Waving Life ~波瀾万丈の日常~
65話 道は開いた
道は開いた
1
「私は、いったい何がしたいの?」
私はそう思う。
今の私でいることで、何の意味があるのか。
あの時の目的のような、復讐の気持ちは今はないはずだ。
だとしたら、何故?
彼の言うように、ふられた自分を否定するためにやっているの?
だったら、今の私は演技の私?
正直、最近は楽しくない。
演じていたあの頃の方が余っ程楽しかった……。
みんなと一緒に会話したりするのが、楽しかった……。
でも、演じることはしたくない……。
誰か教えて欲しい。
私はどうあるべきなのか。
教えて欲しい。
私は、これからどうやって生きればいいの?
答えは、きっと自分の中にある。
それが分かっていても私は、他の人に答えを求める。
私が、今の私も演技の私も、醜くて嫌いだから。
2
「蔭山さ〜ん!」
1人学校に行くのは実に寂しいものだ。
その寂しさに浸っていた俺の背中側から、俺を呼ぶ声が聞こえる。
「桃山さん?どうしたの?」
彼女が息を切らしていたのを見れば急いできたのは明らかだった。
「いやぁ、改めて昨日のお礼をと思いまして……」
「いやいや、大丈夫だよ。それより頑張ってね」
「あの馬鹿の扱いに未だに慣れてないので、正直困ってます。どうすればいいんですかね?」
とにかくうるさいのが、半弥の1番の特徴だ。
それはいい意味でも悪い意味でもある。
「あいつと、割り切ってゆっくり話したらいいと思うよ。桃山さんだって、あいつのいい所気付いているんでしょ?」
表面上は能天気だけど、中身はすごい優しいやつだ。
きっと、分かり合えると思う。
それにどこか、桃山さんと半弥はお似合いな気がしていた。
息の合った漫才みたいなのをいつも繰り広げてたし……。笑。
「実は、私……。胸に引っかかるものがあるんですよ……」
彼女は右手で胸を抑えた。
「引っかかるもの?」
「もやもやというか、イライラというか……。なんとも言えない気持ちです……」
俺は、彼女の表情や今聞いた気持ちで、どんな感情を抱いているかは気付いていた。
でもそれを俺が言うのはちょっと違う気がした。
やっぱり、頑張った末に見つけた答えだったり結果の方が彼女にとってもプラスになるだろうから。
だから、俺は答えではなくヒントを出す。
「その気持ちは、多分誰かの近くにいた時に強くなったりしない?」
「そう言われてみれば、そんな気がしないでもないです……」
俺たちは揃って玄関に入り、靴を履き替える。
話を続けようかな……、と思ったがいいタイミングでその本人が現れた。
「うぃ〜っす、剣也!って、桃山さん!おはようございます!」
俺は近くにいた、桃山さんの背中を押してあげる。
「ちょっと、蔭山さん?」
「いってらっしゃい!」
そう行って、半弥に向かって強く押し出した。
「あっ、蔭山さん!ちょっと〜!」
俺は再び1人なり、廊下を歩き始めた。
きっと彼らなら、上手くいくはずだ。
そう思いながら廊下を歩き、階段を上っていくのだが、静かな廊下には罵声が響く。
「ちょっ、近づかないでよ!きもい!」
本当に大丈夫なのだろうか……。
何だか心配になってしまうだろうが……。
3
もうこの10月も最終週。
かなり冷え込んで、より一層冬に近づいていた。
周りの人と話すこともかなり減って、気付けば完全に1人になっていた。
俺は今日も1人で家に帰る。
「やっぱり、1人は寂しいよな……」
はぁ〜、と吐く息はもう白い。
今年の秋は、去年よりかなり冷え込んでいる。
「蔭山!」
後ろから声をかけられた。
振り返って見ると、先輩だった。
「先輩……。仕事は大丈夫なんですか?」
「あぁ」
寒くなってきたからか、先輩の服装もかなり厚着だ。
制服の上からコートを羽織っている。
「蘭華との件の調子はどうだ?」
もう、話さなくなってから3週間。
気持ちには大きな変化が生まれていた。
もやもや、イライラ、寂しさ……。
これは、俺が持っている誰かに対する思い。
話さなくなる時間が増えれば増えるほど、その思いは強くなった。
その思いの正体は『好き』。
好きという気持ちは間違いなく強くなった。
会いたい、話したい……。
その欲望が頭を独占していた。
「前よりも、もっと好きな気持ちが強くなりました……」
「寂しい気持ちが、多分蔭山自身の生活にまで影響している。人と話すことは少なくなって、笑うことも次第に減っただろう?」
「そうですね……」
「実は、蘭華が同じようなことを言ってたんだよ」
街は暗くなり始め、街灯が灯り始める。
「寂しくて、心が痛い。早く、会いたい……、って」
「……」
「君たちは実に似たもの同士だな」
先輩は、からっと笑う。
「きっと、君たちの考えは一致したはずだ。あとは君たちがどうするか。それだけだよ……」
ようやく道は開けた。
俺は彼女が好きだ。
その自分の気持ちに素直になればいいじゃないか?
それに気付けた。
やることなんて、考えなくても分かる。
「先輩、失礼します!」
「あぁ。蘭華の居場所は……、って多分分かるよな?」
「じゃあ、行ってきます!」
俺は、深く一礼してから走り出した。
今出来る、全力の走りで。1度も止まることなく。
1分1秒でも早く会いたい気持ち、好きと伝えたい気持ち。
それが俺を加速させる。
俺は、蘭華のいるあの場所へ向かった。
1
「私は、いったい何がしたいの?」
私はそう思う。
今の私でいることで、何の意味があるのか。
あの時の目的のような、復讐の気持ちは今はないはずだ。
だとしたら、何故?
