十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

三話 新世界での新生活

・・・・・・
・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

え、何これ。俺どうすればいいの?

Tシャツに短パンで防御力は皆無。初期ステータスな上、武器も無く、アイテムもなく、金もなく。そしてアテもなく。いつ何時何が起きるかわからない状況の中、草原をビクビクしながらへっぴり腰で歩いている。

俺は既にこの草原を三十分程歩いているが、少なくとも俺が辿った道から見える範囲では、未だに人影一つ見えないというのが現実だった。まるで砂漠の放浪者のように、先の見えない道を歩み続ける。オアシスを求める気持ちがほんのりと分かってきてやけに怖い。

ただ唯一救われる点があるとすれば、砂漠のように厳しい気候ではなく、程よい気候のぽかぽか陽気であるという事だろう。

季節は春なのだろうか。
時折吹く風が心地良い。風を感じた瞬間、足から力がすっかり抜けてしまい、茂みの上に寝転がる体勢になってしまった。いっそこのまま誰かが助けに来るまで眠ってしまいたい。そんな欲求に駆られつつ、空を見上げると

ドラゴンが二匹になっていた。

いやいやいやいや、寝れないぞ。寝れないぞこれは。確かに襲っては来ないだろうが、知らない土地では何が起きるかわからないというのが一般的な認識であるのは、この世界でも変わらないはず。

さっさとこの草原を抜けて人間に会わないと。イノチのキケンをカンジル。

そそくさと立ち上がり、足早に駆け出す。無論、へっぴり腰でだ。

どこまで続くかわからない道のりではあるが、歩いてれば、何処かには辿り着くはず。
そして、最悪、人じゃなくてもいいから、人工的に造られた物質を何でもいいから俺に見せてくれ・・・と、俺はまだ見ぬ水平線の先に願うのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


誰かの声が聞こえる。

「なぁ、これって助けた方がいいよな?」

「あ、あぁ、いや、でもな・・・」

「気持ちはわかる。気持ちは分かるがやはり人として助けるべきじゃないか?・・・気持ちは、分かるが。」

「だよな。分かってんだよ。でもさ、こんな状況で、こんな場所でこんなやつに会うなんて幾ら何でも・・・な。」

彼らの目の前には行き倒れと思しき一人の青年。しかし、青年は、行き倒れであって行き倒れでないというか、何というか、端的に言うと・・・

彼は・・・

「うふふふふふふふ。君はずっとここで暮らしてたんだな。分かるよ。そうだよな、大空に飛び立ちたいよな。あぁ、あぁ、そうさ、そうだとも。俺も一緒なんだ。いっそ飛ぶことが出来たならここまで来るのにこんなに時間はかからなかったし、ニンゲンが住む集落か何かに辿り着くことが、できたかも、知れない。
そうさ、俺も、そして君も、大空に、トビタチタインダァァァ!!!!!

と、草原に咲く一輪の白い花に話しかけていた。当然だが白い花からの返事はなかった。

「お、おい、ほんとに大丈夫か?こいつ、相当やばいぞ」

「確かにやばい、確かにやばいが俺には悪意は感じれない。それならば人を救うのは騎士として当然の事だろう。・・・きっと」

「ほら見たことか!お前だって揺らいでんじゃねぇか!」

「仕方ないだろう!これを見て動揺しない奴は恐らくいない!」

中身のない諍いをしばらく続けていると、青年が突然こちらに顔を向けた。顔は・・・死んでいた。

「ひ、人?人、人だぁ!人!人!人!人!人ォォォォォォ!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!逃げろぉぉぉ!!」

彼らは一目散に逃げていった。

「あっ!待って、待ってくれぇぇぇ!人ォォォォォォ!!」

青年もとい俺は全力で追いかけようとするが、疲れきった体では限界があったようだ。

しかし、彼らが逃げるのも無理はない。常識的に考えて、人ォォォォォォ!人ォォォォォォ!とか言いながら“人”を追いかける“人”が現れたらそりゃあね。本能的に逃げ出すだろう。しかも顔面が死んでいると来たもんだ。

まぁ、そんな俺だが、精神崩壊しつつも収穫はあった。
まず、人間という生命体が俺以外に確認できたこと。それと言葉が通じるということ。最後に、彼らが逃げた方向に行けば、恐らく街があるという事。


