銀狼転生記~助けた幼女と異世界放浪~
閑話:~僕らは、王国で冒険者になりました~
ここは〖アルデンス王国〗内にある街〖エイギル〗。
〖王都アルデンス〗にもっとも近い町であり、冒険者業が盛んで、商業が発達していることから、”冒険者の街”と呼ばれている。
その街の中心部にある冒険者ギルド<エイギル>。
今日も今日とて、そこはたくさんの冒険者で溢れ、喧騒に包まれている。
そんなギルドに併設されている酒場のカウンターには4人の男女がいた……。
◆◆◆◆
僕の名前は三橋天哉。
とある理由から、1週間程前からこの国で冒険者として活動中だ。
今、僕らはギルドの酒場にいる。
というのも……。
「それで、ゴードンさん、頼んでいた情報は何か掴めましたか?」
僕の右隣に座っている凛が、カウンターを挟んでグラスを拭いている壮年の男性に声をかける。
「いんや、その、”ミコト”つったか? そんな名前のガキはこの国にもその周辺国にもいねえみてぇだな。」
「そう…ですか……」
明らかに落胆した様子の凛。
無理もない。
大切な家族が失踪したんだ。
僕も同じ気持ちだ。
「まあ、帝国のほうにいる可能性も否定出来ねーが。さすがの俺でも帝国にパイプなんかもっちゃいねえ。すまねーな」
僕らがここに来た理由、それは、僕の親友であり、柊流剣術道場の兄弟子でもある少年”大神命”に関する情報の収集とその捜索だ。
この酒場のマスターである、”ゴードン・マクレイン”さん。
彼は嘗てこの国で名を馳せた元Sランク冒険者であり、〈絶拳〉の二つ名をもつ。
そして、僕らは彼のもつ独自のパイプラインを使って情報を集めていたわけだが、結果は先ほどのとおりだ。
「そうですか…では、日を改めて────」
そろそろ依頼の時間だ。僕は席を立とうとするが……。
「まってください!! しっかり隅々まで捜してくださったんですか!? こうしている間にも命”様”は寂しい想いを!!」
カウンターに両手をついて勢いよく立ち上がった女の子。僕の声は彼女の声にかき消されてしまった。
座っていた椅子が後ろに倒れ、それなりに大きな音をたてる。
うぅ、周囲の視線が痛い……。
「サエリン! 落ち着いて!! こんな所で大声出したらメッだよ!」
咄嗟に僕の左に座っていた白詰さんが制止の言葉を掛ける。
「白詰ちゃん、止めないで! ゴードンさん! どうなんですか!?」
と、ゴードンさんに詰め寄るこの少女の名前は”霞ヶ浦紗英”
赤色に縁取ったインテリ眼鏡をかけ、肩まで伸ばした黒髪を三つ編みに纏めて垂らしている。
出るところは出ており、顔も美人の部類に入る。
そんな彼女は命のスト─よき理解者だ。
それゆえ、命が寂しがり屋であることは知っているため(スリーサイズ?も知っている)、ここまで必死になってくれているのだ。
普段はしっかりとした真面目な子だが、命が絡むと暴走気味になってしまうのが玉に瑕だ。
「おいおい、落ち着け嬢ちゃん。さっきも言ったが、そのミコトっつーガキは帝国領にいる可能性が高い。
ただそこから情報を仕入れるにはされなりに時間がかかる。だから今日の所は退いてくれねえか?」
「……わかりました」
ほっ、なんとか丸く収まったみたいだ。
僕らは、ゴードンさんにお礼をし、依頼場所へいくために酒場を出た。
道すがら、この一週間の出来事を振り返る。
あの日、僕らが転移したのは〖王都アルデンス〗にある王様の居城だった。
勿論最初は混乱した、突然異世界に転移して(喜んでいる子もいた)、目の前には知らない人たち。
僕らをこの世界に召喚したであろう女の子と王様に魔王の討伐を依頼され、半年間の修行期間を与えられた。
更には、僕達一人一人に職業とユニークスキルが与えられた。
