十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

十五話 未来も

俺の不手際で防具の購入が滞ってしまったものの、5万円あれば何とかなるだろうという俺の考えの元、今は商業区に向かっている。
やはり自分の失態を受け入れて、残ったお金で何とかしようとする姿勢が何より大切だ(棒)

しかし、それによってヒナタの“小言”が収まることはなく、むしろ時間が経つごとに増えていくような気さえする。

早く、この話題から離れたい俺であったが、いかんせん防具を買いに来て防具の話題を避けるというのはあまりにも無理難題すぎた。

今はヒナタの小言にダラダラと返答してるのだが、どうやら分が悪いのは俺の方らしい(明白)

仕方が無いのでおざなりに返事をするものの、どうやらその対応がお気に召さないようで。

とはいえ俺があの剣を買うことについてはアイコンタクトで了承を得ているはずなのだが、何故文句を言うのだろうか。

「大体ソラノくんは何でもかんでも適当すぎるんです。家事も、討伐依頼も、買い物も!全部何となくでやってしまうから、こういったミスが起きてしまうわけなんですよ。もっとよく考えて、そしてしっかり計算した上で何事も取り組まない事には、ミス防止には繋がらないと思います!さっきは渋々了承したものの、今考えてみると無謀な買い物でした。今日は装備だけでなく、日用品もある程度買い揃える予定だったんですが、ちょっと無理そうですね・・・あ、でも明日受ける依頼を減らして時間を作れば何とかいける・・・」

「おっと、見えてきた、あれが商業区の入口じゃないか?」

「ちょっと!聞いてました!?今の話!」

もちろん。何一つ聞いてなかったが、何か?

それはともかく、ここが商業区か。事前のイメージは“商店街”的な店並びだったのだが、思いの外、きちっとした店が多いというか、綺麗な店が多い。それに、左右に様々な店が奥の方まで並んでいるのは商店街的な特徴だが、今俺達が歩いている道の幅がとても広い。
都会の中華街みたいな感じかな。都会の中華街に行ったことないけど。

さて、俺はここで防具を買うわけなんだが、やはり男なら金属鎧で勝負だ!・・・という考え方はあまりなく、どちらかと言えば、戦闘において重要なのは防御力よりも敏捷性だと思っている。そのため、重金属製の重たい鎧を身に付けるのに抵抗があるのだ。

すると、タイミング良くヒナタが俺に話しかけてきた。

「ソラノくん。どんな装備を買うつもりですか?正直50000円だと、あまり質の良くない鎧を頭から足まで買ってギリギリ足りるか足りないか、くらいですよ。」

「防具って言っても、ゴリゴリの重量騎士にはなりたくないからなぁ。正直軽装でいいというか、丈夫な革製のコートでも羽織ってればいいかな、と。だから、頭装備やら腰装備やらは特に買わない。物理耐性と魔法耐性に優れたいい感じのコートと、あとは軽さ重視のブーツを買って終わりだな。」

「そこは流石にソラノくんの自由だと思いますけど、そんなに都合よく耐久性の高い革製のコートなんて手に入ります?正直なところ、あの工業区にも革製品を扱ってる工房は少ないですし。腕の良い職人がいるという話も聞いたことがありませんね。だからこの商業区でも質のいいものは見つからない可能性がありますね。」

コート含む革製の防具って、あまり普及してないんだな。てことはほかのEXは防御力重視ってことか。
確かに、協会に来る奴らはガッチリ鎧で固めてたような気もするが・・・。

ちなみに余談なのだが、日本の街並みの中に、鎧を来て歩くEXを度々見かける光景というのは、いつまで経っても慣れない。だっておかしいだろ?EX協会に来るEX達って、元の世界で言ったら、銀行に重鎧着込んで来る謎の人物って事だぞ?ここの人達は慣れているかもしれないが、俺は無理だ。

あー、そういう理由もあって、俺は鎧を着るのを嫌がっているのかもしれない。

話を戻そう。
確か、ヒナタが革製の防具の質を指摘したんだったな。

「あー、じゃあもういっそ防具はいいかな。防具っぽく見える服でも買えばそれらしい感はでるだろ。」

どちらにしても軽さ重視は変わらない。コートが無ければ防具無しでいいだろ。

「防御力紙ですよ!EXに慣れてきたとはいえ、まだ駆け出しなんですから、油断禁物です!」

紙防御は確かに危険だが、重装備だとこれはこれでデメリットがある。
要するに、重いのだ。間違いなく動きは遅くなる。ゲームならば、より高い防御力を求めてゴリゴリに身を固めるのだろうが、どうやら現実は違うようで。

とはいえ、ステータス(最近全く見てないが)何てものがあるんだから、装備だの何だの、上手いこと重さ制限を解いてくれたって良いじゃないかとも思う。
ステータスと筋肉は別物って事かな。重い装備を持ちたければ筋トレをしろって事か。

何にしても、魔物はこちらの動きに合わせてくれないし、いかに豪勢な鎧だとしても完全はありえない。攻撃を受ければいずれは壊れるのだ。
結局のところ、戦闘において攻撃を受ける回数を減らす事が生き延びるための道であり、中途半端に鎧を身につけて満足に動けぬまま、強力な魔物に為す術もなく蹂躙されて朽ち果てるよりは、身軽な装備で回避に徹し、ヒットアンドアウェイ形式で確実な勝利をもぎ取っていきたい。

「油断禁物とは言っても、現状、ほとんどの攻撃を避けれているのも事実だろ。大丈夫じゃね。」

戦闘開始何分間かは、相手の動きをよく観察して行動パターンを把握する。そうすれば、回避することはそう難しくない。某狩りゲーと同じだ。フ○ーム回避!

