十二世界の創造主〜トゥウェルヴス〜

たろゆ

二話 12世界の誕生

・・・頭が痛い

治まらない頭痛の中で、俺は目を覚ます。
しかし、急速に瞳に集まっていく光の、あまりの強さに、再び目を閉じることになってしまった。

・・・確か、俺は良くわからないおかしなメールに対して、割と真剣に返信をした・・・よな。
うわー、さっきのメール新手の嫌がらせとかだったらどうしよう。あんなくだらない文章について必死に考えた挙句、『世界を再構築してくれ』なんて厨二感満載の願い事をしてしまった俺は、今頃笑いものにされているのだろうか。考えるだけで憂鬱極まりない。

・・・と、そこまで考えたところで、俺が今いる場所は見慣れた景色・・・つまり自室とは程遠い様子であることに気づく。

そうだな、まず、俺の身に何が起きているのか整理しなければいけない。そう思い、上下左右を見渡してみた。
すると、次の瞬間、再び目を閉じたくなるような驚愕に見舞われる。

「ど、ドラゴンが・・・飛んでらっしゃる」

そう、俺が今座っているこの場所は、見渡す限り一面に不揃いな雑草がみっしり生えていてた。さらに、上空には翼と尾があるトカゲ・・・つまりはドラゴンらしき生物が悠然と翼をはためかせていた。

・・・俺の中で何か決定的な違和感が生じた。

世界の再構築、だろ?
思っていた変化と違う。例えば法制度が整えられて、今までのまどろっこしいアレやコレが解消され、より住みやすい世界に変わるだとか。例えば現代よりも遥かに科学技術が進歩していて、何でもかんでもAIに任せていれば何とかなる、居心地のいい世界だとか。
結局のところ住みやすさを求めているのに変わりはないが、俺がイメージしていたのはこういう世界だ。


・・・ドラゴンて。これじゃまるで異世界転移じゃないか。俺が望んだのはファンタジーなバトルでは決して無いんだが。

目の前に広がる非現実的な光景に絶句する。開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。

現状を整理して、新たに行動を起こすために、周囲を見渡したわけだが、正直なところ何も理解出来ていないし何も整理できていない。

・・・なんじゃこりゃ

この一言に尽きる。

ただ、ここでうだうだと考えていたって、今までの常識やら知識がどうも通用しなさそうなのは明白だ。

しかも、願いを叶えてもらったのは俺で、具体的な内容を示さなかった責任は俺にある。つまりこのファンタジーは自業自得なわけだ。

「失敗したかぁー」

呑気に口に出してみても何も変わらない。
とりあえず、この世界がRPGだと仮定してみよう。きっと何かしら近いものがあるはずだ。

となると、まずは村やら街やらに行かなければ話にならない。しかし、どれだけ遠くを眺めても、見えるのは緑の水平線のみ。広大な大空は青く澄み渡り、巨大な入道雲は牛乳並みに白い。

道のりは明らかに険しそうだった。

ピロリロリロリロリン♪

ん?メールが届いた通知音。ていうかPCまだあったのか。気付かなかった。確か、こういう場合はこのPCが旅のキーアイテムだったりするんだよな。思えば俺が今持っているものといえばこのPCくらいだ。
・・・このPCだけは誰にも渡さん。俺の命綱なんだ。
クソっ!なんで俺はこんな時に限ってスマホを充電していたのか!
・・・今更言っても詮無いことだが。

ひとまずメールを確認しないことには動こうにも動けない。マウスを手に取り早速メールの開封を・・・と思った時期が僕にもありました。
何ということでしょう。俺がPCの画面に意識を向けただけでメールが開いたのです!

