幻想妖華物語
幻想妖華物語~第一話.変わる自分-6~
―――帰ってきてしまった。
サバイバル山を離陸し、我が家に着陸したヘリコプターから降りたときの、俺の第一声だ。
その台詞を口にした瞬間、急に意識がなくなった。
そして、そのまま翌日を迎えた。
その記憶もないとなると、学校に向かうまで、殆ど無意識に行動していたのだろう。
 正直言うと、まだ帰りたくなかった。
サバイバルとは思えないほど充実した日々で、狩りや洗濯、ツリーハウスまで作り、手先が器用になった。武家の身として対戦能力も上がったはずだ。
それに―――
俺は山で出会った不思議な少女、侑廻舞狸を思い出す。彼女と一緒にいた時間ほど楽しいものなど、ないだろう。
 俺はずっとその事ばかりを考えながら、騒がしい学校の校門をくぐった。
 『―――ここにxを代入することにより、解を求めることが………』
 学校の授業は退屈だ。もう既に勉強したものばかりで飽きる。
 廊下とは反対、窓側の席一番後ろに座っている俺は溜め息まじりに、
 「………舞狸」
 気付けばその言葉を口にしていた。
 周りの音が遮断されたように聞こえなくなる。否、無意識に遮断していたのだろう。
もう他のことは考えられなかった………
そんな日が続いて約一ヶ月がたったある日。
 今日の朝は何だか教室が騒がしかった。いや、いつものことなのだが、今日のは少し違った。
 『なんか、今日は転校生が来るらしいよ?』
 『まじか。どんな子だろう』
 『男子か女子か』
 『男子に五千円かける』
 『じゃあ私は女子に三千円ね』
 『金を賭けるなよアホか』
 『悲報〝小学生、賭博屋と化す〟』
 小学生とは思えない会話に耳を傾けながら、本を開く。俺には関係のないことだ………
「はーい、皆おはよー。………皆もう気付いていると思うけど、今日は転校生を紹介したいと思いまーす」
 先生がそんなことを言いながら教室に入ってきたが、俺は本から顔を上げなかった。
 「んじゃ、転校生さん。入ってきてー!」
クラスの皆が廊下側前方の扉を直視する。
 「………(ガラッ)」
あれ、廊下側前方の扉からは一番遠いのに、やけに近い………いや、後ろから聞こえたような………?
 顔を上げると、クラスの全員がこちらを見ていた。
 『は?そっからかよ!』
 『見ろ、転校生は女子だ!』
 『よっしゃ。三千円GETだぜッ!』
 『いやそんなことよりも、だ!』
 『窓から、入ってきた………?』
 『ココ、三階………だよな?』
 「は………?」
 俺もつられて振り返った。そこには―――
「………久し振り、九我龍影都」
 懐かしい、茶色の頭髪。
 一般と比べると小柄な身体。
 少し懐かしい緑の山の香りが、空風に乗って感じた。
 「………え………う、侑廻、舞狸………か?………舞狸なのか………?」
 「………そう、侑廻舞狸。………また会えたね、影都」
その時、舞狸の無表情に近いが、たしかに彼女の微笑みを初めて見た。
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