異彩の瞳と銃創造者

創伽夢勾

読書

 アイラはレンの教育係も担っており、文字を読み書きもできるということで、いろいろと教えてもらった。

「レーヴェン様は覚えるのが早いですね」

 精神年齢は二十歳なのだが、一応五歳までの記憶を頼りに、アイラの話す言葉と文字のつじつま合わせに追われていた。
 幸いなことに前世の記憶を持っているので文字を覚えるのにそこまでの時間はかからなかった。

「アイラ? レーヴェンって呼ぶの長いだろ? 兄さんたちみたいにレンでいいよ」
「え? ですが……」
「僕がいいって言ってるんだ。そう呼んでくれよ」
「わかりました。レン様ですね」

 にこやかな笑顔を向けるアイラ。レンはその笑顔に照れながら本へと意識を戻した。
 貴族のお家柄なだけあって、書庫には大量の本があった。レンは五歳でありながら、日課の剣を振る事と、毎日書庫に来て本を読むことを続けていた。
 レンが転生を果たしてそれなりに時間が経過していた。文字は一か月もかからずに覚えきった。流石まだ幼い頭だとすいすいと物事を覚えていける。

「レン様。これが次の魔法関係の本になりますよ」
「ありがと、アイラ」

 文字を覚えてからは魔法に関する本を多く読むようになっていた。勉強すればするほどどんどん頭に入っていく今の内に憶えられることは覚えておきたい。
 最初のころは五歳で、魔法に関する本を読むのですか? と驚いていたが、それでも読むと聞かないレンの言葉にアイラは折れてしまったのだ。

「早く魔法を使ってみたい」
「魔法の適性が分かる七歳が待ち遠しいですね」

 レンは魔法に関する本をどんどんと読み進めていく。ついでに歴史や周辺地理に関する本を読むことも忘れない。

「魔法の本も歴史に関する本も結構難しいはずなのに、レン様はすいすいと読み進めていきますね」

 レンはその言葉に今読んでいる一冊と床に置いてある本の題名を見る。

『スフィア王国の歴史』『魔法の使い方初級』

 スフィア王国とは今住んでいる国の名前だ。
 王国が出来て約四百年、今の国王はヴァレイ・アン・トゥット・スフィア。十八代目の国王らしい。
 アマテラスに言われたが、この国は貴族制を採用している。
 上から、王族、大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵に分類されている。大公は王族の兄弟まで。公爵から伯爵までが上級貴族、子爵から騎士爵までが下級貴族となっている。
 基本的に貴族は世襲制になっている。正し当主の家族は準爵扱いになる。準爵の家族は平民扱いだ。
 フォールン家は辺境伯家ということになっており、上級貴族に分類される。それはこれだけ屋敷が広いのにも納得できる。
 次は魔法の本だ。

「アマテラスに貰った物質創造魔法とか早く使ってみたいしな」

 レンは魔法の本を手に取りそれを開いた。その本の一行目にはこう書かれたいた。

『七歳の適性の儀を受け、適性のあった者がこのままページを進めよ』

 これは適性の儀を終えないと魔法は使えないということなのか? レンはそのままページを進める。

『まずは、目を閉じ自分の体内にある魔力を感じる』

 レンは本の言うとおりに目を瞑り。魔力を探してみる。体の中を意識してみると、体の中心。心臓のあたりで、何かが燃えているような感覚があった。その炎とも見て取れるものは体中を一定でめぐり、また体の中心に戻っていた。

「これが魔力かな?」

 レンはその意識を外さず、そのまま左手で、本のページをめくる。

『魔力を一定の場所に集めよ。最初は指先などがよい』

 レンは魔力が自分の意志で動かせるかを試してみる。指先をイメージし、そこに魔力を送るイメージ。すると、感じ取っていた中心の魔力が指先に流れ込んでくる。
 レンはそのまま、次の文章を読み進める。もちろん魔力は指先に集めたままだ。

『集めることが出来たなら、イメージを固め、詠唱せよ』
「とりあえず、水かな」

 周りを確認すると、アイラはいなかった。他の部屋の掃除にでも向かったのだろう。丁度いいので魔法を試してみよう。
 指先の魔力にイメージを流し込む。前の空になったコップの縁に指先を乗せて『水よ』と唱えた。
 少し、水の出る蛇口をイメージしたつもりだったが、指先から出た水は勢い強く、コップの内側に当たり、コップはひっくり返った。もちろん水浸しになるわけで……。

「やばっ、アイラが返ってくる前に掃除しないと、本は濡れてないな」

 すぐ近くで合った雑巾で、床を拭き掃除が終わったところで、レンはまた魔法の本に手をかける。
 この本を読んでわかったことは、属性の基本は四元素の火水風土であること。そのほかに雷氷無闇光などがあること。

「やっぱり、ファンタジー世界っていいよな。まぁ、FPSで慣れしんだ銃を使いたいという気持ちも強いけど」

 そのまま、さらに本を読み進めていく。魔力を使ったせいか少し体に疲労感が残っていた。

『魔力操作の上達。上限を増やすにはには普段から意識して魔力を体中に循環させること。魔力を使い切り休息することこの二つが大事である』
「なるほど。使って慣れろってことだな」

 レンはウキウキな気分のまま、本を読んでは魔力を使う。そんな時間を満喫していた。

「レン様。そろそろ夕食の……ってこんなところで寝てらっしゃっては風邪をひきますよ?」

 アイラは、まだ小さいレンをベッドまで運ぶと毛布をかぶせた。

「アイラ? あら、レンはもう寝ちゃったの?」
「はい、どうやら本を読んで疲れてしまったみたいで」

 ドアの近くに立っていたのはシウナだった。その後ろから、シウナの頭に手を置き、アルムが現れた。

「我が息子ながら、もう魔法への関心が出ているそうだな。まだ適性が出るとも分かっておらんのに」
「レン様は文字を覚えるのも早かったですし、本もたくさん読んでらっしゃいますよ。もちろん魔法以外の本も」
「なるほど、流石だな、私たちの息子は。将来に期待して。今はゆっくり寝かせてやろう。明日はレレーナの適性の儀に向かう。アイラはレンのこと頼んだぞ」
「お任せください」

 ことを伝えると、アルムとシウナは部屋から出て行った。

「レン様には私が付いてますから」

 アイラは寝ているレンの手を握ると、ベッドの横で眠りについていた。



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