異彩の瞳と銃創造者
~転生~
「死んでもらえませんか?」
「は?」
地面に座り込み俺はその声の主を見上げる。にこやかな笑顔で、きれいな金髪の巫女服を着た少女が俺にそう言った。
彼女との衝撃的な出会いは、ほんの数分前。
❖ ❖ ❖
「やっぱりFPSは楽しいな。ファンタジー系のオンラインもいいけどって、ん?」
その時、夢乃天は日本で最近流行っているオンラインのFPSゲームをしていた。昔から銃が好きな天は、こうした銃に関するゲームや話が好きだった。
そろそろゲームも終盤に入り、もう少しで決着がつきそうなところで、ディスプレイは真っ黒の画面に切り替わった。
「なんだ? フリーズしたのか?」
マウスを動かし、クリックをする。何度も何度もそれでも反応しない。呆れた天はPCの電源を落とした……はずだった。
電源ボタンを押し、確かに切ったはずなのに、ディスプレイが勝手に起動したのだ。PCを見ても電源ランプはついていない。
驚きながらもモニターに視線を戻すと、そこには金髪巫女姿の美少女が映っていた。そしてその映像はこんなことを言うのだ。
「どーも。こんばんはー」と
なにかの仕掛け、ドッキリの類かと思いディスプレイの後ろを見るが、PC以外に接続されている物は見当たらない。そしてその肝心のPCも起動していない。
「どういうことだ? いったいどう仕掛けで……」
「今わかるこれが現実ですよっと。私は神様。種も仕掛けもございません」
「うん。意味が分からん」
「まぁ、つまりこういうことですよ。ちょいと失礼しますね」
その映像が天の言葉に答えたかのように喋ると、映像の少女はこちらに向かって手を伸ばしてきた。まるで、こっちに来ようとするかのように。その瞬間、モニターに手が生えた。
「呼ばれてませんけど、飛び出て、こんばんはっ!」
ぬるっと。
ディスプレイから、件の美少女が飛び出してきた。……って。
「うわあああぁぁぁっ!?」
そのままグルン、と視界が回転。見覚えのある天井が見えた次の瞬間、頭と背中と腰に強い衝撃が襲い掛かる。椅子の後と倒れたので、出っ張った部分にぶつけた、特に腰が痛い。
そう言えば何が起きたんだっけ。気のせいじゃなければ、ディスプレイから急に女の子が出てきたような……。
天はそっと上半身を起こし、ディスプレイに視線を向けた。すると、その視線がぶつかる。件の美少女と。
「よっこいしょーっと。失礼しまーすっ」
気のせいじゃなかった! 画面から現在進行形でにゅるんと出てきてらっしゃる。しかも上半身から出てくるとか、これってまるっきりホラーだよ。某〇子さんみたいになってるよ。
少女は無事に? 画面から出てきて、ぽんぽんと服を整える。
「初めまして、夢乃天さん。とりあえず。死んでもらえませんか?」
「は?」
あまりの唐突さに驚き、天からは素っ頓狂なその一文字の言葉しか出てこなかった。腰を抜かして床に座り込んだままの天を謎の存在が見つめる。
「ど、どちら様ですか?」
天の口から辛うじて出た言葉はそれだった。
「私ですか、私は天照大神っていえばわかりますか? 引きこもり神様とも呼ばれてたりしますが。そんな私が珍しく仕事をしているのですよ」
「え? 神……様? アマテラス? それに仕事?」
「そうです。私は神様いわゆるゴッド。G・O・Dです。それで。その仕事というのが命を貰うということなのです。だから死んでくれません?」
にこやかな笑顔でを向けるアマテラス。それでもまだ状況を理解でき切っていない天。
そんな天を見かねたのか、アマテラスは『これを見たら信じてくださいね?』と言いながら、指をパチンと鳴らす。
すると、さっきまで、あったはずの部屋の身の回りのものがすべて消え、ただの真っ白の空間へと切り替わる。
天は周りを見渡し、状況を確認すると、つばを飲み込み、この現象を起こしたであろう少女を見た。
「あなたたち人間には信じられないかもしれませんが、今ここは元居た世界とは違う別空間だとでも思ってください。そして私の目的はただ一つです。あなたの命が欲しいのです。そのための交渉を図るため、私がこうやって訪れたのですよ」
こんな現象、現実ではありえない。天はこれを夢だと思うことにした。
夢なら夢で、ばかばかしいが付き合ってやろう。夢じゃなかったらもう知らん。なるようになれだ。
「交渉か、ならいくつか質問させてくれ」
「あら、意外と冷静になるのが早いですね。いいでしょう。なんでも聞いて下さい」
「なんで、俺の命なんかがいるんだ? 俺が死ぬことによるメリットとかそこらへんが知りたい」
「まぁ、詳しく話してもわからないでしょうが、あなたの命があればこの国。いやこの星が助かりますね」
「なんか急に、話が飛んでいったな。だがそれで俺に何のメリットがある。死ぬんだぞ? はいそうですかって命を渡せるわけがないだろう? それ相応のメリットを提示してくれ。命に釣り合うものがあるかは知らないけど」
「それもそうですね。まぁ、私が欲しいのはその体なのですが……」
なんか嫌な予感がしたので、自分の体を抱きしめ上がら、この空間の端まで寄る。ん? けど、こんな美少女にならいいのか?
