壊れた世界と魔法使い
追跡準備
覇人と柚子瑠が周囲をあまり考えてないハチャメチャな戦い方をしているせいで、私たちの方ではその二次災害を受けている最中である。
こっちはこっちで何十人もの戦闘員たちを相手にしながら、目的地になってる研究所跡地の地下に進んでいかないといけないのだから、正直もう少し控えめに戦ってほしい。
おかげさまでまるで暴風雨の中を突き進んでいるみたいになっている。それは向こうの戦闘員たちともお互いさまなんだけど。
そもそもこんな状況じゃあ目的なんて達成できないし、というかもう邪魔。このまま争いながらどこか離れた場所まで移動してくれないかな。二人の戦闘能力が高いだけあって、質が悪すぎる妨害だ。
「ねえ、この二人が終わるまでいっそのこと待ってない?」
「気持ちは分かるが、向こうも同じことを考えてくれるとは限らないぞ」
ですよね。相手は敵意丸出しで襲ってきてるし。ちょっとは待つことを覚えてもいいと思うな。ほら、物事には順番というのがあるでしょ。なにも無理することないのにね。
「厳しいかと思いますけど、私たちの初任務ですので、頑張りましょう、彩葉ちゃん!」
「ああ。数では負けていたとしても戦力的には同等ぐらいのはずだ。それに“先輩”には負けていられないだろ」
そういや、覇人は色々な意味で先輩なんだっけ。魔法使いとしても、組織としても。あと、年齢的にもだっけ。
「でもさ、そんなこと言っても――」
二人の脅威にさらされながら、襲い来る戦闘員たちを茜ちゃんの援護付きで私と纏の二人で対処していく。
「巻き添えが酷すぎじゃない!」
いま、覇人が使っている刺突状の武器がこちら側の戦場へと突き刺さる。その後には柚子瑠の伸縮自在に変動する鞭が割り込んでくる。
このまま続ければ、この二人に殺されそうな気がしてくるんだよね。
「……た、確かに。その通りだとは思うのですけど」
「だからと言って、呑気に待たせてもらえるわけでもない。俺たちに残されている選択肢は一つ。たとえ火の中水の中であっても、今は前に進むだけだ」
うん。そうだね、だからこそ多少の無理は押し通なければならないんだってことも分かってる。でもせめて、もう少し手助けがあればもっと楽できるのに。
「そういや、蘭たちの方はどうなったのかな」
さっき橋の上で緋真さんの魔法が見えたから、たぶん向こうも手一杯な状況なんだろうけど。
「戦闘が始まったのは間違いないだろうが、しかしすぐに止んだな」
「もう終わったのでしょうか」
「可能性はありそうだな」
いや、むしろそれしかないような。ここにいても分かるぐらいの凄まじい魔力だったし。相変わらずやることが大きすぎるような。
とりあえず気に掛ける必要はなさそうと思った矢先、今度は別の場所から火の手が上がった。
「な、なに――?」
「あんなところから」
それは橋の上からではなく、公道の方からのものだった。そして、間違いなくあれは緋真さんの魔法――。
一体何であんな所から。しかもどんどん近づいてくるし、これって橋の上から移動してるってことでいいんだよね。
「ったく、相変わらず加減しねえやつだな」
「あの焔――まさか、穂高緋真とかいう魔法使いか?!」
「ああ、そうだ。今頃、あんたが送った戦闘員らはただじゃ済んでいないだろうぜ」
「冗談だろ。あんなイカレタ魔法使いまで来やがったのかよ」
味方だと頼もしい限りなんだけど、敵から見れば脅威そのものでしかないんだね。研究所の完全破壊にアンチマジック二十九区支部の炎上。改めて思うけど、やっぱりやりすぎ。そりゃあ、敵も脅威的に思うのも無理はない。
そうして間もなく、緋真さんと蘭を乗せたワンボックスの車が私たちの元へと猛スピードで突っ込んできた。
「乗って――! 一旦退くわよ」
