Waving Life ~波瀾万丈の日常~
17話 梅雨の訪れ
梅雨の訪れ
1
6月に入った。
外は梅雨の訪れにより、雨が降っている。
シトシト、葉に滴る雨水の音が聞こえる。
そんな今日、6月1日土曜日。
テストが終わって一段落したと一安心をしていた所、水を差すように新たな出来事が起きた。
それは昨日、つまりテスト返しの次の日のこと。
「ねぇ、剣也君?」
帰る準備をして、待ち合わせの玄関へと向かおうとしていた。
その俺を見ていた絵里が声をかけてきた。
「どうした?」
「相談を受けてほしいの」
あまりに突然の出来事だったので、正直驚きを隠せなかった。
俺がなんとなく了解すると彼女はそれにつけ込むように話を続ける。
「明日、空いてる?良かったら遊びに行っていい?その時に相談するね」
とまぁ、断りを入れる間もなく約束され今彼女を家で待っているわけである。
家には今2人。妹と俺だけ。
まぁいつもの事なので気にしないでほしい。
『ピンポーン』
はいはい。今行きますよ。
扉を開けるとそこに待っていたのは私服の絵里だった。
この前家に泊まりに来たよりも華麗に見える。
「どうぞ」
俺はこの前と同様に部屋へ連れ込む。
ってこんな言い方すると、卑猥に考える人いると思うけど無いから。
このド変態!
この台詞、可愛い女の子が言わないと気持ち悪いな。
言った俺が情けない…。
気を取り直して、部屋に上がってもらい彼女を座らせる。
俺的には今日明日の休日はゆっくり過ごしたいので、テキパキと終わらせたいものだ。
今までのパターンなら無理だけどね。笑。
「早速、本題に入ろうか」
「そ、そうだね。相談するために来たんだからね。あはは」
彼女は健気に笑う。
いつしか彼女の独特の怖さは無くなっていた。
遊園地で会った時とか本当に怖かった記憶がある。
でも今ではこうして2人きりで普通に会話出来るまで打ち解けた。
何が起きるかは分からないものですね、人生って。
「それじゃあ、話すね」
こうして相談が始まった。
2
「蘭華ちゃん、留学するんでしょ?」
「お前、何でそれを…」
留学の事はてっきり俺にしか話していないのかと思っていた。
「直接聞いたよ」
話したということは信頼しての事なのだろうな。
他人に言いふらして話を流してしまうと、人間関係に影響が出てくるからな。
一昔前の俺のように、本人に気を遣おうとしてしまう。
本人はそれが嫌だった。
だが俺達には事実を伝えた。
誰にも言わずに突然去ることが、他人に迷惑だと知っていたからだ。
「正直どう思った?その事」
「もちろん驚いたよ」
「だろうな、俺もだ」
いつも別れる交差点。
遊園地の帰り。
突然告げられた現実。
来年のイギリス留学。
誰でも驚くだろう。
「剣也君はどう考えてる?」
顔が一層険しくなる。
真剣な顔そのものだ。
「どうって?」
「蘭華ちゃんを止めるつもり?それとも行かせるつもり?」
かなり痛いところをつかれてしまった。
何もしなければこのままイギリスに留学するだろう。
だけど、止められない訳ではない。
手段はいくらでもある。
だけど、彼女の意思を尊重することが俺は正しいと思う。
「蘭華自身が行きたくて行くんだ。俺は彼女がそうしたいならそれでいいと思う」
「私、剣也君のこと見損なったよ」
「え?」
険しい顔はさらに厳しくなり、怒りの表情へと変化していた。
「あなた、それでも幼馴染のつもり?笑わせないでよ」
ふっと短く笑う。
けど、その笑いに優しさなどなかった。
