたしは……あたら、しく、なった
から……あたらし、い、名前、欲しい」

心機一転ってやつか。と呟き、考え始めるクオ。

しばらくして。

「ルノ」

「……え?」

「お前はルノだ。……嫌なら自分で考えろ」

「るの…………ルノ。ん。嫌じゃ、ない」

「……そうか」

嬉しそうにするルノに背を向て、クオは歩き出す。

そんな後を、ルノはトコトコと付いていった。

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