銀狼転生記~助けた幼女と異世界放浪~

テケテケさん

008 ~俺、初めて戦います~

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名前 なし
種族 ゴブリン(変異種)
装備 鉄の短剣

LV:12/20
HP:60/100
MP:0/2


攻撃力:120
防御力:10
抵抗力:10
俊敏性:60
魔法力:10
 運 :10

:ノーマルスキル:
 【短剣技】⇨【刺突】【噛みつく】【怒る】

:称号:
 【変異種】【醜悪な者】

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 雑魚だと思ったら軒並み俺以上のステータス。
 嘘だろ? ゴブリン(変異種)ってなんだよ!?
 このダンジョンどうなってんだよ。
 ゴブリンって雑魚じゃねえのか?
 俺より全然強えじゃねえか! バカヤロー!!
 脳内に選択肢が浮かぶ

 戦う
 話す
 逃げる  ⇦

 逃げるしかねえよ!
 戦えるかバーカ。
 こちとらワンパンで沈んじゃうんだよ。
 話すもねーよ。
 そんなの選択肢にねーよ
 めっちゃこっち凝視してるもの。
 餌だって認識しちゃってるもの。
 よし! そうと決まれば善は急げだ!
 幸いこっちには、かの有名なスライムの十八番【逃げる】があるからな。
 ゴブリンから逃げることなど造作もない。
 ではさらばだゴブリン君。

   アデュウ!!

 【逃げる】の発動と同時にゴブリンとは逆の通路へ駆ける!

 ……あれ?
 逃げるが発動しねえ。
 なんでだ!?
 と、後方を振り返ると……。
 ゴブリンが後ろにいた。

 あんぎゃああああああああああ!?!?

 驚きの余り飛び跳ねたのが幸いした。
 俺の真下を、突き出された短剣が通り過ぎる。
 その勢いのままゴブリンは俺が逃げようとした先に回り込んだ

 クッソ!
 退路が!
 てか、今のは危なかった。
 あれが【刺突】か? 攻撃される瞬間、周囲の魔素の流れが変わったように感じたから多分そうだろう。
 ということは奴はスキルを使えてる。
 なんで俺の【逃げる】は発動しなかったんだ?
 ちょ、スキル詳細プリーズ!!

【逃げる】:MP1消費 戦闘から必ず逃げることが出来る。ただし、自身より敏捷性が高い個体に使うと失敗する。

 ……ポ⚫モンか!!
 確かに、奴の敏捷性は俺より高い。
 クソっ、ちゃんと寝る前に確認しとくんだった!
 MPも無駄に消費しちまった。

 奴は今、こっちの様子を伺ってるみたいだ。
 次に背中を見せれば今度こそ”ブスッ”っといかれるだろう。
 どうすればいい?
 戦うか?
 でも無理だ。
 仮に俺が攻撃したとしても奴には武器が、リーチがある。
 俺の攻撃は届かない。
 俺にも武器があれば……っ!!
 そうだ! やつの短剣を【武器創造】で創れないか!?
 いや無理か、あのスキルは俺がこの世界に来てから所持したことのある武器じゃねえと使えねえ!
 てか、俺の手肉球になってるし!! 武器持てねーよ!!!
 どうすりゃ、っ!!

「ギャガ、ギャギャ」
(にk%あこs&$え!)

 ───気づけばゴブリンの刺突が目の前に迫っていた。


◆◆◆◆


 『起きて、命君。いつまで寝てるの?』

 この声は……。
 柊か?
 あれ、さっきのは夢だったのか?

 『ちょっと! 早くおきなさい!』

 ちょっ! 痛っ! わかった! わかったから!
 脇腹を蹴るな!
 俺は慌てて起き上がる。

 「っ! ここは!?」

 そこは柊の家でもあり俺の居候先でもある”柊流剣術道場”の稽古場だった。
 そこに俺は大の字で伸びていたようだ。

 『やっと起きたわね、まったく、大丈夫? 変なとこ打たなかった?』

 と、手を差し伸べてくれたので掴んで立ち上がる。
 ん? 柊が小さい。 
 あ、俺も小さい。
 これは、小6の時の記憶か?

 「ああ、大丈夫だ。柊、何故、俺は道場で伸びてたんだ?」

 すると、柊は俺の手を掴んだままキョトンとした表情をする。
 ん? 変なこといったか?

 『どうしたの? 命君。 やっぱり変よ? い、いつもなら”凛ちゃん”って呼んでくれるのに。それに急に”俺”なんて言い出していつも”僕”って言ってるじゃない』

 あ、ああそうか。
 ここはたぶん俺の小6の時の記憶の中なんだ。
 走馬灯って奴か? それにしてはリアルだが。
 この時期だと、こんな喋り方だったか?

 「と、ごめんごめん。頭打っちゃったのかな? それよりなんで僕は伸びてたの?」

 うん。あってるな。今となっちゃ苦手な喋り方だが。
 ただ、どうしても伸びてた理由がわからん。

 『ん? 覚えてないの? 私が命君を投げとばしたのよ。ポーンって。』

 は? 投げとばされた? 俺が? 柊に?

