幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第二話.導き-9~

それは一瞬だった。
いや、一瞬という表現よりはほんの数秒で、といった表現が正しいのだろうか。どちらにせよ、結末は早かった。
 突如襲いかかってきた野生の〝妖精〟たちが、目の前で消えてしまった。
 「ほぅ……今のが〝スペルカード〟ってやつか」
 「……興味深い」
 「うん、そうだよ。大体の妖怪や、妖怪退治の専門家は使うことが出来るんだ。ちなみに私の能力は〝打出の小槌を扱う程度の能力〟なんだ」
 「そっか。じゃあ俺たちもそのうち使えるようになるかな」
 危機は去ったので、先を進み数分。
 「あ、見えてきたよ」
 針妙丸が身を乗り出して指差す先を見ると、今まで見渡すばかり草木だった視界が、一気に開く。
そこには青く透き通る湖が広がっていて、その横に一軒の古そうな小屋らしき建物があった。その小屋の入り口の上には『香霖堂』という文字が。
 「ここか……マミゾウさんが言っていた雑貨屋は」
 「……ボロそう」
 「こら、舞狸。見かけで判断したら失礼じゃないか。きっと建て替えする金がなかったんだ」
 「今の影都の発言のほうが失礼だよ……」
 「じゃあ入るか(無視)」
 意を決して、その香霖堂という小屋に入ると、外はまだ明るいにも関わらず、丸電球一つの明るさしかなかった。
 薄暗く若干湿ったその香霖堂の中は、骨董品やよくわからない機械のようなものが店の大半を埋めていた。
そして、その店の奥には
「ああ、いらっしゃい」
 眼鏡をかけた長身白髪の男が腰かけていた。雰囲気からして、何か秘めたような感じがするのは気のせいだろうか?
 「えっと……俺たちは、」
 「わかってるよ。マミゾウさんの紹介で来たのだろう。影都くんと舞狸くんだね。はじめまして、僕は森近霖之介もりちかりんのすけという」
 右手を差し出されたので、条件反射で右手を出して握手を交わした。
 「あ、はじめまして」
 「……どうして、私たちのことを?」
 舞狸は自分たちの正体を明かされたことに驚いたらしい。
 「君たちのことは紫さんから聞いていたからね」
 「ゆかり、さん?」
 聞いたことのない名前に疑問を感じたが、
 「さて、時間も限られているから、さっと説明するよ」
と、霖之介さんは構わず話を続ける。
 「本来なら、君たちはこの幻想郷を見ることすら出来ない現代人なんだけれど……どうやら君たち二人は呼び出されたみたいだね」
 「呼び出された……それが異変に関わることなんですか」
 「そう。僕は戦うことが出来ないから……今僕に出来ることは、君たちの援助だ」
 「……と、いうと?」
 「これだよ」
そう言って霖之介さんが出したのは、
 「これは……日本刀?」
 「……槍、両刃の」
 右手に日本刀、左手に槍を持った霖之介さんは人の良い笑顔を見せた。

 「影都くんにはこの日本刀――〝天鉄刀《幻星》〟を
 舞狸くんには両刃槍――〝地双残槍〟
を与えよう。君たちの得意分野に合わせて選んだ一級品さ。これで異変を解決してくれ」

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