異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

混乱

「いつつつ…………」

ガンガンとする頭を抑え、起き上がった拓人は、辺りを見回した。

上も、下も、左右何処までも続く白、白、白。

こんな所にいれば次第に狂ってゆくだろう。

それ程までに何もない空間であった。

「ごめんなさい、本っ当にごめんなさい!」

「私からも謝らせてもらうわね、悪かったわ」

「え、え?な、何ですか急にーー」

それゆえに、この空間で土下座しながら必死に謝る銀髪と、しくじったと気まずそうに頭を掻きながら謝る赤髪の美少女達のインパクトはとてつもなく大きく、拓人の頭から場所や状況についての疑問を消し飛ばすには充分であった。

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「そ、それで、ここは何処で、あなた達は誰なんでしょう?」

しばらくの間惚けていたが、キャラ作りには定評のある拓人である。

すぐに正気にもどると、先ほど消え去った二つの疑問について彼女達に質問した。

それに答えるように言葉を発したのは赤髪の少女である。

さっきの謝り方からして、銀髪の方より落ち着いており、まともに会話ができるだろう。

「ええと、ここは何処で、私達は誰、だったかしら?まあ、もっともな疑問よね。……いいわ、答えてあげる。」

そう言うと、彼女は一転、哀れむような視線を送りながら一言、付け加えた。

「た・だ・し。あなたがその気色悪い話し方を私達にやめたら、だけどね」

「ち、ちょっと先輩!そんな言い方……」

「いいからあんたは黙ってて。私内側を晒さないやりとり嫌いなのよ」

銀髪の少女が抗議の声をあげるが、赤髪の少女の一言に黙らされていた。

そして、その言葉を聞いた拓人は、表情に出さないようにしつつ、最大限警戒を高める。

「何のことでしょうか?というか、初対面の人に対して気色悪いとは、失礼じゃないですかね?」

「だから、その喋り方だっての。まあ、あんな事があればそうなるのもわかるけど」

後半に呟いたセリフに、拓人は今までずっと保ってきた表情を崩し、彼女を睨む。

「どういうことだ?お前、何をしっている?」

突然の拓人の変化に普通の人なら驚くくらいのことはするだろう。

しかし、彼女は驚くどころか何処となく嬉しさを滲ませながら、拓人に対し挑発めいた笑みを向けた。

「やっと普通の喋り方になった。えーと、何をしっている。だったかしら?……そうねえ、何でも知ってるわよ?たとえば、あなたがそうなった原因、両親のダブル不倫とか、学校であった陰口からのいじめとか全部。他にもまだ上げられるけどどうする?聞きたい?」

過去のトラウマを言い当てられたことで拓人の瞳に驚愕と不快の感情が混じる。

「なんでお前がその事を知ってるんだ」

「なんででしょうね?でも、不機嫌になってるし、やっぱり図星なんでしょ?」

不快感を隠そうともせずに話を続ける拓人に対し、赤髪の少女はさらに挑発するような言葉を発した。

「黙れよ」

「いやよ、あんたが質問してきたんでしょ?私はそれに答えただけ、それの何がーー」

「先輩、いい加減にしてください。はあ、……このままじゃらちがあかないので、ここからは私が説明します」

赤髪の少女と拓人の会話が熾烈になってきたタイミングで銀髪の少女が割って入った。

「……ま、いいわ。ただ、補足とかはさせてもらうわよ」

赤髪の少女は渋々といった様子で頷く。

「はい、わかりました」

そう言うと、銀髪の少女は拓人の方を向き、話始めた。

「拓人さん。あなたの疑問は、ここは何処かと、私達は誰か。……でしたよね?」

「ああ、その二つだけだな。そこの赤髪のせいで無駄に長くなったが」

そのセリフに赤髪の少女は額に青筋を浮かべ、拓人はそれを見て鼻を鳴らす。

「もう、やめてください、先輩。みっともないですよ?」

うっ。と、自覚はあったのか、納得いかないという顔をしながらも、大人しく引き下がる。

「えーと、あなたの疑問に答えますね?」

どんな答えが飛び出すのかと、拓人は顔を引き締めた。

もっとも、そんな表情も、銀髪の少女の答えにはーー

「簡単に言うと、ここは神界で、私達は神です。」

「……………………は?」

惚けた表情に早変わりだったが。

能面とキャラ作りの天才の拓人も、ここでは表情変化のオンパレードであった。

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