Re:legend

りゅう

557:堕天使










「っ…なんなのあれ……」

パラスアテナは上を見て絶望した。パラスアテナの上空には黒き翼を羽ばたかせ宙を舞う闇に堕ちた堕天使たちが少なくとも数百いることが確認できた。
それを見て絶望したのはパラスアテナだけではない。その場にいた全ヴァルキリーが絶望をして生きることを諦めた。

「ヴァルキリー諸君ご機嫌よう。私は『純血』のエリザベータ、この地を滅ぼすために参りました」
「みんな、今すぐに逃げなさい」

パラスアテナは剣を手にして全ヴァルキリーに指示を出す。そして自分は少しでも時間を稼ぐために光の力を発動して『純血』に向かって行く。
パラスアテナが『純血』に向かって行くのを確認したヴァルキリーたちはパラスアテナの行動を無駄にしないために動き出した。

「ふふふ…あなた、かなりいいわ。合格よ。実験体はあなたに決めた」

『純血』に向かって剣を振ったはずのパラスアテナだったのだがいつのまにか『純血』はパラスアテナの背後にいた。
そして『純血』はパラスアテナに手を当てて自身の魔力を与える。

「あっ…ぅぅ………」

パラスアテナは苦しんだ。自分の中に自分じゃない何かが入ってくる感覚があった。自分が自分じゃなくなる感覚…自分を失う感覚がパラスアテナを襲った。

「安心しなさい。苦しいのは今だけ。すぐに私の闇で支配してあげる。すぐにそこにいるような闇のヴァルキリーにしてあげるわ」

『純血』は微笑みながらパラスアテナに魔力を流し込んだ。『純血』の魔力が加わる度にパラスアテナは自我を失った。
そしてパラスアテナの純白の翼は徐々に禍々しくなっていく。
黒く…黒く…更に黒く…少しずつパラスアテナの純白の翼は闇に支配されていく。
翼の支配と並行してパラスアテナの精神の支配も進んだ。

そして翼が完全に闇に支配された瞬間、パラスアテナの精神は闇の底に閉じ込められた。

パラスアテナの精神が完全に支配される頃にはすでに他のヴァルキリーは避難を終えていた。それがせめてもの救いだったのかもしれない……

「パラスアテナ…」
「ミカエラ様、私を殺してください……」

自分の前に立つ憧れの存在、その人に自分の未来を託した。ただ一人この空間に存在する光に託した。

「支配完了。じゃあ、最初の命令、あのヴァルキリーを討て」

『純血』の命令に従いパラスアテナはミカエラに剣を向けた。酷く悲しそうな表情で闇を纏いミカエラに剣を振るう。

「パラスアテナ…ヴァルキリーの長としてあなたを討ちます」

ミカエラがそう言い剣に光の力を流し込んだ瞬間、パラスアテナの瞳からは大粒の涙が溢れた。














コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品