十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

六話 確かめた絆

ホーンドッグの討伐を終えた俺達は、EX協会に戻り、達成報告を済ませた。

本当に倒したかどうかをどう確認するのか非常に気になっていたが、魔法を応用したいわゆる嘘発見器に向かって、

「俺達はホーンドッグの3体を無事、終えた」

と報告し、それを確認した男性職員が達成書とともに報酬を出してくれた。

報酬はおよそ3000円。

あの程度の労力で3000円だ。声掛けの練習をしていなければ、もっと早く帰れたことを考えると、一日に10000円以上稼ぐ事も十分可能だ。実にうまい仕事だと思うのだが・・・

「そうでもないんですよ?今回はホーンドッグでしたけど、家庭のある人などはより多くの報酬を求めて、より強い敵に立ち向かうんです。すると、必然的に命の危険も高まります。」

「それじゃ、ホーンドッグの依頼だけ受けていればいいじゃないか?」

それなら少ないながらも安定した収入が手に入ると思うが。

「それは出来ないんです。」

「何故だ?まさか、協会から強い魔物を倒す事を強要されたりするのか?」

「協会の依頼というのは、常にある訳では無いんです。ほとんど他のEXに受注されていて、自分が受けられる依頼がない日もありますし、ちょうどお金が欲しい時に、身の丈に合わない高難易度の依頼ばかり、なんて事もあります。」

「だからと言って、何日も依頼を受けなければ家族が苦しむ。だから高難易度であっても受注して戦はなければいけないってことか」

「そういうことになりますね・・・」

そうつぶやく彼女の顔は、少し寂しげだ。

「家族のために、命を賭して戦う、なんて言い方をすれば聞こえはいいですよね。でも、実際に命を落としてしまえば、家族により大きな負担がかかるのは明白なんです。悪循環ですよね。・・・EXなんて、そんなに美味しい仕事ではないんですよ?」

諭すように語りかけてくる彼女は、まるで見知った誰かの話をしているかのようだった。

一瞬でも楽にお金が稼げるなんて思った事に、少し、胸が痛む。

「ただ、どんな状況にも対応してこそ、真のEXです。高難易度の依頼しかないのなら、高難易度の依頼を軽くこなせるだけの強さを手に入れればいい。これは、EX間で共通の意識です。」

「つまり、ステータスを上げることで、身の安全を確保することは、EXとして活動する上で必須・・・いや、もはや義務と言ってもいいくらいか。」

「その通りです。ビディオンは知っていますよね?あれに記載されているステータスは、より強い敵と戦えば、大きく上昇します。逆に弱い敵とばかり何度も戦っていても、ステータスの成長は期待できません。」

「そういったのも、高難易度の依頼を受ける一つの理由になってるんだな。」

「はい。ソラノ君も、より強いステータス、つまり、より安全を確保して、EX活動をするようにして下さいね。」

「あぁ。でもまずはホーンドッグやらレッドウルフやらの弱い魔物と戦って、戦いの技術の基本を覚える事にするよ。まだ俺、奇襲しかしてないし。正面切って戦って打ち勝つくらいじゃないとな。」

「うん。すごく、いい判断ですよ。私もできる限りサポートするので、しっかり強くなってください。」

この時の彼女の笑顔はきっと本物だ。心の底から俺の成長を願っている。

恥ずかしながら、俺にとってはそれが何より嬉しくてたまらなかった。

「ところで、ソラノ君?ビディオンは確認しましたか?先ほどの戦闘で少しくらいは上がったと思いますけど。」

「そうだな、少し確認してみる。」

人差し指と、中指で、八の字を描くと、しばらく発現させていなかったビディオンか当然のように現れた。

「えーと、ステータス、ステータスはっと。」


LIFE  3   RANK  2  MAN

power             400   Lv.03
hardness        400   Lv.03
speed             400   Lv.03
precision        400   Lv.03
humanity          50

strength         2000   Lv.03


ほう、全部上がってるな。300ずつ。

いや、待てよ。これ結構すごくね?ホーンドッグ3体でこれだろ?ワンチャンホーンドッグオンリーでも結構強くなれるんじゃ・・・

そこまで思考が及んだところで、ふとした疑問を口にする。

「ヒナタ?一流のEXで、ステータスってどんくらいなの?」

「む、難しい質問ですね。基本的にはビディオン及びステータスの情報は黙秘するのが一般的なので、公開されるほどの実力の持ち主となるとそれこそ、国お抱えの騎士団長とかになりますが・・・」

