幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第二話.導き-14~

「感謝しろ!」
 「「……は?」」
 突然現れた少女に感謝しろ、と言われた影都と舞狸は疑問の声を漏らした。
その二人の反応を見た少女は、腕を振り回しながら叫び散る。
 「だーかーらっ!さいきょーのあたいが変なやつを凍らせて助けてやったんだから、感謝しなさいって!」
ここで二人はこの氷塊を作り出したのが、この少女だったということを知った。
 「ああ、そういうことか」
 最終的に木偶人形を倒した(砕いた)のは影都と舞狸なのだが、足止めされていなかったら、それこそ危ないところだったのだろう。
 「ありがとう、おかげで助かったよ」
 「……礼を言う」
 「ふふんっ。それでいい!」
 少女は無い胸を張って自慢げになっていた。
その少女は綺麗な水色の髪に水色のワンピースを身に付けている。肩には何故かカエルを乗せている。一番目を引いたのは背中にある氷の羽だった。言わずとも妖精であることはわかった。さらに先ほどのセリフからして、これは⑨(バカ)なのでは……と推測した。
 「俺は九我龍影都だ。外の世界から来たんだ」
 「……侑廻舞狸。以下、同文」
 「ふーん、外の世界かー……ま、いいや。あたいはチルノ様だ!」
 「チルノ、か。改めてありがとう」
 「今ならチルノすーはいって呼んでもいいぞ?」
 「呼びにくそうだから、チルノって呼ばせてもらおう」
 「……同感」
 間違ってた。バカなのかではなく、バカだった。
しかし(バカだからか)影都と舞狸の言葉に気にしないチルノ崇拝(笑)。
 「おまえたちも、れーむに会いに行くのか?」
 「ん、ああそうだ。チルノもか……じゃあ異変のことは知っているのか?」
 「異変?そんなものが起きてるのか?」
どうやら何も知らないらしい。肩のカエルも呑気にゲコゲコ鳴いている。
まあたいして問題は無いだろう。と影都は深く考えることはせずに、石段を上がることにする。その隣を舞狸が音無く歩き、少し遅れてチルノが空中をくるくる回りながらついてくる。
 歩き続けて数分後。
 「ふぅ……やっと見えてきた。鳥居がある」
 長かった石段を登り終えた影都と舞狸は、博麗神社の敷地内に足を踏み入れた。
チルノは、
 「れーむー!弾幕ごっこで勝負だー!」
と大声で叫びながら本堂に飛んでいった。
しかし、
 「……舞狸」
 「……わかってる」
 影都と舞狸は、妙な感覚に追われていた。先ほどの木偶人形よりもっと禍々しい何かが近い気がしてならない。
 「え、二人ともどうかした?」
 針妙丸はわからない、と首をかしげるが、構っていられない。
 「……本堂」
 「まずい!」
 影都は急いで本堂に向かって走ったが、遅かった。
 「きゃーっ!」
 突然、本堂の入り口が破壊され、チルノが吹っ飛んできた。これは影都に直撃コースだ。

 《どうする?》
→受け止める
→かわす
→迎え撃つ

「かわす」
ヒュー……チュドンッ
身体を横にしてチルノを往なした影都。若干力を加えたので、石段に落ちる事無く横の草むらに転がった。
チルノは地面に伸びていたが、それ以前に影都と舞狸は本堂に目が行っていた。なぜなら、
 「なんだ、ありゃ……」
 穴の空いた本堂から、紫色の煙のような何かが這って出てきた。影都と舞狸が感じた禍々しい気配は、やはりここから来ていたのだ。
 「……来る!」
 突然の舞狸の声に反応した影都は、瞬時に腰の天鉄刀に手をかけ抜刀。刀の先を真正面に向けた瞬間、本堂から妖精の弾幕とは比べ物にならないほど大きな弾幕が飛んできた。
 弾幕が刀に触れると、何の抵抗もなく豆腐のように斬れた。
すぐに本堂から離れる影都。
 暗い本堂の中から出てきたのは一人。
 禍々しい紫色の煙のようなものに身を包まれた少女。

……この博麗神社の巫女、博麗霊夢だ。

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