何だかんだ言いながら見ているところは見ているのだ。俺を舐めてもらっちゃ困る。

さて、今しがた入手したこれらの情報を元に、俺は再び歩みを進めようと一歩踏み出したところで、膝から崩れ落ちた。

、あ、歩みを・・・

足が・・・動かない。

既に疲労がピークであるのは分かっていたが、まさかまともに歩くことも出来ないとは。

何だろう、少しだけ眩暈もする。

・・・あ、これ、やばいかも。

バタッ・・・と、今度こそ俺は正真正銘の行き倒れとなった。

ーーーーーーーーーーーーーーー


目を覚ますと、俺は知らない部屋にいた。

知らない天井に一抹の不安を覚えたが、汚れ一つない綺麗な天井だった事もあり、身の危険はないような気がした。

「ここは・・・どこだ?」

お決まりのセリフを吐きつつ、状況を整理する。

俺、世界を再構築。
俺、草原に投げ出される。
俺、ドラゴンが怖い。
俺、精神が壊れる。
俺、人に出会うが逃げられる。
俺、草原で行き倒れる。

そして、俺、知らない部屋のベッドで寝ていた。

流れ的には、行き倒れた俺を誰かが助けてくれた・・・?ってことか。いやでも、まさかね。見ず知らずの男を助けるような心の持ち主がそうそういるとは思えない。現に、先程の騎士風の男達も俺の様子を見て逃げてしまったしな。・・・いや、あれはちょっと状況が違うか。まぁいい。

それに、俺は上空をドラゴンが飛び交うような草原にいたはず。あんな場所に来るやつはゴリゴリの武闘派くらいじゃないだろうか。
もし誰かが俺を助けてくれたのだとすれば、先程出会った騎士風の男のような人か、あとは偶然ここを通りかかった人攫いか。

しかし、後者である確率は低いと思っている。
攫った人間の多くは奴隷として売り物になるのが相場だ。となると、この小綺麗な部屋で、柔らかいベッドに寝かせられている状況は、“攫われた”と表現するには不適切だろう。

この世界に来て何度目かの長考。デフォルトになりつつあるのが若干面倒だが、今の俺の立場を顧みれば、長考もやむを得ないだろう。

どうしたものかと、それらしく顎に手を当てて考えていると、

コンコンッというノックの音が聞こえた。

ビクッと肩が震えてしまったのは致し方ないだろう。ただでさえ警戒心が強まっているのだ。誰が出てくるかもわからない。善人か悪人かも不明瞭だ。

全身に力を込め、ついでに眼球にも力を込めてこの部屋に入ってくる何者かに少しでも威圧をかけにいく。(ほぼ意味なし)

トクンッと心臓が跳ねる音がする。
予想以上の恐怖心が俺の心を圧迫している。

ある意味極限の状態の中で、ドアの奥から現れたのは、俺の予想とは大きく外れた存在だった。


「失礼しますね〜。っていっても起きてないですよね・・・って、え!!目を覚ましたんですか!良かったぁ。一昨日からずっと寝っぱなしだったんですよ!」

そこに現れたのは、何と金髪エルフの絶世の美女・・・ではなく、

やけに日本人顔の黒髪ロングの普通に可愛い子だった。

顔立ちに目を見張るほどのものはないが、いかにも大和撫子といった出で立ちで、見るものを惹き付ける魅力を備えていた。

頭に付けた大きな赤いリボンが特徴的で、非常によく似合っている。
一目見ただけで明るい性格だと断定できるほど可愛らしい微笑みをたたえており、こちらを覗くように見る瞳は柔らかな印象を俺に与える。


「もぅ、一体あんなところで何をしてたんですか?こんなに目を覚まさないなんて・・・心配したんですからね!」

その言葉に思わず固まってしまった。

本当にこの子が俺を助けてくれたのか?一体、何億分の一の確率なのだろうか。
しかも助けてくれただけでなく、俺の身を案じている様子で、俺はいっそ感動した。


それにしても、まさか普通に可愛い子が出てくるとは思ってもみなかったので、じーっと、全身を舐めまわすように眺めてしまった。

未知の脅威に備えて力を入れていた眼球も、相手側から見れば、“全身を舐めまわすように凝視してくる変態”的な印象しか与えないだろう。残念だ。
いやいや、初対面の女性にこれはないな。流石に。