「それでいいよ。ちょっと興味があるだけだから。」

「そうですね、大体、レベルで言うとオール25くらいですかね?え、えと、これはあくまで国内最強クラスの値であって、ソラノ君にはまだ早いというか、目標にするのは遠すぎるというか、」

「あー、分かってるわかってる。今はまだそんな段階じゃないさ。」

それにしても、25か。一体どれ位の数値なんだろうな。400で3だろ?それで、100で1、200で2か?200で2だとするならば、800で4か?うわー、この計算だと結構えぐいな・・・流石にこれは無いな。じゃあ、100ずつか?でもそれだと2500か。大したことなく見える。もちろん、凄いのだが。

イマイチステータスとレベルの関係は掴め無いが、騎士団長クラスにはとてもじゃないが辿り着けそうもないということは分かった。

「まぁ、特にこれといった目標もないし、のんびりゆっくり頑張るわ」

「確かに、この件に関してはマイペースに進めるのも一つの手ですね。」

うむ。俺は俺のペースで自由に暮らしていくんだ。

「それじゃ、そろそろ買い物に行きますか?」

「ん?買い物とは?」

「オムライスの材料を買いに行くんですよ。ソラノ君のリクエストじゃないですか。」

「あっ、あーあー、あ!あー。」

「ごめんなさい、感動詞だけで伝わると思ったのならそれは大きな間違いです。まあ、喜んでるのは顔を見ればわかるのでいいんですけどね。」

俺はどうやら相当嬉々とした表情で感動詞を並べていたらしい。

いかんな、とうとうオムライスに恋をしてしまったか。

オムライスはオレの事、どう想ってるのかな?

・・・それはそうと、俺自身買い物に行くのは初めてだな。いつもはヒナタに任せっきりだったしな。

初めての収入もあったことだし、少しばかり上がり気味のテンションでスーパーに向かう事にした。

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協会から徒歩5分、自宅から徒歩20分程の場所(適当)にある中型スーパーマーケット。

その名も“パーゴ”

中型という表現は少しばかり謙虚すぎて、むしろ嫌味に聞こえるのでは無いかと思える程、このスーパーはデカイ。

というのが、第一印象だ。

そもそもこの折刺とかいう街には、病院からこういったスーパー、それに飲食店などがバランスよく配置されている。そして都会とは違って、緑もたくさん見られる。
車がないからか、空気も美味しく、綺麗だ。

俺的にはいい塩梅の最高な街なのだが、こういった住み良い街から一度ひとたび外に出ると魔物が彷徨いているという、元の世界であれば“非現実的”な光景を見ると、違和感が半端ではない。

しかし、このパーゴのような生活感あふれる建物を見ると、直に平和を感じるし、元の世界の“いい部分”がほんのりと思い起こされて、少しだけ和む。

・・・ついつい思考することに集中しすぎるのは俺の悪い癖かな。

それはそうと、俺たちは現在パーゴ店内にいる。
店内の気温は心地のいい温度に調整されており、非常に快適だ。エアコンがあるっていうのはいいよな。

実は、この世界の魔法は戦闘向きのものしかないらしいのだが、きっとある程度科学技術が進歩していくと同時に生活用魔法は廃れて言ったのだろう。

店内は予想通り広々としており、本当に、普通に、まんまスーパーマーケットだった。
どことなく各商品の陳列場所も見覚えがあるような無いような・・・

商品の陳列棚は白を基調としたシンプルなデザインのものが多く、掃除も行き届いているのか、見える範囲にホコリ等は付着していない。指でこすってもホコリはつかなかった。

しかし、ヒナタは俺のこの行動に納得いかない部分があったようで、

「どうしたんですか、ソラノ君。まるで部下の掃除が思ったよりも完璧だったので、少しでも汚い部分を見つけようと必死に探しては指でこすってホコリを見つけようとする心が汚れた意地悪な上司みたいな事して。」

とか何とか言ってきたので、俺は言ってやった。

「そんなつもりじゃない。ただ、俺は予想以上に店内が綺麗だったから、ホントに隅々まで徹底してるのかなーと少しばかり疑問に思ったから、指でこすって確かめていただけだ。」

