Waving Life ~波瀾万丈の日常~
15話 奇想天外
奇想天外
1
五月下旬。
春の陽気は次第に、夏の暑さに変化しつつある。
しかしながら、今はとても快適に過ごせる気候である。
いつまでも続いてほしいものだ。
今週は中間考査というイベントが存在する。
俺の入学して最初にあったテストの順位は真ん中。
まったく問題ないように思うかもしれない。
だけど、数学が…。
言うまでもなく、分からないのだ。
数学のような緻密なものは俺にとって最も苦手なものなのだ。
このままでは追試にされてしまう…。そんなレベルが現状です。
そう、告白の話がどうこう考える前に数学の方を優先しなければいけない。
天秤にかけるまでもない。
なんかいつも登校中に悩み事しているような…。
「剣也?剣也!」
蘭華が俺を揺さぶってきた。
「ん?」
首を傾げる。
「ん?じゃない!今日会った時からずっと無言で、私に怒っているのかと思ったでしょ!」
実は、中間考査が1週間前に迫っていることを俺は今日の朝に気付いた。
当然のことながら焦りでいっぱいだった。
そのため登校中、蘭華といることを完全に忘れてしまっていた。
「あ、あぁ。中間考査のこと考えていて…」
「そう言えば考査1週間前だったね」
こいつも忘れていたみたいだ。
まぁ、テストとは無縁そうだしな。
「テスト大丈夫なのか?」
「大丈夫!」
こいつの大丈夫は、いつも大丈夫じゃない。
「絶対、入学して最初のテスト悪かっただろ?何位だ?」
頭がいいとはとても思えない。
「確か、15位だったかなぁ」
「ふ〜ん、15位ねぇ」
ん?15位?
「え?」
「え?とは失礼な!」
蘭華が怒った口調で話す。
有り得ない。絶対にない。
俺より上ということよりも、300人もいる学年で15位であるということに驚きを隠せなかった。
「本当に言っているのか?」
「嘘なんてついてないよ!」
こちらを睨んできた。
剣の女王に比べれば怖くないけど…。
確かに、嘘を言うような性格ではない。
だとしても信じられない。
神様!選ぶ人間違ってますよ!
「ちなみに剣也は、何位だったの?」
「絶対に言ってやらねぇ!」
言えるかよ、153位なんて。
俺は恥ずかしさのあまり、学校へ向かって走り出した。
「あ、逃げるなー!剣也〜!」
その俺を追いかけて蘭華も走り出した。
神様。お助け下さい…。
数学の壊滅的な状況を。
2
2時間目、数学。
テスト週間になったこともあり、問題の解説がほとんどである。
「蔭山!この問題を前に出て黒板に書きなさい」
「はい!」
先生に指示され、前に出たまでは良かった。
だが、まるで異国語か?というくらい訳の分からない問題に俺は困惑していた。
「先生。解の公式って何ですか?」
「蔭山、席に着け」
俺は言われた通り戻った。
戻り際、クラスメイト皆が笑いを堪えている様だった。もちろん、蘭華も絵里もだ。
先生も咳払いをしている。
それもそのはず。
それが分からないということは、過去の授業を聞いていなかったのと同義だったからである。
結局、この授業が終わるまで俺は何も分からないままだった。
更には授業が終わってすぐに、先生がやってきて、
「お前、明日から補習な」
「わ、分かりました」
最悪だった。
別に勉強していない訳では無い。
だけど、理解出来ないのだ。
まぁ、克服するチャンスと考えれば良いことなのかもしれない。
「補習とは、大変だね〜」
「うっせ!」
絵里が馬鹿にしてくる。
「まさかここまで数学分からないとは思ってなかったよ」
「緻密なものはまったく理解出来ないんだよ」
「緻密?どこにそんな要素あるの?たかが解の公式。
公式覚えるだけだよ?」
「解の公式みたいな複雑なものは覚えれないんだ。記号とか数字の並んでてとても複雑だろ?」
