異彩の瞳と銃創造者
ニーナの計算
一週間がたち、三日後にはお披露目会が迫っていた。
レンはいつも通り朝起きて、剣を振って、朝ごはんを食べていた。ここ最近では家族の誰かと食べるということも少なく、みんな個別でご飯を食べている。揃うのはだいたい夜だ。
レンが朝ご飯を食べていると、アルムが入ってくる。
「レンは、ここにいたのか」
「はい。何か僕に用事でも?」
アルムが、頬をぼりぼりと掻いている。この仕草が出るときは何かを頼みたいときの仕草だ。
「あぁ、そうなんだ。ニーナに勉強を教えてやって欲しい」
「え? 僕がですか?」
「そうだ。レンは文字を覚えるのも計算も覚えるのも早かっただろ? 侍女たちがそれを話しているのを聞いたらしくてな、お前におそわりたいって言いだしたんだ」
レンがニーナを見たのはこの二年間でたったの五回である。いつも大きめ能ぐるみを胸に抱き、体も弱いため、滅多に部屋から出ることは無い。レンと二歳離れているため、今年で五歳だ。
五歳になると、本格的に読み書きや、計算。一般常識について学ぶことになる。前世の知識があるレンにとってはこの世界の文字を覚えて、覚えた後は書庫にこもって魔法と歴史について学んだため、すぐにできるようになっていた。数の概念については日本にいたころと全く同じだったため特に問題はなかった。レンはアルムの頼みを受けることにした。
レンはご飯を食べると、早速ニーナの居る部屋へと向かった。侍女に話を聞くと、ニーナはどうやら、読み書きはそれなりに出来るが、算数の計算がどうにも苦手らしい。
コン
「ニーナ。いるか?」
「……レンにい、さま?」
ニーナはレンのことをレン兄さまと呼ぶ。レレーナ姉さま。アトモス兄さまと続く。レンの名前は発音しずらいのか、レーヴェンのことだけはレンである。
「あぁ、そうだ。入ってもいいか?」
レンがそう声をかけると、ゆっくりとドアが開く。その隙間からひょこっと手が出てくると、こっちに来いと手招きする。
レンはもう少し、ドアの隙間を広げると、そこから中に入った。
中に入ると、レンの視界がピンクや茶色、白などいろいろな色で視界が埋まる。ニーナの部屋の中はぬいぐるみだらけだった。ベッドやクローゼット机などの最低限必要なものも置いてあるが、それ以上にぬいぐるみの量が多い。
ニーナがベッドに腰を下ろす。レンは床に座る。
「じゃあ、勉強を始めるか」
「やだ」
「やだって、勉強を教わりたくて呼んだんじゃないのか?」
「ニーナは遊びたい」
うーん。どうしたものか、父上に頼まれた手前、引くに引けないし。
悩みに悩んだ末レンは物質創造魔法を使うことにした。手を後ろに回して、体で隠して出来るだけ光が見えないように心がける。
「よし、じゃあゲームをしようか、ニーナ」
「げーむ?」
「そう、ゲーム。遊びって考えればいいよ。それじゃ行くぞ」
頭の中でイメージを固めて、起動式を読む。
『クリエイト』
出来るだけ小さく、ニーナに聞こえないように呟く。そして、出来た物質をニーナの前に持っていく。作り出したのは皿だ。それを右手と左手に一枚ずつ。
「右手に皿が一枚。左手にも皿が一枚あります。皿は全部で何枚あるでしょうか」
「に、二枚?」
「正解。じゃあ次行くよ」
次に想像するのはボールだ。それを後ろで、十二個作る。一気に作るのも、もう手慣れてきたものだ。作ったボールを左右の皿の上に置いていく。
「右の皿の上にはボールが八個。左の皿にはボールが四個あります。合わせて何個かな?」
「え、えっと」
ニーナは自分の指を使って必死に数を数えていた。
「じゅ、十二個!」
「おっ、正解。やればできるじゃないか。どんどん行くぞ」
「うん!」
五分おきに皿を作り直して、はまた別の題材を用意して計算をゲーム方式で覚えさせていく。外れたり、正解しながらも楽しくできているようで何よりだ。ニーナは正解するたびに頭を撫でるように要求してくる。赤い髪くサラサラな髪を正解するたびに撫でてやる。実際ニーナはやる気がないだけで、やればできる子だということが分かった。
やってみせて、言って聞かせて、させてみて、褒めればてやればいい。ただそれだけのことだった。
ニーナはどこからか出てくる皿やボールを不思議に思っていたが、どうにかごまかすことが出来た。
「よし、最後の問題だ。右の更にボールが五個乗っています。この皿がもう一個増えるとボールは何個になるかな?」
「えっとね、えっとね。十個!」
「じゃあもう一個増えたら?」
「えーっと、十五個!」
「よし完璧だ」
頭を撫でてやり、レンは立ち上がる。流石に何度も消したり作ったりを繰り返していると、魔力がなくなっていく。この後、コルトパイソンの試し撃ちが待っているため、魔力は温存しておきたいのだ。
夜な夜な、弾づくりと、オートマチックの制作にも取り掛かっている。それとは別にもう一個作っている物があるが、まだ、完成には程遠い。
「レン兄さま。またこうやって勉強を教えてくれる?」
「あぁ、いいよ。僕で良ければ喜んで」
そう言ってレンはニーナの部屋を後にした。
ニーナはレンが出て行ったドアを見つめて、腕の中にあるクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
「レン兄さま、優しかったなぁ」
そのままの勢いで、ニーナはベッドへと倒れ込んだ。
