十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

七話 初めての魔法

「なぁ、ヒナタ。昨日のオムライス、すっげぇ美味かった。」

「・・・・・・」

「あぁ、あと今日の服装よく似合ってるぞ。黄緑のドレスにピンクのリボンがいい感じだ。」

「・・・・・・」

「あ、あとな、別にお前の胸を馬鹿にしてるわけではなくて貧乳も立派なステータスとしてだな・・・」

「うーーーー!!!ぅぅううううるさいです!もういいんです!触れてほしくないんです!何で無視してたか分かってやってますよね!?ヒドイ!」

「いや、だってほら、いつまでもこんな感じじゃ進展がないというか、俺は早く魔法の練習がしたいというか」

「何の進展ですか?私とあなたと関係の進展ですか?その可能性は低いとここで断言します!」

「・・・そこまで言う?」

「ソラノ君の魔法の練習なんて知ったこっちゃないんです。こちらはこちらでやる事が沢山あるんですー。」

クソォ、唇を尖らせやがって。可愛いじゃねーか。

「分かったよ。俺一人でやるよ。留守番は頼んだ。お前は自ら独りぼっちになる道を選んだんだ。あぁ、今日の依頼で俺がもし死んだらどうなっちゃうのかなー(棒)」

そう言って足早に去ろうとすると、

「ま、待って!」

ニヤリ

「や、やっぱり私も行きます。冷静に考えればソラノ君一人で魔法の練習なんて無謀すぎますよね!ええ!」

分かってきた。分かってきたぞ!コイツの扱い方が。何だ、案外チョロイな。この寂しがり屋め。
というか、俺なんかで寂しさが紛れるのだろうか?・・・いや!自虐はよそう。行き着く先は地獄だ。

「そうか、ありがとう。今日もよろしく頼むよ。」

「べ、別にソラノ君のためだけって訳じゃ無いんですからね。」

こ、コイツ、完全にキャラが変わって・・・

ーーーーーーーーーーーーーーー

今日は昨日と同じく簡単な依頼を受けて、魔法の基礎を体験しようという明確な目的がある。
魔法と言っても、まだ使えるかどうかも分からないが。

協会にてゴブリン五体の討伐依頼を受けた俺達は、ホーンドッグが現れた森の奥深くにある洞窟にいた。

ここにはゴブリンとラージマウスなどの魔物が度々出現するらしいのだが、今回のゴブリンは近くの村の畑を夜な夜な荒らす相当な厄介者らしい。

それでもまだ、家に侵入して命を狙われていないだけマシだが。

そして、ゴブリンと言えば雑魚モンスター代表である。という固定観念を地球人なら誰でも持っているだろうが、現実は違った。

ゴブリンという種族は常に五、六体のグループで動き、近接戦闘に長けているらしい。小柄な体躯からは想像出来ないようなパワーで攻撃してくるため、駆け出しのEXのボロ装備では逆に返り討ちにあう、などという状況も起こり得る。この依頼を受けた時、受付の男性は言っていた。
「ゴブリンによって命を落としたEXは決して少なくないです。もし生き残れたとしても、身包みは全て奪われる事でしょう。残ったのはその身一つ・・・と言いたいところですが、男性ならばゴブリン達の食りょ・・・いえ、これ以上は止めておきましょう。そしてもし女性であればその身体は卑しいゴブリンによって・・・いえ、これ以上は止めておきましょう」

そういって首を横に振ったのだった。

こえぇ!ゴブリンマジでこえぇよ!特に最後の何、これ以上は止めておきましょうとか、もう言っちゃってるようなもんだぞ。

チラリとヒナタが隠れている柱の方向を振り向くと、?マークを頭に浮かべて、早く依頼を受けるようにジェスチャーしてきた。

・・・気楽なもんだな。確か、ゴブリン討伐を提案してきたのはヒナタだよな。

・・・・・・

ま、まさか!?持て余した欲望を解放するためにあえてゴブリンの巣へ・・・!?
それはいかんですよ!趣味が悪いとかそういう問題じゃない。
いや待てよ、最近のヒナタって夜中にトイレにこもって何かやってるよな。
・・・あぁ、大丈夫だ。きっと解放してる。

では何故にゴブリンなのか?話しはふりだしに戻った。

これは後で聞いたことなのだが、受付の男性は少しだけ大げさに言ってからかっていただけのようで、

「あなたなら大丈夫ですよ。確かにゴブリンは人間以上の膂力を持っていますが、動きがとても遅い。それに頭も悪い。ホーンドッグと大差ないです。」

だとさ。
妙にびっくりさせてくれるな、受付男。あんたと知り合ってまだ二日目なんだが・・・。

さて、このゴブリンの特徴だが、よくよく考えてみれば、魔法の練習にはうってつけだ。

動きが遅いとうことは、遠距離からの攻撃に弱いという事だ。よっぽど間合いを詰められることはないだろう。

となると、魔法をしっかりと狙って撃つことが出来るわけだ。

駆け出しEXが魔法を覚えるために存在しているような魔物。その名もゴブリン。
先程はその恐るべき習性に恐怖を覚えたが、その実態を知ると、何だか不憫だな、ゴブリン。
だが所詮は魔物、慈悲はない。