 「え、ちょっと待って、僕が凛ちゃんに投げられたの!?」

 この時はまだ身長差がなかったから投げられることなんてなかったはずだが。

 『そうよ。いっつも命君に負けるのも面白くないから、おば上に<二の舞>を習ってきたの』

 ばばあにか。
 懐かしいな。
 柊の家は代々女児しか生まれない家系で(もうそれ呪いじゃね?)
 ババアは37代目位だったと思う。(歴代の当主は全員女だったらしい)
 そのため、自然と柊流は女が扱うのに特化した剣術になっており、”舞”と”型”の二種類の技がある。
 柊が使った<二の舞>は9つある舞の一つ(型は8つ)で、技の名前は確か……!! これなら!!

 「ありがとう柊! これなら奴と戦える!」

 事実だ。<二の舞>を使えば奴にかつ確率がぐんとあがる。
 面くらった柊だったが、途端に笑顔になるとこう言った。

 『そう、ならよかった。頑張ってね。おにーさん♪』

 ああ、やっぱお前だったか。
 苦渋が半分と感謝が半分と絡まりあった複雑な心情のまま俺は目を閉じた。


◆◆◆◆


 目を開けると目の前に短剣が迫っている。
 俺は咄嗟に顔を横に向けて刃を咥え、そのまま全体重を刃にかけつつ、前方へ進む。

 (「柊流剣術 <二の舞>【燕返ツバメガエし】!」)

 「ギャゴ!?」

 奴からすればなにが起きたのかわからないだろう。
 気づいたら自分が宙を飛んでいるのだから。
 なにが起きたか? 話は簡単、俺が投げとばした。

 「グゲャア!!」

 頭から落ちたんだろう。
 頭を抱えて悶えている。
 短剣はどこかへ行ったらしい。
 奴のHPは……。

 HP:45/100

 よし! 15も削れた!
 別にさっきので倒そうなんて思っちゃいない。
 本命は次の攻撃だ。
 俺が使った<二の舞>【燕返し】は、向かってきた刃に手を添えて、自身の体重と前進する力、相手の体重をも利用して力の掛かり方を変え、相手を後方に投げ飛ばす技だ。
 いわゆる、刃をてこにみたてた”てこの原理”ってわけだ。
 ただし受け流すことに重きを置いた”舞”では奴に致命傷を与えるのは難しい。
 かといって攻め中心の”型”を使うには刀がいる。
 じゃあどうするか、答えは……。

 (【武器創造】!!)

 目の前に一振りの短剣が現れる。
 形状は奴の短剣と同じ。 成功だ!
 あの一瞬で所持したことになるかは賭けだったが、なんとか勝てたようだ。
 これを口にくわえる。(手が無理なら口で、というわけだ)
 すると、体に力がみなぎるのがわかる。
 攻撃力補正だ。
 これで奴に近接戦を挑むことはできるが、そんなことはしない。
 こっちは一発殴られたらお陀仏だ。

 「ギャッギャッギャッ!!」

 おっと、そうこうしている内にやつが起き上がる。
 おおかた【怒る】でも使ったんだろう。
 すごい形相だ、俺を敵として認識したか。
 もう手遅れだが。
 俺は最後の攻撃を行うべく、頭をケツの方へ持って行き、体を”く”の字に反らす。
 そして、元に戻る力を使いながら体を捻り、短剣を口から放した。

 近年”柊流”は、”橘流”と呼ばれる流派に対抗するため、剣術以外にも手を付け始めた。
 それは<忍び道具>、その中でも俺はクナイの扱いが抜群に上手く、短剣技にも非常に長けていた。
 その短剣技で俺が最も重宝していた技は、【投擲スローイング】だ。
 相手の間合い外から攻撃を仕掛けれるし、牽制にも使える。
 短剣で牽制しながら太刀でバッサリいくのが俺の戦闘スタイルだった。

 放たれた刃は1寸の狂いもなく、一直線に突き進み、奴の眉間に吸い込まれた。

 「ガギャッ!……」ドサッ

 痛みで意識を失ったのだろう。
 ゴブリンは仰向けに倒れ込み、眉間に刺さったままの短剣で自ら命を絶った。


 ……やったか?
 はあ~~ 疲れた。
 初戦からハード過ぎんだろ。
 あの走馬灯? がなかったら死んでたな。
 十中八九サハラの仕業だろーがあいつに感謝すんのも釈だ。
 ここは柊様に感謝しとこうか。
 とここで、

《条件の達成を確認【投擲スローイング】を取得》

《一定量の経験値を取得 LV MAXになりました。》

《進化が可能です 進化しますか? YES/NO》 

 OKちょっとまて、順番に確認しよう。
 まず【投擲】取得だが、これは俺が戦闘中に行った技だからだろう。
 そうなると【燕返し】を取得していないのが気になるが、この世界にはない技だからだと思われる。
 次に経験値。
 これはゴブリンを倒したので取得したんだろう。
 まあ、かなりLV差があったし、経験値補正もあるから、納得だ。
 最後に、進化だ。
 やはり、この世界ではLVが最大になると進化が可能らしい(人間はどうなんだ?)
 質問の答えはもちろんYESだ!!

 《選択を確認 進化を開始します》

 !! おっ! 急に眠くっ………z z z z Z Z Z 

  《条件の達成を確認【ハウリング】を取得》

  《条件の達成を確認【三角跳び】を取得》

  《条件の達成を確認【捕食】を取得》

  《進化が完了しました。個体名 プチハウンド(幻獣種)はハウンド(幻獣種)になりました。》


 ────────俺は深い眠りにいざなわれた。


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