異彩の瞳と銃創造者
夢魔
体に重さを感じる、魔力切れのせいだろうか、そう解釈をつけるのは簡単だった。だが、そうは言い切れない理由があった。
「はぁ、はぁ、これがレン様の匂い。えへへ」
仰向けで寝ているレンのお腹の部分に温かく柔らかい感触が、それと同時に腰のあたりに感じていた重たさが、全体で感じられるようになる。よく聞くと、スンスンという音が聞こえる。
レンが恐る恐る目を開けてみると、その視界に入ったのは紺色の髪だった。この家で、紺色の髪を持つのはアイラだけである。つまり……?
「アイラ、何してんの?」
「ひゃぁ!?」
痺れを切らしたレンが声をかけると、アイラが驚いたように声をあげ、上半身を起こす。
「……あ、あの……その」
窓からの、月光にアイラが照らされ、赤くなった顔が見えた。ただそれだけならよかった。だが普通と違うものがそこにあったのだ。黒い羽と黒い尻尾がそれによく見ると小さいが角もある。
「み、見ないでください。うぅ、はずかしいよぉ」
よくよく見ると、オプシディアンの瞳は赤く染まっていて、息も荒い。服装はメイド服のまま、だが、姿は。
「吸血鬼?」
「ち、違います。わ、私は……サキュ……です」
「え? もういっかい」
「だから、サキュバスなんですってば!」
うるうると涙を貯めるアイラをとりあえず、上からどかして、事情を聴くことにした。
サキュバスと言えば夢魔とか淫魔とか呼ばれていて、夢の中に現れエロいことをしていく悪魔だった気がするんだが。
説明を聞きながらも、レンはアイラを観察していた。羽も尻尾も自在に動かせているし、息も荒くなっているが、理性はしっかり保っているようだ。
「えっと? つまりアイラは人とサキュバスのハーフで、俺の魔力に当てられて、夜になったらその衝動が抑えられなくなったと」
「……はい」
なんでも、生まれたはいいがすぐに森に捨てられて、そこを運よく通った、アルムとシウナに拾われたらしい。そして、アイラの事情を理解したうえで屋敷で雇っているそうだ。
「何やってんだか」
「そうですよね。私なんかがレン様の専属なんて……いやですよね」
「は? 何言ってるの?」
「ですから、レン様の専属を私なんかが……」
「あー違う違う。俺が言いたかったのは、こんな事情を抱えてるのならなんで早く相談してくれないの? って話。だってアイラは俺の専属なんでしょ?」
レンがそう言いつつ、アイラの顔を見ると、涙が頬を伝っていた。
「えっちょっと、なんで泣いて……」
「だって、それってこれからも私はレン様の専属でいいってことでしょ?」
「そりゃ、そうでしょ?」
「それが、とてもうれしいのです」
気づいたときにはアイラの羽も尻尾も角もなくなっており、赤色の目も元の色に戻っていた。
「ありがとうございました」
「ううん。いいよ。これからも何かあったらすぐに相談してね。だって僕はアイラのご主人様なんでしょ?」
「わかりました、レン様。
アイラは俺に笑顔を向けると、ドアの穂へと向かって歩き出した。
まだ日は登っていないが、朝が近い、もうひと眠りしようと、ベッドに潜ろうとしたレンに声がかかった。
「レン様。話を聞いている途中。口調が変わってましたよ。それでは失礼いたします」
そう言えば、俺って言って喋っていた気がする。
「まぁいいか」
レンはもう気にすることなくベッドにもぐりこんだ。
❖ ❖ ❖
「姉さん」
レンは朝ごはんを食べると、レレーナへと話しかけた。先の件のせいか、アイラはレンを見ると顔を赤くして、仕事をするためか、別の場所に移動してしまう。そこで、レンが目を付けたのが姉だ。
「何?」
「戦闘訓練を手伝ってください!」
「いいわよ? じゃあ準備をしたら中庭に行くわ」
「わかりました」
レンはレレーナから返事をもらうと、すぐに中庭の方へと駆け出した。
(ふふっ、あれ以来レンがよく話しかけてくれるようになったわ。これもお父様のおかげね、感謝になくっちゃ)
そんなことを思いながらもレレーナは準備のために一度部屋へと戻った。
