TRICOLORE総務部ヒロインズ!〜もしも明日、会社が消滅するとしたら?!~
【2-9】手紙無き、封書
さて、総務部のお仕事のひとつに「郵便業務」がある。社内の郵便局と化した総務部の朝はやっぱり騒々しい。何しろ、30近くの全部署の郵便を手作業でフロア毎に分けて行く日課だ。
それが「暑中見舞い」や「寒中見舞い」などが重なると、さながら年末の年賀状で溢れかえる郵便局のように机には郵便が溢れ返る。
間違い郵便の戻りや、にやりとするプライベート濃厚な郵便なども見つけて楽しめる役得もあるにはあるが、海空ほどにならないとその楽しさは味わえないだろう。
どさっと置いて行かれた仕分けに大わらわになる。
「鈴子、急いで。特に経理関係と、役職者関係、人事!」
「りょ! りょですっ……うわーん、雪乃さんどこ行っちゃったの~」
鈴子はアイドルのラブレター仕分けのバイトのようにあたふたしつつも、ちゃんと封筒を区分して並べている。
「また秘書課でも覗きに行ってんじゃない?」
***
ちょっとフロアを離れると、すぐコレだ。噂をされるが女子社員の宿命である。それが「お手洗い」でも「どうせ」だの「また」だの枕詞をつけて、噂される。
雪乃は唇を引き締めて、姉と妹がわいわいやっている中央テーブルに歩み寄った。
「お手洗いなんですけど。今日はまたすごい郵便ですね」
休み明けの初日。さらに4月のフレッシュ期間ともなれば、不要なダイレクトメールも手伝って、郵便は膨大。
「げ、PMS(パーソナル・インフォメーション・プロテクション・マネジメント・システムの略)の事前申請用紙来た!」
「あ、かちょお宛に、スナックのママからお酒のお誘い。メッセージ読んじゃえ。『熱い夜を過ごされた省吾さん、あっちもこちらもお元気かしら。あの日のお酒はエロスの味がして……』」
「まあ、いやらし。あっちもこっちも」
瞬間で尾城林課長がやってきた。「どんなメッセージだよ。あのママ! こら、読み上げるな!」と葉書を取り上げようとした。鈴子がばっと手を上に持ち上げて葉書を逃がす。口元はしっかりへの字。
葉書で口元を隠した鈴子の顔には「オトナって」と書いてあるように見えた。
「かちょお、このヒトと熱い夜を過ごしたんですか? ふけつ」
「ふけ……っ? 鈴子、傷付くンだけ……あ、シュレッダーかけるな、こら!」
「汚いものは、こうだっ」
「俺のプライバシーを汚いって言った?! あーーー 黎子さんが……」
コー……と動いたシュレッダーの前から鈴子が戻ってきた。ちょっぴり涙目の鈴子の揺れる頭を視ていると、(カワイイなあ)笑いを噛み殺したくもなる。
鈴子は尾城林が好きだから、面白くないのだろう。鈴子の想いは手に取るように判って、愛らしい。
雪乃はほのぼのと海空に語りかけた。
「カワイイですね。あのやりとり」
しかし帰ってきたのは「忙しいのよ」の侮蔑の視線。海空は「あほくさ」とばかりに雪乃も相手にせず、PMSの封筒をバリバリと開けている。雪乃も参戦しようと、丁寧に糊付けされた封筒を手にした。
可愛らしい押し桜模様の、女性だと言わんばかりの封筒である。
「カワイイ封筒ねえ」と海空が気付いて興味を示し――。
「これ、西郷さんからだわ! ……ちょ、雪乃、ペーパーナイフ貸して。カッターでもいい。いい? こういう封筒は横に置いて、刃を潜らせて開けると――……」
海空は切り開けた封筒を覗き込み、塩がなくなった瓶の如く逆さにして振った。が、手紙は出て来ない。
つまり、封筒だけで、肝心の手紙は封入されていなかった。
「へんねえ……手紙入れ忘れた? あーあー、住所も書いてないわぁ」
「消印は?」
「だめ、潰れてるわ。西郷さん、元気かな」
(あ、西郷さんって。あの、写真の――)
