時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

そして....


清洲の近くにまで到達すると、農民や兵士たちが大喜びで歓迎してくれた。

「信長様~!」「おかえりやぁ~!」「流石信長様だみゃあ!」

その場にいた全員が、歓迎の人々に感謝と温かさを受け取っている。戦が悪いことだけじゃない。改めてそれを感じさせてくれる。やっぱり嬉しかった。

「尾張の皆さんは...これだから好きです。」

隣で槍を横向きに後ろ腰に当てながら歩く智慶がポツリと呟く。
桶狭間では、信長の命を守るため、周りの敵を次々に斬り倒していくという猛将の姿を見せていたと、利家が褒めていた。
智慶も、こうして俺を信用してくれてるみたいで、よかった。

「そうだな...優しい主君に仕える良い兵士たち。そんな主従関係の掴めているのが織田家の特徴なんだろうな。」

「何言ってるんですか。この二日間で貴方も相当な織田家臣として馴染んでいるのですから!あまり変わりませんよ~。」

後ろから痛手を突くように藤吉郎が話した。勿論、その通りだとも思うが。そのまま苦笑いして受け答える。
しかし、あんなに降っていた雨、黒い大きな雲で覆われていた空もいつの日かの如く、消えており、空には綺麗な青空が広がっていた。
今日みたいな同じの日は決してない。こうやって喜べるのもこの一時だけ。喜ぶことはいつでも出来る。がしかし、桶狭間のように見事な戦いも今後あるだろうが、同じように織田が勝つとは限らない。だからこそ、だからこそ喜ぶ時は喜ぶ。悲しむ時は悲しむ。けじめをつけたっていいじゃないか...。
これが俺の、俺の道なんだからよ···。



ー 翌日

日が昇っていない時間、起床。汲んでおいた水で顔を洗う。玄関を開ける。走る。練兵場へ。
勝家が居る。木刀を渡される。稽古させられる。長時間練習の後、学問。学問学問学問!
日の暮れる頃、帰宅。藤吉郎の家にて食事、ねねの料理は美味い。その後また帰宅、消灯。
このような日常が約二週間ほど続いている。
桶狭間より帰還したと言うものの「軍師たるもの、人に欠け足るところあるならば徹底的に克服するべし。」と、信長が突然訳のわからない事を言い出したことで、翌日からずっとこの状態。
お陰様で、剣術についても分かってきたし、俺も高校生だ。この時代の勉強もなんとなくだが解ってきた。
しかし、この時代からも様々な算術や史学等を習っていたというのも驚いた。
今の時代じゃ分からない様な作法も学んだ。弓術だったり、まぁ武芸が基本かな。
織田の考えで一つ変えなければいけないことその一。信長をうつけだとは思ってはいけない!
何故なら、天下最弱と言われる織田家の練兵方法が普通ではないから。本当に戦しにいってるくらいの素晴らしさ。俺にさえ分かる。うん。

ただ、後から分かった。

「上からこの練兵方法で指導しろと言われているのだ。仕方あるまい。」

勝家がそう言った。そう言ったんだ!改めて確信する。織田は鬼だと!!
····どうやら、織田は俺を1ヶ月ちょいで武芸、学問等をマスター(要するに人並み以上に出来るように)させたいらしかった。一刻も早く俺を育てたいんだな...うん...。
なんだかんだいいつつ、日は1日1日と過ぎていく。焦っても仕方がない。そんなことを考えながらもそれから三週間という日が過ぎた....。

ー 清洲城城内

「一月ぶりと言ったところか...。信長。」

頭を下げながら目の前に居る信長にそう言った。
信長は刀を右側に置き、扇子を扇ぎながら座っていた。勿論、周りには織田の家臣達が大量に集まっている。
チートみたいに日は過ぎていったが、俺自身相当な目に遭ってここまで来た。もう、並大抵の覚悟じゃ後を退くことは出来ない。

「面を上げよ。」

低い声で言われると、俺はそのまま顔を上げた。右を見てみると、前の評定の時と同じ服装で望んでいる一益の菅が見えた。しっかしまぁ、今考えてみれば一益らしい質素な姿で、怖そうだとか考えていた俺がバカらしい。
その隣に座る柴田勝家に至ってもそうだ。長い間道場で練習させられてた事で、会話もするようになり、正直慣れた。話してみれば織田に忠義を忘れず、ただ一本の道を見詰めている脳筋とも言えるが、織田の猛将と言えばやっぱこの人なのだろう。
そして左に座っている丹羽長秀。彼女には間接の武芸を色々教わった。彼女の弓の扱いはとても上手いものであったことを今も覚えてるくらいだ。大人のお姉さんでも、本当に良いお姉さんだった。
ただ、茶のことになると話が終わらないんだよね...。
そしてもう一人の茶人、佐久間信盛。俺の総監督。余りにも過酷な鍛練を積ませた張本人(飽くまで信長なのだが)である。しかしこの酷い日々を送ったことで、信盛の人間性が見えてきた。やる時はやる、そう感じられた。向こうは俺を避けてる様に感じたけど...。

こうして、織田四天王に対する考え方も変わった。織田四天王、やっぱり織田家臣団の筆頭格だよ。
そう思いつつも、信長を見つめて話し出すのを待つ。
彼女はため息をつくと、口を動かし始めた。

「はぁ...。まさか本当に一ヶ月で完成するとは思わなかった。お主、自分を軍師だと名乗っただけの覚悟と才覚は有るようだな。策略に関しては素晴らしいものだと考える。桶狭間等、お主が居なければ勝算はなかったのだからな。」

「それはどうも。しかし、本題はそこじゃないはず。一体俺に何をして欲しいんだ?」

俺がそう言うと、信長は黙ってニコッと笑う。
きっと「そう焦るな。」と言いたいのだろう。そうだよな、焦り過ぎだよな。
彼女は言ったん深呼吸すると、すぐに話を続けた。

「うむ。お主の忘れ物じゃ。」

そう言うと、信長は後ろに居た家臣に合図を出す。
今思えば、大広間の戸が全て閉め切られていた様だ。いつの間に・・・?
とすると、スーッと言うレベルで信長からみて正面の襖が開いた。

開くとともに、一人の女の子が入ってくる。何処かで見覚えのあるその姿...。
それは....。

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