真っ白な少女の成長譚
challenge2
ー2125年 4月25日 AM7:23 北海道 大柳家付近ー
歩夢が家を飛び出してから十数分。
彼女は住宅街の塀の上を走りながらその足を急がせていた。
「あー、もう!なんであのエロ親父は毎日毎日余計なことばっか言ってくんのよ!」
などと走りながら愚痴っている歩夢であるが、そこに息を切らしている様子はない。
当然である。
彼女は現役女子高生にして『対魔物特殊機動部隊』志望なのだ。
世界中に蔓延る『魔物』だけを討伐するためだけに作られた特殊部隊。
年頃の少女にしてはずいぶん殺伐とした夢であるが、それを志すこととなった原因としては彼女の父、真白 健の影響が強いだろう。
なにせ、彼女の父は対魔物武装組織の一つ、 世界中でも屈指の強さを誇る組織『救世主の剣《Savior Seber》』、通称『SS』の構成員なのだ。
幼き頃より、そんな父の背中を見て育った彼女にとって、『それ』を志すのは当たり前のことだったのかもしれない。
それでも『SS』の構成員を志していないのは彼女なりの見栄か、矜持か。
「全く、ホントにもう!何なのよあのクソ親父は!」
……年頃の乙女としての父に対する反抗意識か。
口汚くそんな言葉を呟いた彼女はある一軒家の前でその足を止め塀の上から飛び降りる。
「おいコラ!さっさとしないと遅刻するぞ!出て来いコノヤロウ!」
「あのなぁ?あまり女の子が汚い言葉を口にするな。また健おじさんにどやされるぞ?」
一軒家の扉の向こうに向けて放った罵声は思わぬ方向から帰ってきた。
その声の主はすぐ後ろのにいた。
電柱に寄り掛かり、タブレット端末を弄りながら口元に苦笑を浮かべた眼鏡の少年だった。
「また朝から親子喧嘩か?相変わらず家族仲がよろしいことで」
そう言って少年、大柳 蓮は苦笑を崩さぬまま歩夢のもとに歩み寄る。
「あんな親父願い下げだ!」
「俺に怒鳴ってどうすんだよ……」
「うっさい!いいからさっさと行くわよ!」
そう言って無理やり蓮の手を引いて歩き出す歩夢。
そんな歩夢の行動に呆気に取られながらも諦めたような表情で成すがままにされる蓮。
「まあ、いいけどよ。それよりお前はどうすんだ」
「なにが!?」
「これだよ、これ」
蓮はそう言って一度仕舞ったタブレット端末をカバンから再度取り出し画面を歩夢に向ける。
「?【『対魔物特殊機動部隊』訓練生募集中】……?」
「そそ。お前ならとっくに知ってると思ったんだが……ほら、いっつもホームページ確認してるじゃん、お前」
「………携帯、また壊れたから、確認できなかったのよ。パソコンなんて家にはないし……」
「……ちなみにどうやって壊した?」
「訓練中に、ポケットに入れてたの忘れて……」
「自業自得だな」
「…………」
「…………」
なんとなくいまずい空気が流れる。が、レンはそれを払拭するように小さく咳払いをして会話を続けた。
「そ、それでお前はどうするんだ?その様子だとエントリーはまだなんだろ?」
「あ、うん。エントリーの締め切りっていつまで?」
「今日の昼」
「え?」
「ちなみに実施日も今日だ」
「は?」
「そしてこれが公開されたのも日付が変わってからだ」
「…へ?」
「…………で、どうする?」
「……ちょっと、端末貸して?」
「うぃ」
「ありがと」
蓮からタブレット端末を受け取った歩夢はホームページ上の記入科目に必要情報を全て入力し、フリーのメールアドレスからエントリー確認のメールを受け取る。
エントリーが完了したのを確認した歩夢は蓮に端末を返すと大きく息を吸い込み胸中のすべての感情を爆発させた。
「アホかァァァァァ!?」
それはこの試験にエントリーしたであろう訓練生候補全員の心境を表すものだった。
to be continued...
