Re:legend
247:送別と報告
ヒースクリフがアミちゃんの中に入った翌日
僕達は初めてアミちゃんと出会った岩の近くにいた。アミちゃんがペンダントを使い岩を開く。
そして現れた通路を通り地下街に向かう。
この地下街は魔族との戦闘後は誰も住んでいなかったが今でもここに眠っている人々の親族達がよく訪れているみたいだった。
ここはすでにピュレットの領土なのでアミちゃんも自由にここに来ることができていた。以前はよく兄のヒースクリフとともに死んだ家族達の墓の掃除などをしに来ていた。
今回、僕達がここを訪れたのはヒースクリフの体をここに埋めるためである。
アミちゃんの中でヒースクリフがアミちゃんにそうしてくれと頼んだらしい。
今日は家のメンバーだけでなく、ピュレット騎士団団長のシーラさんや副団長のガランさんなど、騎士団の中でもヒースクリフと仲が良かった人達も一緒に来ている。
僕達は地下街の中央にある墓地に向かい、ヒースクリフの体を埋めるための穴を掘るために一旦ヒースクリフの体を床に置く。魔法で穴を開けても良かったのだが、そういった気にはならなかった。
僕、ラハドさん、ガランさんの男3人組で穴を掘り始めて約一時間、ようやくヒースクリフをうめるための穴を掘り終えた僕達は少しその場で休憩をとる。
その間、一緒に来ていたみんながヒースクリフの体に別れを告げていたがアミちゃんはヒースクリフの体には何も言っていなかった。
「何か言わなくてもいいの?」
僕がそっとアミちゃんの横に移動して、そっとアミちゃんの横で呟く。
「はい。大丈夫です。お兄ちゃんは私の中にいますから…」
「そっか…」
僕はアミちゃんの目から流れ出る少しの涙をそっと拭き取ってあげる。その時僕の目にアミちゃんのスマホが映った。スマホの画面にはアミちゃんとヒースクリフが2人で並んでいる写真が映し出されていた。
「さて、じゃあそろそろお兄ちゃんの体を休ませてあげましょう」
アミちゃんがそう言いながら立ち上がりヒースクリフの体の前に移動する。そしてそっとヒースクリフの体を持ち上げた。少しふらつきながらも僕達が掘った穴の前にヒースクリフを抱えたまま移動する。
ちなみにヒースクリフのために掘った穴はヒースクリフの両親の墓の間に掘った。その穴にアミちゃんがそっとヒースクリフの体を入れる。
そしてアミちゃんが少しずつヒースクリフの体の上に土をかけていく。泣きながらも、丁寧に、兄の体に心の中で感謝を述べながら少しずつ、少しずつ………数十分後、ヒースクリフの体を埋め終わったアミちゃんはその場で手のひらと手のひらを引っ付けて静かに礼をする。僕達もアミちゃんに続き両手を揃える。
「どうか安らかに眠ってください」
アミちゃんがそう言いながら頭をあげて僕達の方を向く。
「みなさん、今日はありがとうございました」
アミちゃんがその場にいた全員に礼を言い頭を下げる。
ちなみにアミちゃんの希望でヒースクリフを埋めた後その場に墓は立てていない。ヒースクリフはまだアミちゃんの体の中にいるからだそうだ。アミちゃんが子供を産みヒースクリフの意思がアミちゃんの中にいなくなり新たな命へと変わった時、ヒースクリフの墓を作りたいそうだ。
僕達もそれに賛成していたのでこの場はお開きとなった。僕はドリフトでみんなを先に送り返した。
今、この場には僕とアミちゃんしかいない。
「手伝ってくれてありがとうございます」
アミちゃんが祖母の墓を磨きながら僕に言う。
「いやいや、これくらいどうってことないよ。これくらい綺麗にすれば大丈夫かな」
僕はそう言いながらその場のゴミを集めて袋の中に入れる。
「そうですね。お疲れ様です」
アミちゃんも祖母の墓を磨いていた手を止め、雑巾を片付け始める。かなり綺麗になった3つの墓の前に僕とアミちゃんが立つ。
「お母さん、お父さん、おばあちゃん、私、リュウさんと結婚することになりました。結婚するのはあと1年くらい先だけど先に報告だけさせてもらいます。」
アミちゃんが墓の前で言う。
「アミちゃんは僕が必ず幸せにします。だから安心してアミちゃんのことを見守ってあげてください」
僕はそういいその場で軽く一礼する。
その場に残った目的を果たした僕達はドリフトで一緒に家に帰った。
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