彼女がこの視線に気づいたかどうかは分からないが、とりあえず謝罪をしなければいけない。もちろん、助けてもらった事についてだぞ?決して邪な視線を送っていたことについてでは無い。
・・・いや、これも含めて謝っといた方がいいな。

「あぁ、随分と迷惑をかけたみたいで・・・何かすみませんでした。」

しっかり謝ろうと決意した割に、俺が言えたのはこれだけだった。我ながら情けない。

「いえいえ、別に謝る必要は無いですよ?私が勝手にお節介しただけなので!」

そういって眩しい程の笑顔を向けてくる彼女はとても魅力的で最早女神にしか見えなかった。
いやほんと、すみませんね、俺、こんな感じの男で。
割とガチで申し訳なくなった。

ここで彼女は畳み掛けるように言葉を放つ。

「ところで、あなたのお名前は?どこから来たんですか?っていうか!何であんなことになってたんですか?」

自己紹介タイムか!?と身構えたが、予想以上の質問の多さに戸惑う俺氏。

「いや、しっかりきちんと全部説明するからちょっと落ち着こう、うん」

ちょっとばかり生意気な印象を与えてしまっただろうか。・・・初対面の相手というのは本当に難しい。俺は決してコミュ障では無いが、相手の顔色を窺うのは得意ではないのだ。

すると彼女は俺が若干失礼な態度をとったにも関わらず、
なんと俺のセリフを真に受けて謝罪してきたのだ。

「あ、と、す、すみませんでした。」

これには俺も動揺を隠せない。

「いや!謝る必要はそれこそないぞ!・・・ですよ!」

ついついタメ語が出てしまったのは、謝る時の彼女の姿が年下にしか見えなかったからだ。
俺達の初会話は思いのほか長く続いた。

「あ、敬語なんてやめて下さい!それこそ歳はそんなに変わらないでしょうし・・・」

「え?でもそっちは敬語じゃ・・・」

「わ、私はいいんです!これが癖というか、ナチュラルなので!」

「そ、そうっすか」

なんだこの不毛な会話。
いつになれば自己紹介に移行するんだ。もう俺から行くしかないよな。

「あ、そうだ、名前だけど、俺は空乃優生、18歳童て・・・いや、何でもない。ただの一般人です。」

「どうて??えと、私の名前は天麗陽向(あまり ひなた)17歳です。私の方が年下だったんですね!てっきり同い年かと・・・」

名前が日本名・・・というか、え?ガチで日本人じゃん。どういう事だ?そこら辺の設定は特に変わりないという認識でいいのか?
確かに冷静に考えれば言葉が通じているのも不思議だ。・・・もしや、ここは日本なのだろうか。
ついに日本にもドラゴンが現れたのか?

・・・そこだけが若干気になったが、まぁ、シャッフルされた世界だ。たまたまスタート地点が日本的な場所だったのだろう。言葉も通じるし、不幸中の幸いとでも思っておこう。

「あー、まぁとりあえずよろしく。」

「あ、はい。よろしくお願いしますね。」

そういってにっこりと微笑む彼女。
思わず童貞であることまで公開しそうになった情けない俺には勿体ないくらい輝いている。

先ほど金髪エルフの絶世の美女を少しだけ期待してしまった事をスライディングドゲザァーで謝るとともに、その時の俺の顔面にザリガニのハサミを押し付けたくなった。

冗談はさておき、俺はこれからどうすればいいのだろう。このにお世話になったはいいが、いつまでも居座るのは幾ら何でも失礼だろうし。
かといって1人で外に飛び出してもまた行き倒れるような気がする。
途方に暮れていると、天麗さんが思い出したように口を開いた。

「優生さん。それで、どこから来たのか、何故あんな状況だったのか教えてくださいませんか?」

うわ、まだそのイベントが残ってたか。
といっても困ったな。まさか俺がこの世界作りましたなんて言えるはずもない。ここは適当にでっちあげるかなー。少々後ろめたい気持ちになりつつ、俺の歴史は捏造することにした。

「実はな、記憶が無いんだ。家族の記憶、故郷の記憶。そこら辺の記憶がすっぽり抜けててな。気付いたら草原にいて、歩いてたら疲労で倒れて・・・で、君に助けてもらったんだ。」