・・・一体どうなってんだよ。この世界・・・というか、このPCというか。

画面に映し出された内容はこうだ。

『再構築が完了しました。あなたにこの世界で生きるための“常識”を与えます。次に映る画面のURLをクリックして下さい。』

常識・・・ね。なるほど確かに必要だ。是非とも教えていただきたいところではある。が、俺には少し気になったことがあった。

先程までと明らかに差出人が変わっていたのだ。
淀みのない文面に必要最低限の情報を解りやすく伝えるこのメールに俺は少々の違和感を覚えてしまった。
とはいえ、このPCは、きっと俺の想像力程度では到底及ばない次元で動いているだろうから、深く追求したところで無駄であることを悟る。

そして、早速現れた画面のURLを、下が雑草まみれということで、非常に不安定なマウスパッドの上で操作したマウスでクリックするが・・・
何と、このURLをクリックした瞬間、白いオーラが俺の身を纏い始めて全身をとてつもない万能感が襲った。そうか、これが、これこそが“力”か!この世界の“常識”。やっと俺もこの世界の一員になれたってことか!ふっふっふ、はーはっはっはっは!!

みたいな感じになると思っていたが、アテは大きく外れ、実際は俺の身に直接的な変化は何一つ見られなかった。

ピロリロリロリロリン♪

再びメールが届き、勝手に開く。・・・随分と便利だな。

『おまえには“力”が与えられた。この世界で生きるための“力”が。』

また違う人物が書いている。今のところ、3人・・・いや、人間かどうかすら分からないから3体、か。
得体の知れない恐怖感ってのは、身近にあればあるほどキツいものだな。早くもこのPCの前から逃げ出したい
、もしくは画面をかち割りたい欲求に駆られる。

・・・このPCは危険だと、本能が訴えてくるようだ。

それにしても、今の一瞬の出来事の中で一体何を感じろと?せめて直接的な変化をくれなきゃぁ、いくら敏感な俺でも(意味深)流石に気付けない。

どうやら半ば強制的に力を与えられたらしい俺は(もちろんありがたいという気持ちもあるにはあるが)実感もないまま、疑問だけ膨らんでいく、という状態に陥っていた。

するとまるでその疑問に答えるようにメールが返ってきた。

『人差し指と中指で八の字を虚空に描け。それで全てが分かるだろう。』

あぁ、分かった。人差し指と中指で八の字を描けばいいんだな。よぉーし、やってみるぞぉ!

って、やるわけねぇだろ!

まさか、そんな、「俺って実は自分のステータス見れるんだよね。」みたいな厨二全開の行動をとれるわけないだろう。

この草原で、たった一人で孤独に行うところが、これはまた気まずい!

それにしてもこのメールの不遜な物言いには若干の苛立ちを感じざるを得ないな。俺を誰だと思ってるんだ?・・・いや別に何者でもないが。

ていうか差出人側の奴らは一体何人いるんだ?そして何を考えている?ますます正体が気になる。

ただ、今はこのメールに従うしかないのだろうか。
俺は周りに誰もいないかを一度確認してから、はぁ、と一息ため息をついて、しぶしぶ人差し指と中指で8の字を描く。

シュッシュッシュッと、わりかし良い感じのスピードで(本人談)描けたのではないだろうか?仕草的な観点から見れば87点くらいはあげたい。

何のごっちゃと言わんばかりに冷たい風が吹いた。・・・少し気持ちがよかったのが悔しい。

・・・というか、特になんの変化もないぞ、八の字描いたのに。どういうことだ。

おかしいな、そう思いながら、先程八の字を描いた虚空を見つめていると、そこがうっすらと黄金色に輝いていることに気づいた。

変化はすぐに起きた。

なんと、虚空に描いた筈の8の字が黄金色に輝きだし、パリンッと音を立てて割れたかと思えば、ちょうど俺の頭の高さにデジタリティ溢れる画面が現れた。(デジタリティとは果たして・・・?)