レレーナが中庭に到着し、お互いに一定の距離を開けて剣を構える。レレーナが構える武器は細剣。レイピアとも呼ばれる着くことを主流とした武器だ。対してレンが持つ武器は何の変哲もない普通の片手用直剣。お互いに持っている武器は刃はついていないが、金属でできているため普通に当たれば怪我ぐらいは普通にするだろう。
だが、お互いに魔法も使い、レレーナもレンも強化魔法は既に習得しているため、多少は無茶しても大丈夫だろう。
ちなみにこの段階で強化魔法を覚えているレンが異常ということは忘れずに、レレーナにいたっても同様であり、普通は学園に通うか家庭教師などで学ぶことが主流である。
「いつでもいいわよ、かかってきなさい」
レイピアの切っ先を揺らし、レレーナは待つことを主体とするようだ。
「では、こちらから行かせていただきます!」
剣を右下に垂らし、切っ先は地面ぎりぎりに置く。そして体を大きく前に倒し、レンはレレーナへと向かう。
足に魔力を集中し、一気に加速する。レレーナはそれを待っていたと言わんばかりに、レイピアを前へと突き出す。
レンは右下にある剣を左上へと斜めに切り上げる。レンの剣とレレーナのレイピアが交差する。
つばぜり合いになる前に、分が悪いレレーナはレンから距離を取りつつ魔法を放つ。
『ウィンドスピア』
レレーナがレイピアを持っていない、左手をレンに向け、風の槍を飛ばす。対して、レンも左手に魔力を集め、その魔力を指先に集中させる。そして空中に魔力の軌跡で文字を書いていく。迫りくる槍を目の前に文字を完成させ起動式を唱える。
『エイワズ』
レンは空中にルーン文字を刻み発動させる。
エイワズの意味は防御。文字を中心に魔力壁を形成し、レレーナのウィンドスピアを受け止める。効果を発揮すると、ルーン文字は消える。
「それは、ルーン魔術ね。ここ最近じゃ使う人なんてほとんどいないのにもの好きね」
「僕はこの魔法と相性がいいようなので!」
その後もレンとレレーナの戦闘は続いた。結局シウナが止めるまで、戦闘は終わらず、引き分けということで落ち着いた。
その戦いを遠くで眺めている一人の少女がいた。
「いいなぁ。私も姉さまや兄さまみたいに遊びたいなぁ」
少女は大きめの人形を胸に抱き、部屋の中へと戻っていった。
「はぁ、はぁ、これがレン様の匂い。えへへ」
仰向けで寝ているレンのお腹の部分に温かく柔らかい感触が、それと同時に腰のあたりに感じていた重たさが、全体で感じられるようになる。よく聞くと、スンスンという音が聞こえる。
レンが恐る恐る目を開けてみると、その視界に入ったのは紺色の髪だった。この家で、紺色の髪を持つのはアイラだけである。つまり……?
「アイラ、何してんの?」
「ひゃぁ!?」
痺れを切らしたレンが声をかけると、アイラが驚いたように声をあげ、上半身を起こす。
「……あ、あの……その」
窓からの、月光にアイラが照らされ、赤くなった顔が見えた。ただそれだけならよかった。だが普通と違うものがそこにあったのだ。黒い羽と黒い尻尾がそれによく見ると小さいが角もある。
「み、見ないでください。うぅ、はずかしいよぉ」
よくよく見ると、オプシディアンの瞳は赤く染まっていて、息も荒い。服装はメイド服のまま、だが、姿は。
「吸血鬼?」
「ち、違います。わ、私は……サキュ……です」
「え? もういっかい」
「だから、サキュバスなんですってば!」
うるうると涙を貯めるアイラをとりあえず、上からどかして、事情を聴くことにした。
サキュバスと言えば夢魔とか淫魔とか呼ばれていて、夢の中に現れエロいことをしていく悪魔だった気がするんだが。
説明を聞きながらも、レンはアイラを観察していた。羽も尻尾も自在に動かせているし、息も荒くなっているが、理性はしっかり保っているようだ。
「えっと? つまりアイラは人とサキュバスのハーフで、俺の魔力に当てられて、夜になったらその衝動が抑えられなくなったと」
「……はい」
なんでも、生まれたはいいがすぐに森に捨てられて、そこを運よく通った、アルムとシウナに拾われたらしい。そして、アイラの事情を理解したうえで屋敷で雇っているそうだ。
「何やってんだか」
「そうですよね。私なんかがレン様の専属なんて……いやですよね」
