異世界奮闘、チート兄
変化
さらに一年。
魔力の修行を続けていたクオは既に全属性の上級まで使えるようになっていた。
ただし、周りには全属性の初級、火、風の中級までだと誤魔化していた。
その方が何かあった時に都合がいいからである。
この世界には冒険者の登録に年齢制限が無いので、五歳で冒険者になるために、今のうちに森で遊ぶ振りでもしながら、戦闘訓練でもするか。と、一人部屋で計画を立てていた所、扉がノックされた。
「クオ?起きてるかしら、ちょっといい?」
アーシャのいつにもなく沈んだ声がする。
こんな声を聞くのはクオの父が死んで以来である。
クオの父親は、一歳の時に死んでいる。
アーシャの母乳のために、栄養価の高い物を食べさせようと山にこもり、魔物に襲われ崖から落ちたのだ。
父の亡骸に覆いかぶさりながら、死んでしまったら意味がないじゃない……。とうわ言のように繰り返していたのをクオはよく覚えていた。
それから立ち直ったアーシャは、前よりもっと気丈に振る舞うようになった。
まるで、誰かを安心させようとしているように。
だからこそ、沈んだアーシャの声などあれ以来初めてであった。
「はい。……いまあけます」
その声に、不思議に思いながらも扉を開ける。
そこには、その声から想像できた、少し悲しそうな表情をしたアーシャがいた。
「ごめんなさい。ちょっと付いてきて」
「は、はい……」
クオは、いつもより遥かに口数の少ないアーシャに、何も言わず付いていく。
………………付いて行った先のリビングでは、部屋の机の上に、籠が置かれていた。
しかも、よく見るとその中に入っているものが規則的に上下している。
ーーまさか。
嫌な予感がしたクオは、急いでその籠に近づき、中のものを確認する。
その中に入っていたものは、予想通りというべきか、小さなーー
赤ん坊だった。
それを確認したクオは、どういう事?と、若干非難めいた視線でアーシャをみる。
しかし、クオには分かっていた。
アーシャは今日は薬作りのための薬草を取りに森に入っていたのだ。
その証拠に、家の玄関には薬草の詰まった籠が置いてあったのが見えた。
つまりこの子はーー
「その子はね、……森に捨てられていたの」
捨て子であると。
「…………それで、どうするのですか、おかあさま?」
クオはふつふつと湧き上がる怒りを抑え、アーシャに尋ねる。
「もちろん、育てるわ。……この子はフィリア、今日からこの子はフィリアよ。……あなたの、クオの妹」
「ぼくの……妹」
その意味を噛みしめるように呟くクオ。
「私はもう寝るわね。……クオも、早く寝なさい」
「……もうすこししたら、ねむります」
「……そう。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
アーシャも、クオが何か思うことがあると察したのだろう、それ以上は何も言わずに自室へと戻った。
アーシャがいなくなった後、クオはフィリアの寝顔を眺める。
「……お前も、か」
寂しげに笑い、フィリアの小さな手を握る。
その瞳には、小さく、しかし確かな慈愛の感情がこもっていた。
それは、クオが自覚できる程には大きい、確かな正の感情であった。
ーー瞬間。
自分の中に、何か大きな力が入るのを、クオは感じ取った。
驚き咄嗟にステータスの確認をする。
そこには、
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
名前 クオ   種族 人族
年齢3
Lv1
HP20
MP P
STR7
DEX4
AGI5
INT22
DEF6
スキル
魔術師Lv1
固有スキル
鑑定Lv10   凶戦士化  上限開放
称号 管理神の使徒 魔力保持者
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
と、新たに二つ変化していた。
いつもなら直ぐにアスタに確認するクオはしかし、今はこのままでいいと、自分が意識を手放すまで、フィリアの手を握り続けていた。
ーーこの日の、妹、フィリアとの出会いは。
クオの内面と形。
どちらにも大きな変化をもたらしたのである。