ここに、“僕のステータス”が顕現した・・・いや、顕現してしまったのだ。

PCに新たなメッセージが同時に三通。

『それがこの世界の常識であり、力であり、そして身分証明にもなる“ビディオン”だ。』

『ビディオンは主の許可無く閲覧することは不可能です』

『自分、成長、それで分かる』

そして画面にはこうあった。



LIFE  3   RANK  1   MAN

power             100   Lv.01
hardness        100   Lv.01
speed             100   Lv.01
precision        100   Lv.01
humanity         50

strength         400   Lv.01



ほぅ・・・
感心する間もなく次々にメールが届く。


『powerは力の強さ、破壊力』
『hardnessは守りの硬さ』
『speedは動きの速さ』
『precisionは全ての動きの精度、正確さ、コントロール』
『strengthはpower、speed、hardness、precisionの合計値。客観的な強さ』
『Lv.というのは、それぞれの値がどれほどなのかを簡易的に示した数値』


ほうほぅ・・・・・・

『humanityは人間性がどれほど優れているか。初期値は通常50で、0〜100の間で場合に応じて変化する。strengthには含まれない。』
『RANKはstrengthから計算した強さの簡易的な指標。しかし、それだけという訳では無い。個人が得た経験の質も大きく影響する。』
『MANは言わずもがな、性別。あなたは、男』

こいつら、これだけ一気にまくし立てて、俺が瞬時に覚えれるとでも思っているのかな。結論から言うと絶対むりです、はい。

・・・そして一番気になるものを最後に残しておくのね。

『最後に、LIFE。これは“命”そのもの。あなた、3回まで、死んでも生き返る。』

・・・生き返る、ね。

『ただし、LIFE0の状態で死ぬ・・・それこそ、本当の死。それと、生き返る場所、ランダム。生き返った場所、魔物の巣窟、再びすぐ死ぬ、有り得る。でも、空中、水中での復活、ありえない。よかった、よかった。』

なるほどなるほど。とりあえず・・・一気にメール送りすぎだわ!ピロピロピロピロうるせぇよ!

それにしても、全然分からん。何で生き返るとかいう訳の分からない概念が存在しているのか。
空中水中では復活しないから、安心・・・?そもそも魔物の巣窟とは・・・?魔物とは何ぞや。それは俺たちの命を脅かすほどの存在なのか!

・・・あ、そーいやドラゴンがいたな。

ぱっと上を向くと、未だに一匹のドラゴンが空を飛んでいた。こちらに向かってくる気配はないので、当面襲われる心配は要らないだろう。めっちゃ多分(語彙力)

『ちなみに、寿命での死亡はLIFEの対象外ですので、ご理解の程よろしくお願いします。』

いやいや、そんなこと言われたってこちらとして何も解決できてないのでね。えぇ、ドヤ顔で語られても困るんですわ。

何がわからないかって、もちろんこの画面の意味、そしてメールが示す内容も理解し難い部分を多分に含んでいる。しかし、これでも一応高3で、進路もほぼ決まっていた男だ。人並み以上の読解力はあると自負しているつもりだから、真の意味では理解出来なくとも、表面的にはだいたい何が言いたいのかは分かっている。

そこまで踏まえた上で、俺がわからない事は、なぜ再構築された世界が“ファンタジーRPG風”に仕上がっているのかって事だ。

しかも死んでも3回までなら生き返ると来たもんだ。モロだよ、モロ。まぁ、回数に制限があるあたり、RPGにしても中途半端な設定だと思うが。

・・・だめだ。どれだけ考えてもイマイチ整理しきれない。想定外の状況に戸惑いを隠せないでいる。今何よりも欲しいのは時間だよ、絶対。

そんな俺の思いも虚しく、メールが空気を読んでくれる事は無かった。

『これで説明は終了いたします。残念ながら、この後このPCは消えてなくなりますのでご了承ください』

え、待って、もう少し詳しく説明してほしいんですけど。こんな世界にひとりぼっちにさせといてそれは無くない!?

『それではこの世界での活躍を期待しています。サヨウナラ』

えぇ・・・・・・。

嘘だろ。ていうか!命綱!俺の唯一の所持品!この旅のキーアイテム!消えたし!

無機質かつ不気味な別れの挨拶とともに、PCは消えた。
それはすなわち俺の今後の希望が消えた事と等しく、まさかこんな世界のこんな場所でひとりで放ったらかしにされた挙句、PCまでもが消えてしまうなんて露ほども思っていなかった俺は・・・・・・

「・・・・・・詰んだ」

真っ白なTシャツに黒い短パンというラフな出で立ちのまま、ドラゴンが飛び回る草原に一人取り残されたのであった。

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