彼の言うように、ふられた自分を否定するためにやっているの?
だったら、今の私は演技の私?
正直、最近は楽しくない。
演じていたあの頃の方が余っ程楽しかった……。
みんなと一緒に会話したりするのが、楽しかった……。
でも、演じることはしたくない……。
誰か教えて欲しい。
私はどうあるべきなのか。
教えて欲しい。
私は、これからどうやって生きればいいの?
答えは、きっと自分の中にある。
それが分かっていても私は、他の人に答えを求める。
私が、今の私も演技の私も、醜くて嫌いだから。
2
「蔭山さ〜ん!」
1人学校に行くのは実に寂しいものだ。
その寂しさに浸っていた俺の背中側から、俺を呼ぶ声が聞こえる。
「桃山さん?どうしたの?」
彼女が息を切らしていたのを見れば急いできたのは明らかだった。
「いやぁ、改めて昨日のお礼をと思いまして……」
「いやいや、大丈夫だよ。それより頑張ってね」
「あの馬鹿の扱いに未だに慣れてないので、正直困ってます。どうすればいいんですかね?」
とにかくうるさいのが、半弥の1番の特徴だ。
それはいい意味でも悪い意味でもある。
「あいつと、割り切ってゆっくり話したらいいと思うよ。桃山さんだって、あいつのいい所気付いているんでしょ?」
表面上は能天気だけど、中身はすごい優しいやつだ。
きっと、分かり合えると思う。
それにどこか、桃山さんと半弥はお似合いな気がしていた。
息の合った漫才みたいなのをいつも繰り広げてたし……。笑。
「実は、私……。胸に引っかかるものがあるんですよ……」
彼女は右手で胸を抑えた。
「引っかかるもの?」
「もやもやというか、イライラというか……。なんとも言えない気持ちです……」
俺は、彼女の表情や今聞いた気持ちで、どんな感情を抱いているかは気付いていた。
でもそれを俺が言うのはちょっと違う気がした。
やっぱり、頑張った末に見つけた答えだったり結果の方が彼女にとってもプラスになるだろうから。
だから、俺は答えではなくヒントを出す。
「その気持ちは、多分誰かの近くにいた時に強くなったりしない?」
「そう言われてみれば、そんな気がしないでもないです……」
俺たちは揃って玄関に入り、靴を履き替える。
話を続けようかな……、と思ったがいいタイミングでその本人が現れた。
「うぃ〜っす、剣也!って、桃山さん!おはようございます!」
俺は近くにいた、桃山さんの背中を押してあげる。
「ちょっと、蔭山さん?」
「いってらっしゃい!」
そう行って、半弥に向かって強く押し出した。
「あっ、蔭山さん!ちょっと〜!」
俺は再び1人なり、廊下を歩き始めた。
きっと彼らなら、上手くいくはずだ。
そう思いながら廊下を歩き、階段を上っていくのだが、静かな廊下には罵声が響く。
「ちょっ、近づかないでよ!きもい!」
本当に大丈夫なのだろうか……。
何だか心配になってしまうだろうが……。
3
もうこの10月も最終週。
かなり冷え込んで、より一層冬に近づいていた。
周りの人と話すこともかなり減って、気付けば完全に1人になっていた。
俺は今日も1人で家に帰る。
「やっぱり、1人は寂しいよな……」
はぁ〜、と吐く息はもう白い。
今年の秋は、去年よりかなり冷え込んでいる。
「蔭山!」
後ろから声をかけられた。
振り返って見ると、先輩だった。
「先輩……。仕事は大丈夫なんですか?」
「あぁ」
寒くなってきたからか、先輩の服装もかなり厚着だ。
制服の上からコートを羽織っている。
「蘭華との件の調子はどうだ?」
もう、話さなくなってから3週間。
気持ちには大きな変化が生まれていた。
もやもや、イライラ、寂しさ……。
これは、俺が持っている誰かに対する思い。
話さなくなる時間が増えれば増えるほど、その思いは強くなった。
その思いの正体は『好き』。
好きという気持ちは間違いなく強くなった。
会いたい、話したい……。
その欲望が頭を独占していた。
「前よりも、もっと好きな気持ちが強くなりました……」
「寂しい気持ちが、多分蔭山自身の生活にまで影響している。人と話すことは少なくなって、笑うことも次第に減っただろう?」
「そうですね……」
「実は、蘭華が同じようなことを言ってたんだよ」
街は暗くなり始め、街灯が灯り始める。
「寂しくて、心が痛い。早く、会いたい……、って」
「……」
「君たちは実に似たもの同士だな」
先輩は、からっと笑う。
「きっと、君たちの考えは一致したはずだ。あとは君たちがどうするか。それだけだよ……」
ようやく道は開けた。
俺は彼女が好きだ。
その自分の気持ちに素直になればいいじゃないか?
それに気付けた。
やることなんて、考えなくても分かる。
「先輩、失礼します!」
「あぁ。蘭華の居場所は……、って多分分かるよな?」
「じゃあ、行ってきます!」
俺は、深く一礼してから走り出した。
今出来る、全力の走りで。1度も止まることなく。
1分1秒でも早く会いたい気持ち、好きと伝えたい気持ち。
それが俺を加速させる。
俺は、蘭華のいるあの場所へ向かった。
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