「あはは、別にそう理由でもいいですが残念ながら違います」
いいのか?
「いいのか?」
「ふふっ、したいんですか?」
アマテラスは前かがみになり天の顔を覗き込む。巫女服が緩み胸元が見えそうになる。
天がつばを飲み込むと、アマテラスは体勢を戻した。
「冗談ですけど」
「ですよね~」
「ですが、これ以上詳しく話すと、話がグロくなりますよ? イイですか?」
「いや、遠慮しとく」
「それで、たしか、メリットでしたか? ならこういうのはどうでしょう。こことは別の世界への転生」
あーあ。また話が飛んでいったよ。
「別世界? 転生? 何を言ってるんだ?」
「そのままの意味ですよ。ここで今まで過ごした記憶を持って、魂ごと、別の世界で赤ちゃんからやり直してもらうのです。もちろん、普通に転生するだけではあなたにとってメリットとは呼べないでしょうから。少しはオプションをつけてあげます。私は神様。寛大な神様ですから!」
アマテラスは胸の前で腕を組み偉そうにしている。実際にえらいんだろうけど。
頭がこんがらがってきた。とりあえず、一から質問を繰り返していくとしよう。だが、こんな状況でもワクワクしている天がいた。これを夢だと思っていても。
「とりあえず、一つずつ質問だ」
「おっけ。答えてあげましょう」
「まず一つ目。その世界って言うのはどんな場所だ?」
「んー。この世界とは全然違いますね。中世あたりの感覚と言えばわかりますかね。通貨が金貨とか銀貨だったり、貴族がいたり、それとこの世界と大きく違うのは魔物がいて、魔法があることぐらいですかね?」
おー、とんだファンタジー世界。俺もいくらかオンラインゲームを遊んだが、結局FPSに戻ったんだよな。
アマテラスの詳しい説明によると、人に近い種族もいるらしい。今の天たちみたいな普通の人間、いわゆる人種。ファンタジーだとよくある種族である獣人種。ケモミミ少女とかが有名だろう。他には、森といった自然を愛する森の民、エルフ。山の近くに住み、加工やらこまごまとした作業が得意な山の民、ドワーフ。海を愛し、海に住む人魚のような海の民、マーメイド。などなど他にもいろんな動物や種族、魔物を含めれば数えきれないぐらい多くの種類がいるそうだ。ぽろっと漏れ出ていたが魔族なるものいるらしい。
「次、二つ目。俺が急に死んで、この世界での辻褄合わせはどうなる?」
「それは簡単ですよ。この世界から丸ごとあなたの存在を抹消すればいいのです。つまり、他者からあなたの存在に関する記憶がきえるから、この世界に元々あなたがいたという事実ごとなくなる。というわけで、そこは心配無用ですよ」
なるほど、ちょこちょこ物騒な単語が聞こえたが、意外とそこらへんはしっかりしてるのな。まぁ、俺には関係ないかな。どちらにしろ、この世界に元々未練なんてものはないし、魔法系のファンタジーとか聞かされワクワクしてしまう自分がいることにも気づいていたから。
「最後の質問だ。オプションとかはどういうのがつけれるんだ? 個数制限とかあったりするのか?」
「んーそれは、君が命をくれるって言ったら……」
「やる」
「え? いまなんて?」
「だからやるって言ったんだ。命欲しいんだろ? それにこっちの世界より、そっちの世界の方が楽しそうだ」
ここまで、来たなら行くところまで行ってやろう。そんな気持ちで、天はこの話に乗った。ただ未練がないのは本当のことだが。
すると、アマテラスが、俺の手を両手で取りブンブンと振った。やたらと嬉しそうだ。
「ふぅ、やっと見つかったよ。命くれる人が」
「その言い方だと、俺以外のところにも言ったみたいだな」
「そうです、あなたで確か130番目です」
っていうことは129人がこの話を断っているってことになるのか。意外だな、俺みたいな考えを持つ奴がいそうだが。
「みんな、この世界で、家族と離れたくないとか。こんな話信じられないとか。いろいろでね。ようやく見つかって、私は心底安心してますよ」
心を読んだかのようにアマテラスから待ち受けていた答えが返ってきた。
