十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

八話 才能の発現

「ソ、ソラノ君、そんなくだらないことを叫ぶよりももっと別の感情は無かったんですか」

「いや、だってな、まさかな」

まさか黒魔法の行使に成功するとは。

俺はゆっくりと破壊した岩壁に近づく。岩壁は、完膚無きまでに抉れ、その破片は砕け散っていた。恐るべき威力だ。

「ディストラクション」

・・・・・・

だが、やはり連発はできない。
魔素を制御する技能が駆け出しレベルなのだろう。威力の調節や、魔素への干渉レベル、一度に操れる魔素の量もまだまだだ。無駄が多くて、使用した魔素の量の割に威力は低い。これではまだ魔法系EXとしてやっていくのは難しい。

しかし、少し慣れれば必殺としての威力は申し分のないこの黒魔法。俺の切り札としてならどれだけでも使い用がある。

やはり、黒魔法と言えど、魔法適性が無いよりは遥かにマシであることを実感した。

「ところで、ヒナタ?この岩壁とかってまさか直さなくてもいいよな?」

「もちろんです。この洞窟は自然物ですし、直す直さないを論じるほど貴重な場所ではないので。あ、でも直したいのなら勝手に直せばいいと思います。」

それは良かった。駆け出し用の洞窟だから、国で管理しているとか、王の所有物だとかだったら流石にマズイ。
もちろん直すつもりな全くない。

もちろん、当人達も魔物が出る洞窟の壁が少し抉れたくらいで怒ることは無いであろう事は予想していたが。

「もし直すってなったら、どう直すんだ?」

率直な疑問をぶつける。

「そうですね、この岩壁なら石工を呼んで、砕けた破片から直すのでしょうね。あとは、リカバリーするかですけど、白の使い手は少ないのでこちらの方法はあまり取られていません。」

「リカバリー?白魔法は人間を癒すだけじゃないのか?」

「はい、白魔法の本質は傷を癒す力ではなく時を戻す力です。その効果は生物以外にも適用するんですよ。」

「めっちゃ便利じゃん」

「はい。ただ、連発は出来ないので、大規模な災害時などにはあまり使えませんが。」

「・・・なるほど」

やっぱモノクロは使い勝手が悪い。俺の黒魔法もどう使っていけばいいやら。

「ソラノ君、ところで白魔法は試さないんですか?」

「はぁ?モノクロの2色持ちとかありえるの?」

「聞いたことは無いですけど、ダメもとでもやってみないのかなーなんて。」

「まぁ、確かにスッキリしないよな。」

はぁ、とため息を一つついて、先ほど破壊した岩壁へと手の平を向ける。

リカバリー、ね。リカバリー。
これで岩壁が直ったら何か笑えるな。さっきまで直すつもりないとか言ってたのに自分で直してやがる!みたいな。

いや別に笑えないか。
さて、ここで俺は赤青緑白が使えない純黒魔使いだと証明されるのだろう。

黒魔法の使い道について思い馳せながら、サッと一言。

「リカバリー」

・・・・・・

「よし。じゃ、明日からは黒魔法の練習だな。あー、何とか使い道を見つけないと・・・」

俺はそう言って後ろを振り向くと、様子のおかしい人物が一人。

「・・・ぁ、あぁ」

何とヒナタが口元を手で覆いながら岩壁を指さしている。表情からは驚愕しか読み取れないほど、大きく目を見開いて。

異常を感じた俺はバッと勢いよく後ろを振り向く。ゴブリンなどの敵の奇襲の可能性も十分あったからだ。

しかし、振り向いた先にはゴブリンなどはいなかった。その代わりに、更なる驚愕が広がる。

なんと砕かれたはずの岩片がひとりでに浮き上がり、えぐれた岩壁にパズルのようにはめ込まれていくのだ。

まるで破壊される前に戻るように、

時間が遡っているかのように。

ゴクッ・・・
唾を飲み込んだのは俺か、ヒナタか。
はたまた両方か。

「嘘でしょう?黒と白の2色持ちなんて・・・」

前代未聞なのだろう。
極めれば激しい威力を持つ黒魔法に、圧倒的なまでの回復力を持つ白魔法。

それぞれが独立しているままだと大きな欠点を残し、使い勝手が悪い魔法に過ぎない。

しかし!

