幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第二話.導き-1~

ここは人里。人間たちが静かに平和に暮らしている場所で、害を及ぼす〝妖怪〟さんたちは入ってこない場所です。
ここは鈴奈庵すずなあん。幻想郷で発行された本、外の世界から入荷されてくる外来本がいらいほん、珍しくて中々手に入らない希購本きこうぼん。―――そして、〝妖怪〟さんたちの事が書いた、書かれている《妖魔本ようまほん》がたくさん置かれている本屋です。
 今日は晴れ。そんな日は部屋で静かに読書をするに限ります。いや、それ以外することがありません。カウンターの机で妖怪の字で書かれた妖魔本を開く私。
……ペラ……ペラ。
 本はいつ読んでも面白いけれど、独りでいるのは飽きちゃう。

……はぁ。何か運命的な出会いとかないかなぁ……。
そんなことを思いながら、私は本のページをめくるのです。

     ☆☆☆

「はー。よし、人里に着いたな」
 「……疲れた。休憩したい」
 俺と舞狸は人里の隅から侵入―――もとい、入国ならぬ入里した。
 太陽の傾いている位置からすると、今は昼時だろうと推測する。風が強く、雲の流れを確認し、空気の匂いを嗅いでみる。
 「舞狸。こりゃ一雨来るかもしれない。早めに雨宿り出来る建物を探そう」
 「……どうしてわかるの?」
 「……あの時、そういうことに気を配らなきゃ、生きていけなかったからな……その時に身に付けた技さ」
 「……そう」
でもまあ、もしかすると、元の世界とこの世界では気候の変化が違うのかもしれないが、用心するのに越した事はない。
 「といっても、後三、四時間は問題なさそうだから、観光がてらこの《幻想郷》っていう世界のことを調べようか」
 「……わかった」
と、その瞬間
……グゥ~……。
 腹の底から唸り声が出たような音がした。何事か、と周りを見渡すと、
 「…………っう///」
お腹を押さえてしゃがみこんでいる舞狸を見つけた。
 「……え、舞狸?」
 「……別にお腹なんて空いてない」
 「まだ何もいってないだろ」
 「……墓穴を掘った」
 顔は俯いていてよく見えないが、耳が真っ赤になっているところをみると、余程恥ずかしかったのだろう。
 「そうだな。先に昼飯を食べるか」
 「……別に、いらない」
 「とか言って、朝飯も食ってないんだろ?」
 「……うっ」
 「金は払ってやるから、飯食いに行こうか」
 「……それよりもそのお金、この世界で使えるの?」
 「…………あ?」

・・・・・・
『―――さあ、皆の者。準備はいいか?……丁か半かッ!』
 『半に有り金を賭ける!』
 『丁だ!俺も有り金全部だ!』
 『半に決まってるだろ!』『いや、絶対に丁だ!』

 俺と舞狸は里外れの賭博屋に足を踏み入れた。いや、踏み入れてしまったと言うべきであろうか。
 調べてみたところ、この幻想郷では、通貨は円ではなく、銭だった。いつ時代だよとツッコミたくなった。
 正直、このような場所に入りたくはなかった。しかし、これ以外に金を稼ぐ方法が無かったので仕方無し、とやって来たのだ。
 「……影都」
 「ん、なんだ?舞狸」
 「……賭博場開帳等図利罪とばくじょうかいちょうとうとりざい
 「…………はい?」
 「……寺銭てらせんなどで利益を得るために賭博場を開き、客に賭博をさせる罪。これは自分が賭博に加わらなくても成立する。……刑法第186条第二項が禁じ、3月以上5年以下の懲役に処される」
 「お、おふ……よく知ってるな。てか舞狸、意外と法に厳しいのな……」
 「……賭博は、日本では重罪」
 「と、言ってもだな、舞狸。そもそもここは日本じゃないし、これは正当な稼ぎなんだよ多分……な?」
 「……じゃあ、取り引き」
 「な、何かな?」
 「……勝ったら、みたらし団子、奢って?///」
 「……ぷっ。あははははっ!」
 「……笑わないで(ブンブン)」
 「ちょ、室内でパイプ振り回すな!分かったから!」
 「……約束スッ
 「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれよ(パンッ)」
そして、俺は金を得るために賭博の輪に突っ込んだ

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