新世界と転生の賢者

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厨二病?と転生の賢者

転移魔法で魔力を最低限残して移動
その後は夜まで走り
適当な街で朝まで馬車に乗る

馬車に乗っている時に睡眠と現状の把握を済ます
まず今の私は不完全な存在だ
転生体と同じ・・・魂だけの存在になっている
魂がむき出しの状態
このままいけば一週間もせず存在が消滅するだろう

健治の存在は向こう側に検知できた
体も無事に勉学に励んでいる
アリスかエンドシャドウという小僧がなんとかしたのだろう
徐々に疑似世界の仕組みを把握しながら睡眠を取る

そんな生活が3日
冬国コンスタン帝国から秋国、夏国
桜舞う春国和の国を通り過ぎると目的地であるグラフ王国だ

「久しぶりの長旅じゃったのぅ」

全身埃まみれの私はまるでボロ雑巾のような出で立ちである

『うわ、何あの子汚!』
『そういうロールプレイ?』
『NPCじゃないか?』

道行く人々の台詞に何処か安堵する
断っておくが決して私が被虐体質なわけではない
ここまでの人間は皆一様に
私の過去の記憶の再生に過ぎなかったのだ

少なくとも先ほど横切った冒険者のような言葉は前の世界に無かった

久しぶりに感じる新鮮味に鼻歌を歌いながら自身に洗浄魔法をかける
水の膜が出現私を取り込むと
体の汚れだけを吸い取っていく
水滴を滴らせながら外に出ると
綺麗になった髪が太陽の光を反射させ金色に光る

決して汚いと言われた事を気にした訳ではない
研究に没頭して埃まみれになる事なんていつもの事だ

「さて・・・ドラゴンはどうなっておるかのぅ・・・」

いきなりボロ雑巾から美少女に変化した私に驚愕の眼差しを向ける先程の三人

「そこのお主!ドラゴン討伐はどうなっておるかのぅ」
「現在グラフの酒場にてクランリーダーが討伐会議中です!」

汚!っと言った女冒険者が敬礼しながら答える
討伐されていれば儲けと思っていたがそう簡単にはいかないらしい
三人に別れを告げグラフ街に向かう

ここはグラフの東側だろう
東の地帯は岩場が多く
戦乱の時代は盗賊の隠れ家に
平和な時代は子供の秘密基地になっていた
今も一人のNPCがこちらを見て何か言っている

「あ!き!君・・・いや!貴方様は!」

岩山から軽やかに降りると私の前に跪く黒服
何処かで見た顔にてっきりNPCかと思ったが
そうじゃあの時のエンドシャドウと言ったか

向こうにいた時と同じ全身黒服姿だ

「我が師にして主よ!貴方はあの時の救世主ですね!」
「久しぶりじゃのぅ青葉太・・・」
「や・・・!やめろぉぉ!その名を口にすると大いなる災いが起きる!」
「・・・久しぶりじゃのぅエンドシャドウ」

いつの間にか青葉太郎という言葉が大魔法にかわっておる?そんな兆候はなかったがのぅ
†エンドシャドウ†は先ほどの取り乱した姿が嘘のようにポーズを決める

「あの時、我を悪魔から救い出した恩・・・いつか返すために探し・・・魔術の研究もしてきた」

悪魔なんて危険な生物おったかのぅ・・・?
正直悪魔種と私が戦えば街が一つ吹き飛ぶ

「何か手を貸せる事はないか?」

エンドシャドウが今までとはうって変わって真剣な表情になる

「そうじゃのぅ・・・ちょうど手を借りたい事がある」
「箱舟に乗ったつもりで言うが良い!今の我は最強ぞ!」
「今から数分程お主を現実世界に転移させる・・・その時私を助けてくれ」

†エンドシャドウ†は目を光らせ涙を流し頷く

「了承じゃな?それいくぞぃ」

掛け声と共に魔力で†エンドシャドウ†を覆う
†エンドシャドウ†の姿がブレて薄くなっていく
虚空に消える†エンドシャドウ†を横目に酒場に急ぐ

エンドシャドウと出会う事
この事は既に知っていた
ドラゴン戦の記憶の書き換え
あれは実験のし過ぎで半世紀過ぎた時私が使っていた魔法だ
つまり未来の記憶の一部
ここでエンドシャドウと出会いあの場に記憶を飛ばす
その結果たまたまあの場の近くにいた小僧が助けに来る事になる

「世の中何が起きるかわからんものじゃな・・・」


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