〝あんたにはもう何も話さないわよ〟
海空の冷たい一言は今も雪乃の心に刺さったままだ。怒りもその矢は吸い込んで、ズクズクと心を苛め抜く。背後でがたっと音がしてトリコロールは揃って振り返った。
尾城林が持っていた書類を全部床に落としてしまっていた。それだけではない。シュレッダーの箱を肘で落として、書類を散らばらせている。
「ちょっと! 仕事増やさないでよ!」
「あたし、知りません。今、チョムカなんで~す」と鈴子がそっぽを向く。
「……あんたシュレッダーで見つけたでしょ。昔の総務部係長。課長、うるさいんですけど」
「いや……西郷から手紙が?」
「手紙はなかったわよ。封書だけ。でも、これ先輩の字だわ」
「いや、有り得ねえ……おい、お局、のんびりしてると、クレームが来るぞ。さっさと配って来い」
時刻は十時。大抵当日に郵送したい書類が多い経理部がヤキモキしてフロアのとば口で苛々しているに違いない。「大変!」と海空は手にした郵便をバババババ、と区分けして3つの束にした。
「経理・人事」「営業・管理」「役員」に分かれた郵便は今から届けに周り、序でに備品の相談と、各種書類のなんやかやを吸い上げて仕事を増やすのである。
「あたし、人事部フロア廻って来ます! 経理部が修羅場になるので」
「よし、じゃあ鈴子は営業部フロア。あたしは後で役員室へと。……雪乃、ついでに秘書課と戦略室。秘書課宛にJALのお高いお知らせDMが。糊つけてアイロンかけてやろうかしらね」
苦笑いして、「人事・経理」と書かれた籠を持ち上げた。ところで、尾城林も一緒についてきた。尾城林の顔色が悪い。真っ白に近い顔色で、顔面蒼白の言葉のまま、尾城林は首を振った。
「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ? 医務室行ったほうが」
「いや、花見会議があっから。ちょっと落ち着けば平気。ロキソニン持ってるし。いや、たまげただけだ。これは魂消た、日和下駄」
〝たまげた〟インテリ(に雪乃には見える)な尾城林が庶民の言葉を遣うは珍しい。元営業の尾城林の身なりは、鷺原のようにかっちりとしている。総務だからとだらしなくはしない。美意識の高い雪乃は満足だ。
「あの手紙……いえ、封筒だけでしたね。変わった先輩だなと思いました。流石は佐藤主任の」
「有り得ねえんだって。篠山」
尾城林はネクタイを指で緩めて、目線を逸らせた。
「――西郷美佳子は、退社してすぐに死んでるんだ」
***
(死んでる?)目を瞠ると同時にエレベーターがやって来た。ガヤガヤと営業数名が降りて行き、最後に佐々木が降りて来た。先頭集団は佐々木には声すら掛けない。
「集団営業はきついだろうな……」
「やっぱり、苛めですか。女子より酷いんですね」
「男の苛めは暴力的で陰険に来るからな。女子は陰湿だろ。俺、苛めって大嫌いだよ。数字で抜けばいいんだ。手ぐすね引いてたんだろ」
鷺原の言葉を思い浮かべた。社会にはイロイロな人間がいると。手ぐすね引いて、失態を導く人間、嘲笑う人間、努力を掠め取る人間……ちっとも世界は優しくない。
「あたし、この世界嫌いです。大嫌い」
「どんな世界がいいんだよ?」尾城林は面白そうに雪乃を見下ろした。「篠山が嫌いなのは、お局だろ。ああいう必要悪を覚悟した女はタチ悪ィ」
(本当、どっちもどっち)思いながら雪乃は「亡くなられてるって」と話を蒸し返した。
既に此の世にいない人間からの郵便物――……。
中身は、ない。
「お局にゃ言ってねーのよ。篠山、経理部が待ち伏せてる」
エレベーターの前で経理部の女子が仁王立ちして待ち構えていた。お尻が椅子に入るのかと疑いたくなる小デブさんは、確か細居さん。健康診断ではメタボ予備軍。
