読書家は最強スキル
第1章 7冊目 眠れる悪意
スキルを作り、準備をした次の日、何事も無く1日目は終わり、2日目がやってきた。この日は戦闘について最後の確認をしていた。
「オラオラァ!!もっと引きつけてから振れ!隙だらけだぞ!」
「グぅぇッ……!」
  
わき腹に木刀を喰らい、倒れこむ。
「これでもうお前は1回死んだ。ほら立て!明日までに仕上げるぞ!」
ジーマさんは自分の知り得る技術を僕に教えようとしているが、如何せんそんな経験のない僕はなかなか上手く行っていなかった。
そこで今日すぐに使い物になる技術をひたすらに教えることにしたらしい。
「ハァ……ハァ……きっつ……」
「おい、結翔。」
「ハァ……はい……」
「お前は弱い。」
ウッ……わかってはいたが言われるとグサッと来るな………
「だがな、勇者の中では一番強い」
「えっ…」
「何故かわかるか?」
「いえ……」
「それはな、振り回されていないからだ。」
「振り回されて?」
「そうだ。正直他の奴らは急に上がったステータスについていけていない。まあスキルやステータス任せにただ殴っているようなもんだな。」
「霧乃さんでもですか?」
力に頼るような事はしないと思っていたんだが。
「あれはただやっているわけではないがまだまだステータスに慣れていないからな。そういう点では振り回されていると言える。」
「なるほど……」
「それでお前がなんで一番強いか、その理由はそのステータスの低さにある。」
「低いからこそ振り回されず動きを鍛えることができるからですか?」
「ああそうだ。そこまで分かっているなら話は早い。さぁ、もう一回だ!」
「……墓穴を掘ったか……」
その後もひたすらぶっ飛ばされた。
しかし、そのおかげかジーマさんの課題は終わらせる事ができた。
「こんぐらいできりゃあひどい差がない限り死ぬことは無い。だからといって慢心するんじゃねぇぞ。俺から見たらまだまだだ。言いたいことは沢山あるが、兎に角ダンジョンから生きて帰って来い。」
「わかりました。これでも僕は約束は守る男なので。」
「一人前に言うじゃねえの。そんなら早く帰って来いよ。いいか、生きろ。何よりもまず生きろ。それだけだ。じゃ、頑張れよ。」
「ありがとうございました。」
明日にはダンジョンへと出発するので持ち物を確認する。しかし殆どの荷物は騎士団の人が持って行ってくれるらしい。なので手持ち無沙汰になってしまった。なのでクラナさんに持ってきてもらった本の二周目を読んでいた。
ちなみに完全記憶は自分の意思で操作できるので今は切っている。
他のスキルについてもメインとなっている読書家や超言語理解などは常時発動型スキルなのでオンオフはできないが、全鑑定などの能動発動型スキルは完全記憶などと同じように自由にオンオフすることができる。
また、人によって、スキルの上限があるらしい。
例えば、農民で、同じスキルを持っているAとBでも、能力値が違ったり、効果範囲や持続時間などが違うといったことである。
そして、他のスキルに対しては、神聖魔法と呼ばれるもの、そして自分の読書家以外、スキル自体への干渉はできないということだ。
これらのことも日々研究して得たことだ。おそらくだが、他に自分以外でスキルを練習するのではなく研究している奴はいないと思う。
そして、スキルがどんなものかわかってきたことで、ひとつの疑問が生じた。
こんな制限を与えたのは誰なのか、与えた本当の理由は何なのか。
簡単に考えれば、「神」とでも言えばいいのだろうが、だとしたら何故封印などという能力が与えられているのかが分からない。封印は一歩間違えれば自分自身をも滅ぼしかねないというのに……
だからこそ神聖魔法に設定しているのだろうか。しかし神聖魔法が使えるのはとある宗教だけだと聞いた。詳細な部分ははぐらかされてしまったが、そのぶん怪しさが増した。いったい何を考えているのだろうか……
そんなことを考えていると、ふいにドアがノックされた。
(だれだろう?クラナさんかな?でもさっき本を持ってきてもらったばかりだから多分違うな。
となると……亮か?)