「ほとんど一緒じゃないですか。」

それな。

おかしいな?ホントにそんなつもり無かったんだけど。
あれか、悪意があるか、無いかって事か?でも冷静に考えたら俺も悪意がないかといえば嘘になるというかなんというか・・・不思議ですね。てへぺろ(戦慄)

「さて、気を取り直して、ソラノ君。あなたにミッションを与えましょう。」

偉そうにしよって。さっきは先制攻撃を食らったからな、次は俺から攻めさせてもらおう。

「どうした?そんなに胸を張って、ふんぞり返って。まるで大好きな年上の男性に無い胸を張って私だってもう大人ですアピールをするロリのようだ。」

「ちょっ、そんなつもりじゃないです!ていう!無い胸って!無い胸って!ちょっとくらいはありますぅ!ソラノ君よりはありますぅぅ!!」

「比較対象が俺の時点でお前の負けだ!」

思った以上に動揺が激しくて概ね満足ですわ。

「ひゃぅっ、う、うぅぅぅ。」

「そんな唸り声をあげられてもな。困るのだよ、チミ。」

「うぅぅぅ!!・・・初めてあった時は大人しくて紳士な人なのかなーって思ってたのに。だから家で過ごすことを許可したのに。それなのに、一緒に過ごす時間が増えると共にソラノ君の本性が見えてきて・・・私だって侵されないように必死だと言うのに・・・」

「すまんな、これが俺なんだ。」

ていうか、口悪くないですかね。ヒナタさん?侵されるて。侵されるて。

しかも俺と出会ってから口が悪くなったヒナタ、既に侵されている疑惑まで浮上したぞ。

この時俺は、心中で軽口を叩いていたほど余裕だった。こんなやり取りももはや日常茶飯事。今まで幾度となく交わしてきた会話の一つに過ぎない。

しかし、次のヒナタの言葉で意外にも俺の心は猛烈に痛んだ。

「こんなことなら、ソラノ君なんて・・・」

「っっ!!?助けなきゃ良かったってか?」

自分でも過剰だと自覚がある程の反応。

“何でマジになってるんだ?ヒナタも別に本気で言ったわけじゃないだろう。”

そういって俺をたしなめるのも、俺自身だ。

彼女の真意を無性に知りたがっている自分がいた。ここまでおよそ十日間共に過ごしてきたが、その中で俺は数多く迷惑をかけていると思う。

見ず知らずの男が家で好き放題やっていたら、普通はどう思うか、いくら表面上は仲良くやっているように見えても内心はどうなのか分からない。

この過剰反応は、“恐怖”からだろうか。
俺も一人でこの世界に放り出されて不安がなかったわけじゃない。非現実的な現象の数々にどこか楽観視しているふしがあったから、それほど不安を抱えていなかっただけだ。

冷静に考えてみれば、ヒナタに出会った事は奇跡に近い。

この世界で初めて出来た友人、繋がり。

それだけは確かなものなのだと、それが否定されることは耐えられないと、それが無くなってしまうことへの恐怖が、勢いよく溢れ出てしまったのだろうか。

ヒナタは俺の本気の反応に戸惑っているようだったが、俺の言葉は止まらない。

「悪かった。まさか助けた事を後悔されるほど迷惑をかけていたなんて、自覚してなかった。本当にごめん。出てけって言うんなら、素直に従う。もとよりヒナタには命を助けてもらったばかりか、EXっていう生きる道を示してくれた最高の恩人なんだ。既に感謝してもしきれないくらい、な。幸い、戦い方の基礎も教えてくれたおかげで今後も一人でなんとかやっていけそうだ。・・・あぁ、あとオムライスの件は悪かったな。俺のリクエストなのに。最後に食べておきたい気持ちはあったけど仕方が無いか。今までごめん。今までありがとう。またいつか。」

「ちょ、ちょちょ、ま、待ってください!!!」

俺は本心からの言葉だった。ヒナタには感謝なんて安い言葉じゃ足りないくらいの恩がある。そんな人に今まで迷惑をかけ続けていたなんて考えたら、マトモに目を合わせられない。

