Waving Life ~波瀾万丈の日常~
48話 隠していたこと
隠していたこと
1
2人の間に久しぶりの笑顔が戻った。
でも、今はそれを懐かしんでいる暇はない。
本題に入らないといけない。
「西島との間にあったこと、話してくれるか?」
涙を拭い、元の体勢に戻る。
蘭華も1度深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「私ね、ずっと隠してたの。それも大事なこと……」
彼女の声音はいつもより低い。
表情は真剣そのものだった。
俺も真剣に耳を傾ける。
「入学してすぐに遊園地に行ったの覚えてるよね?」
入学してすぐのこと。
蘭華と一緒に遊園地に出かけた。
「もちろん、覚えてる」
蘭華と先輩の関係を聞いたり。
お金が足りなくなりそうで、偶然いた絵里に5000円借りたり。
ジェットコースターでテンション上がって、1人で舞い上がっていたり。笑。
懐かしい、楽しかった思い出の1つだ。
帰り際、蘭華にキスされて告白されて……。
そこから波乱万丈の日々が始まったのだ。
「あの日、剣也に告白した。剣也の事が好きだからって。本当に私の好きなのは剣也だけで、他の人の事なんて何1つ考えていなかったの」
「……」
「だから彼が私のことを好きだったなんて知らなかった」
「彼?」
「西島君だよ……」
西島は蘭華のことが好きだったのか……。
知らなかった。
「最初は、番数の近いライバルだったんだよ。そこから段々勉強以外のことも話すようになって、気付けば友達になってた。距離が近づいて行ってても、私は彼が私のことを好きだって思っていたなんて考えてもいなかったの」
夏休みの時の勉強会。
蘭華が咄嗟に思いついた人は西島だった。
それくらい近くにいた人物だったのだ。
「だから、中間テスト終わって次の日に告白された時は正直驚いたの。『前からあなたの事が好きでした』って言われたから。その後、私の本心を話した9西島君はすごい落ち込んでた」
西島はずっと好きだった。
でもそんなふうに考えてもらえていなかった。
西島はショックだっただろうな。
よく聞く話がある。
「付き合ってください!」
とある人が告白する。
すると、
「ごめんなさい。あなたの事をこんなふうに見たことなかったわ」
そう言われる。
言われた本人はどう思うだろう。
ショックだろう。
自分が勇気を絞って言ったのに相手は、興味ありませんって言って即踏みにじるのだから。
でも、告白された側が悪いという訳では無い。
意図してそんなふうに見なかった訳じゃないのだから。
わざとではないのに、振った人が悪い人扱いされるのは理不尽だと思う。
理不尽に溢れたこの世の中で、特に恋愛というのは理不尽ものなのだ。
だから恋愛というのは、難しいのだ。
そして難しいから、俺は恋愛をよく分からない。
「私は西島君をふったの。最後にこう言ってね。『私は好きな人がいるから』って」
「それって……」
「もちろん、剣也の事だよ」
そう言った蘭華は無邪気に笑っていた。
その優しい声を聞いて鳥肌が立った。
蘭華の言葉があまりにも嬉しかったからだ。
好きだと思ってくれている事がすごく嬉しい。
「悪いな、今だに俺の気持ちは伝えてなくて……」
気持ちが定まるまでには、もう少しかかる。
ちゃんと整理したら気持ちを伝えるつもりだ。
恐らく学校祭が終わるまでには……。
「うんうん。大丈夫。それより私こそごめんね……。こんな事あったのに今まで黙ってて」
「いや、それは話しにくいことだし……。だから謝らなくてもいいよ!それよりさ、話は終わってないだろ?」
「え?」
この話だけが隠していたことではないと確信していた、
というのも、この話はかなり前のこと。
最近、蘭華が元気ないことに直接関わっているとは思えない気がしたからだ。
「これだけじゃないだろ?隠してたこと」
「うん……。もう1つあるの。でも……」
「でも?」
「時間遅いしさ、帰りながら話さない?」
「ふふっ……」
思わず吹き出してしまった。
本当に蘭華は期待を裏切らない。だから一緒に居てすごく楽しいのだ。
楽しくて仕方がない!