コンコン……
「はいはーい今開けるからー」
そう言いつつドアを開けるとそこにいたのは亮ではなかった。
「ご、ごめんね…こんな大変な時に……」
「美咲さんだったか。」
「ご、ごめんね……」
「いや、てっきり亮かと思ったから。こんなところで話すのもなんだし、散らかってるけど、上がってってよ。」
「じゃあ、お邪魔します……」
「クソクソクソッ!!!なんであんな奴の部屋に美咲が………」
結翔と美咲が部屋に入っていくのを見ていた者がいた。
「あんな奴……いなければ……そうだ……あいつさえいなければ……」
どす黒い欲望をまき散らしながら。
「そうだ……あいつは使えない……必要がない……いなくても……」
都合のいい解釈をしながら。
「それで?なにかあったの?」
ダンジョンに行く前日になってまで、わざわざ自分に用事なんて無いはずだが…
「じ、実は……」
「・・・」
「明日、ここで待っててほしいの!」
「・・・???」
「あわわ・・えっと・・」
「一旦落ち着いて。ほら水。」
「ありがとう、んくんく・・・」
いったん水を飲ませて落ち着かせておく。
「落ち着いた?」
「うん。もう大丈夫。」
「じゃあ、もう一度落ち着いて話してみて。」
「うん……明日から、ダンジョンに行くけど、結翔くんは……その……言いにくいけど、スキルも弱いし、運動も全然だよね。」
そんなことはなくただ面倒くさくてまじめにやっていないだけなのだが、いまは美咲さんの話に集中することにしよう。
「それに、何か嫌な予感もするし……だから、もしダンジョンに行って何かあったら、と思うと怖くて……」
「なるほど……」
「おねがい!待ってて!」
「ごめん。それはできない。」
「な、なんで……」
「僕が弱いのは十分知っているから。それでも、この攻略に参加しないわけにはいかないんだ。」
「でも!でも…」
「そうだな…美咲さんの考えもよくわかる。」
「じゃ、じゃあ!」
「でも、この攻略に行かなければ、僕と君たち勇者との差は決定的なものになってしまう。だからこそ、行く必要があるんだ。」
「そ、そんな……」
「そうだな…そういえば、美咲さんの適性職は聖女だったよね?」
「そうだけど……それがどうしたの?」
「聖女ならたぶん回復に特化しているはずだから、もし僕がやられたとき、治癒して欲しいんだ。それなら良いんじゃないかな?」
「うぅん…まあそれならいい…のかな?」
「大丈夫。いきなり高難易度のダンジョンに連れていくはずがないと思うよ。まぁ、情けないけど僕にはそこでも戦える力はあるかどうか怪しいから、そこで美咲さんの回復があるって考えると、安心していられるんだ。」
「そうなの?」
「うん。回復が有ると無いとじゃ心の持ちようが違うからね。」
「うぅ……わかった。じゃあ危険な戦い方はしないって今誓って!」
そう言いつつ近づいてくる美咲さん。
「わ、わかった。誓う!誓うから!だから離れて!」
「……キャッ!ご、ごめんなさい……」
「い、いや、大丈夫だから。ほら、もうすぐ自由時間も終わるから、部屋に戻ったほうがいいんじゃない?」
露骨な話題転換をすると、しぶしぶといった感じでドアへと向かう。
「そうだね……じゃあ、また明日。」
「うん。また明日。」
そう言いつつドアを閉める瞬間、僕は何か得体の知れないモノに見られているような感覚を覚えた。
「ーーッ!」
思わず辺りを見回してみたが美咲さん以外に人影は無く、知覚する事は出来なかった。
「なんだったんだ……?」
静かな危機感を感じた僕は、秘策の開発を急ぐことにしたのだった。
だいぶ更新が遅くなりましたが、またちびちび頑張ります。
Twitter始めました。
どちらもフォロー宜しくおねがいします。
また、よくわからないコメントをするのはやめていただきたいです。
「オラオラァ!!もっと引きつけてから振れ!隙だらけだぞ!」
