胸にヲタクという誇りを掲げて
第5節/胸の大きな高鳴りを抑えて
今買いたい、今必要なライトノベルを買うために、私は最上階にあるTSURUYAに来ていた。
『絶対戦姫ラスマグナ』というロボットアニメを最近見始めたので、その原作を購入しに来たのだ。
ライトノベルのコーナーに足を運ぶと、毎回のことだけれどもそのスケールに圧倒される。
本屋ならではの圧倒的貯冊数。カラフルな表紙背表紙の数々、それらが神々しく鎮座しているその棚は全部で12台あり、自宅近辺の店では絶対に見ることの出来ない光景が今まさに目の前に広がっていた。
「......わぁ!」
あい変わらず何度見ても感嘆の声が漏れてしまう。
いやいや、今日はそんなことをしている場合ではないのだった。早くラスマグナを購入して帰らなければならない。王都マグナカルタの民たちが私のことを読んでいる!(呼ばれているのあくまで主人公で私ではないのだけれど)
もう場所は把握しているのでラスマグナの所へと歩を進める。
あ、小田くんがいる!?
あの感じだと小田くんはすぐに帰ったと思ったのだけれど、私としたことが予想が外れたわ......よし、ここは広さを有効活用して彼の真後ろからラスマグナを取って走り去ろう。
また先程のように彼に逃げられて変な気分になるのは嫌だ。多分私は今、彼の中では
『・遭遇したら危険→社会的に抹殺される
・姿を見たら危険→社会的に抹殺される
・話しかけられたら危険→社会的に抹殺される
※超要注意人物』
とかこんな感じの危ないヤツという扱いだろうと思う。
だけれど私もラスマグナを買うまでは家に帰れない。ラスマグナを購入して帰宅することが、私に課せられた最重要ミッションなのだ。
さぁ私、覚悟はいいか。今からヒトマル・マルマル秒後に作戦スタートだ。相変わらず用語をニワカな感じで使っているけど気にするな私。自覚しているニワカはいつか直せる。はず。今はこのままでよし!
六秒間の間に、ゴクリと生唾を飲み、作戦を頭の中で繰り返す。
残り四秒で息を整えて、ライトノベルの棚の手前でクラウチングスタートの体制をとる。
残る1秒で両足にありったけの力を込めて、スタート!
これでも私は50メートル走を7.1秒で走ることが出来る。女子の中では早いほうなんだそうだ。
その早いらしい足を使って目当ての棚まで全力疾走し、目当ての本に手をのばす。
が、タイミングよく、先程までしゃがんでいた小田くんが立ち上がり私の顎に直接攻撃をカマしてきた。
え、嘘でしょ!?
こんなライトノベルみたいな事が現実であるわけが!
私が倒れる寸前でそのような思考をめぐらした時、小田くんがとっさに自身の手を伸ばし、私を抱え込むようにして倒れるのを防いだ。
な、何このライトノベルみたいな展開!?
いろんな意味で興奮が覚めないでいると、小田くんは
「これを取ろうとしてたんだよね、どうぞ」
と、私にラスマグナを手渡してきた。
「じゃ、じゃあ僕このあと用事があるから」
また私の前を足早に去っていく彼を、今度はたしは不思議な感情で見守っていた。
嬉しさと寂しさが入り交じった感情。この感情を人はなんと呼ぶのだろうか。
そんなことを考えている今の私の顔は、嬉しそうにしているのだろうか、寂しそうにしているのだろうか。
これからも小田くんと関わり続ければ、この気持ちの正体が分かるのだろうか?
