トランセンデンス・ストーリー

Meral

魔王編 第六話 対人戦闘

「そういえば光達はどうしたんですか?」
「ん?ついさっき体術の訓練を終えて昼飯食ってからアニマさんに魔法の教授を午後からしてもらうんだ。」
「なるほど。体術と魔法を同時に行えるようにするのが理想というわけですね。」
「ご明察だ。流石は研究者、頭を使うのには適わないな。」
「そんなことはありませんよ。体術においてはグラントさんの方が頭が切れる筈ですよ。」
「まあ確かにな。」
「なので今日はそれを全部教えてもらいます。」
「がっはっはっはっは!そうかそうか。ちなみに光達は途中でダウンしちまって最後は皆立てていなかったな。お前は俺に着いてこられるかな。」
「もちろんですよ。」
「おお!言うじゃないか。なら見せてくれ!」
「行きますよ。」

レイはグラントに向かって足を進める。

「・・・ふっ!」
「!!よっと。」

レイはのらりくらりと歩いていたがグラントの間合いギリギリで一気に加速しグラントの懐へ入って拳放った。だが、間一髪でグラントは後ろへ飛びそれを回避する。

「なかなかいい動きじゃないか。でも、まだまだだな。」
「分かってますよ。だから稽古してもらってるんじゃないんですか。」
「そうだな。たしかにその通りだ。やっぱ理屈とかで話するとオメェには勝てねぇな。」
「戦闘ならともかくそれ以外で負ける気はありませんからね!」

再度レイはグラントの懐へと潜り次は肘打ちを繰り出す。たが、それもグラントは回避する。そして今度は反撃をしてきた。レイの肘打ちを回避して素早く背後に回り渾身の一撃を放つ。

「動きは悪くないがやっぱまだ実践不足だな。これで終わりだ。…っ!?何だと!?」

グラントはこの一撃で終わったと思った。だが、次の瞬間グラントよりも一回り以上ステータス値が離れていると思っていたグラントは、レイが右腕で出した肘打ちとは逆の左手を背中に回しグラントの一撃を見事真っ向から受け止めた。

「どんな手品を使えばそんな事が出来るんだよ。」
「別に普通に受け止めただけですよ。」
「嘘つけ、昨日までお前はほぼ最弱だった筈だ。職業的にな。だがお前はどういうことか筋力2000越えの俺の拳を意図も簡単に受け止めやがった。何をしたんだ?」
「ただ死に物狂いで特訓したけど実践不足だと思ったからグラントさんに稽古を付けてもらおうと思っただけですよ。」
「説明になって無い気がするなっと。」

グラントは掴まれていた左拳を引き距離をとる。

(正直本当に有り得ないな。いくら研究者といえども最高で筋力は900がいい所だ。だが、こいつは間違いなく2000はある。どうなってやがんだ。)

「さてと、とりあえずある程度は動けるからここからは実験だな。」
「なにをやる気だ?」
「ちょっとした実験です。」
「一体次は何を見せてくれるのや・・ら・・!?」

グラントはレイの行動を見ながら話している途中でレイの劇的な変化に唖然としていた。レイが実験と言って行ったのは魔衣だ。これによりレイのステータスは爆発的に変化する。通常の約30倍位まで今は自身を強化出来るが今は3倍程度にしておいた。

「さて、行きますよ。」
「おい待て!なんだそりゃ!」
「努力の結晶です。」
「だからなんだそりゃ!」

グラントは目の前の光景が理解出来なかった。戦闘系の職業でも無い者が只でさえ自分の渾身の一撃を受け止めたというのに次はまだあまり教えていないはずの魔力操作を使っている。しかも、自分の知らない魔法を使って。

(やっぱり魔力そのものを使うなんて規格外なんだろう。でも、その動揺は明確な隙になっている。)

「油断してはダメですよ。」
「…っ!?」

グラントは10m余り位レイと距離をとったのに気付くとレイは自分の背後にいた。

(バカな!瞬きすらしていなかったのに視認できなかった。あの一瞬で強くなった?だがどうやって?)

グラントはレイの突如のパワーアップにパニックになっていた。

「すまん、もう一度だ。」
「分かりました。」

でも、その後は何度か正面で戦っても結局レイが魔衣を使うと一瞬で勝負がついてしまっていた。

「まさかたった1日程度でここまでになるとはな。正直かなり悔しいが流石は勇者様という訳かな?」
「いえ、僕は勇者じゃなくて研究者ですよ。」
「どちらにしろ一緒だ。よしっ!まだまだやるぞ。」
「はいっ!」

その後は何度もレイとグラントは訓練を繰り返した。

「ふぅ。」
「はぁ、はぁ。今日はここまで…だな。」
「そうですね。」

結局あの後はやる度にレイがどんどん技を身に付けていって最終的にはグラントだけが息が上がったいた。

「ったく、ほんとにお前は何なんだよ。」
「研究者ですよ。」
「もうわーったよ。それでいい。」

これ以上はもう意味が無いと判断したのかグラントはそのまま訓練場から出て行った。

「実験は成功だな。他にも色々やってみたかったけど、それは3週間後の遠征で試せばいいかな。」

そう、レイ達は3週間後にアトランタの町の一つで
迷宮都市である"ハルベル"に遠征訓練をする予定だ。ハルベルでは世界中に散らばるダンジョンの一つである"ダンジョン・ヘリオス"に遠征にしに行くのだ。ここアトランタから馬車で3日程で着く所にある。レイはその遠征に向けてある程度の力を付けようとしてグラントに指南を願ったのだが、結局レイは体術というより魔力の差で圧勝した。魔衣を使わずともレイの驚異的な成長速度で体術すらもグラントを凌駕した。

「3週間後までに自分の魔法を調べてみようかな。
ところでノエル?聞こえるかい?」
『はい、聞こえていますよマスター。何か御用でしょうか?』
「うん。僕の魔法について調べられるかな?」
「マスターの魔法ですか?」
「うん。特に"変幻自在"についてなんだけどね。この魔法だけはどんなに調べてもどこにも記されてなかったんだ。もしかしたら、新しい魔法なのかもしれないんだよ。この魔法の保有者である僕もこの魔法については全く分からなかったんだ。でも、神の魔導書であるノエルならどうにかできるんじゃないかと思ってさ。」
「なるほど・・・。」
「どうかな?」
「出来ない事もありませんがかなりの時間を要しますそれでも宜しいですか?」
「うん大丈夫。」
「分かりました。それでは早速解析しておきます。」
「ありがとう。」

そして、レイも訓練場を去っていった。

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