異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

プロローグ

「いつつつ…………」

ガンガンとする頭を抑え、起き上がった拓人は、辺りを見回した。

上も、下も、左右何処までも続く白、白、白。

こんな所にいれば次第に狂ってゆくだろう。

それ程までに何もない空間であった。

「ごめんなさい、本っ当にごめんなさい!」

「私からも謝らせてもらうわね、悪かったわ」

「え、え?な、何ですか急にーー」

頭を床に擦り付けんばかりに土下座する銀髪と、やっちゃったー、とばかりに頭を掻き、軽い感じで謝る赤髪の、絶世の美女達以外は、何も。


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「拓人くん、拓人くん! この間貸した本、どうだった?」
 
「ああ、うん、おもしろかったよ。特に…………ほら、ここのシーンが好きかな」

「どれどれ? ああ、ここのシーンかあ、いいよねえ、ここ、実は私も好きなんだあ」

「ここの主人公がーーー」

「うんうん、そうだよね! 私もここのーー」

朝のHR前という早い時間からだだ甘な空気を出しながら会話をしているのは、桑野 拓人 (高校二年)である。

ぼっちどころかある程度の位置にいる人たちにすらこんな空気をだしていれば敬遠されるだろう。

それも、朝ののんびりした教室でこんな桃色な雰囲気を出すとは、もの凄い胆力である。

しかも、胆力だけではない、彼は、成績優秀、運動神経抜群、家事もできて人当たりもルックスも良くーー

「おはよう、ごめんね? 昨日は一緒にゲームできなくて」

「よう、おはようさん、気にすんなって、忙しかったんだろ?」

「そうよ、拓人くんは太一と違って忙しいんだからしかたないわよ」

「香織、俺とちがってってどういう意味だよ? しかもなんで俺だけ」

「そのままの意味だけど?拓人くんはあんたみたいに暇人じゃないし、あんただけあげたのは、ログインの都合あわせるときいつでもOKだすからよ」

「はっ、いってくれるじゃねぇか、香織だって、拓人が来るときは一も二もなく参加するくせによ!」

「は、はあ!?そ、そんなわけないじゃない!だいたいあんたは昔からーー」

「や、やめようよ、喧嘩はだめだよ」

「ははは、ほっといていいだろ、いつものことだし」

「で、でもーー」

「ま、まあ、今日はできると思うから、いつもの場所でいいかな?」

「「「「いい(わ)よ」」」」

ーーと、紹介している間に、四人組のグループ(女子は全員拓人を見る目に熱がこもっている)にまざってはなしているなど、コミュ力も高い。
まあ、まとめると、

まごうことなき人類の敵リア充である。

というか、もはやリアルにはいないレベルの人物像だ。

主人公だと言った方がわかりやすいだろう、しかも少女漫画とかそういう類のだ。

まあ、とはいっても、彼には隠していることがあるのだが。

オタクだとかそういうのもあるが、まだそれ以上のことを隠している。

それこそ、ここまで甘々な雰囲気を出せるほどの人であったとしても、学校の人たちに知られたら今までの好印象が全てひっくりかえるような物が。

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コメント

  • SIno

    めっちゃおもしろかったです!!これからも頑張ってください!!

    3
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