「グぅぇッ……!」
  
わき腹に木刀を喰らい、倒れこむ。
「これでもうお前は1回死んだ。ほら立て!明日までに仕上げるぞ!」
ジーマさんは自分の知り得る技術を僕に教えようとしているが、如何せんそんな経験のない僕はなかなか上手く行っていなかった。
そこで今日すぐに使い物になる技術をひたすらに教えることにしたらしい。
「ハァ……ハァ……きっつ……」
「おい、結翔。」
「ハァ……はい……」
「お前は弱い。」
ウッ……わかってはいたが言われるとグサッと来るな………
「だがな、勇者の中では一番強い」
「えっ…」
「何故かわかるか?」
「いえ……」
「それはな、振り回されていないからだ。」
「振り回されて?」
「そうだ。正直他の奴らは急に上がったステータスについていけていない。まあスキルやステータス任せにただ殴っているようなもんだな。」
「霧乃さんでもですか?」
力に頼るような事はしないと思っていたんだが。
「あれはただやっているわけではないがまだまだステータスに慣れていないからな。そういう点では振り回されていると言える。」
「なるほど……」
「それでお前がなんで一番強いか、その理由はそのステータスの低さにある。」
「低いからこそ振り回されず動きを鍛えることができるからですか?」
「ああそうだ。そこまで分かっているなら話は早い。さぁ、もう一回だ!」
「……墓穴を掘ったか……」
その後もひたすらぶっ飛ばされた。
しかし、そのおかげかジーマさんの課題は終わらせる事ができた。
「こんぐらいできりゃあひどい差がない限り死ぬことは無い。だからといって慢心するんじゃねぇぞ。俺から見たらまだまだだ。言いたいことは沢山あるが、兎に角ダンジョンから生きて帰って来い。」
「わかりました。これでも僕は約束は守る男なので。」
「一人前に言うじゃねえの。そんなら早く帰って来いよ。いいか、生きろ。何よりもまず生きろ。それだけだ。じゃ、頑張れよ。」
「ありがとうございました。」
明日にはダンジョンへと出発するので持ち物を確認する。しかし殆どの荷物は騎士団の人が持って行ってくれるらしい。なので手持ち無沙汰になってしまった。なのでクラナさんに持ってきてもらった本の二周目を読んでいた。
ちなみに完全記憶は自分の意思で操作できるので今は切っている。
他のスキルについてもメインとなっている読書家や超言語理解などは常時発動型スキルなのでオンオフはできないが、全鑑定などの能動発動型スキルは完全記憶などと同じように自由にオンオフすることができる。
また、人によって、スキルの上限があるらしい。
例えば、農民で、同じスキルを持っているAとBでも、能力値が違ったり、効果範囲や持続時間などが違うといったことである。
そして、他のスキルに対しては、神聖魔法と呼ばれるもの、そして自分の読書家以外、スキル自体への干渉はできないということだ。
これらのことも日々研究して得たことだ。おそらくだが、他に自分以外でスキルを練習するのではなく研究している奴はいないと思う。
そして、スキルがどんなものかわかってきたことで、ひとつの疑問が生じた。
こんな制限を与えたのは誰なのか、与えた本当の理由は何なのか。
簡単に考えれば、「神」とでも言えばいいのだろうが、だとしたら何故封印などという能力が与えられているのかが分からない。封印は一歩間違えれば自分自身をも滅ぼしかねないというのに……
だからこそ神聖魔法に設定しているのだろうか。しかし神聖魔法が使えるのはとある宗教だけだと聞いた。詳細な部分ははぐらかされてしまったが、そのぶん怪しさが増した。いったい何を考えているのだろうか……
そんなことを考えていると、ふいにドアがノックされた。
(だれだろう?クラナさんかな?でもさっき本を持ってきてもらったばかりだから多分違うな。
となると……亮か?)