色々な思考を巡らせながら私はレジへと足を運ぶ。
「お客様、今日はなんだかとても嬉しそうですね」
いつも話す店員にそう言われて今の自分は嬉しいのだと気づく。
だがなぜ嬉しいのかがわからない。
この気持ちはなんだろう。そんな詩を書いていた作家がいたような気がする。
国語の授業で行ったそれを、当時はなんとも思わなかったけれども、今なら意味が鮮明にわかる気がした。
今私の全身は、目に見えないエネルギーが今にも噴き出しそうに循環している。私が今まで生きてきた中で一度も感じたことのない感情が。
『絶対戦姫ラスマグナ』というロボットアニメを最近見始めたので、その原作を購入しに来たのだ。
ライトノベルのコーナーに足を運ぶと、毎回のことだけれどもそのスケールに圧倒される。
本屋ならではの圧倒的貯冊数。カラフルな表紙背表紙の数々、それらが神々しく鎮座しているその棚は全部で12台あり、自宅近辺の店では絶対に見ることの出来ない光景が今まさに目の前に広がっていた。
「......わぁ!」
あい変わらず何度見ても感嘆の声が漏れてしまう。
いやいや、今日はそんなことをしている場合ではないのだった。早くラスマグナを購入して帰らなければならない。王都マグナカルタの民たちが私のことを読んでいる!(呼ばれているのあくまで主人公で私ではないのだけれど)
もう場所は把握しているのでラスマグナの所へと歩を進める。
あ、小田くんがいる!?
あの感じだと小田くんはすぐに帰ったと思ったのだけれど、私としたことが予想が外れたわ......よし、ここは広さを有効活用して彼の真後ろからラスマグナを取って走り去ろう。
また先程のように彼に逃げられて変な気分になるのは嫌だ。多分私は今、彼の中では
『・遭遇したら危険→社会的に抹殺される
・姿を見たら危険→社会的に抹殺される
・話しかけられたら危険→社会的に抹殺される
※超要注意人物』
とかこんな感じの危ないヤツという扱いだろうと思う。
だけれど私もラスマグナを買うまでは家に帰れない。ラスマグナを購入して帰宅することが、私に課せられた最重要ミッションなのだ。
さぁ私、覚悟はいいか。今からヒトマル・マルマル秒後に作戦スタートだ。相変わらず用語をニワカな感じで使っているけど気にするな私。自覚しているニワカはいつか直せる。はず。今はこのままでよし!
六秒間の間に、ゴクリと生唾を飲み、作戦を頭の中で繰り返す。
残り四秒で息を整えて、ライトノベルの棚の手前でクラウチングスタートの体制をとる。
残る1秒で両足にありったけの力を込めて、スタート!
これでも私は50メートル走を7.1秒で走ることが出来る。女子の中では早いほうなんだそうだ。
その早いらしい足を使って目当ての棚まで全力疾走し、目当ての本に手をのばす。
が、タイミングよく、先程までしゃがんでいた小田くんが立ち上がり私の顎に直接攻撃をカマしてきた。
え、嘘でしょ!?
こんなライトノベルみたいな事が現実であるわけが!
私が倒れる寸前でそのような思考をめぐらした時、小田くんがとっさに自身の手を伸ばし、私を抱え込むようにして倒れるのを防いだ。
な、何このライトノベルみたいな展開!?
いろんな意味で興奮が覚めないでいると、小田くんは
「これを取ろうとしてたんだよね、どうぞ」
と、私にラスマグナを手渡してきた。
「じゃ、じゃあ僕このあと用事があるから」
また私の前を足早に去っていく彼を、今度はたしは不思議な感情で見守っていた。
嬉しさと寂しさが入り交じった感情。この感情を人はなんと呼ぶのだろうか。
そんなことを考えている今の私の顔は、嬉しそうにしているのだろうか、寂しそうにしているのだろうか。
これからも小田くんと関わり続ければ、この気持ちの正体が分かるのだろうか?
色々な思考を巡らせながら私はレジへと足を運ぶ。
「お客様、今日はなんだかとても嬉しそうですね」
いつも話す店員にそう言われて今の自分は嬉しいのだと気づく。
だがなぜ嬉しいのかがわからない。
この気持ちはなんだろう。そんな詩を書いていた作家がいたような気がする。
国語の授業で行ったそれを、当時はなんとも思わなかったけれども、今なら意味が鮮明にわかる気がした。
今私の全身は、目に見えないエネルギーが今にも噴き出しそうに循環している。私が今まで生きてきた中で一度も感じたことのない感情が。
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