「とりあえず。行くってことでいいんですよね?」
「あぁ、サポートで、そんな世界に行けるなら行ってみたいね」
「よし、なら設定を始めましょう」
まぁ、チートとまではいかなくても、それなりの性能をもって転生をしたいよな。ってことで、ということでアマテラスと一緒に設定話が始まった。
「まぁ、こうやって迷惑をかけて転生してもらうんですから、いくつかは無理を通してしてあげましょう。とりあえず。性別からですね、女の子になりたい願望とかはありますか?」
「いやないな、男のままで頼む」
「おっけ。次に生まれについてです。人以外が良かったりします? 貴族とかそこらへんなら弄れますよ」
なるほど、そこらへんも弄れるのか、と言っても俺は普通に人がいいし、かと言って普通過ぎるのはつまらないしな。
「人で、貴族の三男とかそこらへんで行けたりするか?」
「ほい来た」
何やら、アマテラスは懐から取り出したスマホに見えるものをポチポチと操作していた。あれで、俺の生まれが決まるのか。
「なに? これが気になるんですか? これはカミホです」
どうやらスマホとはまた別の物らしい。
「そうなんでもできる。このカミホがあればね!」
ということらしい。
「さて、次は才能分野です。なんかこれ使いたい、こんなことできるようになりたい。的なことはありますか? あっ、そのまえにとりあえずあなたの才能値を出してみましょうか」
「なんだそれ」
「あなたの持ってる、素質というか。資質って言った方がいいのかな? とりあえず。上から三個見てから考えましょうか」
アマテラスはそういうと、手元でカミホ操作しだす。すると天の前に透明ウィンドウが現れる。そこには単語が4個縦に並んでいた。上から順に読んでいく。
格闘・集中・情報処理・料理
「上から準備才能があるものです」
「俺、料理なんてほとんどしないんだが」
「これを機に学んでみたらどうですか? 料理できる系男子いいと思いますよ。というより、結構才能が偏ってますね。ボクサーとかになってたらいいとこまで行ったんじゃないですか?」
「いや、俺にはこっちの方が性に合ってるよ」
天そう言いながらアマテラスに向けて右手で銃の形を作った。
「ならそうですね、物質創造魔法とか覚えてみます?」
「物質創造魔法?」
「とりあえず、見せたほうが早そうですね」
アマテラスが右手を広げる。そこに得体のしれない光が集まる。そして光が散り、アマテラスの手に残ったのは一本の短剣だった。
「ふむふむ。私が使ってもこんなものか。どうですか?」
「それが俺でも使えるのか?」
「まぁ、生まれてすぐは無理かもしれないけど、知識を学び、鍛錬すれば使いこなせるとおもいますよ。ただし気をつけてくださいね。こんな魔法普通に覚えてるひとなんてほとんどいませんからね」
「了解した」
そのまま、アマテラスと話した結果。元々の資質を少し強化して、魔力適性とそのほか適当にアマテラスに才能適正を貰って、この物質創造魔法の少しの知識と才能を貰った。
「至れり尽くせりだな」
「まぁ、こうなったのにそう簡単に死んでもらっても困りますからね。ちなみにあなたの為に、前世の記憶を思い出すのは五歳ぐらいに設定しておきました。流石におぎゃーからやり直すのは精神的にきついでしょ?」
「さ、さんきゅー」
そんなことまったくもって考えていなかった。そして、アマテラスはさっきの情報をもとにカミホを操作していく。
準備が完了したのか、こっちに来いと手招きする。近づいていくと、カミホから何かチップのようなものを取り出し、天の胸に押し込んだ。それは体に吸い込まれるように消えた。
「どこもおかしいとこはないですか?」
その問いに頷いて答える。
「それでは準備完了です。ご協力感謝いたします。まぁ、そっちでも楽しい人生を過ごしてくださいね。それでは送りまーす」
アマテラスは天の近くまで寄ると、その指を引き絞り天、のおでこにデコピンをかました。
