銀狼転生記~助けた幼女と異世界放浪~
042 ~案内の果てに~
「ア、ドクロいワだ! オにーチャン! モうすぐダよ!」
「お、おお、やっとか……」
半女面鳥の少女──ピアを家に送り届けるため、森の中を進むこと半日。
前方をゆったりと蛇行して飛んでいるピアが、髑髏のような形をした岩を見て叫んだ。
「ロウ、疲れた」
音疲労困憊といった様子のフィリ。
俺も、かなり疲れてる。
「だいじょーぶ?」
ずっと宙を浮いているサハラは平気なようだ。
クッソ、浮けるとかズリィ。
因みに、ピアが俺に対する呼称を”お兄ちゃん”しているのは、サハラが原因だったりする。
何でも、「”おにーさん”は私のだから、紛らわしい!」だそうだ。
話を戻すか。
俺達がこうなっているのには、原因が二つある。
一つは、森の中という、木の根や剥き出しの石と言った足場の悪さが予想以上に体に応える事(狼の時は気にもならなかった)。
二つ目、これが一番の原因だが……ずばり、案内役のピアがしょっちゅう道を間違える事だ。
散々、森の中を彷徨った。
あっちへ行き、こっちへ行って、最終的にここへ辿り着いた。
が……。
俺の記憶が正しければ、そもそもこの場所は、かなり最初の方で通った気がする──いや、きっと気のせいだ。
あの髑髏の岩とか、スッゲー既視感あるけど…気のせいだな、うん。
まあ、ただ一つ分かったのは、ピアのユニークスキル【音痴】には、方向音痴も含まれてるって事だ。
◆◆◆◆
「フィリ、辛いならおぶってやるぞ?」
「ん…お願い」
しばらく歩いて少し広い所に出た。
少し歩くスペースが落ちてきたフィリの為に、背中に乗りやすいよう、腰を落とそうとした──その時だった。
「っ!! フィリ、サハラ!! 俺から離れろ!!」
久々に、【危険察知】が反応。
その警鐘に反射的に従って、格納庫から<銀喰>を右手に取り出し、真上に構える。
ガキィィイイイイン!!
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響くと同時に、右手に伝わる衝撃、大人一人分が乗しかかってきたかのような重みに、左手を刀身に添えて歯を食いしばり、耐える。
「うぎぎぎぎ…!」
「おにーさん!」
「ロウ!!」
「タいへん! ママよんでクル!」
三人の悲鳴にも似た叫びに、返事を返す余裕も無い。
腰を低くしていたのが幸いし、幾らか踏ん張りがきく足で体に捻りをつけ、渾身の力で<銀喰>を振り切った。
「オラァ!!」
「おっ…と」
間の抜けた声と共に、体に掛かっていた重みが消え去る。
俺がその場に膝をつくと同時に、離れた場所にストッと着地する人物。
「ふむ。今のを耐えるのかい」
「…あんた、何者だ?」
俺は、痺れる右手を庇いながら、目の前に現れた線の細い男に問う。
「うん? そんなの、応える侵入者に答える義理はないよ? 人の姿をした魔物クン」
そういって、男は両手に携えた黒土色の双槍を構え直す。
その柔和そうな糸目には、明らかな敵意が含まれている。
「待て、俺がここへ来たのは──」
「問答無用!!」
弁解しようと、手をあげた瞬間、男は爆発的な加速で接近し、手に持った黒槍で鋭い突きを放ってくる。
「くっ!」
初撃は地に突き立てた<銀喰>を使って上手くいなし、薙ぎ払うような二撃目は転移して回避した。
「だいじょーぶ!? おにーさん!」
「ロウ。私も」
転移した先で、俺から距離を取っていた二人と合流する。
「何とか、大丈夫だ。フィリ、危ねーから下がってろ」
「でも「いいから……な?」─ん。わかった」
頭を撫でて、言い聞かせる。
良かった、なんとか分かってくれたか。
あの男は、間違いなく強者だ。
エルビス程の驚異は感じないが、それでも一歩間違えれば死に繋がる。
幾ら、進化したとはいえ、フィリでは太刀打ち出来ないだろう。
「サハラ、フィリを頼む。二人で、ピアを追いかけてくれ、俺も…後で必ず行く」
「え、あ、うん。…あれ? 私にはないの? 頭撫で」
今、マジでそういうの良いから。
お前がいると戦闘に集中できねー。
俺の思考を読んだ(わざと読ませた)サハラが、半ベソをかきながらフィリを連れて行くを見送ったと同時に、木々の間から男が姿を現す。
「お、見つけたよ。まさか、〈転移〉が使えるなんてね。驚いたよ」
そりゃどうも
心の中で返事を返しつつ、<銀喰>を収納し代わりに、これまた銀一色の短剣──銘<小銀丸>──を四対ほど取り出しその内の一対をそれぞれ両手に構える。
これで、状況はこっちに有利になったはずだ。
男が、首を傾げる。
「ん? 武器を変えたのかい? …ああ、なるほど。私はまんまとおびき寄せられたわけか」
そう、奴の武器は長物の槍だ。
対して、俺の武器は刀身が短く取り回しの良い短剣。
この、巨木が辺りに生えまくった環境下で、どちらが有利なのかは一目瞭然だ。
「いきなり、ケンカ吹っ掛けてきたこと…後悔させてやる!!」
「そう、上手くいくかな?」
そう言い合って、一対の短剣を携えた俺と、双槍を構えた男は再び接敵した。