薄暗い洞窟の中は、湿度が高く、既に汗が滲んできている。

手始めに・・・と、俺はヒナタに一つ目の呪文の手本を見せてもらうことにした。

「そういうわけで、とりあえず手始めに赤魔法の簡単なヤツをお願いします。」

「わかりました。それではファイアからやって行きましょう。まずはどの魔法色が適しているのか判断しなければ行けないですからね。」

魔法というのは、この世界に満ちている魔素に干渉し利用することをさす。
魔素というのは、理論上“どんな物質にも変化しうる特異物質”と定義されているらしいが、それだけ聞いても何の事かわからないし、誰が唱えた理論なのかも分からない。

良くわかってないのにとりあえず魔法使ってるこの世界の人間に謎の敬意を払いたい。まぁ、人間なんてそんなもんだよな。生きる意味すらよく分からないのだから。

そして、先ほど俺が口にした赤魔法というのは、基本となる3色魔法の一つだ。

赤魔法、青魔法、緑魔法、大抵の人間はどれか一つは使える。才能がある人間ならば、二つ以上の適性を持つこともあるらしい。稀に三色魔法に適性のない人間も現れるらしいが、だからと言って魔法が使えないのだと諦めるのはまだ早い。

魔法には基本となる三色魔法の他、希少性の高いモノクロ魔法が存在する。その名の通り、白魔法と黒魔法だ。

しかし、この二つのどちらか適性を持って生まれてくる人間は100人に1人な上、希少性が高いからといって汎用性もあるのかと言われればそうでもないらしい。

曰く、三色魔法は、攻撃にも防御にも、回避にも、更にはバフ、デバフに使える支援魔法がバランスよく存在している。(赤魔法は攻撃多め、青魔法は防御回復多め、緑魔法は支援多めなどといった多少の差はある。)

しかし、モノクロ魔法に関してはその性質が大きく変わる。

曰く、黒魔法は攻撃用の魔法しか存在しない。威力の高い魔法は俗に破壊魔法などと畏怖される事がある。ただし、黒魔法の行使には、非常に多くの魔素を必要とするため、連発はできない。

曰く、白魔法には防御回復魔法しか存在せず、効果の大きい白回復魔法を神魔法などと崇める組織もある。黒魔法と同様の理由で連発は難しい。

ということなのだ。

次々と戦況が変わる魔物との交戦の中で、防御も回避も身体能力任せになる黒魔法は威力がいくら強くてもそのデメリットが命取りだ。

白魔法も、どれだけ自分を守り続けても、攻撃手段が自前の武器だけでは、勝てない敵が必ず出てくるだろう。

こういったデメリットを解消するために、モノクロ魔法の使い手はほぼ必ずチームを組んで戦うらしいが、チーム員に歓迎はされない。

とまぁ、ざっとこんな感じだ。
ちなみに、空気中の魔素を使って魔法は発動するため、魔力切れで身体が動かないなんてことは無い。そもそも人間は魔力なんて持っていないし。

それと、ほぼ無限に存在する魔素だが、何故使い続けると魔法の行使に支障が出るかと言うと、魔素の性質として、別の色になりたがる性質があるらしい。

例えば、赤魔法を使う時に使用した魔素達は、次に赤魔法を使う時にはほぼ使用されない。

こうして赤魔法を連発していくと、自分の周りには赤色になりたくない魔素しか存在しなくなる。
そうなると、赤魔法をまともに行使することは出来なくなるわけだ。

ちなみに二色持ちだと二色の連続使用によってほぼ無限に魔法の行使が可能。

しかし、いくら制限がないとはいえ、魔法の行使にはかなりの精神力を要するので、永遠に使える訳では無い。
更にいえば、モノクロ魔法は必要な魔素が多いだけでなく、精神力も大量に消費する。
モノクロ魔法の威力は認めるべきだが、使い勝手の悪さも万人に認められている。

もちろん戦闘中に喪失状態メンタルブレイクされても困るので、精神力回復用の飲み薬が何種類か売りれているらしい。

こう言った理由で、一色しか使えないEXは主に近接戦闘を中心とし、二色持ち以上の限られた人間が魔法戦闘を中心とする魔法系EXになる傾向らしい。

最後に。たとえ一色しか使えなくとも魔素の扱いに長けている(使う魔素の量調節が巧み)のならば、かなりの回数連続行使が可能なのだが、魔素の干渉に関しては才能が物を言うらしいので、どれだけ頑張っても限界があるらしい。・・・世知辛い。

