異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

説明

「簡単に言うと、ここは神界で、私達は神です」

「……………………は?」

「ですから、ここは、神界で、私達は、神、なんです。」

「いや、いまのは?っていうのは、もう一度言ってくれって意味じゃないんだが……」

混乱しているのだろう、拓人は額に手を当て、目を白黒させている。

「ち、ちょっと待ってくれ、さすがに理解が追いつかない」

「まあ、確かにそうですね。じゃあ、整理がついたら言ってください」

そう言って、銀髪の少女は口を閉じて待ち始めた。

「ーーーー、…………よし」

「もう大丈夫ですか?」

拓人の呟きに反応した銀髪の少女が声をかける。

「ああ、もう大丈夫だ」

「それで、どのような結論に至ったのでしょう?」

銀髪の少女は、若干身を乗り出して尋ねる。

こんな状況を前にして、彼がどんな考えに至ったのか、純粋に興味があるのだろう。

「正直、神とか言っても信じられるわけないが、うちの事情を知っている奴で俺の知らない奴がいるはずがないからな。本当に神かどうかは知らないが、とんでもない奴らだってことは理解したから、それでいいやってな。」

当然の反応だろう。

こんな胡散臭い状況で、相手の話を鵜呑みにするほど愚かなことは無い。

銀髪の少女も、その回答で納得したのか、そうですね。と呟いて身を引いた。

「まあ、それでいいです。別に私達が誰かはそこまで重要じゃありませんし。それより、どうしてここにあなたを呼んだかについて説明したいとおもいます。あなたも知りたいでしょう?」

「ああ、結局まだ何もわかっていないからな」

銀髪の少女は拓人に確認の意味を持たせた笑みを浮かべ、拓人も異存はないので頷き、続けるように言う。

「はい、では、まずは何から説明しましょうか…………。ああ、そうだ、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はアスタ、中位の管理神をしています。そしてこちらが」

「ああ、メト。私の名前はメトよ。上位の管理神をしているわ。アスタの言う通り、私はアスタの先輩ね」

アスタは、長い銀の髪を左右で少しだけむすんでいる。髪は、腰まで届く程長いのにもかかわらず、手入れが行き届いており、サラサラとしている。

瞳は綺麗な碧色で、全体的には幼さを感じさせる容姿をしているが、アスタはそれと同じくらいの知的な雰囲気を纏っていた。

メトは、アスタと同じくらいのところまで赤い髪を伸ばしているが、面倒臭さがりなのだろう、所々髪がはねている。

瞳は髪と同じ赤色で、見た目通りの活発な少女といった印象だ。

そして、言わずもがな、二人共眼を見張るほどの美少女である。

「はい、自己紹介も済んだところで、説明といきましょう。拓人さん、あなたはここに来る前、どんな目にあったか覚えてますか?」

パン。と手を叩き、話を切り替えたアスタは拓人へと質問を投げかける。

それに対して拓人は、額に手を当て、懸命に思い出そうとしていた。

「…………ああ、そうだ、家に帰った後、日課をこなして、布団に向かおうとした時に……浮遊感が襲って、目の前が真っ暗になったんだ」

「それで、その後、謝っている私達にあったんですよね?」

「ああ」

アスタが確認を取り、拓人はそれに対し頷いた。

「それにしても……。あれはなんだったんだ?」

そんな不思議な体験、滅多に起こることではないだろう。

拓人が疑問を持つのは当然だった。

それに対しアスタは申し訳なさそうな顔をしながら答える。

「それは、私達が原因なんです。」

「どういうことだ?」

「その前に。管理神とはなにかわかりますか?」

拓人は首を横に振る。

当然と言えば当然だろう。

拓人は神になどあったこともなかったし、まずこの二人が神であることもまだ信じていないのだ。

アスタは拓人が首を横に振ったことを確認すると、また話を続けた。

「えーと、管理神とは、文字通り管理する神ですね。私達は地球の管理神です」

「地球のってことは、他にも管理神がいるのか」

「ええ、各世界に二人ずつくらいですかね?それくらいはいますよ」

「それで、あなたがどうしてこうなったかと言いますと、……私達のミスで、消しちゃったんです。あなたの存在自体を、地球から」

「………………………………じゃあ、なんだ?あんた達の手違いのせいで俺は死んで、ここにきたと………………なんだそれ?」

アスタの話を聞いた拓人は信じられないといった様子で呟く。

「本当に申し訳ありません。私達の些細なミスのせいで、あなたの人生を潰してしまったこと、改めてお詫びします」

その呟きを聞いたアスタは、申し訳なさそうな表情に顔を歪めながら再度、謝った。

「いや、まあそれはいい。実際あの世界に一切の興味もなかったしな。……そんなことより、俺がこれからどうなるのか教えてくれないか?」

アスタは驚いた。

彼女も、ミスをするくらい人間臭いといっても神である。

それ故に、拓人が自分の死について本当にそんなことで片付けられるようなものだと思っているのが分かったのだ。

生に興味がないという人間もいざという時は執着を見せるものだと思っているし、今まで見てきた人は少なくとも、みんなそうであった。

だからこそ、いくら過去が過去とはいえ、本心からそう思っていることに驚いたのだ。

アスタは、たっぷり数秒固まってから、拓人の質問に答え始めた。

「…………………………………そうですね。本来なら記憶を消して輪廻転生の輪に入ってもらうのですが、今回の非はこちらにありますし、お詫びの意味でも、あなたには特別に記憶を保持したまま、いくつかの能力を持った状態で異世界に転生する権利を与えたいと思っています」

それを聞いた拓人は、数瞬固まり、どうしようかと迷ったような表情を浮かべた。

しかし、異世界に行くことを本心では望んでいるのだろう。

拓人は、自分でも気付かぬうちに、期待感に瞳を光らせていた。

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