「お、おお、やっとか……」
半女面鳥の少女──ピアを家に送り届けるため、森の中を進むこと半日。
前方をゆったりと蛇行して飛んでいるピアが、髑髏のような形をした岩を見て叫んだ。
「ロウ、疲れた」
音疲労困憊といった様子のフィリ。
俺も、かなり疲れてる。
「だいじょーぶ?」
ずっと宙を浮いているサハラは平気なようだ。
クッソ、浮けるとかズリィ。
因みに、ピアが俺に対する呼称を”お兄ちゃん”しているのは、サハラが原因だったりする。
何でも、「”おにーさん”は私のだから、紛らわしい!」だそうだ。
話を戻すか。
俺達がこうなっているのには、原因が二つある。
一つは、森の中という、木の根や剥き出しの石と言った足場の悪さが予想以上に体に応える事(狼の時は気にもならなかった)。
二つ目、これが一番の原因だが……ずばり、案内役のピアがしょっちゅう道を間違える事だ。
散々、森の中を彷徨った。
あっちへ行き、こっちへ行って、最終的にここへ辿り着いた。
が……。
俺の記憶が正しければ、そもそもこの場所は、かなり最初の方で通った気がする──いや、きっと気のせいだ。
あの髑髏の岩とか、スッゲー既視感あるけど…気のせいだな、うん。
まあ、ただ一つ分かったのは、ピアのユニークスキル【音痴】には、方向音痴も含まれてるって事だ。
◆◆◆◆
「フィリ、辛いならおぶってやるぞ?」
「ん…お願い」
しばらく歩いて少し広い所に出た。
少し歩くスペースが落ちてきたフィリの為に、背中に乗りやすいよう、腰を落とそうとした──その時だった。
「っ!! フィリ、サハラ!! 俺から離れろ!!」
久々に、【危険察知】が反応。
その警鐘に反射的に従って、格納庫から<銀喰>を右手に取り出し、真上に構える。
ガキィィイイイイン!!
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響くと同時に、右手に伝わる衝撃、大人一人分が乗しかかってきたかのような重みに、左手を刀身に添えて歯を食いしばり、耐える。
「うぎぎぎぎ…!」
「おにーさん!」
「ロウ!!」
「タいへん! ママよんでクル!」
三人の悲鳴にも似た叫びに、返事を返す余裕も無い。
腰を低くしていたのが幸いし、幾らか踏ん張りがきく足で体に捻りをつけ、渾身の力で<銀喰>を振り切った。
「オラァ!!」
「おっ…と」
間の抜けた声と共に、体に掛かっていた重みが消え去る。
俺がその場に膝をつくと同時に、離れた場所にストッと着地する人物。
「ふむ。今のを耐えるのかい」
「…あんた、何者だ?」
俺は、痺れる右手を庇いながら、目の前に現れた線の細い男に問う。
「うん? そんなの、応える侵入者に答える義理はないよ? 人の姿をした魔物クン」
そういって、男は両手に携えた黒土色の双槍を構え直す。
その柔和そうな糸目には、明らかな敵意が含まれている。
「待て、俺がここへ来たのは──」
「問答無用!!」
弁解しようと、手をあげた瞬間、男は爆発的な加速で接近し、手に持った黒槍で鋭い突きを放ってくる。
「くっ!」
初撃は地に突き立てた<銀喰>を使って上手くいなし、薙ぎ払うような二撃目は転移して回避した。
「だいじょーぶ!? おにーさん!」
「ロウ。私も」
転移した先で、俺から距離を取っていた二人と合流する。
「何とか、大丈夫だ。フィリ、危ねーから下がってろ」
「でも「いいから……な?」─ん。わかった」
頭を撫でて、言い聞かせる。
良かった、なんとか分かってくれたか。
あの男は、間違いなく強者だ。
エルビス程の驚異は感じないが、それでも一歩間違えれば死に繋がる。
幾ら、進化したとはいえ、フィリでは太刀打ち出来ないだろう。
「サハラ、フィリを頼む。二人で、ピアを追いかけてくれ、俺も…後で必ず行く」
「え、あ、うん。…あれ? 私にはないの? 頭撫で」
今、マジでそういうの良いから。
お前がいると戦闘に集中できねー。
俺の思考を読んだ(わざと読ませた)サハラが、半ベソをかきながらフィリを連れて行くを見送ったと同時に、木々の間から男が姿を現す。
「お、見つけたよ。まさか、〈転移〉が使えるなんてね。驚いたよ」
そりゃどうも
心の中で返事を返しつつ、<銀喰>を収納し代わりに、これまた銀一色の短剣──銘<小銀丸>──を四対ほど取り出しその内の一対をそれぞれ両手に構える。
これで、状況はこっちに有利になったはずだ。
男が、首を傾げる。
「ん? 武器を変えたのかい? …ああ、なるほど。私はまんまとおびき寄せられたわけか」
そう、奴の武器は長物の槍だ。
対して、俺の武器は刀身が短く取り回しの良い短剣。
この、巨木が辺りに生えまくった環境下で、どちらが有利なのかは一目瞭然だ。
「いきなり、ケンカ吹っ掛けてきたこと…後悔させてやる!!」
「そう、上手くいくかな?」
そう言い合って、一対の短剣を携えた俺と、双槍を構えた男は再び接敵した。
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