「まだ言いますか!・・・はぁ、もう勝手にしてください。私がこまめにサポートすればいいんですよね、はい、分かってますよー(遠い目)」

「それはそれで申し訳ないから、なるべくヒナタのサポートすら要らないようにするよ」

実際のところ、白魔法あるからホントに要らなかったりするけど、これだけは言わないようにしてる。
だってこれ言っちゃうとヒナタさん泣くよな、絶対。
だから白魔法使いにくいって言うのもあるんだよな。

「サポート無し・・・って!それはそれで私の存在意義が!」

やべぇ、本人も薄々感ずいているか?

これ以上踏み込むのは新たな傷を生みそうな気がしたので、とりあえずはそこら辺の店のカッコイイコートでも買う方向で固まった。俺の中で。

「ヒナタ、とりあえず、あそこの店に行こう。“ユグドラシル”製品専門店の、“ナイスレザー”・・・そのまんまだな。本当にいい革を使っていればいいんだが。」

「・・・はーい。いい革かどうかは別にして、悪くは無いんじゃないですか?ていうか、やっぱり革製のコートにするんですね。さっきは服がどうとか言ってたのに。」

「服は流石に無いだろ。防御紙だし。」

「はぁっ!?ついさっき自分で言ってたことを思いだせぇ!」

「お前、口調荒くなってるぞ。ヒナタ氏、キャラブレブレな件。」

「ソラノくんに言われたくないです!ソラノくんのキャラは冗談抜きでブレブレ・・・いやむしろ多重人格レベルです!せめて口調くらい統一してください!」

「いーんだよ俺は。」

俺のキャラブレについては自覚がありすぎるが、今更気にするまでもないだろ。ラノベじゃないんだから、「だ、誰が話してるのか分からない!?」なんて事にはならないだろうし。

ヒナタは未だに「何て理不尽な!」とか言ってるが、もう気にしない。

足早に店内を巡り、目的のコートを買わなければいけないな。
幸いにも、このナイスレザーという店にコートの類はあまり無かった。そのため、選ぶ時間をあまり取られること無く購入まで進んだ。
俺が買ったのは、宣言通り濃い青を基調としたコートと、軽くて丈夫が売り文句のブーツだ。

ちなみにこのブーツに関しては“ナイスレザー”ではなく、普通の靴屋で購入したものだ。その靴屋には、EXコーナーというものがあり、一般の方が履くものとは別に、EX活動において必要な要素(耐久性重視だったり、軽量化製品であったり、特殊効果付きだったりと、色々。)が多分に含まれた装備品としても靴を多く取り扱っていた。

コートは本来の防御力とは別に、特殊効果として物理攻撃に少しだけ耐性があるようだ。
また、ブーツも敏捷性に多少の恩恵をもたらすようで・・・

五万円でどうしようかと悩んでいたが、結果的にはしっかり足りたし、この店(ナイスレザーの方)の店員さんが可愛い事を知ったので、むしろ得した気さえする。

・・・いつかもう一回来ようかな。
若干邪な感情が混じったが、まあいいだろう。

しかし、ギロりと音がしそうなほどヒナタに睨まれたあたりで、この店に来るのをやめたくなった。

何でこんな事に感ずくのか・・・。エスパーかよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

小鳥のさえずりが心地よく響く、いい朝だった。
窓から差し込む光は程よく暖かく、風に揺れる木の葉に反射して、キラキラと外の世界を彩っている。

何だかいい日になりそうな予感。なんの脈絡も無く、そんなことを考えてしまうほどには気持ちのいい朝だった。

最早使い慣れたベッドの上で身を起こすと、ぐーーっと伸びをする。頬を二三回叩くと、視界が徐々にひらけてきた。

見渡す限り、真新しいものは無い。見慣れたタンスに見慣れた絨毯、見慣れた照明。

今日も一日がんばるぞい!という確かな意気込みを持って、昨日買ったばかりの群青のコートを羽織る。
茶色いブーツは昨日の店とは違う、普通の靴屋で買ったものだが、さすがは靴専門店と言ったところか、縫合がしっかりしていて、丈夫であることが分かる。更に、できる限り軽いものを厳選したため、動きに支障が出ることは無い。

さて、準備完了だ。

新たな相棒・・・確かに名は、“フェイント・ソード”だったか。“仄かな剣”という意味らしい。

今後の愛剣を腰に帯剣し、いよいよ、準備万端と言ったところか。

「ヒナター?おっけーか?」

俺の喉から放たれた声は思いの外掠れており、果たしてヒナタに聞こえたかどうか。

しかしそんな心配は杞憂に終わったようで。

「準備できましたー。行きましょうか。」

よし。と、再び気持ちを入れ直し、いつも通りEX協会で依頼を受けるのだ。

今までずっとそうしてきたように。そしてこれからもそうであるはずだという、微かな希望を胸に抱いて。

・・・何もかも順調に行くわけがないと、分かっていたはずなのに。

「十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    青葉ネタ入ってるから許される

    0
  • たろゆ

    すみません、この話すごく短いですが、ご了承ください

    1
コメントを書く