ツンデレ妹とヤンデレ妹に愛されすぎて困ってます!

淳平

6話「妹たちと思い出」

 温泉旅行から帰ってきてからの夏休みはあっという間に過ぎていった。
 旅行中の時間が濃かった分、その後の時間はあっという間に感じた。
 その後の俺と茜は溜りに溜まった宿題に追われていた。
 智咲はしっかりしているもので、旅行前に全て終わらせてしまったらしい。

 そして夏休み最終日の今日、俺と茜は宿題に励んでいた。

「やばいやばいやばい。 絶対間に合わないってこれ!」

 俺の残りの宿題は書き取り30ページ、読書感想文、数学の問題集一冊だ。

「ふうー。 やっと終わったー」

 俺の隣で宿題していた茜が大きく伸びをする。
 どうやら宿題をやり終えたらしい。

「茜、お疲れ様」
「ちーちゃんありがとー」

 智咲がオレンジジュースを持ってきてくれた。
 労働……いや勉強中のジュースは美味い。

「プハー、生き返るなー」
「陽兄おじさんみたい」
「兄さん下品」
「うっせ。 兄さんは頑張ってるからいいのだよ」
「ふーん。 普通は宿題なんてすぐ終わらせるのにね〜」
「そうだそうだ〜。 陽兄の怠け者〜」
「茜に言われたくねえよ!」
「ニヒヒ〜、私は終わりました〜」
「ぐぬぬ……」
「兄さんも早いとこ終わらせなさいよね……って茜、自由研究やってないじゃない」

 智咲が茜のやり終えた宿題を整理しながら茜に問う。

「あっ……わ、忘れてた……」

 あわわと焦る茜。

「へっへーん。 茜も終わってねえじゃねえか」
「……陽兄嫌い」

 拗ねてぷいっとそっぽを向かれてしまった。
 拗ねた顔も可愛いのだが、「兄さん嫌い」は兄さんとしてとてもキツイ。

「す、すまん茜」
「……知らない。 陽兄なんて」
「くう……」

 謝っても相変わらずそっぽを向く茜。
 ぐぬぬ……どうしたらいいんだ。

「……兄さんって単純ね。茜、わざとやってるに決まってるじゃない」

 ため息まじりに言う智咲。

「な、なにぃ! そ、そうなのか?」
「ニヒヒ〜、バレちゃあしょうがないな〜」
  
 舌を出しニヒヒと笑う茜。
 くそっ! 騙されたぜ!

「ていうか茜、明日から学校なのに自由研究やってないなんてまずいんじゃないの?」
「ふっふっふ。 ちーちゃん、私、ちゃんと自由研究してたよ」
「何の研究よ?」
「陽兄の観察日記!」

 ドヤ顔でそう豪語する茜。

「いやいやいやいや、俺の観察日記ってふざけすぎてるだろ!」
「いいんじゃない? 自由研究は自由なんだし」
「ニヒヒ〜、そうでしょ〜。 私は自由なのだ〜」
「ほ、本気なのかよ……」

 *

「……なあ茜。 あんまジッと見られると集中できないんだけど……」
「シッ。 動かないで! 今似顔絵描いてるんだから」
「似顔絵も書くのかよ……」
「大丈夫。 ちゃんとかっこよく描いてるよ〜」
「……そういう問題じゃないんだけどな」

 3時間後。
 宿題が一区切りついて俺は大きく伸びをした。

「ふーっ。 あとは読書感想文だけか」
「お疲れ様〜、陽兄」
「おう、ありがとよ」
「ちょっと休憩しようよ〜。 私も疲れた〜」
「お前はずっと俺のこと観察してただけだろうが」
「ニヒヒ〜、気にしない気にしない」

 そう言って茜はナチュラルに俺の膝の上に座ってきた。

「ふうー。 極楽極楽」
「ちょっと茜さん。 俺の膝は椅子じゃないんだが?」
「陽兄は私の椅子だよ〜」
「いや違うだろ〜」
「あ〜、陽兄私の真似した〜」
「似てたか?」
「ぜーんぜんっ!」
「けっ。 ……懐かしいなー、茜も小さい頃は俺の真似ばっかしてたんだぜ? 何をするにしても俺の後をついてきてたなあ」
「へー」
「覚えてなさそうだな」
「ぜーんぜんっ!」
「そっか……」

 まあ茜も智咲も相当小さい頃だったからな。
 忘れていても無理はない。

「よっと」

 俺の膝の上から茜は立ち上がった。
 すると茜は隣の部屋に行ったかと思ったらすぐ俺の膝の上に戻ってきた。

「じゃーん!」

 茜が広げて見せたそれは我が家の家族アルバムだった。
 自然と懐かしさがこみ上げてきた。

「わー、陽兄若〜い」
「そりゃあこの頃は5歳だからな。 その隣にいるお前らの方がもっと若いぞ」
「かーわい〜私もちーちゃんもこんな可愛いかったのか〜」

 兄弟3人で並んで写っている写真。
 俺が当時5歳で妹たちは1歳。
 写真の中の俺たちは皆、良い笑顔をしている。

「兄さんたち何してるの? ……って何見てるの!」

 何故か恥ずかしそうな智咲。

「家族アルバムだよ〜。 ちーちゃんも見よ〜」
「嫌よ! 恥ずかしい……」
「ふーん、じゃあいいよ〜。 あー、この陽兄可愛いな〜」

 茜がそう言うと智咲は気になる仕草を見せた。

「あー、可愛いなあ〜。 これを見ないなんてもったいないな〜」
「……私にも見せて」
「ちーちゃん、正直でよろしい! 皆で一緒に見よ〜」

 そして俺たちはアルバムの写真を一枚一枚眺めた。
 この時こんなだったんだぞ、こんなエピソードがあってなとか思い出話も混えた。

「あー、終わっちゃったー」
「私たちの入学式の写真で終わりね。 そういえばあれから写真ってあんまり撮ってないわね」
「そういえばそうだな。 温泉旅行の時も撮ってないような……」
「ふっふっふー。 じゃーん!」

 茜はさっき自由研究用に使っていたノートを広げた。
 するとそこには俺の似顔絵……じゃなく、俺と菜摘、智咲、茜が笑顔で花火を見上げている絵が描かれていた。

「ニヒヒ〜、夏の思い出」

 茜はそう言ってちょっぴり恥ずかしそうに笑った。

「これ、アルバムに追加したらいいんじゃない?」
「ちーちゃんナイスアイデア!」
「だな。 そうと決まれば早速!」

 俺たちは俺たちの夏の思い出をアルバムに追加した。
 それからしばらく旅行の思い出話をしていたら3人とも眠くなりいつの間にか眠りについていた。

 翌朝、俺が読書感想文をやっていないことに気付き絶望したのはいうまでもない。

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