制服のベストが特注になったと、海空がぼやいていた。
「おーそいー! 早く! 証券会社からの請求書は来てたァ? 空売り大変なんだからァ!」
喚いて、ハンバーガーの腹を揺らして、一切合切をごそっと持っていった。
「太いくせに動き早ぇ。河馬か、あいつは」
尾城林の皮肉と共に、やはり待ち構えていた人事部男子に書類を渡して、最後は秘書課へのDMが残った。
「DMだろ? わざわざ届けに行くまでもねーよ。玄関にすぐに降りてくるさ。接待が多いからなぁ。社長シンポジウムのSEASONだ」
「そうですね。2人もお届け中でしょうか」エレベーターの到着ランプがポーンと鳴った。エレベーター内にもフロア見取り図と、掲示板がある。
株の推移票と、自社株の売り転売は禁止するなど、主に株の話が多い。
「すげーな。株価上昇だって。お局がまた株、株喚くぞ。ストップ高に売ればいいのに」
「男の人って株、好きですね」雪乃の言葉に尾城林は「鷺原とつきあってんの?」とB型口調で問うて来た。
頷くと、「ふうん」とだけ。雪乃はB型の男は合わないと思った。軽薄な感じが拭えない。それに、会社の暴露話はしていない。海空とどうすれば巧く行くか、相談はしているけれど。別に悪い話ではないだろう。
ストレスを溜めない方法に「社外のヒトに相談する」とまで新人マニュアルに書いてある。
恋路は雪乃のものだ。……どう言い返そうかと迷う前で、尾城林が首に掛けている社内Phoneが震え始めた。
係長以上が持つモバイル型だ。
「もしもし、ファシリティ部の尾城林ですが」
尾城林の電話の応対はソフトで好きだ。かっこつけのファシリティも、雪乃は賛成。総務部より先進的に聞こえる。
ちらっと視線を向けられた。
「……佐東と、篠山二名、ですか……」
(あたし?)空っぽの籠をしっかり下げた雪乃に尾城林は告げた。
「社内監査室からだ。総務部主任、佐東海空、副主任篠山雪乃。両名すぐに来るようにと」
胸騒ぎがした。
それが「暑中見舞い」や「寒中見舞い」などが重なると、さながら年末の年賀状で溢れかえる郵便局のように机には郵便が溢れ返る。
間違い郵便の戻りや、にやりとするプライベート濃厚な郵便なども見つけて楽しめる役得もあるにはあるが、海空ほどにならないとその楽しさは味わえないだろう。
どさっと置いて行かれた仕分けに大わらわになる。
「鈴子、急いで。特に経理関係と、役職者関係、人事!」
「りょ! りょですっ……うわーん、雪乃さんどこ行っちゃったの~」
鈴子はアイドルのラブレター仕分けのバイトのようにあたふたしつつも、ちゃんと封筒を区分して並べている。
「また秘書課でも覗きに行ってんじゃない?」
***
ちょっとフロアを離れると、すぐコレだ。噂をされるが女子社員の宿命である。それが「お手洗い」でも「どうせ」だの「また」だの枕詞をつけて、噂される。
雪乃は唇を引き締めて、姉と妹がわいわいやっている中央テーブルに歩み寄った。
「お手洗いなんですけど。今日はまたすごい郵便ですね」
休み明けの初日。さらに4月のフレッシュ期間ともなれば、不要なダイレクトメールも手伝って、郵便は膨大。
「げ、PMS(パーソナル・インフォメーション・プロテクション・マネジメント・システムの略)の事前申請用紙来た!」
「あ、かちょお宛に、スナックのママからお酒のお誘い。メッセージ読んじゃえ。『熱い夜を過ごされた省吾さん、あっちもこちらもお元気かしら。あの日のお酒はエロスの味がして……』」
「まあ、いやらし。あっちもこっちも」
瞬間で尾城林課長がやってきた。「どんなメッセージだよ。あのママ! こら、読み上げるな!」と葉書を取り上げようとした。鈴子がばっと手を上に持ち上げて葉書を逃がす。口元はしっかりへの字。