それと同時に、天の体は自由を失くし、だんだんと、意識が遠のいていく。そのまま、地面に倒れ完全に意識を失った。
夢乃天は二十歳という若さでこの世界から存在が消滅した。
アマテラスは眠るように意識を手放した天を見て、もう一度礼を言ってから再度指をパチンと鳴らす。
「これで、この世界から夢乃天という人物の存在は消えました。せいぜい楽しんでくださいね?」
再び指を鳴らし、アマテラスもその世界から姿を消した。
「は?」
地面に座り込み俺はその声の主を見上げる。にこやかな笑顔で、きれいな金髪の巫女服を着た少女が俺にそう言った。
彼女との衝撃的な出会いは、ほんの数分前。
❖ ❖ ❖
「やっぱりFPSは楽しいな。ファンタジー系のオンラインもいいけどって、ん?」
その時、夢乃天は日本で最近流行っているオンラインのFPSゲームをしていた。昔から銃が好きな天は、こうした銃に関するゲームや話が好きだった。
そろそろゲームも終盤に入り、もう少しで決着がつきそうなところで、ディスプレイは真っ黒の画面に切り替わった。
「なんだ? フリーズしたのか?」
マウスを動かし、クリックをする。何度も何度もそれでも反応しない。呆れた天はPCの電源を落とした……はずだった。
電源ボタンを押し、確かに切ったはずなのに、ディスプレイが勝手に起動したのだ。PCを見ても電源ランプはついていない。
驚きながらもモニターに視線を戻すと、そこには金髪巫女姿の美少女が映っていた。そしてその映像はこんなことを言うのだ。
「どーも。こんばんはー」と
なにかの仕掛け、ドッキリの類かと思いディスプレイの後ろを見るが、PC以外に接続されている物は見当たらない。そしてその肝心のPCも起動していない。
「どういうことだ? いったいどう仕掛けで……」
「今わかるこれが現実ですよっと。私は神様。種も仕掛けもございません」
「うん。意味が分からん」
「まぁ、つまりこういうことですよ。ちょいと失礼しますね」
その映像が天の言葉に答えたかのように喋ると、映像の少女はこちらに向かって手を伸ばしてきた。まるで、こっちに来ようとするかのように。その瞬間、モニターに手が生えた。
「呼ばれてませんけど、飛び出て、こんばんはっ!」
ぬるっと。
ディスプレイから、件の美少女が飛び出してきた。……って。
「うわあああぁぁぁっ!?」
そのままグルン、と視界が回転。見覚えのある天井が見えた次の瞬間、頭と背中と腰に強い衝撃が襲い掛かる。椅子の後と倒れたので、出っ張った部分にぶつけた、特に腰が痛い。
そう言えば何が起きたんだっけ。気のせいじゃなければ、ディスプレイから急に女の子が出てきたような……。
天はそっと上半身を起こし、ディスプレイに視線を向けた。すると、その視線がぶつかる。件の美少女と。
「よっこいしょーっと。失礼しまーすっ」
気のせいじゃなかった! 画面から現在進行形でにゅるんと出てきてらっしゃる。しかも上半身から出てくるとか、これってまるっきりホラーだよ。某〇子さんみたいになってるよ。
少女は無事に? 画面から出てきて、ぽんぽんと服を整える。
「初めまして、夢乃天さん。とりあえず。死んでもらえませんか?」
「は?」
あまりの唐突さに驚き、天からは素っ頓狂なその一文字の言葉しか出てこなかった。腰を抜かして床に座り込んだままの天を謎の存在が見つめる。
「ど、どちら様ですか?」
天の口から辛うじて出た言葉はそれだった。
「私ですか、私は天照大神っていえばわかりますか? 引きこもり神様とも呼ばれてたりしますが。そんな私が珍しく仕事をしているのですよ」
「え? 神……様? アマテラス? それに仕事?」
「そうです。私は神様いわゆるゴッド。G・O・Dです。それで。その仕事というのが命を貰うということなのです。だから死んでくれません?」
にこやかな笑顔でを向けるアマテラス。それでもまだ状況を理解でき切っていない天。
そんな天を見かねたのか、アマテラスは『これを見たら信じてくださいね?』と言いながら、指をパチンと鳴らす。