この時点では、この王国に不満を持つ人も多かった。
(なんて自分勝手な国なんだろうって……)
だけど、王国はとても良い国だった。
特に王様はとてもいい人だった。
勝手に僕らを召喚したことを謝罪したり、生活の保証、魔王討伐後の日本への帰還まで約束してくれた。
ホントにいい人だった。
そこで僕らは、この国の為に出来ることを考え、クラスを冒険者組と街で商業を営みながら冒険者組のサポートを行う生産者組の二つのグループに分けた。
冒険者とは、人間以外の種族(天族と亜人の一部は除く)を討伐することを生業とする職業で、依頼を受けて金を稼いだり、各地のダンジョンへ挑んでみたりと。
かなり自由度の高い職業だ。
また、ランク制度が適用されており高い順に
SS>S>A>B>C>D>E>F>Gの9段階になっている。
SSランカーは王国に2人、帝国に3人、隣の〖宗教都市アズラエール〗に1人しかいないらしい。
また、討伐対象にもランクが設定されており。危険な順に。
SSS>SS>S+>S->A+>A->B+>B->C+>C->Dの十一段階、+αで〈測定不能〉に分かれている。
魔王の他にこれだけの驚異があるんだから、ビックリだ。
と、ここで目的地に到着する。
えっと確か。 ここで待ち合わせだったんだけど……。
「お~い! 天の字! こっちだあ!」
っ!! この独特な呼び名をする人は!
僕は声のした方に向かう。
「やっときたか。 遅刻だぞ。小僧」
紹介しよう。最初に僕を”天の字”と読んだ男性の名前は、
”アレイ•マクレイン”。
ゴードンさんの息子でAランク冒険者、現在は僕らの〈指導者〉をしてもらっている。
人当たりが良く、勝ち気な性格の割には勝負事に弱い。
新人冒険者への気配りもできる人である。
そして、その隣にいるローブを纏った女性が、王国宮廷魔導師の肩書きをもつAランク冒険者、”スミス•エルフィン”さん。
きつめの性格をしているが、根はいい人らしい(僕は苦手だ)
彼女も〈指導者〉である。
「すみません。思いの外に時間がかかりまして。えっと、佐々木さん達は何処でしょうか?」
と、ここにいるはずクラスメイトの名前をいう。
「ん? あいつらなら先行っちまったぜ。 〈指導者〉のいぬまに何とやらだな」
ええ! スミスさんも置いていったのか!?
怖いもの知らずだなぁ
「というわけで今日は貴様らの斑に同行する。異論は認めん」
「はい。わかりました」
ここでNOっていうと面倒なことになるからね。
今、スミスさんが言ったが、僕達冒険者組は4人ずつで4斑に分かれてる。
王都に転移してきた人数は、全部で二十四人。
その内8人を生産者組に。
余った十六人で、4斑に分かれたわけだ。
何故、4斑に分かれたか。
それは、転移の際にはぐれた”5”人を捜すため。
そう、いなかったのは命だけじゃない。
命と唯一血の繋がった双子の妹”真”。
いつも教室の隅で一人ぼっちだった女の子、”榊原千代”
教室内では自ら壁を作り、一匹狼だった。”剣崎亜嵐”
最後に、天真爛漫で誰にでも優しい僕の彼女でもあった”香坂明里”
以上4名の行方もわからなくなっていた。
そこで、真ちゃんをオタクの金継くん達が、榊原さんをクラス委員の佐々木さん達が、剣崎君を剣術道場の次期師範、橘くん達が、明里を生産者組が、仕事や修行の合間に捜すことになったのだ。
「じゃあそろそろいくか。早くしねーと今日の依頼最終受付時間に間に合わなくなるぞ」
とアレイさんが急かす。
「そうですね。いきましょう!」
元気よく返事をしてみたが、
街を出る門へ向かう途中、ずっと命や明里達のことが頭から離れなかった。
───────いったい。何処にいるんだ?