開けっぱなしにされていた窓から蘭が大声で撤退宣言。
ちょっと、ちょっと待ってほしい。考える時間が欲しいかも。そもそも魔法使いを取り返しにきたはずなのに、退いてどうするんだろう。
「覇人。時間よ」
「お、やっとか。おい、纏。ここはさっさとずらかるぜ」
そんなことを言われても、事情を呑み込めない私たちには曖昧な返事しかできない。
「よく分からないが、ここは従った方がよさそうだな」
「う~ん……何だかよく分からないけど、まいっか」
色々と気になることはあるけど、いまは言われた通りに動いておけば大丈夫でしょ。あとで教えてもらえばいいだけ。
「二度も逃がしてたまるかよ」
振るわれる鞭に背を向け、私たちは走りだす。
猛威に襲われようとしても、決して振り向かない。――だって、前には心強い仲間が迎撃の一手を差し向けてくれているのだから。
「悪いわね、柚子瑠」
「――蘭」
蘭の放った魔力砲とすれ違うのも一瞬、狙い通り柚子瑠の一撃とぶつかり合う。
響いた衝撃を背にして私たちは何とか滑りこむように乗車し、走ってきた方向に目を向けてみた。
やっぱり緋真さんの身内なだけあって、加減知らずだね。とは言っても、この際それぐらいが丁度いいのかもしれないけど。
「全員いるわね。――出すわよ」
私たちを一瞥した緋真さんは有無を言わさない内に車を走らせる。
一応、様子を見ておいた方がいいかなと思って、窓越しから後ろを振り向こうとした瞬間――車体が大きく右へと逸れ、元いた位置に鞭が飛んでくる。
「ごめんね、大丈夫だったかしら?」
急な動きで軽く茜ちゃんと頭をぶつけたけど、まあそんなに被害は大きくないし一緒に平気と返して置いた。他のメンバーも無事っぽいみたいで同じように返した。
「でもそれよりも、あの人まだ諦めていないみたいですね」
気になって、もう一度窓越しから後ろをのぞき込んでみると何やら柚子瑠が戦闘員らに指示を出しているようだった。
「あいつ、追ってくる気だわ」
*
緋真らを乗せた車に叩きこんだ鞭が避けられたあと、柚子瑠はすぐさま場に残っている戦闘員らに指示を出す。
「半分は残ってここを守れ。もう半分はうちに付いてこい。奴らを追うぞ!」
迅速かつ正確に。まるでよく訓練された軍隊のように戦闘員らは柚子瑠の指示に従う。
と、そこに淡い光に包まれながら、樹神鎗真ことソーマ・エコーが姿を現す。突然の出現に驚きを隠せなかった柚子瑠は、思わず警戒心を強めたものの、誰なのか認識するとともに気を緩める。
「なんだ、てめえか。脅かしやがって」
「へえ、貴様ほどの人物がそのようなリアクションを取るとは思いませんでしたよ」
「うっせえ。つーか何だよてめえ! どっから出てきやがるんだ」
「特異体質でして」
「ああ? まさか、魔法使いとかいうつもりか?」
「まさか。まあ、追々説明する機会があれば、その時にでも」
釈然としないが、今はそれどころではない。もちろん問いただしくもあるが、柚子瑠には最優先しなければならないことがある。
そのためにも使えそうなものは使う。この場を任されたものとして、いやそれ以前に自分の役目を全うするべく。
「丁度いい。てめえも手伝え」
「そうしたいのは山々ですが、F級ごときの僕じゃあ足でまといかと」
あえて格下っぽさを醸し出して、自分は役立たずだとアピールを出すソーマ。だが、それは余計に柚子瑠を感情的にさせるだけだった。
「うちを舐めるなよ。さっきの橋の上でのアレ。気づいていねえと思ってんのか?」
あくまでもシラを切り通すつもりでいたが、やはり見られていた。しかし、それならばそれでも構わなかった。元より、この華南柚子瑠がどこまでの実力を備えているのか、ソーマは試してみたい気持ちもあったのだ。
「さすがはB級戦闘員。いやはや大したものですよ」