「まぁ、言われてみれば。とりあえず今の範囲は公式覚えられたら大体解けるし、暗記頑張ったら?」
暗記は苦手ではない。
「そうだな。まぁ頑張ってみるよ…」
「分からない問題あったらいつでも聞いて!」
絵里は数学がむしろ得意科目らしく、授業中に出された問題は間違え1つなく答えている。
頼るのもありか…。
「悪いな」
「べ、別に借りがあって教えてあげる訳じゃないからね?だから気にせず頼ってよ。勉強以外のことも」
とても優しいやつだ。
そうしみじみ感じられた。
「3限そろそろ始まるし、化学室行こうぜ!」
3限は化学だ。
多少、計算が入っているので苦手だが数学ほどではない。
「うん」
俺達は準備をした後、足並み揃えて化学室へ向かった。
3
放課後。
早く帰られるのはテスト前最後だなぁ、とか思いつつ玄関へ向かう。
補習…。疎遠な言葉だと思っていたのに。
玄関口に靴を履き替えて出ると、蘭華が花壇の方に座っているのが見えた。
近づくと、何やらブツブツと言っているのが聞こえた。
「剣也を誘う…。誘う…」
「何に?」
構わず声をかけると、蘭華が後ろへ仰け反った。
「け、剣也?脅かさないでよ〜!」
「ごめんごめん。で?何に誘うの?」
「剣也、補習になるほど数学大変でしょ?」
言わないでくれ。悲しくなる…。
「だ、だから私の家に泊まり込みで勉強しない?そうすれば、私が教えてあげられるでしょ?」
「お願いします!」
俺は間を入れずに即答する。
現段階では猫の手も借りたいくらいだったから丁度良かった。
蘭華は突然の返事にまたもや驚いていた。
「そんなに大変なの?じゃあ今日来てよ!」
「あぁ、すぐに行くよ!」
「とりあえず、帰るか」
俺達は家へと歩き始めた。
いつの間にか俺の中にあった、焦りは消え去っていた。
勉強会に期待を感じて。
1
五月下旬。
春の陽気は次第に、夏の暑さに変化しつつある。
しかしながら、今はとても快適に過ごせる気候である。
いつまでも続いてほしいものだ。
今週は中間考査というイベントが存在する。
俺の入学して最初にあったテストの順位は真ん中。
まったく問題ないように思うかもしれない。
だけど、数学が…。
言うまでもなく、分からないのだ。
数学のような緻密なものは俺にとって最も苦手なものなのだ。
このままでは追試にされてしまう…。そんなレベルが現状です。
そう、告白の話がどうこう考える前に数学の方を優先しなければいけない。
天秤にかけるまでもない。
なんかいつも登校中に悩み事しているような…。
「剣也?剣也!」
蘭華が俺を揺さぶってきた。
「ん?」
首を傾げる。
「ん?じゃない!今日会った時からずっと無言で、私に怒っているのかと思ったでしょ!」
実は、中間考査が1週間前に迫っていることを俺は今日の朝に気付いた。
当然のことながら焦りでいっぱいだった。
そのため登校中、蘭華といることを完全に忘れてしまっていた。
「あ、あぁ。中間考査のこと考えていて…」
「そう言えば考査1週間前だったね」
こいつも忘れていたみたいだ。
まぁ、テストとは無縁そうだしな。
「テスト大丈夫なのか?」
「大丈夫!」
こいつの大丈夫は、いつも大丈夫じゃない。
「絶対、入学して最初のテスト悪かっただろ?何位だ?」
頭がいいとはとても思えない。
「確か、15位だったかなぁ」
「ふ〜ん、15位ねぇ」
ん?15位?
「え?」
「え?とは失礼な!」
蘭華が怒った口調で話す。
有り得ない。絶対にない。
俺より上ということよりも、300人もいる学年で15位であるということに驚きを隠せなかった。
「本当に言っているのか?」
「嘘なんてついてないよ!」
こちらを睨んできた。
剣の女王に比べれば怖くないけど…。
確かに、嘘を言うような性格ではない。
だとしても信じられない。
神様!選ぶ人間違ってますよ!