コンコン……
「はいはーい今開けるからー」
そう言いつつドアを開けるとそこにいたのは亮ではなかった。
「ご、ごめんね…こんな大変な時に……」
「美咲さんだったか。」
「ご、ごめんね……」
「いや、てっきり亮かと思ったから。こんなところで話すのもなんだし、散らかってるけど、上がってってよ。」
「じゃあ、お邪魔します……」
「クソクソクソッ!!!なんであんな奴の部屋に美咲が………」
結翔と美咲が部屋に入っていくのを見ていた者がいた。
「あんな奴……いなければ……そうだ……あいつさえいなければ……」
どす黒い欲望をまき散らしながら。
「そうだ……あいつは使えない……必要がない……いなくても……」
都合のいい解釈をしながら。
「それで?なにかあったの?」
ダンジョンに行く前日になってまで、わざわざ自分に用事なんて無いはずだが…
「じ、実は……」
「・・・」
「明日、ここで待っててほしいの!」
「・・・???」
「あわわ・・えっと・・」
「一旦落ち着いて。ほら水。」
「ありがとう、んくんく・・・」
いったん水を飲ませて落ち着かせておく。
「落ち着いた?」
「うん。もう大丈夫。」
「じゃあ、もう一度落ち着いて話してみて。」
「うん……明日から、ダンジョンに行くけど、結翔くんは……その……言いにくいけど、スキルも弱いし、運動も全然だよね。」
そんなことはなくただ面倒くさくてまじめにやっていないだけなのだが、いまは美咲さんの話に集中することにしよう。
「それに、何か嫌な予感もするし……だから、もしダンジョンに行って何かあったら、と思うと怖くて……」
「なるほど……」
「おねがい!待ってて!」
「ごめん。それはできない。」
「な、なんで……」
「僕が弱いのは十分知っているから。それでも、この攻略に参加しないわけにはいかないんだ。」
「でも!でも…」
「そうだな…美咲さんの考えもよくわかる。」
「じゃ、じゃあ!」
「でも、この攻略に行かなければ、僕と君たち勇者との差は決定的なものになってしまう。だからこそ、行く必要があるんだ。」
「そ、そんな……」
「そうだな…そういえば、美咲さんの適性職は聖女だったよね?」
「そうだけど……それがどうしたの?」
「聖女ならたぶん回復に特化しているはずだから、もし僕がやられたとき、治癒して欲しいんだ。それなら良いんじゃないかな?」
「うぅん…まあそれならいい…のかな?」
「大丈夫。いきなり高難易度のダンジョンに連れていくはずがないと思うよ。まぁ、情けないけど僕にはそこでも戦える力はあるかどうか怪しいから、そこで美咲さんの回復があるって考えると、安心していられるんだ。」
「そうなの?」
「うん。回復が有ると無いとじゃ心の持ちようが違うからね。」
「うぅ……わかった。じゃあ危険な戦い方はしないって今誓って!」
そう言いつつ近づいてくる美咲さん。
「わ、わかった。誓う!誓うから!だから離れて!」
「……キャッ!ご、ごめんなさい……」
「い、いや、大丈夫だから。ほら、もうすぐ自由時間も終わるから、部屋に戻ったほうがいいんじゃない?」
露骨な話題転換をすると、しぶしぶといった感じでドアへと向かう。
「そうだね……じゃあ、また明日。」
「うん。また明日。」
そう言いつつドアを閉める瞬間、僕は何か得体の知れないモノに見られているような感覚を覚えた。
「ーーッ!」
思わず辺りを見回してみたが美咲さん以外に人影は無く、知覚する事は出来なかった。
「なんだったんだ……?」
静かな危機感を感じた僕は、秘策の開発を急ぐことにしたのだった。
だいぶ更新が遅くなりましたが、またちびちび頑張ります。
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コメント
Kokuryu
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