この2色持ちともなれば、威力の高い魔法を精神力次第でどれだけでも行使できる。歴史に名を残すような大魔術師になっているはずだ。

しかし、ヒナタは前例がない、いや、前例がなかったという。

「ソラノ君。あなたは・・・」

俺が何かなんて、俺でも分からない。つい最近まで普通に学生してただけだ。
朝起きて、学校に行って、家に帰れば部屋にこもって趣味に没頭。部活は既に引退しているので特にやることもなかった。消灯は大体11時。

おおよそ一般的な高校生の平均をとったようなスペックのはずだ。

まさかこれが、異世界チートとかいうやつか?俺にも与えられていたのか?PC奥の奴等は何も言ってなかったが。

ま、まあ納得しよう。あぁ、納得しようとも。きっとチート的な何かなのだろう。

だが腑に落ちないな。・・・なぜ、なぜに魔法なんだ!どうせなら究極剣術的な近接戦闘向けのチートが欲しかった!

「それで、ソラノ君。どうするんですか?」

唐突に俺の意見を聞いてくる。言外に私には手に余る事例だと伝えているのだろうか。

だが心配はいらない。今後の方針はさっきパパッと決めた。

「とりあえず、俺は珍しい黒魔法の使い手とだけ名乗っておく。白魔法のことは可能な限り隠蔽し、周りに知られないようにする。」

「隠すんですか!?その力を。大魔術師にさえなれるかもしれないのに。」

相当驚いた様子のヒナタだったが、この隠すという判断は俺にとっては至極当たり前の事だった。

「当たり前だ。黒白セットで持ってるやつなんて歴史上でも聞いたことないんだろ?んなもん、バラした瞬間世間の注目は俺に向けられるわけだ。するとどうなるか。変な研究者やら、EX協会のお偉いさんやら、はては理不尽な因縁をつけてくるベテランEXやらが群がってくる可能性がある。そうなるともう自由に動けなくなるだろ?他人に行動を制限されたり、身に覚えのない理不尽をぶつけられるのが嫌なんだよ。」

「確かにそれは嫌かもです・・・けど、ソラノ君って目立ちたがり屋じゃないんですか?」

「俺のどこに目立ちたがり屋の要素が!?」

「パーゴであんな事をしておきながらよく言えたものですね」

呆れ顔でそういう彼女に、確かにそう思われてしまっても仕方ないのかもしれないと、納得してしまった。

「あれはな、なんというか、勢いに任せてなってしまっただけだ。熱くなって周りなんて見えてなかったし、うん。」

ジィッッーーーーーー

久々のジト目ありがとうございます(泣)