「そりゃどうも。で、協力するのか、しねえのか」
「しますよ。ただし、直接手は出しませんよ。元監視官として、連中のナビで良ければ引き受けてやりますが」
「構わねえよ」
「決まりですね。それでは一足先に行かせてもらいますよ」
現れた時と同様にソーマを淡い光が包み込み、忽然と姿を掻き消した。その残滓を見届けたあと、柚子瑠の元に戦闘員が追跡準備が整ったことを報告してきた。
「こっちも行くか」
アンチマジックが保有する抗魔性のある黒塗りの高速車。魔法に対しての防護を兼ね備え、耐久性もある。加えて高速で移動する際の操作性、運動性に特化されたタイプ――それが計五台。
主に戦闘員らの移動手段として使われ、こういった不測の事態などにも即座に対応が可能な性能を秘めている。
「にしても、アイツ。あんなキャラだったか?」
疑問は山のように募る一方だった。
*
「脅威度クラス5認定――穂高緋真か。送られた資料以上に危険すぎる存在だと思うのですがね。やれやれ、これは今回次第で改める必要性がありそうですね」
眼下を広く眺め渡せるビルの屋上にソーマは転移していた。目当ての車両を探るにはこれ以上にない眺めだ。
ソーマは早速掛けているメガネを軽くノックでもするかのようにこづく。
本来の性能を引き出す“起動条件”を満たしたことによって、ソーマの視界には魔力が視えるようになっていた。
いくら夜に包まれていようとも、魔力が辿れるのならばそんなものは関係ない。緋真らが乗り込んでいる車には魔法使いが何人も乗っているのだから、魔力が濃く感じられる一点を探し出せばいい。それはほどなくして見つかることとなる。
夜空から照らすいくつもの星の中でも一層輝きを示す物があるように、それもまた周囲とは浮いていた。
「この国のB級戦闘員がどこまでやれるのか、手並みを拝見させてもらいますよ。――〈黄閃〉の華南柚子瑠」
こっちはこっちで何十人もの戦闘員たちを相手にしながら、目的地になってる研究所跡地の地下に進んでいかないといけないのだから、正直もう少し控えめに戦ってほしい。
おかげさまでまるで暴風雨の中を突き進んでいるみたいになっている。それは向こうの戦闘員たちともお互いさまなんだけど。
そもそもこんな状況じゃあ目的なんて達成できないし、というかもう邪魔。このまま争いながらどこか離れた場所まで移動してくれないかな。二人の戦闘能力が高いだけあって、質が悪すぎる妨害だ。
「ねえ、この二人が終わるまでいっそのこと待ってない?」
「気持ちは分かるが、向こうも同じことを考えてくれるとは限らないぞ」
ですよね。相手は敵意丸出しで襲ってきてるし。ちょっとは待つことを覚えてもいいと思うな。ほら、物事には順番というのがあるでしょ。なにも無理することないのにね。
「厳しいかと思いますけど、私たちの初任務ですので、頑張りましょう、彩葉ちゃん!」
「ああ。数では負けていたとしても戦力的には同等ぐらいのはずだ。それに“先輩”には負けていられないだろ」
そういや、覇人は色々な意味で先輩なんだっけ。魔法使いとしても、組織としても。あと、年齢的にもだっけ。
「でもさ、そんなこと言っても――」
二人の脅威にさらされながら、襲い来る戦闘員たちを茜ちゃんの援護付きで私と纏の二人で対処していく。
「巻き添えが酷すぎじゃない!」
いま、覇人が使っている刺突状の武器がこちら側の戦場へと突き刺さる。その後には柚子瑠の伸縮自在に変動する鞭が割り込んでくる。
このまま続ければ、この二人に殺されそうな気がしてくるんだよね。
「……た、確かに。その通りだとは思うのですけど」
「だからと言って、呑気に待たせてもらえるわけでもない。俺たちに残されている選択肢は一つ。たとえ火の中水の中であっても、今は前に進むだけだ」
