異世界奮闘、チート兄
異常
放課後、帰宅した拓人は玄関に鞄を置き、その中から学友から借りた物や貰った物を取り出して家へあがった。
拓人の部屋は1LDKで扉を隔てて自分の部屋があるだけである。
家具の選択もセンスがよく、黒を基調として揃えられたコーディネートは、まるで家具屋のモデルルームのようだ。
拓人は、スタスタと迷いない足取りで全ての部屋を素通りし、自分の部屋へ続く扉とは反対の壁の前で立ち止まった。
そして、よく見ないとわからないような、壁の小さな隙間に指を差し込みーー
壁紙の一部を、引き剥がした。
そこから現れたのは、この家のシックなイメージからはかけ離れた、両開きの扉を閉ざす無骨な南京錠である。
拓人は、南京錠を外すと、隠された部屋の中に入る。
そこは、管理するための場所、という言葉が適切であろう部屋だった。
棚には色々な物が飾られており、一目でどれがどれだか分かるように何らかの規則性を持って並べられ、本棚には夥しい量のノート、ただ一つだけある机には、何かについて記録帳のように記してあるノートが置かれている。
拓人は、今まで持っていた学友の物を右手に持ち替えると、棚に並べ始め、それが終わると机に座りノートを書き始めた。
ここで、この状況についてもう少し詳しく書いておこう。
彼、桑野 拓人は、玄関からこの行動をするまで、表情が変わっていない。
真顔なわけではない、そんな普通の人が表す表情ではない。
これはもはや、表情がないと言った方が正しいだろう。
表情筋は張り付いたようにピクリともせず、目は、何にも興味を示さない、諦観に満ちた色をしていた。
そして、もう気づいているだろう。
ここに飾られている全てのものは全て学友の物であり、ノートの内容は、その学友や学友の物についての余りに詳細な情報である。
とある事情で人を信じ難くなった彼は、学校の、ひいては地域の人々の裏表しかない関係しか構築出来ないこの世界に嫌気がさし、人と接する事を作業としたのである。
そんな作業を終えた彼は、部屋を出て、趣味であるアニメ鑑賞を始めた。
そして、この時に初めて、拓人は人間らしい表情を取り戻す。
人の打算などに辟易している彼にとって、ヒロイン達の掛け値のない好意は、とても羨ましく、欲して止まない物なのだろう。
そんな、歪んでしまった少年はこの日、唐突に世界から存在を消した。
拓人の部屋は1LDKで扉を隔てて自分の部屋があるだけである。
家具の選択もセンスがよく、黒を基調として揃えられたコーディネートは、まるで家具屋のモデルルームのようだ。
拓人は、スタスタと迷いない足取りで全ての部屋を素通りし、自分の部屋へ続く扉とは反対の壁の前で立ち止まった。
そして、よく見ないとわからないような、壁の小さな隙間に指を差し込みーー
壁紙の一部を、引き剥がした。
そこから現れたのは、この家のシックなイメージからはかけ離れた、両開きの扉を閉ざす無骨な南京錠である。
拓人は、南京錠を外すと、隠された部屋の中に入る。
そこは、管理するための場所、という言葉が適切であろう部屋だった。
棚には色々な物が飾られており、一目でどれがどれだか分かるように何らかの規則性を持って並べられ、本棚には夥しい量のノート、ただ一つだけある机には、何かについて記録帳のように記してあるノートが置かれている。
拓人は、今まで持っていた学友の物を右手に持ち替えると、棚に並べ始め、それが終わると机に座りノートを書き始めた。
ここで、この状況についてもう少し詳しく書いておこう。
彼、桑野 拓人は、玄関からこの行動をするまで、表情が変わっていない。
真顔なわけではない、そんな普通の人が表す表情ではない。
これはもはや、表情がないと言った方が正しいだろう。
表情筋は張り付いたようにピクリともせず、目は、何にも興味を示さない、諦観に満ちた色をしていた。
そして、もう気づいているだろう。
ここに飾られている全てのものは全て学友の物であり、ノートの内容は、その学友や学友の物についての余りに詳細な情報である。
とある事情で人を信じ難くなった彼は、学校の、ひいては地域の人々の裏表しかない関係しか構築出来ないこの世界に嫌気がさし、人と接する事を作業としたのである。
そんな作業を終えた彼は、部屋を出て、趣味であるアニメ鑑賞を始めた。
そして、この時に初めて、拓人は人間らしい表情を取り戻す。
人の打算などに辟易している彼にとって、ヒロイン達の掛け値のない好意は、とても羨ましく、欲して止まない物なのだろう。
そんな、歪んでしまった少年はこの日、唐突に世界から存在を消した。
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