「は? 何言ってるの?」
「ですから、レン様の専属を私なんかが……」
「あー違う違う。俺が言いたかったのは、こんな事情を抱えてるのならなんで早く相談してくれないの? って話。だってアイラは俺の専属なんでしょ?」
レンがそう言いつつ、アイラの顔を見ると、涙が頬を伝っていた。
「えっちょっと、なんで泣いて……」
「だって、それってこれからも私はレン様の専属でいいってことでしょ?」
「そりゃ、そうでしょ?」
「それが、とてもうれしいのです」
気づいたときにはアイラの羽も尻尾も角もなくなっており、赤色の目も元の色に戻っていた。
「ありがとうございました」
「ううん。いいよ。これからも何かあったらすぐに相談してね。だって僕はアイラのご主人様なんでしょ?」
「わかりました、レン様。
アイラは俺に笑顔を向けると、ドアの穂へと向かって歩き出した。
まだ日は登っていないが、朝が近い、もうひと眠りしようと、ベッドに潜ろうとしたレンに声がかかった。
「レン様。話を聞いている途中。口調が変わってましたよ。それでは失礼いたします」
そう言えば、俺って言って喋っていた気がする。
「まぁいいか」
レンはもう気にすることなくベッドにもぐりこんだ。
❖ ❖ ❖
「姉さん」
レンは朝ごはんを食べると、レレーナへと話しかけた。先の件のせいか、アイラはレンを見ると顔を赤くして、仕事をするためか、別の場所に移動してしまう。そこで、レンが目を付けたのが姉だ。
「何?」
「戦闘訓練を手伝ってください!」
「いいわよ? じゃあ準備をしたら中庭に行くわ」
「わかりました」
レンはレレーナから返事をもらうと、すぐに中庭の方へと駆け出した。
(ふふっ、あれ以来レンがよく話しかけてくれるようになったわ。これもお父様のおかげね、感謝になくっちゃ)
そんなことを思いながらもレレーナは準備のために一度部屋へと戻った。
レレーナが中庭に到着し、お互いに一定の距離を開けて剣を構える。レレーナが構える武器は細剣。レイピアとも呼ばれる着くことを主流とした武器だ。対してレンが持つ武器は何の変哲もない普通の片手用直剣。お互いに持っている武器は刃はついていないが、金属でできているため普通に当たれば怪我ぐらいは普通にするだろう。
だが、お互いに魔法も使い、レレーナもレンも強化魔法は既に習得しているため、多少は無茶しても大丈夫だろう。
ちなみにこの段階で強化魔法を覚えているレンが異常ということは忘れずに、レレーナにいたっても同様であり、普通は学園に通うか家庭教師などで学ぶことが主流である。
「いつでもいいわよ、かかってきなさい」
レイピアの切っ先を揺らし、レレーナは待つことを主体とするようだ。
「では、こちらから行かせていただきます!」
剣を右下に垂らし、切っ先は地面ぎりぎりに置く。そして体を大きく前に倒し、レンはレレーナへと向かう。
足に魔力を集中し、一気に加速する。レレーナはそれを待っていたと言わんばかりに、レイピアを前へと突き出す。
レンは右下にある剣を左上へと斜めに切り上げる。レンの剣とレレーナのレイピアが交差する。
つばぜり合いになる前に、分が悪いレレーナはレンから距離を取りつつ魔法を放つ。
『ウィンドスピア』
レレーナがレイピアを持っていない、左手をレンに向け、風の槍を飛ばす。対して、レンも左手に魔力を集め、その魔力を指先に集中させる。そして空中に魔力の軌跡で文字を書いていく。迫りくる槍を目の前に文字を完成させ起動式を唱える。
『エイワズ』
レンは空中にルーン文字を刻み発動させる。
エイワズの意味は防御。文字を中心に魔力壁を形成し、レレーナのウィンドスピアを受け止める。効果を発揮すると、ルーン文字は消える。
「それは、ルーン魔術ね。ここ最近じゃ使う人なんてほとんどいないのにもの好きね」
「僕はこの魔法と相性がいいようなので!」
その後もレンとレレーナの戦闘は続いた。結局シウナが止めるまで、戦闘は終わらず、引き分けということで落ち着いた。
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