魔力の修行を続けていたクオは既に全属性の上級まで使えるようになっていた。
ただし、周りには全属性の初級、火、風の中級までだと誤魔化していた。
その方が何かあった時に都合がいいからである。
この世界には冒険者の登録に年齢制限が無いので、五歳で冒険者になるために、今のうちに森で遊ぶ振りでもしながら、戦闘訓練でもするか。と、一人部屋で計画を立てていた所、扉がノックされた。
「クオ?起きてるかしら、ちょっといい?」
アーシャのいつにもなく沈んだ声がする。
こんな声を聞くのはクオの父が死んで以来である。
クオの父親は、一歳の時に死んでいる。
アーシャの母乳のために、栄養価の高い物を食べさせようと山にこもり、魔物に襲われ崖から落ちたのだ。
父の亡骸に覆いかぶさりながら、死んでしまったら意味がないじゃない……。とうわ言のように繰り返していたのをクオはよく覚えていた。
それから立ち直ったアーシャは、前よりもっと気丈に振る舞うようになった。
まるで、誰かを安心させようとしているように。
だからこそ、沈んだアーシャの声などあれ以来初めてであった。
「はい。……いまあけます」
その声に、不思議に思いながらも扉を開ける。
そこには、その声から想像できた、少し悲しそうな表情をしたアーシャがいた。
「ごめんなさい。ちょっと付いてきて」
「は、はい……」
クオは、いつもより遥かに口数の少ないアーシャに、何も言わず付いていく。
………………付いて行った先のリビングでは、部屋の机の上に、籠が置かれていた。
しかも、よく見るとその中に入っているものが規則的に上下している。
ーーまさか。
嫌な予感がしたクオは、急いでその籠に近づき、中のものを確認する。
その中に入っていたものは、予想通りというべきか、小さなーー
赤ん坊だった。
それを確認したクオは、どういう事?と、若干非難めいた視線でアーシャをみる。
しかし、クオには分かっていた。
アーシャは今日は薬作りのための薬草を取りに森に入っていたのだ。
その証拠に、家の玄関には薬草の詰まった籠が置いてあったのが見えた。
つまりこの子はーー
「その子はね、……森に捨てられていたの」
捨て子であると。
「…………それで、どうするのですか、おかあさま?」
クオはふつふつと湧き上がる怒りを抑え、アーシャに尋ねる。
「もちろん、育てるわ。……この子はフィリア、今日からこの子はフィリアよ。……あなたの、クオの妹」
「ぼくの……妹」
その意味を噛みしめるように呟くクオ。
「私はもう寝るわね。……クオも、早く寝なさい」
「……もうすこししたら、ねむります」
「……そう。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
アーシャも、クオが何か思うことがあると察したのだろう、それ以上は何も言わずに自室へと戻った。
アーシャがいなくなった後、クオはフィリアの寝顔を眺める。
「……お前も、か」
寂しげに笑い、フィリアの小さな手を握る。
その瞳には、小さく、しかし確かな慈愛の感情がこもっていた。
それは、クオが自覚できる程には大きい、確かな正の感情であった。
ーー瞬間。
自分の中に、何か大きな力が入るのを、クオは感じ取った。
驚き咄嗟にステータスの確認をする。
そこには、
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名前 クオ   種族 人族
年齢3
Lv1
HP20
MP P
STR7
DEX4
AGI5
INT22
DEF6
スキル
魔術師Lv1
固有スキル
鑑定Lv10   凶戦士化  上限開放
称号 管理神の使徒 魔力保持者
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と、新たに二つ変化していた。
いつもなら直ぐにアスタに確認するクオはしかし、今はこのままでいいと、自分が意識を手放すまで、フィリアの手を握り続けていた。
ーーこの日の、妹、フィリアとの出会いは。
クオの内面と形。
どちらにも大きな変化をもたらしたのである。
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