・・・

と、そろそろ魔法の練習を始めよう。

「さて、まずは何をすればいい?」

「そうですね、空気中の魔素を手のひらに集めるイメージを持ちながら、こう、唱えてください。」

そう言って彼女は手を突き出して

「ファイア」

そう唱えた。

・・・しかし何も起こらなかった。

「不発じゃん」

「違います!私には赤魔法に適性が無いだけです!」

「あー、そゆことね。自信満々に手を突き出すもんだから、てっきり赤魔法の使い手なのかと」

それならそれで赤魔法は使えないって言えばいいのに。

「私の適性は青と緑です。サポートが得意な魔法タイプのEXです。」

「へぇー、2色持ちだったんだな。」

「二色持ちなだけならそう珍しくもないですよ。三色となると相当希ですけどね。」

本人はそう言っているが、やはり珍しいと思う。

ただ、今はそれについて言及している場合ではない。今日は俺が魔法を使うために来たんだ。

「なるほどね。じゃあ、早速やってみますか。」

「はい。赤魔法はファイア、青魔法はアクア、緑魔法はブランチで、同じようにやってみてください。」

あれ、ヒナタさーん?お得意の青緑魔法は見せてくれないのね・・・。

ま、まぁいいさ!手順はもう分かったからね!

・・・

「よし。」

すぅーと息を吐き出し、目を瞑る。

意識を集中させ、魔素が集まる確かなイメージを持って手を突き出し、唱える!

「ファイア!」

・・・・・・

ヒュウウウォォォ・・・
洞窟内に吹き抜ける風の音がやけに目立った。

「・・・不発ですね。次はアクアで。」

随分とあっさり言って退けるヒナタだが、当人である俺は平静ではなかった。

「待って、結構恥ずかしいんですけど。」

「適性が無いのは仕方ないんです。それについて恥じることなんて何一つとしてないですよ?」

至極真面目な顔で言われたので、そういうものかと若干無理に納得させて、青魔法の行使に移る。

今しがた恥ずかしさのあまり背中にかいた汗が急速に冷えていき、この冷たさなら青魔法行ける気がする!という謎の自信が湧いてきた。

今なら!

「アクア!」

ビュウウウォォォオオオオ!!!

無理だったかッッッッ!!!

「不発ですね」

先程よりも強い風が洞窟内を支配した。青もダメとなると、残るは緑か。一番ぱっとしないが仕方が無い。大自然を操るナチュラルなEXを目指すしかないな。

と、手を突き出したところで、先程までとは違った意味合いを持つ嫌な汗が吹き出た。

(このパターンってもしかして・・・いや!まさかな!はは・・・)

フッと息を吐き、汗を拭って唱える。

「ブランチ!!」

ビュウウウウウゥゥゴオオオォォォ!!

「・・・」

突風が吹いた。ヒナタが沈黙した。嫌な汗が滝のように流れた。

バシッ!

俺は思わず駆け出しEX用の頭装備(皮の帽子)を地面に投げつけた。

「・・・そ、ソラノ君。」

やめてくれ、話しかけないでくれ!

もうダメだ!俺にはもう無理なんだ・・・

「まだです!ソラノ君。黒と白もやりましょう!まだ分からないですよ!」

「あぁ、あったねそんな希少な魔法。でも使い勝手悪いしみんなから疎まれるし無いなら無いでいいかな。あはは(棒)」

実際やばい。モノクロ魔法とか、いや無理だろ。選ばれし100分の1に俺がなれるとは思えない。
仮になったとして、使いこなせる気もしない!

しかし、やってみなければわからないというのも一理ある。

「いいからとりあえずやってみましょうよ。使えないのと使えるのでは大きく違いますし。」

とりあえず・・・ね。
偶然にもヒナタと俺の考え方は一致していた。

「・・・分かったよ。なんて唱えればいいんだ?」

そう言ってやけくそ気味に手を突き出して尋ねる。

「黒魔法はディストラクション。白魔法はリカバリーです。あ、でも下手に期待はしないほ」

あーはいはい

「ディストラクション」

ヒナタの言葉さえ遮って適当に唱えた。百人に一人いるかいないかとか流石に無理だろ。
出来たらラッキー、なんてね。

やっぱりダメだわ。才能なかったわ。残るは白魔法か〜きっと無理だろうな。バゴっという鈍い音と共に俺の手の先にある岩壁が黒い瘴気によって抉れた。はぁ〜、近接戦闘オンリーの、EX・・・・・・って、

「うぇ?」

何、バゴっという鈍い音と共に岸壁が、黒い瘴気によって、抉れた・・・!!?だと!?

「は、発動しちゃいましたぁぁ」

俺は素っ頓狂な声を上げ、ヒナタは一人で動揺している。

「え?発動したの?今ので?あんなにあっさり?初めての魔法が?」

「そう、見たいですね・・・」

そう言って苦笑するヒナタ。

「・・・う、うわぁぁぁぁぁ!!」

俺は叫び声をあげた。それはやっとの思いで魔法が発動したことに関しての歓喜ーーーではなく、

「最初の魔法適当にやっちまったぁぁぁああ!」

というやけくそ気味な詠唱に対する後悔の叫びだった。

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