「本人が私たちにそう伝えたのは止めて欲しいからじゃないの?それを心のどこかで思っていて選択を私たちに託したんでしょ?」
俺とは180°解釈が違う。
俺の解釈はこうである。
予め伝えておく事で心配をかけずに済む。
だから話したと。
だが、絵里は違った。
行って欲しくないと思うなら止めて欲しい。私はそれでもいいから。あなた達がどう考えるかに任せる。
そういう解釈だった。
絵里はふっと短く息を吐く。
取り乱した自分を落ち着かせるために。
そして更なる問いかけ。
「だとしたら必然的にやることは決まってくるでしょ?」
俺はこの質問に行き詰まった。
3
「だとしたら必然的にやることは決まってくるでしょ?」
必然的にとはいうがそれ自体間違っている。
人生には多くの分岐点がある。
枝分かれした道はどれしも間違っていることはない。
それがその人の人生だからだ。
結果がどうだろうと本人がこれでいいと思う人生であればいいのだ。
つまり、今のように選択を迫られたとき。
俺は自分の意見を通そうとする訳である。
何故なら自分自身が正しいと思った選択であるからだ。
「必ずしも彼女を止めることが正しいとは限らないんじゃないか?」
俺は冷静に答える。
「どういうこと?」
「どちらになろうとそれは彼女の人生だろ?それならその人の背中を押してあげるのも俺らの仕事だ。別の道を敷くことだけが正しい訳じゃないんだ」
背中を押してあげる。
それが俺の現時点の答え。
「何でそんなに冷静でいられるの?」
「焦る必要はない。時間はまだある」
「そんな事言ってるから時間が無くなるのよ!もういい。また今度聞くからその時にいい返事が返ってくること期待してるから」
彼女は部屋の戸を開け、階段を降りていった。
そして数十秒後には玄関の扉が勢い良く閉められた音が聞こえた。
困ったことになった。
この問題は非常に難しい。
どちらも正解でない問題があるなら君はどちらを選ぶだろうか?
答えはそう。その人によるのである。
つまり解決方法はどちらかの意見に乗ることのみ。
俺は絵里が帰った後も慎重に考えていた。
休日をゆっくり過ごすことを忘れて。
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6月に入った。
外は梅雨の訪れにより、雨が降っている。
シトシト、葉に滴る雨水の音が聞こえる。
そんな今日、6月1日土曜日。
テストが終わって一段落したと一安心をしていた所、水を差すように新たな出来事が起きた。
それは昨日、つまりテスト返しの次の日のこと。
「ねぇ、剣也君?」
帰る準備をして、待ち合わせの玄関へと向かおうとしていた。
その俺を見ていた絵里が声をかけてきた。
「どうした?」
「相談を受けてほしいの」
あまりに突然の出来事だったので、正直驚きを隠せなかった。
俺がなんとなく了解すると彼女はそれにつけ込むように話を続ける。
「明日、空いてる?良かったら遊びに行っていい?その時に相談するね」
とまぁ、断りを入れる間もなく約束され今彼女を家で待っているわけである。
家には今2人。妹と俺だけ。
まぁいつもの事なので気にしないでほしい。
『ピンポーン』
はいはい。今行きますよ。
扉を開けるとそこに待っていたのは私服の絵里だった。
この前家に泊まりに来たよりも華麗に見える。
「どうぞ」
俺はこの前と同様に部屋へ連れ込む。
ってこんな言い方すると、卑猥に考える人いると思うけど無いから。
このド変態!