これ以上話すと、俺の方が耐えきれなくなる。そう思い、早々に立ち去って今後のことを考えようとしたのだが・・・

だが、そんな俺にヒナタは声をかけた。驚愕と焦燥と、少しばかりの羞恥を備えた瞳で、俺を見つめてきた。

「じょ、冗談です!!」

「は?気を遣ってるんなら、ホントに要らないぞ?これ以上話すと、罪悪感に潰されそうなんだ」

「違うんです!そんなに重い意味で言ったわけではなくてですね、というか、ソラノ君がそんなに色々考えてくれてたなんて、思ってなかったというか!そんな感じなんです!」

目をぱちくりさせながら必死に手を振って引き留めようとするヒナタ。
正直何言ってるかはよくわからなかったが、何となく俺は見限った訳では無いことは察した。

先程の本心か、本心ではなかったのか。目を見ればすぐに分かった。

その時気づく。あぁ、と。勝手に独りで決めつけて、暴走して、また迷惑をかけて、一体全体俺は何やってんだろうな、と。

正気に戻ったというのが正しいだろうか。

となれば言うべきことは限られてくる。

「いいのか?俺は迷惑しかかけないようなクソ野郎だぞ?今だってヒナタと目を合わせられない。」

「そんな!迷惑ばかりだなんて、これっぽっちしか思ってないです!家でもたくさん働いてくれてるじゃないですか!失敗も多いですけど!」

あ、これっぽっちはダメなのね。しかも失敗も多いらしい。思えば目玉焼きすら上手く作れないもんな、俺。

「全然ダメだな、俺」

「あっ、いぇっ、そのっ」

俺が苦笑しながら目を伏せると、彼女は、より一層慌て始めた。が、俺にはもう伝わった。

「ありがとな。じゃあ、これからもお世話になっていいか?」

「も、もちろんですよ!私だって、一人ぼっちの生活の中でソラノ君が来てくれて少し・・・その、う、嬉しいかったなー、な、なんて」

そう言って顔を赤らめてくれる彼女は、ホントに綺麗な心をしている。と、心底思う。最初にあったのがヒナタで良かった、とも。

「ははっ」

「何ですか!何で笑うんですか!?」

分からない、俺にもわからないけど、何だか笑えてきた。

「いや、な。ホントにありがとう」

「い、いえ、どういたしまして。こちらこそ、今後ともよろしくです。」

おずおずと手を出す彼女の手を、握り返そうとして、手を止める。
聞きたいことがあったのを思い出したんだ。

「そういえばさ」

「何ですか?」

「冗談だって言うのは理解したけど、何であんな事言おうとしたの?」

瞬間、ボッと火がつくほどの勢いで顔が真っ赤に染まった。羞恥なのか、怒りなのか・・・

「ソラノ君が!ソラノ君が!私の胸が無いとか言うからじゃないですか!もう忘れたんですか!?ホントにポイしますよ!」

「あー、あったな、そんな事。」

「そ、そんな事・・・!?私の胸は、そんな事扱いですか・・・」

ヒナタは俺に手を差し出したまま頭を垂れてうなだれた。
そこで俺は彼女の手を握り返した。

この時俺達の間で、確かな絆が生まれたんじゃないかな。なんてな。

「ヒナタ」

「は、はい。」

「胸って、揉めば大きくなるらしいぞ」

そういって俺は親指で自分自身を指差す。それが意味するところは・・・

「ば、ばかっ!!」

彼女が走って卵売り場に行った事からも容易に想像できるだろう。
もちろん、そんな事、現実的には起こりえないだろうが。

「さて、俺もケチャップ買いに行こうかな」

店内の視線全てを一身に受けながら(超痛い)俺はケチャップを求めた。

後で聞いた話だが、ヒナタが言っていたミッションとかいうのは、ただ単に卵を買いに行け、というものだったらしいが、結局卵売り場には二人で向かったので、ミッションは特に意味をなさなかったとさ。



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コメント

  • たろゆ

    コメントありがとうございます。私の考えた物語を面白いと思っていただけることに感動しております。ありがとうございます。ヒナタのキャラクターデザインの作成に伴い、表紙絵も変更いたしました。これまた弱々しいイラストではありますが、どうぞご覧下さいませ。また、時間の都合により、定期的に次話投稿できないかと思いますので、どうか、気長にお待ちくださいますようお願い致します。

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  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    うん面白い。次にも期待

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