「なんで笑うの?」
「蘭華が面白いからだよ」
「それ褒め言葉?それとも馬鹿にしてるだけ?」
「どっちもだな!」
「ひ、ひど〜い!」
2人の間にはまたもや笑顔が咲いた。
教室は次第に暗くなってきていた。
でもそれを照らすように笑顔が明るかった。
「先に玄関行くからな!」
「ちょっと、剣也!逃げるなぁ!」
俺は笑いながら静かな廊下を走り出した。
蘭華もその後を笑いながら追いかけてくる。
2人の笑い声は廊下中に響いた。
「仲直りしたみたいだね……」
彼らが走っていった方向の反対側から物陰に見を潜めてその様子を眺める。
さっきの涙は消えていたが、心では寂しさと悲しさが占領していた。
お陰で気分はあまり良くない。
「ずっとこのままいたいって思っても人の関係は変わっていく。望んだところで無駄かもしれない……」
自分が事実上降られたように。
剣也と蘭華の仲が良くなっていくように。
人の関係は変わっていく。
時間でも止めない限り、それを食い止めることは出来ないのだ。
「諦めも肝心かな?」
自分の嘆きは静かな廊下に響かない、誰にも届かない独り言だった。
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2人の間に久しぶりの笑顔が戻った。
でも、今はそれを懐かしんでいる暇はない。
本題に入らないといけない。
「西島との間にあったこと、話してくれるか?」
涙を拭い、元の体勢に戻る。
蘭華も1度深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「私ね、ずっと隠してたの。それも大事なこと……」
彼女の声音はいつもより低い。
表情は真剣そのものだった。
俺も真剣に耳を傾ける。
「入学してすぐに遊園地に行ったの覚えてるよね?」
入学してすぐのこと。
蘭華と一緒に遊園地に出かけた。
「もちろん、覚えてる」
蘭華と先輩の関係を聞いたり。
お金が足りなくなりそうで、偶然いた絵里に5000円借りたり。
ジェットコースターでテンション上がって、1人で舞い上がっていたり。笑。
懐かしい、楽しかった思い出の1つだ。
帰り際、蘭華にキスされて告白されて……。
そこから波乱万丈の日々が始まったのだ。
「あの日、剣也に告白した。剣也の事が好きだからって。本当に私の好きなのは剣也だけで、他の人の事なんて何1つ考えていなかったの」
「……」
「だから彼が私のことを好きだったなんて知らなかった」
「彼?」
「西島君だよ……」
西島は蘭華のことが好きだったのか……。
知らなかった。
「最初は、番数の近いライバルだったんだよ。そこから段々勉強以外のことも話すようになって、気付けば友達になってた。距離が近づいて行ってても、私は彼が私のことを好きだって思っていたなんて考えてもいなかったの」
夏休みの時の勉強会。
蘭華が咄嗟に思いついた人は西島だった。
それくらい近くにいた人物だったのだ。
「だから、中間テスト終わって次の日に告白された時は正直驚いたの。『前からあなたの事が好きでした』って言われたから。その後、私の本心を話した9西島君はすごい落ち込んでた」
西島はずっと好きだった。
でもそんなふうに考えてもらえていなかった。
西島はショックだっただろうな。
よく聞く話がある。
「付き合ってください!」
とある人が告白する。
すると、
「ごめんなさい。あなたの事をこんなふうに見たことなかったわ」
そう言われる。
言われた本人はどう思うだろう。
ショックだろう。
自分が勇気を絞って言ったのに相手は、興味ありませんって言って即踏みにじるのだから。
でも、告白された側が悪いという訳では無い。
意図してそんなふうに見なかった訳じゃないのだから。
わざとではないのに、振った人が悪い人扱いされるのは理不尽だと思う。
理不尽に溢れたこの世の中で、特に恋愛というのは理不尽ものなのだ。
だから恋愛というのは、難しいのだ。
そして難しいから、俺は恋愛をよく分からない。
「私は西島君をふったの。最後にこう言ってね。『私は好きな人がいるから』って」
「それって……」
「もちろん、剣也の事だよ」
そう言った蘭華は無邪気に笑っていた。
その優しい声を聞いて鳥肌が立った。
蘭華の言葉があまりにも嬉しかったからだ。
好きだと思ってくれている事がすごく嬉しい。
「悪いな、今だに俺の気持ちは伝えてなくて……」
気持ちが定まるまでには、もう少しかかる。
ちゃんと整理したら気持ちを伝えるつもりだ。
恐らく学校祭が終わるまでには……。
「うんうん。大丈夫。それより私こそごめんね……。こんな事あったのに今まで黙ってて」
「いや、それは話しにくいことだし……。だから謝らなくてもいいよ!それよりさ、話は終わってないだろ?」
「え?」
この話だけが隠していたことではないと確信していた、
というのも、この話はかなり前のこと。
最近、蘭華が元気ないことに直接関わっているとは思えない気がしたからだ。
「これだけじゃないだろ?隠してたこと」
「うん……。もう1つあるの。でも……」
「でも?」
「時間遅いしさ、帰りながら話さない?」
「ふふっ……」
思わず吹き出してしまった。
本当に蘭華は期待を裏切らない。だから一緒に居てすごく楽しいのだ。
楽しくて仕方がない!
「なんで笑うの?」
「蘭華が面白いからだよ」
「それ褒め言葉?それとも馬鹿にしてるだけ?」
「どっちもだな!」
「ひ、ひど〜い!」
2人の間にはまたもや笑顔が咲いた。
教室は次第に暗くなってきていた。
でもそれを照らすように笑顔が明るかった。
「先に玄関行くからな!」
「ちょっと、剣也!逃げるなぁ!」
俺は笑いながら静かな廊下を走り出した。
蘭華もその後を笑いながら追いかけてくる。
2人の笑い声は廊下中に響いた。
「仲直りしたみたいだね……」
彼らが走っていった方向の反対側から物陰に見を潜めてその様子を眺める。
さっきの涙は消えていたが、心では寂しさと悲しさが占領していた。
お陰で気分はあまり良くない。
「ずっとこのままいたいって思っても人の関係は変わっていく。望んだところで無駄かもしれない……」
自分が事実上降られたように。
剣也と蘭華の仲が良くなっていくように。
人の関係は変わっていく。
時間でも止めない限り、それを食い止めることは出来ないのだ。
「諦めも肝心かな?」
自分の嘆きは静かな廊下に響かない、誰にも届かない独り言だった。
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