うん。そうだね、だからこそ多少の無理は押し通なければならないんだってことも分かってる。でもせめて、もう少し手助けがあればもっと楽できるのに。
「そういや、蘭たちの方はどうなったのかな」
さっき橋の上で緋真さんの魔法が見えたから、たぶん向こうも手一杯な状況なんだろうけど。
「戦闘が始まったのは間違いないだろうが、しかしすぐに止んだな」
「もう終わったのでしょうか」
「可能性はありそうだな」
いや、むしろそれしかないような。ここにいても分かるぐらいの凄まじい魔力だったし。相変わらずやることが大きすぎるような。
とりあえず気に掛ける必要はなさそうと思った矢先、今度は別の場所から火の手が上がった。
「な、なに――?」
「あんなところから」
それは橋の上からではなく、公道の方からのものだった。そして、間違いなくあれは緋真さんの魔法――。
一体何であんな所から。しかもどんどん近づいてくるし、これって橋の上から移動してるってことでいいんだよね。
「ったく、相変わらず加減しねえやつだな」
「あの焔――まさか、穂高緋真とかいう魔法使いか?!」
「ああ、そうだ。今頃、あんたが送った戦闘員らはただじゃ済んでいないだろうぜ」
「冗談だろ。あんなイカレタ魔法使いまで来やがったのかよ」
味方だと頼もしい限りなんだけど、敵から見れば脅威そのものでしかないんだね。研究所の完全破壊にアンチマジック二十九区支部の炎上。改めて思うけど、やっぱりやりすぎ。そりゃあ、敵も脅威的に思うのも無理はない。
そうして間もなく、緋真さんと蘭を乗せたワンボックスの車が私たちの元へと猛スピードで突っ込んできた。
「乗って――! 一旦退くわよ」
開けっぱなしにされていた窓から蘭が大声で撤退宣言。
ちょっと、ちょっと待ってほしい。考える時間が欲しいかも。そもそも魔法使いを取り返しにきたはずなのに、退いてどうするんだろう。
「覇人。時間よ」
「お、やっとか。おい、纏。ここはさっさとずらかるぜ」
そんなことを言われても、事情を呑み込めない私たちには曖昧な返事しかできない。
「よく分からないが、ここは従った方がよさそうだな」
「う~ん……何だかよく分からないけど、まいっか」
色々と気になることはあるけど、いまは言われた通りに動いておけば大丈夫でしょ。あとで教えてもらえばいいだけ。
「二度も逃がしてたまるかよ」
振るわれる鞭に背を向け、私たちは走りだす。
猛威に襲われようとしても、決して振り向かない。――だって、前には心強い仲間が迎撃の一手を差し向けてくれているのだから。
「悪いわね、柚子瑠」
「――蘭」
蘭の放った魔力砲とすれ違うのも一瞬、狙い通り柚子瑠の一撃とぶつかり合う。
響いた衝撃を背にして私たちは何とか滑りこむように乗車し、走ってきた方向に目を向けてみた。
やっぱり緋真さんの身内なだけあって、加減知らずだね。とは言っても、この際それぐらいが丁度いいのかもしれないけど。
「全員いるわね。――出すわよ」
私たちを一瞥した緋真さんは有無を言わさない内に車を走らせる。
一応、様子を見ておいた方がいいかなと思って、窓越しから後ろを振り向こうとした瞬間――車体が大きく右へと逸れ、元いた位置に鞭が飛んでくる。
「ごめんね、大丈夫だったかしら?」
急な動きで軽く茜ちゃんと頭をぶつけたけど、まあそんなに被害は大きくないし一緒に平気と返して置いた。他のメンバーも無事っぽいみたいで同じように返した。
「でもそれよりも、あの人まだ諦めていないみたいですね」
気になって、もう一度窓越しから後ろをのぞき込んでみると何やら柚子瑠が戦闘員らに指示を出しているようだった。
「あいつ、追ってくる気だわ」
*