そのレンはというと、ウキウキ気分で、領地内の森を目指していた。もちろん無断で。
レンはいつも通り朝起きて、剣を振って、朝ごはんを食べていた。ここ最近では家族の誰かと食べるということも少なく、みんな個別でご飯を食べている。揃うのはだいたい夜だ。
レンが朝ご飯を食べていると、アルムが入ってくる。
「レンは、ここにいたのか」
「はい。何か僕に用事でも?」
アルムが、頬をぼりぼりと掻いている。この仕草が出るときは何かを頼みたいときの仕草だ。
「あぁ、そうなんだ。ニーナに勉強を教えてやって欲しい」
「え? 僕がですか?」
「そうだ。レンは文字を覚えるのも計算も覚えるのも早かっただろ? 侍女たちがそれを話しているのを聞いたらしくてな、お前におそわりたいって言いだしたんだ」
レンがニーナを見たのはこの二年間でたったの五回である。いつも大きめ能ぐるみを胸に抱き、体も弱いため、滅多に部屋から出ることは無い。レンと二歳離れているため、今年で五歳だ。
五歳になると、本格的に読み書きや、計算。一般常識について学ぶことになる。前世の知識があるレンにとってはこの世界の文字を覚えて、覚えた後は書庫にこもって魔法と歴史について学んだため、すぐにできるようになっていた。数の概念については日本にいたころと全く同じだったため特に問題はなかった。レンはアルムの頼みを受けることにした。
レンはご飯を食べると、早速ニーナの居る部屋へと向かった。侍女に話を聞くと、ニーナはどうやら、読み書きはそれなりに出来るが、算数の計算がどうにも苦手らしい。
コン
「ニーナ。いるか?」
「……レンにい、さま?」
ニーナはレンのことをレン兄さまと呼ぶ。レレーナ姉さま。アトモス兄さまと続く。レンの名前は発音しずらいのか、レーヴェンのことだけはレンである。
「あぁ、そうだ。入ってもいいか?」
レンがそう声をかけると、ゆっくりとドアが開く。その隙間からひょこっと手が出てくると、こっちに来いと手招きする。
レンはもう少し、ドアの隙間を広げると、そこから中に入った。
中に入ると、レンの視界がピンクや茶色、白などいろいろな色で視界が埋まる。ニーナの部屋の中はぬいぐるみだらけだった。ベッドやクローゼット机などの最低限必要なものも置いてあるが、それ以上にぬいぐるみの量が多い。
ニーナがベッドに腰を下ろす。レンは床に座る。
「じゃあ、勉強を始めるか」
「やだ」
「やだって、勉強を教わりたくて呼んだんじゃないのか?」
「ニーナは遊びたい」
うーん。どうしたものか、父上に頼まれた手前、引くに引けないし。
悩みに悩んだ末レンは物質創造魔法を使うことにした。手を後ろに回して、体で隠して出来るだけ光が見えないように心がける。
「よし、じゃあゲームをしようか、ニーナ」
「げーむ?」
「そう、ゲーム。遊びって考えればいいよ。それじゃ行くぞ」
頭の中でイメージを固めて、起動式を読む。
『クリエイト』
出来るだけ小さく、ニーナに聞こえないように呟く。そして、出来た物質をニーナの前に持っていく。作り出したのは皿だ。それを右手と左手に一枚ずつ。
「右手に皿が一枚。左手にも皿が一枚あります。皿は全部で何枚あるでしょうか」
「に、二枚?」
「正解。じゃあ次行くよ」
次に想像するのはボールだ。それを後ろで、十二個作る。一気に作るのも、もう手慣れてきたものだ。作ったボールを左右の皿の上に置いていく。
「右の皿の上にはボールが八個。左の皿にはボールが四個あります。合わせて何個かな?」
「え、えっと」
ニーナは自分の指を使って必死に数を数えていた。
「じゅ、十二個!」
「おっ、正解。やればできるじゃないか。どんどん行くぞ」
「うん!」
五分おきに皿を作り直して、はまた別の題材を用意して計算をゲーム方式で覚えさせていく。外れたり、正解しながらも楽しくできているようで何よりだ。ニーナは正解するたびに頭を撫でるように要求してくる。赤い髪くサラサラな髪を正解するたびに撫でてやる。実際ニーナはやる気がないだけで、やればできる子だということが分かった。
やってみせて、言って聞かせて、させてみて、褒めればてやればいい。ただそれだけのことだった。
ニーナはどこからか出てくる皿やボールを不思議に思っていたが、どうにかごまかすことが出来た。
「よし、最後の問題だ。右の更にボールが五個乗っています。この皿がもう一個増えるとボールは何個になるかな?」
「えっとね、えっとね。十個!」
「じゃあもう一個増えたら?」
「えーっと、十五個!」
「よし完璧だ」
頭を撫でてやり、レンは立ち上がる。流石に何度も消したり作ったりを繰り返していると、魔力がなくなっていく。この後、コルトパイソンの試し撃ちが待っているため、魔力は温存しておきたいのだ。
夜な夜な、弾づくりと、オートマチックの制作にも取り掛かっている。それとは別にもう一個作っている物があるが、まだ、完成には程遠い。
「レン兄さま。またこうやって勉強を教えてくれる?」
「あぁ、いいよ。僕で良ければ喜んで」
そう言ってレンはニーナの部屋を後にした。
ニーナはレンが出て行ったドアを見つめて、腕の中にあるクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
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