歩夢が家を飛び出してから十数分。
彼女は住宅街の塀の上を走りながらその足を急がせていた。
「あー、もう!なんであのエロ親父は毎日毎日余計なことばっか言ってくんのよ!」
などと走りながら愚痴っている歩夢であるが、そこに息を切らしている様子はない。
当然である。
彼女は現役女子高生にして『対魔物特殊機動部隊』志望なのだ。
世界中に蔓延る『魔物』だけを討伐するためだけに作られた特殊部隊。
年頃の少女にしてはずいぶん殺伐とした夢であるが、それを志すこととなった原因としては彼女の父、真白 健の影響が強いだろう。
なにせ、彼女の父は対魔物武装組織の一つ、 世界中でも屈指の強さを誇る組織『救世主の剣《Savior Seber》』、通称『SS』の構成員なのだ。
幼き頃より、そんな父の背中を見て育った彼女にとって、『それ』を志すのは当たり前のことだったのかもしれない。
それでも『SS』の構成員を志していないのは彼女なりの見栄か、矜持か。
「全く、ホントにもう!何なのよあのクソ親父は!」
……年頃の乙女としての父に対する反抗意識か。
口汚くそんな言葉を呟いた彼女はある一軒家の前でその足を止め塀の上から飛び降りる。
「おいコラ!さっさとしないと遅刻するぞ!出て来いコノヤロウ!」
「あのなぁ?あまり女の子が汚い言葉を口にするな。また健おじさんにどやされるぞ?」
一軒家の扉の向こうに向けて放った罵声は思わぬ方向から帰ってきた。
その声の主はすぐ後ろのにいた。
電柱に寄り掛かり、タブレット端末を弄りながら口元に苦笑を浮かべた眼鏡の少年だった。
「また朝から親子喧嘩か?相変わらず家族仲がよろしいことで」
そう言って少年、大柳 蓮は苦笑を崩さぬまま歩夢のもとに歩み寄る。
「あんな親父願い下げだ!」
「俺に怒鳴ってどうすんだよ……」
「うっさい!いいからさっさと行くわよ!」
そう言って無理やり蓮の手を引いて歩き出す歩夢。
そんな歩夢の行動に呆気に取られながらも諦めたような表情で成すがままにされる蓮。
「まあ、いいけどよ。それよりお前はどうすんだ」
「なにが!?」
「これだよ、これ」
蓮はそう言って一度仕舞ったタブレット端末をカバンから再度取り出し画面を歩夢に向ける。
「?【『対魔物特殊機動部隊』訓練生募集中】……?」
「そそ。お前ならとっくに知ってると思ったんだが……ほら、いっつもホームページ確認してるじゃん、お前」
「………携帯、また壊れたから、確認できなかったのよ。パソコンなんて家にはないし……」
「……ちなみにどうやって壊した?」
「訓練中に、ポケットに入れてたの忘れて……」
「自業自得だな」
「…………」
「…………」
なんとなくいまずい空気が流れる。が、レンはそれを払拭するように小さく咳払いをして会話を続けた。
「そ、それでお前はどうするんだ?その様子だとエントリーはまだなんだろ?」
「あ、うん。エントリーの締め切りっていつまで?」
「今日の昼」
「え?」
「ちなみに実施日も今日だ」
「は?」
「そしてこれが公開されたのも日付が変わってからだ」
「…へ?」
「…………で、どうする?」
「……ちょっと、端末貸して?」
「うぃ」
「ありがと」
蓮からタブレット端末を受け取った歩夢はホームページ上の記入科目に必要情報を全て入力し、フリーのメールアドレスからエントリー確認のメールを受け取る。
エントリーが完了したのを確認した歩夢は蓮に端末を返すと大きく息を吸い込み胸中のすべての感情を爆発させた。
「アホかァァァァァ!?」
それはこの試験にエントリーしたであろう訓練生候補全員の心境を表すものだった。
to be continued...
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
55
-
-
26950
-
-
3087
-
-
35
-
-
2
-
-
52
-
-
24251
-
-
59
-
-
93
コメント