〖王都アルデンス〗にもっとも近い町であり、冒険者業が盛んで、商業が発達していることから、”冒険者の街”と呼ばれている。
その街の中心部にある冒険者ギルド<エイギル>。
今日も今日とて、そこはたくさんの冒険者で溢れ、喧騒に包まれている。
そんなギルドに併設されている酒場のカウンターには4人の男女がいた……。
◆◆◆◆
僕の名前は三橋天哉。
とある理由から、1週間程前からこの国で冒険者として活動中だ。
今、僕らはギルドの酒場にいる。
というのも……。
「それで、ゴードンさん、頼んでいた情報は何か掴めましたか?」
僕の右隣に座っている凛が、カウンターを挟んでグラスを拭いている壮年の男性に声をかける。
「いんや、その、”ミコト”つったか? そんな名前のガキはこの国にもその周辺国にもいねえみてぇだな。」
「そう…ですか……」
明らかに落胆した様子の凛。
無理もない。
大切な家族が失踪したんだ。
僕も同じ気持ちだ。
「まあ、帝国のほうにいる可能性も否定出来ねーが。さすがの俺でも帝国にパイプなんかもっちゃいねえ。すまねーな」
僕らがここに来た理由、それは、僕の親友であり、柊流剣術道場の兄弟子でもある少年”大神命”に関する情報の収集とその捜索だ。
この酒場のマスターである、”ゴードン・マクレイン”さん。
彼は嘗てこの国で名を馳せた元Sランク冒険者であり、〈絶拳〉の二つ名をもつ。
そして、僕らは彼のもつ独自のパイプラインを使って情報を集めていたわけだが、結果は先ほどのとおりだ。
「そうですか…では、日を改めて────」
そろそろ依頼の時間だ。僕は席を立とうとするが……。
「まってください!! しっかり隅々まで捜してくださったんですか!? こうしている間にも命”様”は寂しい想いを!!」
カウンターに両手をついて勢いよく立ち上がった女の子。僕の声は彼女の声にかき消されてしまった。
座っていた椅子が後ろに倒れ、それなりに大きな音をたてる。
うぅ、周囲の視線が痛い……。
「サエリン! 落ち着いて!! こんな所で大声出したらメッだよ!」
咄嗟に僕の左に座っていた白詰さんが制止の言葉を掛ける。
「白詰ちゃん、止めないで! ゴードンさん! どうなんですか!?」
と、ゴードンさんに詰め寄るこの少女の名前は”霞ヶ浦紗英”
赤色に縁取ったインテリ眼鏡をかけ、肩まで伸ばした黒髪を三つ編みに纏めて垂らしている。
出るところは出ており、顔も美人の部類に入る。
そんな彼女は命のスト─よき理解者だ。
それゆえ、命が寂しがり屋であることは知っているため(スリーサイズ?も知っている)、ここまで必死になってくれているのだ。
普段はしっかりとした真面目な子だが、命が絡むと暴走気味になってしまうのが玉に瑕だ。
「おいおい、落ち着け嬢ちゃん。さっきも言ったが、そのミコトっつーガキは帝国領にいる可能性が高い。
ただそこから情報を仕入れるにはされなりに時間がかかる。だから今日の所は退いてくれねえか?」
「……わかりました」
ほっ、なんとか丸く収まったみたいだ。
僕らは、ゴードンさんにお礼をし、依頼場所へいくために酒場を出た。
道すがら、この一週間の出来事を振り返る。
あの日、僕らが転移したのは〖王都アルデンス〗にある王様の居城だった。
勿論最初は混乱した、突然異世界に転移して(喜んでいる子もいた)、目の前には知らない人たち。
僕らをこの世界に召喚したであろう女の子と王様に魔王の討伐を依頼され、半年間の修行期間を与えられた。
更には、僕達一人一人に職業とユニークスキルが与えられた。
この時点では、この王国に不満を持つ人も多かった。
(なんて自分勝手な国なんだろうって……)
