Waving Life ~波瀾万丈の日常~

柏崎 聖

71話 思い出作り

 思い出作り


 時間は、待ったをかけても待ってくれない。
 だから彼女の留学までの時間を長くすることは出来ない。
 せめて留学するまでに最高の思い出を作りたい。
 そう、改めて決心したのは10月31日。
 今日は、ハロウィンの日である。
 そして運のいいことに、今日は休みの日。
 1日中パーティーを出来るので、俺は心が舞い上がっていた。

 実は昨日のうちに、俺の家でパーティーをしないかと話を持ちかけてあったのだ。
 蘭華、絵里、桃山さん、半弥、西島、そして先輩が来る予定だ。
 あとパーティーには妹も参加する。
 その妹は俺同様、テンションが上がっているみたいで、さっき準備している姿を見たら鼻歌を歌いながらやっていた。

 午前9時。
 インターホンがなった。
 俺は走って玄関に向かう。
 朝の廊下はとても寒くて、床の冷たさが直に伝わってくる。


「おはよう!剣也」


 暖かい格好ををして、元気よく入ってきたのは蘭華だ。


「おはよう」


 蘭華の手元を見ると、パンパンに詰まったビニール袋を持っていた。
 その中には多種多様のお菓子が入っていた。


「それは?」
「ハロウィンと言ったらお菓子でしょ?だから来る時に買ってきたの!」
「にしても、すごい量だな」


 ビニール袋を持っているのは、片手だけではない。
 両手にこれでもかと詰められたビニール袋を重たそうに持っていた。


「たくさん来るでしょ?だからたくさん買ったの」
「とりあえず、上がりなよ。荷物持つよ」
「ありがと」


 俺は、蘭華のビニール袋を1つ貰ってリビングへと向かった。
 うっ……。重い……。


 それから5分後。
 俺は蘭華と妹と一緒にコタツの中で暖まっていた。


『おはようございます!』


 玄関から大きな声が聞こえた。
 なんでインターホンがならないのかと思ったら、蘭華が玄関開けっ放しにしてたんだった……。


「私出るよ?」


 と妹が言ってきたが、


「俺が出るからいいよ」


 と言って代わりに玄関に向かった。
 廊下の床の冷たさは、コタツで暖まったせいか尚更冷たく感じられた。

 するとそこには、絵里と半弥、桃山さんと西島がいた。


「おーっす!」


 半弥が軽めの挨拶をしてきた。
 まぁ、めんどくさいからそれはスルーしてっと。


「お疲れ様、蔭山君。準備大変だっただろ?」


 と、西島が労いの言葉をかけてくれた。


「いやいや、別に。大したことしてないよ。とりあえずみんなあがってよ。もう蘭華来てるから」
「え?蘭華ちゃんもう来てるの?」


 そういうのは、つい最近復活した絵里だ。
 今日は化粧をしているので、いつもとは違う感じがした。


「って言ってもほんのちょっと前だけどね」
「本当はもっと早く来て、手伝いたかったんだけどね……。この馬鹿が、変なことしてるから……」


 桃山さんが半弥を蔑んだ目で見て話した。
 一体何してたんだよ……。
 まぁ、ナンパだろうけど。


「近くに可愛い女の子いたからちょっと挨拶しただけだろ?」


 予想的中かよ……。
 全く、好きな人いるってのにいい加減止めろよな。


「何がちょっと挨拶しただけよ!『これからパーティーなんだけど一緒に行かない?』とか言ってたじゃない!」
「いやぁ、それは……」

「玄関で立ち話もあれだから、早く入ってよ。中でゆっくり話そう」


 俺は、4人を連れて再びリビングに向かった。


 さらに5分後。
 インターホンがなったので、再び玄関に向かう。
 もう、廊下の床の冷たさには慣れた。


「お久しぶりです!先輩」


 いたのは予想外の人物。
 長きに渡り登場の機会はなかった影の薄いモブ。
 ごめん、今の今まで忘れてたよ宏誠君。


「帰れ。そして2度と顔を見せるな!」
「来たら悪かったかな?」


 その宏誠の後ろの方から声が聞こえた。
 そしてその声の主は姿を現した。


「そんなわけないじゃないですか!先輩。俺が帰ってほしいのは、そいつだけです」


 先輩は仕事で近頃忙しい。
 そのためあまり会うことも話すこともなかったが、メールでのやりとりは続けていた。
 そして今日。たまたま休みだったらしく参加することになった。


「別にいいじゃないですかぁ〜、先輩〜」


 そんな言い方されても、こいつがすると気持ち悪くて仕方がない。
 朝食べたものが逆流しそうだ。


「良くないだろ!お前は呼んでないし、そもそもなんで来たんだよ?」
「美香さんが居られるのなら、行こうかなって思ったんです」


 妹狙いかよ……。
 そう言えば塾が一緒でそれなりに仲良いんだったな。
 だが、残念だったな。
 お前に渡す妹はいないよ!
 ……、注意。俺はシスコンではありません。


「はぁ。来たならしょうがない。とりあえず早くあがって下さい。みんな待ってますから」
「あぁ。お邪魔します」


 9時30分。
 ようやく、パーティーのメンバーが揃った。



「じゃあ、始めようか!」


 俺の合図に全員が、『お〜!』と答えた。
 そしてそれぞれコップに、ジュースを注ぐ。


「こうしてみんなで集まれたのは、とても嬉しいです!今日1日楽しい日にしましょう!乾杯!」


 リビングにグラスがぶつかり合う音が響いた。


 こうして楽しいハロウィンパーティーが幕を開けた。


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