すると、さっきまで、あったはずの部屋の身の回りのものがすべて消え、ただの真っ白の空間へと切り替わる。
天は周りを見渡し、状況を確認すると、つばを飲み込み、この現象を起こしたであろう少女を見た。
「あなたたち人間には信じられないかもしれませんが、今ここは元居た世界とは違う別空間だとでも思ってください。そして私の目的はただ一つです。あなたの命が欲しいのです。そのための交渉を図るため、私がこうやって訪れたのですよ」
こんな現象、現実ではありえない。天はこれを夢だと思うことにした。
夢なら夢で、ばかばかしいが付き合ってやろう。夢じゃなかったらもう知らん。なるようになれだ。
「交渉か、ならいくつか質問させてくれ」
「あら、意外と冷静になるのが早いですね。いいでしょう。なんでも聞いて下さい」
「なんで、俺の命なんかがいるんだ? 俺が死ぬことによるメリットとかそこらへんが知りたい」
「まぁ、詳しく話してもわからないでしょうが、あなたの命があればこの国。いやこの星が助かりますね」
「なんか急に、話が飛んでいったな。だがそれで俺に何のメリットがある。死ぬんだぞ? はいそうですかって命を渡せるわけがないだろう? それ相応のメリットを提示してくれ。命に釣り合うものがあるかは知らないけど」
「それもそうですね。まぁ、私が欲しいのはその体なのですが……」
なんか嫌な予感がしたので、自分の体を抱きしめ上がら、この空間の端まで寄る。ん? けど、こんな美少女にならいいのか?
「あはは、別にそう理由でもいいですが残念ながら違います」
いいのか?
「いいのか?」
「ふふっ、したいんですか?」
アマテラスは前かがみになり天の顔を覗き込む。巫女服が緩み胸元が見えそうになる。
天がつばを飲み込むと、アマテラスは体勢を戻した。
「冗談ですけど」
「ですよね~」
「ですが、これ以上詳しく話すと、話がグロくなりますよ? イイですか?」
「いや、遠慮しとく」
「それで、たしか、メリットでしたか? ならこういうのはどうでしょう。こことは別の世界への転生」
あーあ。また話が飛んでいったよ。
「別世界? 転生? 何を言ってるんだ?」
「そのままの意味ですよ。ここで今まで過ごした記憶を持って、魂ごと、別の世界で赤ちゃんからやり直してもらうのです。もちろん、普通に転生するだけではあなたにとってメリットとは呼べないでしょうから。少しはオプションをつけてあげます。私は神様。寛大な神様ですから!」
アマテラスは胸の前で腕を組み偉そうにしている。実際にえらいんだろうけど。
頭がこんがらがってきた。とりあえず、一から質問を繰り返していくとしよう。だが、こんな状況でもワクワクしている天がいた。これを夢だと思っていても。
「とりあえず、一つずつ質問だ」
「おっけ。答えてあげましょう」
「まず一つ目。その世界って言うのはどんな場所だ?」
「んー。この世界とは全然違いますね。中世あたりの感覚と言えばわかりますかね。通貨が金貨とか銀貨だったり、貴族がいたり、それとこの世界と大きく違うのは魔物がいて、魔法があることぐらいですかね?」
おー、とんだファンタジー世界。俺もいくらかオンラインゲームを遊んだが、結局FPSに戻ったんだよな。
アマテラスの詳しい説明によると、人に近い種族もいるらしい。今の天たちみたいな普通の人間、いわゆる人種。ファンタジーだとよくある種族である獣人種。ケモミミ少女とかが有名だろう。他には、森といった自然を愛する森の民、エルフ。山の近くに住み、加工やらこまごまとした作業が得意な山の民、ドワーフ。海を愛し、海に住む人魚のような海の民、マーメイド。などなど他にもいろんな動物や種族、魔物を含めれば数えきれないぐらい多くの種類がいるそうだ。ぽろっと漏れ出ていたが魔族なるものいるらしい。
「次、二つ目。俺が急に死んで、この世界での辻褄合わせはどうなる?」