だけど、王国はとても良い国だった。
特に王様はとてもいい人だった。
勝手に僕らを召喚したことを謝罪したり、生活の保証、魔王討伐後の日本への帰還まで約束してくれた。
ホントにいい人だった。
そこで僕らは、この国の為に出来ることを考え、クラスを冒険者組と街で商業を営みながら冒険者組のサポートを行う生産者組の二つのグループに分けた。
冒険者とは、人間以外の種族(天族と亜人の一部は除く)を討伐することを生業とする職業で、依頼を受けて金を稼いだり、各地のダンジョンへ挑んでみたりと。
かなり自由度の高い職業だ。
また、ランク制度が適用されており高い順に
SS>S>A>B>C>D>E>F>Gの9段階になっている。
SSランカーは王国に2人、帝国に3人、隣の〖宗教都市アズラエール〗に1人しかいないらしい。
また、討伐対象にもランクが設定されており。危険な順に。
SSS>SS>S+>S->A+>A->B+>B->C+>C->Dの十一段階、+αで〈測定不能〉に分かれている。
魔王の他にこれだけの驚異があるんだから、ビックリだ。
と、ここで目的地に到着する。
えっと確か。 ここで待ち合わせだったんだけど……。
「お~い! 天の字! こっちだあ!」
っ!! この独特な呼び名をする人は!
僕は声のした方に向かう。
「やっときたか。 遅刻だぞ。小僧」
紹介しよう。最初に僕を”天の字”と読んだ男性の名前は、
”アレイ•マクレイン”。
ゴードンさんの息子でAランク冒険者、現在は僕らの〈指導者〉をしてもらっている。
人当たりが良く、勝ち気な性格の割には勝負事に弱い。
新人冒険者への気配りもできる人である。
そして、その隣にいるローブを纏った女性が、王国宮廷魔導師の肩書きをもつAランク冒険者、”スミス•エルフィン”さん。
きつめの性格をしているが、根はいい人らしい(僕は苦手だ)
彼女も〈指導者〉である。
「すみません。思いの外に時間がかかりまして。えっと、佐々木さん達は何処でしょうか?」
と、ここにいるはずクラスメイトの名前をいう。
「ん? あいつらなら先行っちまったぜ。 〈指導者〉のいぬまに何とやらだな」
ええ! スミスさんも置いていったのか!?
怖いもの知らずだなぁ
「というわけで今日は貴様らの斑に同行する。異論は認めん」
「はい。わかりました」
ここでNOっていうと面倒なことになるからね。
今、スミスさんが言ったが、僕達冒険者組は4人ずつで4斑に分かれてる。
王都に転移してきた人数は、全部で二十四人。
その内8人を生産者組に。
余った十六人で、4斑に分かれたわけだ。
何故、4斑に分かれたか。
それは、転移の際にはぐれた”5”人を捜すため。
そう、いなかったのは命だけじゃない。
命と唯一血の繋がった双子の妹”真”。
いつも教室の隅で一人ぼっちだった女の子、”榊原千代”
教室内では自ら壁を作り、一匹狼だった。”剣崎亜嵐”
最後に、天真爛漫で誰にでも優しい僕の彼女でもあった”香坂明里”
以上4名の行方もわからなくなっていた。
そこで、真ちゃんをオタクの金継くん達が、榊原さんをクラス委員の佐々木さん達が、剣崎君を剣術道場の次期師範、橘くん達が、明里を生産者組が、仕事や修行の合間に捜すことになったのだ。
「じゃあそろそろいくか。早くしねーと今日の依頼最終受付時間に間に合わなくなるぞ」
とアレイさんが急かす。
「そうですね。いきましょう!」
元気よく返事をしてみたが、
街を出る門へ向かう途中、ずっと命や明里達のことが頭から離れなかった。
───────いったい。何処にいるんだ?
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