葉書で口元を隠した鈴子の顔には「オトナって」と書いてあるように見えた。
「かちょお、このヒトと熱い夜を過ごしたんですか? ふけつ」
「ふけ……っ? 鈴子、傷付くンだけ……あ、シュレッダーかけるな、こら!」
「汚いものは、こうだっ」
「俺のプライバシーを汚いって言った?! あーーー 黎子さんが……」
コー……と動いたシュレッダーの前から鈴子が戻ってきた。ちょっぴり涙目の鈴子の揺れる頭を視ていると、(カワイイなあ)笑いを噛み殺したくもなる。
鈴子は尾城林が好きだから、面白くないのだろう。鈴子の想いは手に取るように判って、愛らしい。
雪乃はほのぼのと海空に語りかけた。
「カワイイですね。あのやりとり」
しかし帰ってきたのは「忙しいのよ」の侮蔑の視線。海空は「あほくさ」とばかりに雪乃も相手にせず、PMSの封筒をバリバリと開けている。雪乃も参戦しようと、丁寧に糊付けされた封筒を手にした。
可愛らしい押し桜模様の、女性だと言わんばかりの封筒である。
「カワイイ封筒ねえ」と海空が気付いて興味を示し――。
「これ、西郷さんからだわ! ……ちょ、雪乃、ペーパーナイフ貸して。カッターでもいい。いい? こういう封筒は横に置いて、刃を潜らせて開けると――……」
海空は切り開けた封筒を覗き込み、塩がなくなった瓶の如く逆さにして振った。が、手紙は出て来ない。
つまり、封筒だけで、肝心の手紙は封入されていなかった。
「へんねえ……手紙入れ忘れた? あーあー、住所も書いてないわぁ」
「消印は?」
「だめ、潰れてるわ。西郷さん、元気かな」
(あ、西郷さんって。あの、写真の――)
〝あんたにはもう何も話さないわよ〟
海空の冷たい一言は今も雪乃の心に刺さったままだ。怒りもその矢は吸い込んで、ズクズクと心を苛め抜く。背後でがたっと音がしてトリコロールは揃って振り返った。
尾城林が持っていた書類を全部床に落としてしまっていた。それだけではない。シュレッダーの箱を肘で落として、書類を散らばらせている。
「ちょっと! 仕事増やさないでよ!」
「あたし、知りません。今、チョムカなんで~す」と鈴子がそっぽを向く。
「……あんたシュレッダーで見つけたでしょ。昔の総務部係長。課長、うるさいんですけど」
「いや……西郷から手紙が?」
「手紙はなかったわよ。封書だけ。でも、これ先輩の字だわ」
「いや、有り得ねえ……おい、お局、のんびりしてると、クレームが来るぞ。さっさと配って来い」
時刻は十時。大抵当日に郵送したい書類が多い経理部がヤキモキしてフロアのとば口で苛々しているに違いない。「大変!」と海空は手にした郵便をバババババ、と区分けして3つの束にした。
「経理・人事」「営業・管理」「役員」に分かれた郵便は今から届けに周り、序でに備品の相談と、各種書類のなんやかやを吸い上げて仕事を増やすのである。
「あたし、人事部フロア廻って来ます! 経理部が修羅場になるので」
「よし、じゃあ鈴子は営業部フロア。あたしは後で役員室へと。……雪乃、ついでに秘書課と戦略室。秘書課宛にJALのお高いお知らせDMが。糊つけてアイロンかけてやろうかしらね」
苦笑いして、「人事・経理」と書かれた籠を持ち上げた。ところで、尾城林も一緒についてきた。尾城林の顔色が悪い。真っ白に近い顔色で、顔面蒼白の言葉のまま、尾城林は首を振った。
「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ? 医務室行ったほうが」
「いや、花見会議があっから。ちょっと落ち着けば平気。ロキソニン持ってるし。いや、たまげただけだ。これは魂消た、日和下駄」