緋真らを乗せた車に叩きこんだ鞭が避けられたあと、柚子瑠はすぐさま場に残っている戦闘員らに指示を出す。
「半分は残ってここを守れ。もう半分はうちに付いてこい。奴らを追うぞ!」
迅速かつ正確に。まるでよく訓練された軍隊のように戦闘員らは柚子瑠の指示に従う。
と、そこに淡い光に包まれながら、樹神鎗真ことソーマ・エコーが姿を現す。突然の出現に驚きを隠せなかった柚子瑠は、思わず警戒心を強めたものの、誰なのか認識するとともに気を緩める。
「なんだ、てめえか。脅かしやがって」
「へえ、貴様ほどの人物がそのようなリアクションを取るとは思いませんでしたよ」
「うっせえ。つーか何だよてめえ! どっから出てきやがるんだ」
「特異体質でして」
「ああ? まさか、魔法使いとかいうつもりか?」
「まさか。まあ、追々説明する機会があれば、その時にでも」
釈然としないが、今はそれどころではない。もちろん問いただしくもあるが、柚子瑠には最優先しなければならないことがある。
そのためにも使えそうなものは使う。この場を任されたものとして、いやそれ以前に自分の役目を全うするべく。
「丁度いい。てめえも手伝え」
「そうしたいのは山々ですが、F級ごときの僕じゃあ足でまといかと」
あえて格下っぽさを醸し出して、自分は役立たずだとアピールを出すソーマ。だが、それは余計に柚子瑠を感情的にさせるだけだった。
「うちを舐めるなよ。さっきの橋の上でのアレ。気づいていねえと思ってんのか?」
あくまでもシラを切り通すつもりでいたが、やはり見られていた。しかし、それならばそれでも構わなかった。元より、この華南柚子瑠がどこまでの実力を備えているのか、ソーマは試してみたい気持ちもあったのだ。
「さすがはB級戦闘員。いやはや大したものですよ」
「そりゃどうも。で、協力するのか、しねえのか」
「しますよ。ただし、直接手は出しませんよ。元監視官として、連中のナビで良ければ引き受けてやりますが」
「構わねえよ」
「決まりですね。それでは一足先に行かせてもらいますよ」
現れた時と同様にソーマを淡い光が包み込み、忽然と姿を掻き消した。その残滓を見届けたあと、柚子瑠の元に戦闘員が追跡準備が整ったことを報告してきた。
「こっちも行くか」
アンチマジックが保有する抗魔性のある黒塗りの高速車。魔法に対しての防護を兼ね備え、耐久性もある。加えて高速で移動する際の操作性、運動性に特化されたタイプ――それが計五台。
主に戦闘員らの移動手段として使われ、こういった不測の事態などにも即座に対応が可能な性能を秘めている。
「にしても、アイツ。あんなキャラだったか?」
疑問は山のように募る一方だった。
*
「脅威度クラス5認定――穂高緋真か。送られた資料以上に危険すぎる存在だと思うのですがね。やれやれ、これは今回次第で改める必要性がありそうですね」
眼下を広く眺め渡せるビルの屋上にソーマは転移していた。目当ての車両を探るにはこれ以上にない眺めだ。
ソーマは早速掛けているメガネを軽くノックでもするかのようにこづく。
本来の性能を引き出す“起動条件”を満たしたことによって、ソーマの視界には魔力が視えるようになっていた。
いくら夜に包まれていようとも、魔力が辿れるのならばそんなものは関係ない。緋真らが乗り込んでいる車には魔法使いが何人も乗っているのだから、魔力が濃く感じられる一点を探し出せばいい。それはほどなくして見つかることとなる。
夜空から照らすいくつもの星の中でも一層輝きを示す物があるように、それもまた周囲とは浮いていた。
「この国のB級戦闘員がどこまでやれるのか、手並みを拝見させてもらいますよ。――〈黄閃〉の華南柚子瑠」
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