この台詞、可愛い女の子が言わないと気持ち悪いな。
言った俺が情けない…。
気を取り直して、部屋に上がってもらい彼女を座らせる。
俺的には今日明日の休日はゆっくり過ごしたいので、テキパキと終わらせたいものだ。
今までのパターンなら無理だけどね。笑。
「早速、本題に入ろうか」
「そ、そうだね。相談するために来たんだからね。あはは」
彼女は健気に笑う。
いつしか彼女の独特の怖さは無くなっていた。
遊園地で会った時とか本当に怖かった記憶がある。
でも今ではこうして2人きりで普通に会話出来るまで打ち解けた。
何が起きるかは分からないものですね、人生って。
「それじゃあ、話すね」
こうして相談が始まった。
2
「蘭華ちゃん、留学するんでしょ?」
「お前、何でそれを…」
留学の事はてっきり俺にしか話していないのかと思っていた。
「直接聞いたよ」
話したということは信頼しての事なのだろうな。
他人に言いふらして話を流してしまうと、人間関係に影響が出てくるからな。
一昔前の俺のように、本人に気を遣おうとしてしまう。
本人はそれが嫌だった。
だが俺達には事実を伝えた。
誰にも言わずに突然去ることが、他人に迷惑だと知っていたからだ。
「正直どう思った?その事」
「もちろん驚いたよ」
「だろうな、俺もだ」
いつも別れる交差点。
遊園地の帰り。
突然告げられた現実。
来年のイギリス留学。
誰でも驚くだろう。
「剣也君はどう考えてる?」
顔が一層険しくなる。
真剣な顔そのものだ。
「どうって?」
「蘭華ちゃんを止めるつもり?それとも行かせるつもり?」
かなり痛いところをつかれてしまった。
何もしなければこのままイギリスに留学するだろう。
だけど、止められない訳ではない。
手段はいくらでもある。
だけど、彼女の意思を尊重することが俺は正しいと思う。
「蘭華自身が行きたくて行くんだ。俺は彼女がそうしたいならそれでいいと思う」
「私、剣也君のこと見損なったよ」
「え?」
険しい顔はさらに厳しくなり、怒りの表情へと変化していた。
「あなた、それでも幼馴染のつもり?笑わせないでよ」
ふっと短く笑う。
けど、その笑いに優しさなどなかった。
「本人が私たちにそう伝えたのは止めて欲しいからじゃないの?それを心のどこかで思っていて選択を私たちに託したんでしょ?」
俺とは180°解釈が違う。
俺の解釈はこうである。
予め伝えておく事で心配をかけずに済む。
だから話したと。
だが、絵里は違った。
行って欲しくないと思うなら止めて欲しい。私はそれでもいいから。あなた達がどう考えるかに任せる。
そういう解釈だった。
絵里はふっと短く息を吐く。
取り乱した自分を落ち着かせるために。
そして更なる問いかけ。
「だとしたら必然的にやることは決まってくるでしょ?」
俺はこの質問に行き詰まった。
3
「だとしたら必然的にやることは決まってくるでしょ?」
必然的にとはいうがそれ自体間違っている。
人生には多くの分岐点がある。
枝分かれした道はどれしも間違っていることはない。
それがその人の人生だからだ。
結果がどうだろうと本人がこれでいいと思う人生であればいいのだ。
つまり、今のように選択を迫られたとき。
俺は自分の意見を通そうとする訳である。
何故なら自分自身が正しいと思った選択であるからだ。
「必ずしも彼女を止めることが正しいとは限らないんじゃないか?」
俺は冷静に答える。
「どういうこと?」
「どちらになろうとそれは彼女の人生だろ?それならその人の背中を押してあげるのも俺らの仕事だ。別の道を敷くことだけが正しい訳じゃないんだ」
背中を押してあげる。
それが俺の現時点の答え。
「何でそんなに冷静でいられるの?」
「焦る必要はない。時間はまだある」
「そんな事言ってるから時間が無くなるのよ!もういい。また今度聞くからその時にいい返事が返ってくること期待してるから」
彼女は部屋の戸を開け、階段を降りていった。
そして数十秒後には玄関の扉が勢い良く閉められた音が聞こえた。
困ったことになった。
この問題は非常に難しい。
どちらも正解でない問題があるなら君はどちらを選ぶだろうか?
答えはそう。その人によるのである。
つまり解決方法はどちらかの意見に乗ることのみ。
俺は絵里が帰った後も慎重に考えていた。
休日をゆっくり過ごすことを忘れて。
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