「それは簡単ですよ。この世界から丸ごとあなたの存在を抹消すればいいのです。つまり、他者からあなたの存在に関する記憶がきえるから、この世界に元々あなたがいたという事実ごとなくなる。というわけで、そこは心配無用ですよ」
なるほど、ちょこちょこ物騒な単語が聞こえたが、意外とそこらへんはしっかりしてるのな。まぁ、俺には関係ないかな。どちらにしろ、この世界に元々未練なんてものはないし、魔法系のファンタジーとか聞かされワクワクしてしまう自分がいることにも気づいていたから。
「最後の質問だ。オプションとかはどういうのがつけれるんだ? 個数制限とかあったりするのか?」
「んーそれは、君が命をくれるって言ったら……」
「やる」
「え? いまなんて?」
「だからやるって言ったんだ。命欲しいんだろ? それにこっちの世界より、そっちの世界の方が楽しそうだ」
ここまで、来たなら行くところまで行ってやろう。そんな気持ちで、天はこの話に乗った。ただ未練がないのは本当のことだが。
すると、アマテラスが、俺の手を両手で取りブンブンと振った。やたらと嬉しそうだ。
「ふぅ、やっと見つかったよ。命くれる人が」
「その言い方だと、俺以外のところにも言ったみたいだな」
「そうです、あなたで確か130番目です」
っていうことは129人がこの話を断っているってことになるのか。意外だな、俺みたいな考えを持つ奴がいそうだが。
「みんな、この世界で、家族と離れたくないとか。こんな話信じられないとか。いろいろでね。ようやく見つかって、私は心底安心してますよ」
心を読んだかのようにアマテラスから待ち受けていた答えが返ってきた。
「とりあえず。行くってことでいいんですよね?」
「あぁ、サポートで、そんな世界に行けるなら行ってみたいね」
「よし、なら設定を始めましょう」
まぁ、チートとまではいかなくても、それなりの性能をもって転生をしたいよな。ってことで、ということでアマテラスと一緒に設定話が始まった。
「まぁ、こうやって迷惑をかけて転生してもらうんですから、いくつかは無理を通してしてあげましょう。とりあえず。性別からですね、女の子になりたい願望とかはありますか?」
「いやないな、男のままで頼む」
「おっけ。次に生まれについてです。人以外が良かったりします? 貴族とかそこらへんなら弄れますよ」
なるほど、そこらへんも弄れるのか、と言っても俺は普通に人がいいし、かと言って普通過ぎるのはつまらないしな。
「人で、貴族の三男とかそこらへんで行けたりするか?」
「ほい来た」
何やら、アマテラスは懐から取り出したスマホに見えるものをポチポチと操作していた。あれで、俺の生まれが決まるのか。
「なに? これが気になるんですか? これはカミホです」
どうやらスマホとはまた別の物らしい。
「そうなんでもできる。このカミホがあればね!」
ということらしい。
「さて、次は才能分野です。なんかこれ使いたい、こんなことできるようになりたい。的なことはありますか? あっ、そのまえにとりあえずあなたの才能値を出してみましょうか」
「なんだそれ」
「あなたの持ってる、素質というか。資質って言った方がいいのかな? とりあえず。上から三個見てから考えましょうか」
アマテラスはそういうと、手元でカミホ操作しだす。すると天の前に透明ウィンドウが現れる。そこには単語が4個縦に並んでいた。上から順に読んでいく。
格闘・集中・情報処理・料理
「上から準備才能があるものです」
「俺、料理なんてほとんどしないんだが」
「これを機に学んでみたらどうですか? 料理できる系男子いいと思いますよ。というより、結構才能が偏ってますね。ボクサーとかになってたらいいとこまで行ったんじゃないですか?」
「いや、俺にはこっちの方が性に合ってるよ」
天そう言いながらアマテラスに向けて右手で銃の形を作った。
「ならそうですね、物質創造魔法とか覚えてみます?」
「物質創造魔法?」
「とりあえず、見せたほうが早そうですね」
アマテラスが右手を広げる。そこに得体のしれない光が集まる。そして光が散り、アマテラスの手に残ったのは一本の短剣だった。