「まぁ、隠す理由は理解しました。私も協力しましょう。えぇ。ではこれからは二色持ちであることを隠しつつ、魔法系EXとしてこっそり活動していくってことですね。」

「いや?全然違うけど。」

「はい??」

ヒナタの頭に疑問符が2、3個現れたのが見えた。

「俺は結果的に二色持ちだったが、魔法系EXになるつもりは毛頭ない。よって黒魔法と白魔法の練習はしばらくしない。」

「はい!??それだけのものを持ちながら魔法系EXに興味が無いと!そういうんですか!同じ魔法系EXとして憤りを覚えますよ!」

プンスカと顔を真っ赤にして(あ、頭からなんか白い気体出てきた)俺に抗議してくるが、知ったこっちゃない。

「俺は元来剣で戦うのが好きなんだ。」

どんなゲームでも職業は剣士だったしな。チート的な能力をくれるならホントに究極剣術とかが良かった。
・・・もちろん魔法も覚えたかったんですけども。

「ソラノ君、昨日まで戦闘すらしたこと無かったのに、元来って何ですか元来って。」

君は俺の歴史(ゲームの)を知らないからね!知る由もないが。

「とにかく、俺は剣士としてやっていく。名前はソラノ 性別男 職業剣士で使用魔法は黒一色。これからよろしく!」

「ソラノ君がまた訳の分からないことを言い出しました・・・」

ガックリと項垂れる彼女。この程度のテンションはいつもの事だ。ちなみにセリフの勢いの割に俺の表情に動きはない事をぜひ覚えていてほしい。

「さぁ、そういう事で、今日は帰ろう。明日は剣術の練習だ。」

「うぅ、何だか腑に落ちませんがまぁいいでしょう。あ、でも剣術となると私に教えられることはだいぶ少ないのですが・・・」

「あー魔法系EXだからな、それは仕方ないか。・・・じゃあ剣術はとりあえず我流で行くわ。時期が来たら然るべき人間に教えを乞う事にする。」

「我流剣術ですか・・・。まぁ、しばらくは危険な魔物と戦うことはそう無いでしょうから、それでもいいんじゃないですか?」

「あぁ、とりあえずは帰ろう」

そうして俺達は帰路についた。
本当に、今日は濃い一日だった。モノクロ魔法の連続行使かー。・・・なかなかカッコイイな。

どうしよ、黒白の剣帝こくはくのけんていとかいうあだ名つけられちゃったら。

あ、黒白はともかく剣帝の要素ゼロだったわ。

「早く帰りましょう。」

「はいよ」

自宅までの道のりはやけに長く感じた。

そして家に着いてから気づく。

「やっべ!ゴブリン倒してねえわ!」

その時のヒナタの呆れ顔を見て俺は思った。

・・・お前も同罪だからな?と。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

周囲は黒一色で塗り固められている。そこには生物の気配などはなく、ただただ淡い存在が三つ。かろうじて感じられるだけだ。

『彼の様子はどうだ。』

『上々です。次々に力を手に入れています。既にこの世界において唯一無二の存在と言っても過言ではない程の成長スピード、そして才覚です。』

『そうか。それは良かった。しかし、あの男に関しては“世界の創造主”だ。誰よりもはやく誰よりも強い存在になるだろう。先が楽しみだ。』

楽しみだ。その言葉が真実なのか否か。抑揚もなく、感情も込められない機械的な声からは判断しかねる。
その機会音声のまま言葉を続けた。

『残りの11人の動向は掴めているか。』

『掴んだ、全員、“世界の創造主”、順調。一堂に会するのも時間の問題。』

『そうか。我らを除く33柱十一世界は特に動きはない。我々3人と同じように事態の動向を観察している。』

最後に・・・と、続ける。

『我々“アウト”に不可能は無い。36柱十二世界とも力量に差はない。が、今回勝つのは我々だ。対象の性能が少しばかり高いようだからな。』

『はい。彼の成長速度には期待が膨らみます。惜しむらくは、彼らに直接干渉する事が出来ない事ですが。』

『仕方ない、彼、強い、心配ない。』

『他の十一世界の中には愚図な輩もいるようだ。実に哀れだ。放っておいてもその“差”は広がっていくだけだろう。せいぜい醜くあがけばいいのだ。』

『まったくです。』

『同意』

同志から流れるように同意を貰った彼は、その対応に満足したのか、

『ではこれにて解散とする。』

そういって小さな会合をお開きにした。

自らを“アウト”と名乗る3つの淡い存在達は観察対象の成長を願い、この空間から消えたのであった。

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コメント

  • たろゆ

    コメントありがとうございます!
    素人小説家ではありますが、これ程ありがたいお言葉もそう滅多にはないと感動しております。この未熟な腕で期待に応えられるかどうかは分かりませんが、自分にとって最高の物語を常に書き続けて行きますので、よろしくお願い致します。

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  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    投稿主さん失踪しないってわかってたら僕はいつまでも待ってますんでリアルのことも頑張って下さい。この作品は続きが気になるし面白いので例え9月中旬過ぎても待ってますよ。

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  • たろゆ

    コメントありがとうございます!
    今回の更新、少し遅れてしまいましたね。もしかすると、9月の中頃まで更新ストップするかもしれないです。(超絶忙しいのです( ´・ω・` )逆に、そこを過ぎれば安定して時間が取れるので、今後ともよろしくお願い致します。

    0
  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    ちょい久しぶりにきて嬉しかったです。
    あえて全属性じゃなく特殊な属性二つにするところが面白いなと思いました。次話も楽しみです。

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