「ちなみに剣也は、何位だったの?」
「絶対に言ってやらねぇ!」
言えるかよ、153位なんて。
俺は恥ずかしさのあまり、学校へ向かって走り出した。
「あ、逃げるなー!剣也〜!」
その俺を追いかけて蘭華も走り出した。
神様。お助け下さい…。
数学の壊滅的な状況を。
2
2時間目、数学。
テスト週間になったこともあり、問題の解説がほとんどである。
「蔭山!この問題を前に出て黒板に書きなさい」
「はい!」
先生に指示され、前に出たまでは良かった。
だが、まるで異国語か?というくらい訳の分からない問題に俺は困惑していた。
「先生。解の公式って何ですか?」
「蔭山、席に着け」
俺は言われた通り戻った。
戻り際、クラスメイト皆が笑いを堪えている様だった。もちろん、蘭華も絵里もだ。
先生も咳払いをしている。
それもそのはず。
それが分からないということは、過去の授業を聞いていなかったのと同義だったからである。
結局、この授業が終わるまで俺は何も分からないままだった。
更には授業が終わってすぐに、先生がやってきて、
「お前、明日から補習な」
「わ、分かりました」
最悪だった。
別に勉強していない訳では無い。
だけど、理解出来ないのだ。
まぁ、克服するチャンスと考えれば良いことなのかもしれない。
「補習とは、大変だね〜」
「うっせ!」
絵里が馬鹿にしてくる。
「まさかここまで数学分からないとは思ってなかったよ」
「緻密なものはまったく理解出来ないんだよ」
「緻密?どこにそんな要素あるの?たかが解の公式。
公式覚えるだけだよ?」
「解の公式みたいな複雑なものは覚えれないんだ。記号とか数字の並んでてとても複雑だろ?」
「まぁ、言われてみれば。とりあえず今の範囲は公式覚えられたら大体解けるし、暗記頑張ったら?」
暗記は苦手ではない。
「そうだな。まぁ頑張ってみるよ…」
「分からない問題あったらいつでも聞いて!」
絵里は数学がむしろ得意科目らしく、授業中に出された問題は間違え1つなく答えている。
頼るのもありか…。
「悪いな」
「べ、別に借りがあって教えてあげる訳じゃないからね?だから気にせず頼ってよ。勉強以外のことも」
とても優しいやつだ。
そうしみじみ感じられた。
「3限そろそろ始まるし、化学室行こうぜ!」
3限は化学だ。
多少、計算が入っているので苦手だが数学ほどではない。
「うん」
俺達は準備をした後、足並み揃えて化学室へ向かった。
3
放課後。
早く帰られるのはテスト前最後だなぁ、とか思いつつ玄関へ向かう。
補習…。疎遠な言葉だと思っていたのに。
玄関口に靴を履き替えて出ると、蘭華が花壇の方に座っているのが見えた。
近づくと、何やらブツブツと言っているのが聞こえた。
「剣也を誘う…。誘う…」
「何に?」
構わず声をかけると、蘭華が後ろへ仰け反った。
「け、剣也?脅かさないでよ〜!」
「ごめんごめん。で?何に誘うの?」
「剣也、補習になるほど数学大変でしょ?」
言わないでくれ。悲しくなる…。
「だ、だから私の家に泊まり込みで勉強しない?そうすれば、私が教えてあげられるでしょ?」
「お願いします!」
俺は間を入れずに即答する。
現段階では猫の手も借りたいくらいだったから丁度良かった。
蘭華は突然の返事にまたもや驚いていた。
「そんなに大変なの?じゃあ今日来てよ!」
「あぁ、すぐに行くよ!」
「とりあえず、帰るか」
俺達は家へと歩き始めた。
いつの間にか俺の中にあった、焦りは消え去っていた。
勉強会に期待を感じて。
コメント