「ふむふむ。私が使ってもこんなものか。どうですか?」
「それが俺でも使えるのか?」
「まぁ、生まれてすぐは無理かもしれないけど、知識を学び、鍛錬すれば使いこなせるとおもいますよ。ただし気をつけてくださいね。こんな魔法普通に覚えてるひとなんてほとんどいませんからね」
「了解した」
そのまま、アマテラスと話した結果。元々の資質を少し強化して、魔力適性とそのほか適当にアマテラスに才能適正を貰って、この物質創造魔法の少しの知識と才能を貰った。
「至れり尽くせりだな」
「まぁ、こうなったのにそう簡単に死んでもらっても困りますからね。ちなみにあなたの為に、前世の記憶を思い出すのは五歳ぐらいに設定しておきました。流石におぎゃーからやり直すのは精神的にきついでしょ?」
「さ、さんきゅー」
そんなことまったくもって考えていなかった。そして、アマテラスはさっきの情報をもとにカミホを操作していく。
準備が完了したのか、こっちに来いと手招きする。近づいていくと、カミホから何かチップのようなものを取り出し、天の胸に押し込んだ。それは体に吸い込まれるように消えた。
「どこもおかしいとこはないですか?」
その問いに頷いて答える。
「それでは準備完了です。ご協力感謝いたします。まぁ、そっちでも楽しい人生を過ごしてくださいね。それでは送りまーす」
アマテラスは天の近くまで寄ると、その指を引き絞り天、のおでこにデコピンをかました。
それと同時に、天の体は自由を失くし、だんだんと、意識が遠のいていく。そのまま、地面に倒れ完全に意識を失った。
夢乃天は二十歳という若さでこの世界から存在が消滅した。
アマテラスは眠るように意識を手放した天を見て、もう一度礼を言ってから再度指をパチンと鳴らす。
「これで、この世界から夢乃天という人物の存在は消えました。せいぜい楽しんでくださいね?」
再び指を鳴らし、アマテラスもその世界から姿を消した。
「異彩の瞳と銃創造者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,571
-
2.9万
-
-
165
-
59
-
-
61
-
22
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
5,013
-
1万
-
-
5,072
-
2.5万
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
8,089
-
5.5万
-
-
2,411
-
6,662
-
-
3,135
-
3,383
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3,521
-
5,226
-
-
9,292
-
2.3万
-
-
6,119
-
2.6万
-
-
1,285
-
1,419
-
-
2,845
-
4,948
-
-
6,614
-
6,954
-
-
3万
-
4.9万
-
-
6,028
-
2.9万
-
-
315
-
800
-
-
65
-
152
-
-
6,161
-
3.1万
-
-
1,856
-
1,560
-
-
3,630
-
9,417
-
-
105
-
364
-
-
11
-
4
-
-
2,605
-
7,282
-
-
2,931
-
4,405
-
-
9,138
-
2.3万
-
-
4,871
-
1.7万
-
-
600
-
220
-
-
2,388
-
9,359
-
-
1,258
-
8,382
-
-
559
-
1,070
-
-
71
-
145
-
-
2,786
-
1万
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
9,533
-
1.1万
-
-
9,292
-
2.3万
-
-
9,138
-
2.3万
コメント