幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第二話.導き-11~

俺と舞狸は博麗神社と呼ばれる場所を目指して、木々の間を縫うように歩いていた。
 辺りは緑一面で、よく風が通っている。
 「霖之介さんによると、博麗神社はここから人里をはさんで向こう側にあるらしい」
 「……じゃあ、一度、人里に……」
 「ああ、戻るか」
また鈴奈庵に行って、近状報告でもするのだ。鈴奈庵を出てから一時間ほど経っているが、まだマミゾウさんはいるのだろうか……
 …………。
しばらくの間、無言の時間が続いた。
 俺が前を歩いていたので、後ろから追ってきている舞狸を振り返った。舞狸が俺の視線に気づくと、なぜか顔をうつむかせて目を合わせないようにしているようだった。耳は垂れて、尻尾は小さく揺らされていた。
 狸人化した舞狸はいつもより感情がわかりやすくなっている気がした。
しかし、
 (……なんだろう、この気まずさ……)
 特に舞狸と会話する話題はないのだが、何故だか嫌悪感がある。意味がわからない。なんだ、嫌悪って。不快感とか全く無いから。
 「……あのさ、舞狸?」
 「……何?」
 「……俺のこと、どう思ってる?」
 「……っ?!な、なにを……」
その瞬間、舞狸のふさふさな耳と尻尾が一気に逆立った。
 「いや、前まではライバルとか言ってかかってきてたけど、何かと俺を助けてくれるよな……結局何なんだ?」
 「……それは、貴方に死んでもらっては、困るから……」
 「前は鉄パイプで殴りかかって来た人(狸)のセリフじゃないよな」
 「……私が、貴方を倒すのは、いいの」
 「なんて理不尽な……8年間も同じ時を過ごしてきていたんだから、少しぐらい信用してくれても……」
 「……信用はしている。だけど、まだ」
 「一体何が足りないんだ?」
 「……そ、れは……貴方から、…………と、言って……」
 「舞狸?聞こえないぞ?」
 「……だからっ、貴方から、す」
 「あの~、お二人さん?」
 「……ひっ」「お?」
 突然呼ばれた声に舞狸は驚き、俺は胸ポケットを覗いた。
 今までほとんど台詞無しだった小人、針妙丸が声をかけたのだ。その顔は少し心配するような表情だった。
 「どうした針妙丸。実家にいる母親が死にそうになって慌てて電車に乗っているときにする神妙そうな顔して……神妙……針妙、丸」
 「……っ」(クスクス)
「例えが具体的過ぎるし、途中駄洒落入れたよね?舞狸のツボに入ってるよ……」
 「気のせいだよ。で、どうした?」
 俺は針妙丸を手に乗せながら移動を続ける。
 「えっと……私にもよくわからないんだけど……」
 「なにが?」
 「……もう博麗神社に着いているんだ」
 「「は?」」
それを聞いた俺と舞狸は、はじかれるように顔を上げた。さっきまでは森の中、木々ばっかりだったのだが―――
「ここ、博麗神社の石段だよ……あ、あれは?」
 目の前には、結構上まで繋がっている石段。そして、

 「いかにも、生きていなさそうな人形……だな」
 「……敵、だ」
 明らかにこちら側に敵意のこもった目を向ける敵……木偶人形が五、六体いた。

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