まぁ、記憶喪失パターンが無難だろう。ただ辻褄が合わなくなると困るから、俺も発言には細心の注意を払わなければいけないが。

肝心の天麗さんといえば、「ほへぇ〜」とか言いながら、口を開けている。本来だらしないはずの表情だが、随分と可愛らしい。
まぁ、いきなり記憶喪失の人間に出会ったら、口をぽかんと開けてしまう気持ちも分からんでもない。

・・・そういえば、まだしっかりとお礼を言っていなかった。

俺が本当に記憶を失くしたと思っている彼女は、依然として口をぽかんと開けて、目をぱちくりさせている。

そんな彼女心から感謝の気持ちを込めて言った。

「ごめん。かなり遅れたけど、助けてくれて、ありがとう。君がいなかったら俺は死んでたかもしれない。本当に、ありがとう。」

すると彼女は顔を少し赤らめて

「いえ!そんな!お花を摘みに草原に行ったらたまたま見つけただけなんです。ここまで運んだのも、街の人達に助けてもらったりしてますし・・・それに人助けなんて当たり前の事ですよ。魔物が闊歩するこの世の中何です。私達みたいな平凡な国民は助け合わないと・・・」

お花を摘みに・・・!?あ、あぁ、普通に花を摘んでたのね。まさかこんな娘が野外はないよな、はは・・・

というか街の人たちも協力してくれたのか。
いつかお礼を言わないといけないな。

何だかんだで人は助け合わないと生きていけないんだなぁ。

・・・と、そこまで物思いにふけっていたのだが、彼女の発言の中に気になるワードがいくつかあった。

「待ってくれ。魔物が“闊歩”?街の中にも影響を及ぼす程魔物で溢れかえっているのか?」

もしそうであれば由々しき事態だ。現状無力な俺としては早急に避難したいところではある。

対する天麗さんは、険しい顔で質問に応じる。

「え、えぇ。たまに群れをなして襲撃してくるんですが、国家騎士団の方々が迎撃してくださるので、私達に被害が及ぶ事はほとんど無いのですが・・・」

「そうなのか・・・」

まいった。でも納得した。個人個人にステータスという具体的なパラメータが設定されているようなRPGワールドなんだな。
結局は魔物倒して、強くなって・・・魔王を倒すとか?
いや流石に魔王は無いよな。日本に魔王て。
ていうか、仮に魔王的な存在がいたとして、誰が倒しに行くんだ?それこそ、現実と創作の世界はまるっきり違うわけで、主人公なんてものはこの世に存在しない。
強いていえば、誰もが主人公だ。君も、彼も、僕も。

・・・何でこんな世界になったんだろうな。何を意図して構築されたんだろうな。しかし、どれだけ考えてもこの問いの答えだけは分かりそうもなかった。

ダメだな。俺には知識が無い。今必要なのは何よりも知識。

・・・彼女には申し訳ないが、もう少しこの家にお世話になるしかない。他にアテがないから!正直相手が女の子ということで、お願いするのにも躊躇いがあるし、断られる事も予想して・・・というか断られる事を念頭においている。

ダメでもともと、ダメダメトマトだ!行くしかない。

「えーっと、天麗さん?もう少し、この家にいてもいいか?」

少し、唐突すぎただろうか?そしてストレートに聞きすぎか?理由くらいは流石に説明しといた方が・・・

「へっ?えぇ、もちろん良いですよ。私もそうするつもりでしたしね。」

・・・なんということでしょう。
理由も説明してないのに、まさか二つ返事でOKされることになろうとは。

「ありがとう!お言葉に甘えさせてもらいます!」

「こちらこそ、よろしくです。」

何と寛大な美心であろうか!
ここは甘えさせてもらうしかない。
そして、彼女に頼みたいことがあるのだ。

「もう一つお願いがあるんだが、いいか?」

「へ?私にできる範囲で良ければ・・・」

俺は真剣な眼差しで彼女を見据えて言った。


「俺に、この世界の事をできる範囲で教えてくれないか!」


この日から、俺の異世界・・・いや、新世界生活が始まった。

「十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • たろゆ

    ご指摘ありがとうございました。確かに、会話文の前後に誰が話すのかを明確に示すフレーズが不足していたかもしれません。貴重なご意見ありがとうございました。

    1
  • やもりん

    誰が話しているのか時々分からなくなる。

    0
コメントを書く