異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

説明2

「……どうしますか?」

アスタはそう尋ねるが、先ほどの拓人の瞳を見ていたため、遠回りしたとしても、拓人が権利を結局のところ受け取るだろうと確信していた。

「……ていってもなあ、その世界のこととか、特典のこととか説明してくれないことには始まらない訳だし、そこらへんの説明を頼む。まあ、どうするかはそのあと決めるとするよ」

しかし、アスタがそんなことを思っているなどつゆしらず、拓人は、いかにも情報不足で決めかねている。と、いった様子で質問を投げかける。

「確かに、それもそうですね。では、今から異世界と、もらえる特典について説明させていただきます」

アスタはそう前置きをおいたあと、説明を始めた。

「転生するとした時に、拓人さんが行くのは、シエルという世界ですね。獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、人族、吸血鬼族などがいます。あ、あと魔物もいますね。魔法とかも使えますし、いわゆる『剣と魔法の世界』というやつです」

「へえ、……それが本当だとしたら、たしかに面白そうだな。で、そんな世界に行くんだ、特典はある程度いいものなんだろうな?」

いいでしょ?と言わんばかりの微笑みを見せるアスタに、こちらもニヤリと笑って答え、続きを促す拓人。

「ええ、この世界には、ステータスが存在します。ステータスは……まあ、見た方が早いでしょう。頭の中でも口に出してもいいので、ステータスと唱えてください」

その言葉を聞き、ステータスと頭の中で唱えた拓人の視界に、半透明の青いウィンドウが現れる。

そこには、

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

名前 

年齢

Lv

HP

MP

STR

DEX

AGI

INT

DEF

スキル

固有スキル

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

と記されていた。

「パラメータについては質問はありませんね?」

アスタが拓人に尋ねる。

「ああ、よくあるゲームのパラメータだな」

その言葉に拓人が理解していると確認すると、続きを話し始める。

「ですね。それで、スキルはですね、基本的には職業の名前になっています。たとえば、剣士、Lv5とか、そんな感じにですね。……この剣士のスキルの中には、戦闘技術のアシスト、パラメータの上昇ですね。その他、身体強化などの戦闘系の技術を獲得した場合にも、自動で統合されます。そして、レベルの上限が10ですね」

「基本的にってことは、例外があるのか?」

よくぞ聞いてくれましたね!と、どことなく言いたげに、少し胸を張りながら答えるアスタ。

「そうなんです。ここには例外がありまして。その例外というのが、魔物なんです」

「魔物は何が違うんだ?」

「スキルというのは、そのスキルの中にある技術を相応に使うことで上がります。たとえば、同レベルの相手と戦ったりですね。なので、打ち合いをしていけば、剣士としての技能は上がっていきます。……しかし、魔物は、職業スキルを持たない者もいるのです。まあ、強い魔物は大体普通の職業スキル持ちなので、雑魚だけですが。……ちなみに、そういうスキルは剣術Lv2とかいう感じです」

ここまでスラスラと説明し終えたアスタは、きちんと拓人が理解しているか確認するために拓人を見つめる。

拓人の顔に理解の色があるのを確認すると、話を続ける。

「後は固有スキルですね。こちらはスキルレベルを上げることが難しいものや、そもそもスキルレベルがないものが多いですが、そのぶん強力な効果をもっていますね。……っと。こんなものでしょうか」

アスタが説明を終了したのを確認すると、拓人は話し始めた。

「とりあえず疑問はないな。……で、結局のところ、特典ってのはなんなんだ?」

拓人の言葉に、アスタはハッとした表情になると、慌てて話し始めた。

「あ、ああ。そうでした、そうでした。拓人さんにあげる特典というのは、スキル、固有スキル問わず、五個までスキルを、レベルMAXの状態で渡すのと、レベル上限の解放スキル、一時的に下手をすると全パラメータが10倍以上にもなるスキルですね」

その説明を聞いた拓人は、驚いた表情をとる。

「なんか至れり尽くせりすぎないか?あんまりにも俺に都合が良すぎるんだが……」

「そ、それは。…………はあ、いつまでも隠せるものじゃありませんし、いいです、話しますね」

そう言いながら、アスタはまた申し訳無さそうな顔をした。

「……実は、拓人さんが転生するにあたって、一つ問題があるんです」

「問題?」

「ええ。……拓人さんは、自分でスキルレベルを上げることが出来ないんです。もちろん、アイテムの効果や、私たちみたいな者からスキルを貰うことは出来るんですけどね」

「それは何故なんだ?」

「地球のシステムには、技術などが、スキルとなって蓄積する。というものがないんです。なので、アイテムの効果、スキル譲渡でスキルを得ることができるようにはなったのですが、自分でレベルを上げることはできないのです。……ただ、生まれてすぐに一つ、みんなスキルを授かるのですが、あれはその世界からの譲渡ということになりますので、一つだけなら、獲得できますが」

「…………なるほどな、それなら一方的に俺が有利な訳ではない、か」

先ほどは拓人は異世界に行くだろうと確信を抱いていたアスタだが、話していく内に不安になったのだろう、拓人を伺うように見ている。

「まあ、いいか。行くことにするわ、異世界」

「そ、そうですか。分かりました」

あっさりと拓人がOKしたことで、やはり予想が当たったと、嬉しそうにするアスタ。

「では、五つのスキルを選んでーー」

そんなアスタは、拓人の次の言葉でーー

断る、、

凍りついた。

え、え?と、数秒明らかに動揺したあとにした表情は。

さっきと言ってること違うじゃないですか!とでも言いたげな表情だった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品