幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第三話.マガモノ-6~

~影都サイド~

 霊夢のなかのマガモノを落とした影都は、
 「さてと……舞狸には無駄足をさせてしまったな……せっかく捕まえて研究資料にしたかったのに。まさか消滅してしまうとは」
まだ気を失っている霊夢を置いて、舞狸を連れ戻すために博麗神社から飛び立った。

 木々の上空を蹴るように移動していると、影都は背中がゾワゾワするような違和感を覚えた。
 「……?」
 首だけで後ろを振り返って見たが、特に何もない。真っ黒なカラスがガアガア鳴きながら飛んでいること以外に何もないのだが。
 気のせいだろうか。と首を前に戻す。
……その瞬間、目の前が真っ暗になった。

 気が付くと、影都は見慣れぬ妙な空間に倒れていた。
 「……ってて……一体、なにが……」
そう呟きながら回りを見渡す。さっきまで森の上空を渡っていたのだが、今は周囲にいくつもの目玉が浮いている空間にいたのだ。
 「なんだコレ……キメェ」
 「えー、そんなことはないと思うけど?」
 「!?」
 影都の独り愚痴に答えてきた声に、影都は心底驚いた。
まさか、と思い振り返ると、そこには金髪の女性が立っていた。
 存在感のある雰囲気だが、それ以上に目を引いたのは
「ま……マガモノ?」
その女性がマガモノに憑かれていることを表すようにうごめく禍々しいオーラだ。しかも、禍霊夢の時よりも比べ物にならないほど強力な霊力が伝わってくる。
 「霊夢のときと……同じやつか!」
 「いや、あんな憑くことしか出来ないような下級なやつらと一緒にしないでほしいな」
 「!?喋った!?」
 「喋れるよ。失礼だね」
その女性は確かにマガモノの気を出しているのだが、その声は霊夢のように直接脳内に来るものではなく、発せられた言葉として普通に耳に届く。
もしかしたら普通の人間なのかもしれない。と思ったが、この空間にいる時点でそれは無いな。
てか口調!一応確認しておくが、金髪の女性である。
 金髪の女性である。
 完全に変態だと悟った影都である。
 「……で、俺をこんなところに俺を連れ込んで、どうするつもりだ?」
 「んー……強いて言えば、邪魔されないようにするためかな?」
 言っている意味が分からない。そんなこと言われたら、邪魔したくなっちゃうじゃないか。
 「僕の嫁を押し倒してたぶらかしたみたいじゃないか」
 「は?」
 何を言っているのだね。この変態は。
 「だから君がこの幻想郷の僕の嫁に手を出さないように、スキマの中に閉じ込めることにしたんだ」
 「訳ワカメ。そんなこと、するわけな……」
 「そういえば、君の連れ……舞狸ちゃんって言ってたかな」
 「……!?」
 「さっき僕の分身を見つけたみたいだけど、もうボロボロに敗れちゃっているんじゃないかな?」
 「テメェ!!」
 考えることよりも影都の身体は先に動いていた。
 素早い動作で刀を抜き、その女へ振り下ろす。しかし、
 「あー、遅いなぁ」
 「!?」
 女は首を少し後ろに引いただけで斬撃をかわした。
 「くっ……ならばッ!」
 影都は右手で刀を逆手に持ち、左手で刃を掴むと、一気に引き裂いた。刀と左掌はすぐに血に染まった。
 影都は左手を振り払い、回りに血を撒くと
「……業火【龍・炎城牙】ッ!」
その声と共に、周囲が一瞬で火の海となった。
 「ひゃー、曲芸だねぇ」
そんな中でもへらへらと笑っている女にイラついた影都は、周囲と同じように炎を纏った刀を女に向かって一閃する。しかし、
 「当たらなければ、何の意味もないよねぇ」
 「な……っ!?」
いつの間にか背後に回り込まれていた。
 振り返り、刀を振ろうとしたが、
 「あーあ、飽きちゃったな」パンッ
「グッ!?」
 軽く押されただけなのに、かなり重い圧力を受け、吹っ飛ばされた。
どこに向かって飛ばされているのか分からないほど、長い時間飛ばされながら、
 「そういえば、舞狸ちゃんがボロボロになった、てのは嘘だよ。……だけど、君がちゃんと護ってあげないと僕の嫁にしちゃうからね?……でも、君の持ってる木の切れ端みたいな刀で僕に勝てるかな? フフッ、アハハハハッ!」
そんな女の笑い声がスキマの中に響いた。

 30秒間ほどは飛ばされただろうか。
ようやく感覚を取り戻したので、空中で静止した。

 「…………あんっっっの、糞BBAァァァァァァァ!!」

 脳内で光を創造した影都は、目の前に現れた光のホバーボードに乗ると、
 「ファイヤーッ!!」
 光の速さで、糞BBAを探し始めた。


 見付けた。一秒もかからなかった。
 糞BBAの前に人が四人(のうち二人は横になっている)いたが、そんなものは気にしない!!
 影都はそのままの勢いで、
 「やっと見つけたぞ糞BBA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 「ングゥ!!!!!」
ぶん殴った。
その衝撃で地に落ち転げ回る。
 舞狸を嫁にしようと言ったこいつの愚かさ故に。
 「サァココカラLunatic、パーティーダ、」
 「ヒィウウィーゴーーーー!!レッツパーリィーーーーーーーーーーーー!!」
 「殺す。」
 三人が出会った瞬間だった。

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