〝たまげた〟インテリ(に雪乃には見える)な尾城林が庶民の言葉を遣うは珍しい。元営業の尾城林の身なりは、鷺原のようにかっちりとしている。総務だからとだらしなくはしない。美意識の高い雪乃は満足だ。
「あの手紙……いえ、封筒だけでしたね。変わった先輩だなと思いました。流石は佐藤主任の」
「有り得ねえんだって。篠山」
尾城林はネクタイを指で緩めて、目線を逸らせた。
「――西郷美佳子は、退社してすぐに死んでるんだ」
***
(死んでる?)目を瞠ると同時にエレベーターがやって来た。ガヤガヤと営業数名が降りて行き、最後に佐々木が降りて来た。先頭集団は佐々木には声すら掛けない。
「集団営業はきついだろうな……」
「やっぱり、苛めですか。女子より酷いんですね」
「男の苛めは暴力的で陰険に来るからな。女子は陰湿だろ。俺、苛めって大嫌いだよ。数字で抜けばいいんだ。手ぐすね引いてたんだろ」
鷺原の言葉を思い浮かべた。社会にはイロイロな人間がいると。手ぐすね引いて、失態を導く人間、嘲笑う人間、努力を掠め取る人間……ちっとも世界は優しくない。
「あたし、この世界嫌いです。大嫌い」
「どんな世界がいいんだよ?」尾城林は面白そうに雪乃を見下ろした。「篠山が嫌いなのは、お局だろ。ああいう必要悪を覚悟した女はタチ悪ィ」
(本当、どっちもどっち)思いながら雪乃は「亡くなられてるって」と話を蒸し返した。
既に此の世にいない人間からの郵便物――……。
中身は、ない。
「お局にゃ言ってねーのよ。篠山、経理部が待ち伏せてる」
エレベーターの前で経理部の女子が仁王立ちして待ち構えていた。お尻が椅子に入るのかと疑いたくなる小デブさんは、確か細居さん。健康診断ではメタボ予備軍。
制服のベストが特注になったと、海空がぼやいていた。
「おーそいー! 早く! 証券会社からの請求書は来てたァ? 空売り大変なんだからァ!」
喚いて、ハンバーガーの腹を揺らして、一切合切をごそっと持っていった。
「太いくせに動き早ぇ。河馬か、あいつは」
尾城林の皮肉と共に、やはり待ち構えていた人事部男子に書類を渡して、最後は秘書課へのDMが残った。
「DMだろ? わざわざ届けに行くまでもねーよ。玄関にすぐに降りてくるさ。接待が多いからなぁ。社長シンポジウムのSEASONだ」
「そうですね。2人もお届け中でしょうか」エレベーターの到着ランプがポーンと鳴った。エレベーター内にもフロア見取り図と、掲示板がある。
株の推移票と、自社株の売り転売は禁止するなど、主に株の話が多い。
「すげーな。株価上昇だって。お局がまた株、株喚くぞ。ストップ高に売ればいいのに」
「男の人って株、好きですね」雪乃の言葉に尾城林は「鷺原とつきあってんの?」とB型口調で問うて来た。
頷くと、「ふうん」とだけ。雪乃はB型の男は合わないと思った。軽薄な感じが拭えない。それに、会社の暴露話はしていない。海空とどうすれば巧く行くか、相談はしているけれど。別に悪い話ではないだろう。
ストレスを溜めない方法に「社外のヒトに相談する」とまで新人マニュアルに書いてある。
恋路は雪乃のものだ。……どう言い返そうかと迷う前で、尾城林が首に掛けている社内Phoneが震え始めた。
係長以上が持つモバイル型だ。
「もしもし、ファシリティ部の尾城林ですが」
尾城林の電話の応対はソフトで好きだ。かっこつけのファシリティも、雪乃は賛成。総務部より先進的に聞こえる。
ちらっと視線を向けられた。
「……佐東と、篠山二名、ですか……」
(あたし?)空っぽの籠をしっかり下げた雪乃に尾城林は告げた。
「社内監査室からだ。総務部主任、佐東海空、副主任篠山雪乃。両名すぐに来るようにと」
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